Title Author(s) Journal URL ラット視床下部ソマトスタチンと成長ホルモン放出因子 に対するグルココルチコイド欠乏の影響 増永, 荘平 東京女子医科大学雑誌, 59(3):184-191, 1989 http://hdl.handle.net/10470/6959 Twinkle:Tokyo Women's Medical University - Information & Knowledge Database. http://ir.twmu.ac.jp/dspace/ 24 〔書権薄、、第鞍元劉骨〕 原 著 ラット視床下部ソマトスタチソと成長ホルモン放出 因子に対するグルココルチコイド欠乏の影響 東京女子医科大学 第2内科学教室(主任 マス ナガ 増 永 ソウ 鎮目和夫教授) ヘイ 荘 平 (受付 昭和63年11月8日) Effects of Glucocorticoid Deficiency on Hypothalamic Somatostatin and Growth Hormone・Releasing Factor in Rats Souhei MASUNAGA Department of Medicine II(Director:Prof. Kazuo SHIZUME), Institute of Clinical Endocrinology, Tokyo Women’s Medical College Glucocorticoid(GC)stimulates synthesis and secretion of growth hormone(GH). Little is known, however, about GC effects on hypothalamic GH−releasing factor(GRF)and GH・inhibiting factor (somatostatin, SRIF), the peptides which play physiological role on GH secretion. The present study was therefore designed to examine effects of GC deficiency on secretion and content of pituitary GH and hypothalamic GRF and SRIF in adult male rats. Secretion of GRF and SRIF was studied助碗70 from incubated hypothalamic fragments. 1.Adrenalectomy(ADX)had no significant effect on either spontaneous GH secretion or GH response to synthetic rat GRF(1μg/kg)or FK33−824(0.1 mg/kg), an enkephalin analogue, at 7 days after operation. 2.ADX diminished pituitary GH level at 7 and 14 days after ADX, reduced content and伽麗’70 release of SRIF at 2,7and 14 days, and increased release of GRF at 14 days only. 3.The ADX−induced decline in pituitary GH and hypothalamic SRIF, observed at 7 days after operation, was completely restored by 7−day daily treatment with dexamethasone sodium phosphate (50μg/rat/day). These results suggest that GC exerts a facilitatory effect on SRIF and has an opposite inhibitory effect, to a iesser extent, on GRF. Decrease in SRIF secretion, along with increase in GRF releasel appears to be a homeostatic event which counterbalances the decline in pituitary GH secretion associated with GC deficiency and thereby keeps GH secretion normal. 