家蚕 第4報 に於 け る眠 性 の研 究 血 液 移 注 に よる眠 性変化(豫 諸 星 静 次 報) 郎 九州帝國 大學農學 部養蚕學 教室 (昭 和十四年四月一 日受理) 1.緒 言 近 年 昆虫 に 於 け る 脱 皮並 に 化蛹 現 象 は 内分 泌 に よる もの な る こ とが Rhodnius, Drosophila Ephestia, 共 の他 の昆虫 に 於 て 確 め られ る に至 つ た 。而 して 共 の分 泌 場 所 も積 極 的 に説明 さ れ つつ あ る 。 家蚕 に於 て は BOUNHIOL の 研 究 が あ る 。 同 氏 は1936(a)年 開始 に は何 等 影 響 は ない こ と を発表 した が,1937年 の 論 文 で は 食道 側 腺 の 除 去 は化 に至 り,食 道 側 線 の 除 去 は化蛹 開始 を蛹 早 め る こ と を確 め先 年 の 説 を 訂正 した 。即 ち3齢 及 び4齢 の 幼虫 か ら食 道 側 腺 を除 去 す る と當 然 來 るべ き眠 を行 はず して化蛹 す る 。以 上 か ら して 食 道 側 腺 は 化蛹 を妨 げ る ホル モ ン を分 泌 す る と述 べ て ゐ る 。 叉 BOUNHIOL ('36, a に よれ ば 腸 の 別 出 は 化蛹 を妨 げ る 作 用 が あ る と云 ふ 。併 し之 は脳 の 別 出時 期 と密 接 な 關 係 が あ り,5齢 中期 以 前 に於 て 捌 出 す る と化蛹 が全 然 起 らぬ 。斯 る点 よ り 化蛹 ホ ル モ ンは脳 か ら分 泌 され るの で は な か ら うか と考 へ た 。 そ の 後(i38)化蛹 球 と も 密 接 な 關 係 に あ る こ と を 報 告 して ゐ る 。併 し乍 ら 伊 東 博 士(!18)及 現象 は前額 び 横 山博 士 神経 (ノ36)に よ る と食 道 側 腺 は幼蟲 期 に 於 て は 眠 に 庭 じて 週 期 的変化 は な い 。從 つ て 横 山博 士 は食 道 側 腺 は脱 皮 とは 無 關 係 で あ ら う と言 つ て お られ る 。 血 液 移 注 の 方 面 か ら斯 る ホル モ ン の 存 在 を確 め ん と した 研 究 に は 梅 谷 博 士(ノ35)の成績 が あ る 。 同博 士 は KOLLER の 實 験 に基 き家 鍛 に 於 て 血 液 移 注 の 實 験 を され た が 陰 性 に 経 つ た こ と を発表 され た 。筆 者 は 斯 る ホル モ ンが 血 液 中 に存 在 して ゐれ ば,材 料 の 採 り方 と試 験 の 方 法 を考 慮 して 實 験 すれ ば 陽 性 の 結 果 を 示 すか も 知れ な い と云 ふ 考 の 下 に 實 験 を行 つ た 。果 せ ろ 哉,結 果 は 陽 性 を示 した の で取 敢 ず鼓 に豫 報 す る次 第 で あ る 。' 御 指 導 御 鞭 健 と校 閲の 勢 を執 られ た る 田 中義 麿教授 に衷 心 よ り感 謝 す る 。 II.材 (1)材 料 料 及 び 方 法 川IP教授 が 九 大蠶 室 で 多年 系統 飼 育 を して ゐ られ るt31な る記 號 の51i民鍛 と151 な る記 號 の3眠 鎧 とを 川 ひ た 。共 に 固定 した もの で前 者 の 幼虫 形 質 は 姫蚕 白脚 で,後 者 は 黒 縞 黄脚であ る。 (2)方 法4眠蠶 に 於 て は 高 温 多湿 に よつ て 眠 性変化 を受 げ 易い 時 期 は4齢 起 慧 で あ る こ と を第3報 で 記 載 した 。5眠蠶 も恐 ら く5齢 起蚕 に於 て眠 性変化 を受 け 易 い もの と考 へ られ る 。 そ こで 斯 る時 期 に注 射 を す る こ とに した 。注 射 に 用 ひた 血 液 は今 迄 の研 究者 が 行 つ た 如 く同 じ 系統 の 品種 を 用 ひ ず して3眠蚕 の血 液 を注 射 し,対照 と して5眠蚕 Melanose 血 液 の 採 集 に は作用 は 腹 部 第7∼8環 の 血 液 を注 入 した 。 の 起 る こ とを避 け るた めに 定温 室(8。C)で 行 ひ,注 射 場 所 節 と した 。 この 場 所 を選 ん だ の は 小 腸 及 び 結 腸 の あ る所 で 表 皮 との 間 に多 少 の 間 隙 が あ る か らで あ る 。注 射 量 は 約0・05ccで あ つ た 。併 し 多少 は注 入の 時 漏 出 した もの もあ つ た 。 III.實 第1表 に示 す如 く,3眠蚕4齢3同 験 現 した 。茲に 現 れ た4眠蚕 結 果 目雄 の 血 液 を5齢 起蚕 雄 に注 入 した 時 に の み4眠蚕 は 敦 れ も区色 が変化 し,恰 もos油蚕 が出 の 如 き観 を呈 した 。4眠蚕 は 総 て成虫 に なつ た 。 第1表 移 注 '4齢3日 同 3眠蠶 4齢3日 ㌧ 同 t5齢1日 同 血 液 上 目雌 の 血 液 ・ 同 5齢 起蠶 (5眠 雌22022 昌雄18018 雌18018 雄10010 5齢 起蠶 雌10010 (5眠蚕) 雄i10010 上 雌10010 IV.考 梅 谷 博 士(!35)は 畿) 目雄 の 血液 目雌 の 血液 供試 頭数4眠蚕5眠蠶 雄23320 上 上 ろ 眠 性変化 移注 され7;宿主 目雄 の血 液 5眠蚕 5齢1日 血 液 移 注1:よ 察 綴 に血 液 移 注 に よつ て ホル モ ンに就 て の 陰性 の結 果 を報 告 され,筆 者 は鼓 に陽 性 の結 果 を報 告 した 。