緒 言 制し3)4),末端肥大症の患者5)やラット6)で血漿:GH 下垂体からの成長ホルモン(GH)の分泌は,成 値を低下させる.またGCの長期投与は低血糖に 長ホルモン放出因子(GRF)1)とソマトスタチン 対するGH反応性を低下させるが7)心10),これにつ (SRIF)2)の2つの視床下部ペプチドによって調 いては異論もある11).また伽〃伽。でGCはGH 節される.各種ホルモンはGH分泌を修飾する が,グルココルチコイド(GC)もまたGHの合成 遺伝子の転写を促進し12)∼14),合成GRFに対する と分泌に影響を与えることが報告されている. 薬理学的量のGCは加η勿。で身体の成長を抑 GH反応性を充進させる6)15)16).一方GC欠乏は鋭 麗〃。で下垂体のGRF結合部位数を減少さ せ17)18),初θ勿。で薬理学的量の合成GRFに対す 一184一 25 実験には体重270∼320gのラットを用いた.ま るGH反応性を低下させる19).最近勿加〃。で, ず,GC欠乏状態の視床下部GRF, SRIFの分泌, GCの投与期間によりGRFに対するGH反応性 含量と下垂体GH含量に及ぼす効果を検討した. は異なる20)∼22)という報告もある. このようにGCの下垂体作用は多く報告されて ADXまたは偽手術を施行し,術後2日,7日,14 いるが,視床下部作用についてはほとんど報告さ 日目に断頭し,視床下部組織片および下垂体を採 れていない.そこで今回,GCの視床下部に及ぼす 取し,視床下部GRF, SRIFの分泌および含量, 作用を検討するため,加 麗θoで両側副腎摘出 下垂体GH含量を測定した. (adrenalectomy, ADX)ラットを用いてGH分泌 次に,ADXラットにおけるGC補充療法の視 床下部GRF, SRIFの分泌,含量と下垂体GH含 量に及ぼす効果を検討した.ADXまたは偽手術 を観察するとともに,勿麗〃。で視床下部GRF, SRIFに及ぼすGC欠乏の効果を観察した. 方 を行い,対照の偽手術群には溶解液を,ADX群に 法 1.実験動物 はデキサメサゾンリン酸ナトリウム(Dexameth− 実験にはSprague−Dawley系の成熟雄ラット asone;Decadron,日本メルク万有製薬株式会社) を用いた.ラットはハンガータイプケージの自動 50μg/ラット/日あるいは溶解液を,手術日より連 給水型陽圧式クリーンラックで,温度22士1℃, 日7日間にわたり皮下注射した.断頭後視床下部 湿度40∼60%,明暗周期12時間(点灯8時,消灯 組織片および下垂体を採取し,視床下部GRF, 20時)の環境下で飼育した.固形飼料(MF:オリ SRIFの分泌および含量,下垂体GH含量を測定 エンタル酵母株式会社)と水は自由に摂取させた. した. 4.視床下部のインキュベーションと下垂体 2.’η卿。の実験 体重280∼320gのラットにエーテル麻酔下で慢 GH含量 性右心房カテーテルを留置し23),以後1匹飼い 視床下部は前方は視神経交叉直後,後方は乳頭 ケージで飼育した.1週間後再びエーテル麻酔下 体前縁,側方は外側視床下部溝で境界される部位 で背側より両側副腎摘出術(ADX)を施行し,対 を深さ2mmで採取した.視床下部組織片は正中 線上で縦に2分割した.まず,視床下部組織を95% 照群には偽手術を施行した. 実験は無麻酔無拘束下で行った,13時前後に出 02−5%CO2通気下37℃で, Krebs−Ringer bicar− 現する脈動的GHを観察するために, ADX群と bonate溶液(KRBG液), pH 7.40,中で30分間 偽手術群ラットから12時より14時まで15分ごとに プレインキュベーションした.次に,基礎分泌を 0.15mlの採血を行った.続いて,内因性GRFを 測定するために培養液を新しいKRBG液で置換 介してGH分泌を促進するEnkephalin誘導 し,さらに30分間インキュベーションを行った. 体24)25)であるFK33−824(0.1mg/kg, Sandoz社 最後に脱分極刺激による反応を観察するため,培 製)を脈動的GH分泌の谷間と予想される時刻 養液を50mM K+添加KRBG液で置換し,さらに (14時)に静脈注射し,注射後15分ごとに1時間に 30分間インキュベーションした.なお,バイヤル わたり採血してGH反応性を観察した.次に, GC 1個あたり2個の視床下部をインキュベートし 欠乏状態の外因性GRFに対する下垂体GHの反 た.視床下部組織片は実験終了後,直ちに1規定 応性を検討した.実験は12時より20分ごとに採血 酢酸,0.1規定塩酸でホモジェナイズし,15,000× し,脈動的GH分泌の谷間と予想される時刻(14 gで30分間遠心し,上清を凍結乾燥した.また同時 時20分)に合成ラットGRF(1μg/kg, Peninsula に下垂体も採取し,0.05Mの炭酸バッファー 社製)を静脈注射し,注射後5分,20分に採血し (NaHCO3, Na2CO3), pH 9.96でGHを抽出し た.なお,毎回の採血直後に,生理食塩水に浮遊 た. した赤血球を輸血した. 5。ラジオイムノアッセイ(RIA) 3.’η曜roの実験 血漿と下垂体GHは米国のNIADDKによっ 一185一 26 Sham(10) 6GO 毒 2DO FK33匿824 ↓ 髪 Q一一く)Sham(7) 一ADX(8) 肝淑 墨 100 0 400 1200 1300 1400 Time of the Day(hr) 図2 合成ラットGRFに対するGH反応性における ADXの効果 婁 200 こ GRFを脈動的GH分泌の谷間に投与した時, ADX 口 0 はGH反応性に影響しなかった, 臣 結果は平均値±標準誤差で示した. ADX(10) 奉 600 ↓ 窪 茎、oo 図2は脈動的GH分泌の谷間(14時20分)に投 与した合成ラットGRFに対する血漿GHの反応 性を示したものである.FK33−824と同様に合成 200 * ラットGRFに対してもADX群,対照群のGH 0 1200 反応性には有意差は認めなかった. 1300 1400 1500 2.’ηvκmの実1験結果 Time of the Day(hr) 図1 ADXラット10匹(下●)と偽手術ラット (Sham)10匹(.L O)の平均血漿GH 脈動的GH分泌の波高およびFK33−824に対する GH反応頂値には両群間に有意差は認められない. ADX群ではFK33・824注射後45分,60分で血漿GH は有意(p〈0.05)に高値であった. 結果は平均値±標準誤差で示した. 図3には視床下部GRF, SRIFの分泌と含量に 及ぼすADXの影響を示した. SRIFの基礎分泌 はADX群と偽手術群で有意差は認められなかっ た.しかし,K+刺激に対するSRIFの反応はADX 後2日目より14日目にかけて有意に減少し,ADX 後7日目には最大42%の減少を認めた(p〈 0.0001).SRIF含量はADX後2日目には偽手術 て提供されたキットを用いてRIAにて測定した. 群と比較して有意の変化は認められなかったが, ラットGH値はラットGH−RPを用いて表示し た.培養液と視床下部抽出物のGRFとSRIFは 7日目,14日目には有意(それぞれp〈0.025,p< 既報の方法26)によりRIAにて測定した. 6.統計処理 有意差検定は,Student t・test,またはanalysis of varianceとStudent−Newman−Keul’s testを 用いた. 結 果 1.’ηyル。の実験結果 図1はADX群10匹,偽手術群10匹の平均血漿 GHの値を示した.図からも明らかなように, ADX群でも偽手術群と同様の波高を有する脈動 0.001)に減少した.一方,GRFの基礎分泌は ADXにより影響を受けなかったが,脱分極刺激 による反応はADX後14日目にわずかであるが有 意(p<0.025)の上昇を認めた.GRFの含量は ADX後7日目に有意(p<0.05)の低下を認めた が,2日目,14日目には有意差は認められなかっ た. 図4はADXラットのSRIF, GRFの分泌と含 量に及ぼすDexamethasone補充療法の影響を示 した.偽手術群と比較してADX後7日巨では視 床下部SRIFの基礎分泌は不変だが, K+刺激に対 的GH分泌を認めた.また血漿GHのFK33−824 に対する反応性はADXにより抑制されなかっ する反応は33%(p<0.001),含量は15%(p< た.むしろFK33−824投与後45分,60分の血漿GH 泌,含量は,7日間のDexamethasoneの補充によ の値はADX群の方が有意に(p〈0.05)高値を示 した. 0,01)有意に減少した.この減少したSRIFの分 り完全に回復した.なおADXとDexamethasone 補充は,術後7日目の時点ではGRFの分泌,含量 一186一 27 1000 200 150 * 600 * 豊 * 150 塁100 馨 量 歪 誘200 途50 0 81 o l4 2 ア ぞ 雀 8 Sham A №w A?X 8 1 」 10 臣 窃 管 O Sham ADX @2 碧20 堵 Sham ADX ADX * そ 呂25 。 