両者 は素 よ りその 目的 並 に方 法 を異 に す るが,筆 者の 實 験 が 陽 性 の 結 果 を 示 した の は,(1)雌 慮 した こ と,(3)眠 然 らば 何 故5眠蚕 雄 を分 け て 實 験 を した こ と,(2)眠 性変化 に対す る特 定 の 時 期 を考 性 形 質 の 異 な る材 料 を用 ひ た こ と等 を挙 げ る こ とが 出 來 るn。 の5齢 起蚕 に 於 て3眠蚕 液 を注 入 した 時 は4眠蚕 の 血 液 を注 入 した 時 に4眠蚕 を生 ぜ ぬ か 。 これ は3眠蚕 をIliL,5眠蚕 の血 の血 液 と5眠蚕 の 夫 とが 質 的 に 相違 す る か らで あ る 。即 ち 脱 皮並 に変 態両 ホル モ ン の 消 長 關 係 が異 るか らだ と思ふ 。之 等 の 詳 細 は 更 に 研究 中である 。 又3眠蚕 の 血 液 移 注 に よる 眠 性変化 が 榮 養 の た め許 りで ない こ とは,同 量 の5眠蚕 の血液移 注 に よつ て 眠 性 が変化 しな い 鐵 か ら も判 る わ け で あ る 。血 液 の 量 と眠 性変化,血 液 の質 と眠 性 は將 來 關 明 す べ き事 項 で あ る 。 変化 以 上 の点 か ら 血液 中に は 少 く も 化 輔 に 關 係 した ホル モ ン 物 質 の 存 在 が 推 定 され た わ け で ある 。 V.摘 1.血 要 液 移 注 に よつ て 眠 性変 化 を起 させ る實 験 を行 つ た ・ 2.5眠蚕 の5齢 起蚕 雄 に311民慧4齢3日 口雄 の 血液 を 注 入 した 時,そ め5眠蠶 の あ る もの は,も う一 度 眠 るべ きだ の に化蛹 した 。 3.斯 る点 か ら家蚕 の 血 液 中に変 態 ホル モ ンの 存 在 を推 定 した 。 文 第1報 1)遺傅 献 に記 載 しれ 故 省 く 學 雑 誌 第15巻 第2號 「家蠶の 眠 性 に就 て」の 講 演 要 旨 に於 て 梅 谷 博 士 の実験 方 法 に2・3不 備 の ua4e認 め7二云 々 と記 し索が,こ れ は 同博 士 がKOLLERの 實 験 その ま 、を用 ひ られ れ の で 方 法 の不 備 で な く,方 法 の 相 違 で あ っ た 。並 に前 言 を 取 消 し同博 士 に 深 く御 詫 す ろ次 第 で あ る。 STUDIES ON THE MOULTING CHARACTER IN THE SILKWORM (BOMBYX MORI) IV. VARIATION OF THE MOULTING CHARACTER BY BLOODTRANSFUSION (PRELIMINARY NOTE) Resume Seiziro Sericultural Laboratory, Department MOROHOSI of Agriculture, Kyusyu Imperial University, Hukuolca. In the silkworm, the presence of the hormones concerning moult and metamorphosis has been demonstrated only by BOUNHIOL('36 a, b, '37, '38). By the experiment of removal of corpora allata and brain, he has presumed the former as the source of the hormone controlling the metamorphosis and the latter the metamorphosing hormone. By blood-transfusion experiment UMEYA('35) reached a negative conclusion. The writer performed blood-transfusion experiments, (1) using threeand five-moulters differing the moulting characteristics, and (2) taking into consideration the period of blood-transfusion. The result was positive, viz. some first day larvae in the fifth stadium of five-moulters transfused with the blood of the third day larvae in the fourth stadium of three-moulters did not moult any more but pupated. From this result it can be said that the blood of the silkworm contains at least the metamorphosing hormone.
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