0 0 40 * 蚕 翫 50 臣 響 @30 璽 亙 塞 産 5 2 * 璽 』250 50 * 湧100 罷 0 璽 禽 * 百 墨500 璽 * 霧400 禽750 G Sham ADX ADX Sham ADX Sham ADX ADX 十Dex 14 十Dex 図4 ∬η碗zoにおけるADXラットでのSRIF(左) とGRF(右)の分泌と含量に及ぼすDexameth・ 図3 勉読%oにおける視床下部SRIF(左), GRF (右)の分泌(上段)と含量(下段)に及ぼすADX asone(Dex)補充の影響 の影響 7日間のDex補充は, ADXにより減少したSRIF SRIFのK+刺激に対する反応はADX後2日目 の分泌(p<0.001)と含量(p<0.01)を完全に回復 (ADX2),7日目(ADX7),14日目(ADX14)とも に偽手術群(Sham)に比較して有意(2,7日目: した,GRFはADX, Dex補充によって影響されな かった. pく0.0001,14日目:p〈0.01)に減少した.SRIFの 上段の分泌は■:基礎分泌,圏,□:K+刺激に対す 含量はADX後7日,14日目に有意(それぞれp< る反応を示す. 0.025,p〈0.001)に減少した. GRFのK+刺激に対 結果は平均値±標準誤差で示した. する反応はADX後14日目にわずかだが有意(p〈 0.025)に上昇した. 上段の分泌は■:基礎分泌,匿],□:K+刺激に対す 400 る反応を示す。 結果は平均値±標準誤差で示した. 曾 壬 * * 玄 悉 一 垂200 に影響を及ぼさなかった. 璽 一40G 三2GO 謹 d= 図5は下垂体GH含量に及ぼすADXとDex− G amethasone補充の効果を示した.下垂体GH含 量は偽手術群と比較して,ADX後2日目には有 Sham ADX ADX Sham ADX 2 図5 意の変化はみられなかったが,7日目,14日目に 7 14 Sham ADX ADX 7 十Dex 下垂体GH含量に及ぼすADXとDexameth一 asone補充の影響 は有意(p<0.001)の減少を示した.また,7日 下垂体GH含量はADX後2日目は不変だが,7日 間のDexamethasone補充は,減少したGH含量 目,14日目には有意(p〈0.001)の減少を示した (左),7日間のDexamethasoneの補充は,減少した を完全に回復した. 考 下垂体GH含量(p〈0.00!)を完全に回復した(右). 察 結果は平均値±標準誤差で示した. 脈動的GH分泌は,視床下部SRIFと180.の位 相差を持って交互に分泌される周期的なGRF放 出により引き起こされると考えられている.すな 下と同期したGRFの放出が起こる.最近の知見 わち,脈動的GH分泌の谷間には主として視床下 によると,SRIF分泌の急激な減少(withdrawal) 部SRIFが分泌され, GRFの分泌は抑制されてい は直接視床下部に働きGRF分泌を引き起こし, る.脈動的GH分泌の発現時にはSRIFの分泌低 同時に下垂体レベルではGH分泌抑制を解除す 187一 28 う。すなわち,GH分泌抑制因子として単離同定さ 量の低下がDexamethasoneの補充で完全に回復 した成績は,GC欠乏の視床下部および下垂体の れたSRIFは視床下部レベルではGRF抑制因子 両レベルにおける作用の特異性を物語る. としても作用することが提唱されている27). この勿,θガ〃。の成績に基づくと,ADXにより ることにより脈動的GH分泌を発現させるとい さて今回の実験で,術後7日目に観察した合成 脈動的GH分泌が影響されなかったという術後 ラットGRF, FK33−824に対するGH反応性は,予 7日目の加麗〃。の結果も説明できるかもしれな 想に反してADXにより抑制されなかった.この い.すなわち,GRFにより誘発されるGHの脈波 成績は下垂体レベルではGCがGH分泌に促進 と同期して起こるSRIF分泌の低下がADXによ り増強され,これが内因性GRFの下垂体作用に 及ぼすGC欠乏の抑制的効果に拮抗する結果,脈 動的GH分泌が正常に維持されるものと推測さ 的に働くという諸家の勿加’ZOの報告6)12)一16)と一 見矛盾するようにみえる.しかし,GH依存性因子 でGHの蛋白同化作用を仲介するソマトメジン の血清中生物活性はADXにより影響されないと .れる.したがって,おそらく生理的な条件下では, いう所見28)が得られている.FK33・824によるGH GCは下垂体GHに対しては直接促進的に作用 の増加がADXにより遅延反応を示したことか ら,GC欠乏によるGHの代謝分解速度の低下が 脈動的GH分泌の維持に関与する可能性も考え られる.しかし,合成GRFによるGHの増加反応 パターンはADXにより変化しなかったので,こ し,反対に視床下部ではSRIFに促進的に作用す ることにより間接的にGHの分泌を抑制してい に及ぼす効果を観察した中川らの報告6)と一致す れはむしろ薬物(FK33−824)の代謝速度の低下に るようにみえる.彼らはDecadron(200μg/ラッ よるものであろう.もし,GC欠乏の効果が下垂体 ト/日)の3日間投与により雌ラット視床下部 レベルでのみ起こり視床下部レベルでは発現しな GRF含量の低下とSRIF含量の上昇を見出して ると考えられる. 今回の成績は,GC過剰の視床下部GRF, SRIF いなら,ADXはGH反応性やGHの脈動的分泌 いる.しかるに今回の結果とは異なって,We− を低下させるはずである.それゆえ,勿〃勿。にお hrenbergら19)はADX 7日目のラットで500ng/ けるGCの欠乏は下垂体レベルではGH分泌を する影響,すなわちSRIFの分泌抑制もしくは kgのhGRF−44に対するGH反応性は低下すると 報告している.この不一致は彼らが視床下部 SRIFの分泌を抑制するベントバルビタール麻 GRF分泌の漸進を及ぼす可能性も推測された. 酔29)を使用したことによると考えられる.このよ GC欠乏による視床下部SRIF, GRFおよび下 垂体GHの変動を経時的に比較検討した結果,こ れらのパラメーターでSRIFの分泌が最も早期に うな,下垂体レベルにおけるSRIFのGH分泌抑 制作用が消失した条件下では,GRFのGH放出 促進作用に対するGC欠乏の抑制効果のみが発現 変動することが明らかとなった.すなわち,ADX したものと推測される.ちなみにSeifertらの報 ラットのSRIFの分泌は術後2日目にはすでに 告17>18)によれぽ,正常ラット下垂体GRF結合部位 33%と有意の低下を示し,この減少は7日目に最 数はADXにより著明に減少し,この減少はDex− amethasone(50μg/日)の6∼48時間の補充に 抑制すると同時に視床下部レベルではそれに拮抗 大42%に達し,術後14日目まで持続した.この よって急速に回復する. SRIF分泌低下より遅れて, GH含量は術後7日 目より低下し,一方GRFの分泌は術後14日目で Schonbrunnら30)やValeら’5)の報告によると, のみ僅かな上昇を認めた.GC欠乏によりSRIF ラットの下垂体GH、C腫瘍細胞あるいは正常下 分泌がGRF, GHの変動に先行して低下した所見 垂体細胞の培養系でGCはSRIFに対するGH は,GC欠乏の視床下部に対する主な作用はSRIF の感受性を低下させる.これらの成績から,反対 分泌抑制であることを示唆する。さらに,ADXに にGC欠乏が下垂体レベルでSRIF感受性を増加 させGH分泌に促進的に作用することも否定で よるSRIFの分泌低下のみならず下垂体GH含 一188一 29 きないが,劾〃勿。でのGC欠乏の下垂体SRIF受 容体に及ぼす影響を検討した報告は見当たらな い.一方,Rodriguezらは, ADXにより中枢の SRIF受容体数は大脳皮質では不変であるが,視 結 語 1.GC欠乏は視床下部SRIF分泌と下垂体 GH含量を低下させ,視床下部GRF分泌を上昇 させた.したがって,GCは視床下部と下垂体に同 床下部,線条体,海馬では減少し,後者の減少は 時に作用しGH分泌を修飾すると考えられる. Dexamethasone補充により完全に回復すると報 告している.彼らの研究では下垂体SRIF受容体 ⊥昇に先行し,またGC補充により完全に回復し に対する影響は観察されなかったが,今回の成績 た.したがって,GC欠乏の視床下部における主作 と合わせADXは視床下部SRIFの分泌のみなら 用はSRIF分泌抑制であると思われる. ず受容体数も低下させることがわかる.SRIFは ることが提唱されているが27),このGC欠乏によ 3.GC欠乏状態の視床下部SRIF分泌低下と GRF分泌丁丁は,下垂体レベルのGHの合成や 分泌の低下と拮抗し,末梢血中のGH分泌を正常 る視床下部SRIF分泌ならびに受容体数減少は, に維持することに関与すると考えられる. 2.GC欠乏によるSRIF分泌低下はGRF分泌 視床下部レベルではGRF抑制因子として作用す ADX後14日目のGRF分泌上昇に関与している かもしれない. 稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜りました 鎮目和夫教授に深く感謝いたします,また終始,懇切 SRIFは下垂体TSHの生理的抑制因子である と考えられている32).したがって,今回明らかに に御指導,御印錘下さった三木伸泰講師,小野昌美博 なったGC欠乏の視床下部SRIF分泌低下作用 士に厚く感謝いたします. なお本研究の要旨は,第8回国際内分泌学会におい は,ラットやヒトで報告されているGC欠乏に伴 て発表した。 う血漿TSH上昇33)34}あるいはTRHに対する 文 TSHの反応性充進35)に少な:くとも部分的に関与 献 1)Guillemin R, Brazeau P, Bohlen P et a1: しているかもしれない.なおADXにより,イヌの Growth hormone−releasing factor from a 膵SRIFは有意に上昇する36).この成績は今回の human pancreatic tumor that caused ラット視床下部の結果とは反対であるが,GC欠 乏のSRIFに対する効果には臓器特異性があるこ acromegaly. Science 218:585−587,1982 とを意味するものかもしれない, 2)Brazeau P, Vale W, Burgus R et al:Hypoth・ alamic polypeptide that inhibits the secretion of immunoreactive pituitary growth hormone. ADXによるSRIFの分泌低下の機序について Science 179:77−79, 1973 は,GC欠乏の視床下部に対する直接効果による ものか,あるいはそれ以外の例えばフィードバッ 3)至310dgett FM, Burgin I、, lezzoni D et al: Effects of prolonged cortisone therapy on statural growth, skeletal maturation and Ineta− ク機構を介する二次的な変動かは明らかでない. bolic status of children. N Engl J Med 254: 636−641, 1956 ADXによってGHの脈動的分泌が術後7日目で 4)Hodges JR, Vernikos J:Acomparison of は変動しなかったことは,前者の考えを支持する かもしれない.しかし,ADXにより下垂体GRF 結合部位数が術後1∼2日目には激減する18)の で,ADX術直後にGH分泌が一過性に低下した 可能性は十分にありうる.この場合には,視床下 the pituitary inhibitory effects of prednisone, prednisolone and hydrocortisone. Br J Phar− mac Chemother 13:98−102,1958 5)Nakagawa K, Mashimo K:Suppressibility of plasma growth hormone levels in acromegaly with dexamethasone and 部のSRIF分泌の低下のみならず, GRF分泌の増 phentolamine. J CIin Endocrinol Metab 37: 加の両現象が従来のGHの短回路フィードバッ ク機構によって説明できる.なぜなら,GHは SRIF, GRF分泌にそれぞれ促進的37)38},抑制的26) 238−246, 1973 6)Nakagawa K, Ishizuka T, Obara T et a1: Dichotomic action of glucocorticoids on growth hormone secretion. Acta Endocrinol にフィードバック作用するからである. (Copenh)116:165−171, 1987 一189一 30 anterior pituitary membrane homogenates: 7) Franz AG, Rabkin MT: Human growth hormone. Clinical measurement, response to Modulation by glucocorticoids. Endocrinology 117 [ 424-426, 1985 hypoglycemia and suppression by corticosteroids. N Engl J Med 271 I 1375-1381, 1964 19) Wehrenberg WB, Baird A, Ling N : Potent interaction between glucocorticoids and 8) Hartog M, Gaafar MA, Fraser R: Effect of corticosteroids on serum growth hormone. Lancet 2l376-378, 1964 growth hormone-releasing factor in vivo. 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