地域活性化の現状と課題 -12年間のシンポジウムの成果より2010年6月20日 日本ベンチャー学会イノベーション研究部会幹事 KANSAI@CANフォーラム運営委員他 中原新太郎 http://www.s-nakahara.com 注)これは、地域活性化の手引書として、12年間のシンポジウムの資料を編纂したもので ある。コンパクトにまとめるため、やむなく、未採用のものもあるが、内容が劣っている わけではない。 また、採用した資料の著者が筆者と意見が同じとういうわけでも必ずしもない。 何故ならば、多くの知見を集めるため、極力背景の異なるパネラーを招聘したからである。 作成年次は古いと思われる資もあるかもしれないが、ICT技術と制度面の整備以外の 要素は、驚くほど変わっていないことを付記しておく。 資料の散逸を防ぐ意味もあり、極力原典をそのまま使用した。 敢えて言うならば、これは資料集である(出典は都度明記している)。 目次 1.質問です! 2.産業集積とイノベーション 3.地域活性化とSOHO/NPO+ITの協働 4. 地域活性化へのMOTの適用 5.中小・ベンチャー企業等に見る地域資源の活用 6.観光について 7.ITを生かした地域活性化:BLOG 8.ITを生かした地域活性化:シニアSOHO 9.地域における街つくり人材育成例:鳳雛塾の挑戦 10.地域SNSの発展 11.市民レポーターの育成 12.忘れてはいけない防災:1995年から15年 参考文献:鳳雛塾の挑戦、市民レポーターの育成、大安協等 流行に惑わされてはいけない! 引継ぎが」できない苦しみ。課長や首長が代わると・・・最初から? 1.質問です! ( 1)この街をどうしたいですか? ( 2)それは何故ですか? ( 3)何時までに実現したいですか?その理由は? ( 4)それが実現したら街の人々の表情はどうなりますか? ( 5)それが実現して喜ぶのは誰ですか?喜ばないのは誰ですか? ( 6)それが実現したら次は何をしたいですか? ( 7)その街の強みは何ですか(上位3つ)? ( 8)その街の弱みは何ですか(上位3つ)? ( 9)強みを生かす、弱みを補強、二者択一ならどちら? (10)よそ者、若者、バカ者(損得抜きで走り回る人)は誰ですか? (11)その人の属性(所属コミュニティ、地区、立場)は? (12)その人を支える旦那衆は誰ですか? (13)その人の属性(所属コミュニティ、地区、立場)は? (14)他の地区の事例で、参考になったのは?その理由は? (15)同じく成功例と言われながら参考にならなかったのは?その理由は? (16)他からの支援(都道府県/国)前提ですか? (17)どんな人を呼び込みたいですか(年齢、地域、属性等)? (18)貴方の使命は何ですか? (19)貴方は役目を終えたら、どうしたいですか? (20)「これだけは譲れない」は何ですか? ( 1) ( 2) ( 3) ( 4) ( 5) ( 6) ( 7) ( 8) ( 9) (10) (11) (12) (13) (14) (15) (16) (17) (18) (19) (20) 回答:自分の言葉で具体的に 質問の理由 総務省の地域情報化アドバイザーを活用するのも一つの手だが、 各人、得意分野が異なる(万能選手ではなく、メニューと考えよう)ので 依頼側の腰が据わっていないと徒労に終わる。 最大の資源は時間とキーパーソン。これを無駄にしてはいけない。 理由:専門家の得意技=地域の最適解ではない。 2.産業集積とイノベーション • 伝統産業を中核としたイノベーションに注目 燕三条の金属加工→iPod 京都発ベンチャー 富山県総合デザインセンター • コーディネーター/プロデューサー/悉皆 • 産業集積の中核としての大学の役割 • 文化資産を活用した京都・奈良のチャレンジ • 但し・・・「インキュベーション施設を作れば済む」ではない。 技術も地産地消を。さもなくば企業は安いオフィスとしか見ない。 公がファーストユーザーになり、フィードバックを。 実証実験→事業化の間に資金枯渇、開発人確保できず。 日本型新現場主義の構築による国際競争力回復と産業/地域再生 開発 公的研究機関 利活用の結果を 素早く研究開発の 現場にフィードバック するサイクルを構築。 事 業 化 推 進 室 デスバレー 研究 事業化 産業化 実現 利活用 テーマ (官公/民)公的事業主体 ■公的PF 成果 実現 ■電子政府・自治体 ■ITSインフラ フィードバック ■ 4Gモバイル 委 託 等 民間企業 ○技術力養成 ○知財蓄積 ○競争力強化 ここ(地域)での人材育成も急務 調 達 市場展開 国内市場 海外市場 出典 「ユビキタスネット社会に向けた>研究開発の在り方について」情報通信ネットワーク産業協会に一部修正 実現 安 全 安 心 ・ 快 適 な 社 会 3.地域活性化とSOHO/NPO+ITの協働 • コミュニティーの中核としてのSOHO/NPO+IT はりまスマートスクールプロジェクト(ネットディ) • 地域を豊かにするNPO+IT 日本サスティナブル・コミュニティ・センター (無線LAN) 南房総IT推進協議会(地域イーサネット網・SNS運営) • ITにより起業・情報発信が容易に ユビキタス村・TV、佐渡お笑い島計画 • ITによるSOHO/NPO/コミュニティ支援 地域NPO法人活動へのアーカイブ提供とネットワーク化 (ベイ・コミュニケーションズ 、みあこネット ) • 女性が主役、今後はシニア層も流入 みたかシニアSOHO:地域ビジネスと協働 4. 地域活性化へのMOTの適用(1) • 単なる事例導入では駄目 同業他社の成功例を、そのまま使用しても成功しない。 企業文化により、導入方法を変える必要。 ましてや地域は文化と資源に応じた方法が必要。 • 複数の手法の組み合わせが肝要 大学誘致、TLOの設立、インキュベーション施設、 ITの活用、観光資源の再活性化、女性の活用の どれか一つだけで成功する程、甘くはない。 イノベーション:新発明<既存知識体系の新結合 例:京都:観光+デジタルアーカイブ、無線LAN 三鷹:ITインフラの上にSOHO、NPO 4. 地域活性化へのMOTの適用(2) • 「何をするか」よりも「何をしないか」が重要 新規事業成否の50%はテーマの選定による。 新商品・サービス+新規市のパラシュートは低確率。 • 絶え間ない革新、新規性の創出が肝要 仕組み・組織を作れば済むものではない。 常に意識付けすることが必要。 例:京都:夜間拝観→宿泊客の拡大 閑散期の集客 京都検定→集客の分散 テーマパーク:イベントの入れ替え 参考:大企業から見た強い中小企業の利点 ①スピード感 ②現場・市場との密着度 ③異質な組み合わせの活用 ④志をベースとした水平ネットワーク ①~③の例:樹研工業:微小樹脂歯車の製造(豊橋) 世界一の技術を有するも、それに安住せず、 主力をスウォッチ→デジカメ→自動車部品と次々に シフトし、経営危機を回避 先着順、学歴・国籍不問の採用 ITを活用した④の例:鹿児島建築市場 鹿児島建築市場紹介資料-1 出展:KANSAI@CANフォーラム05.06.16日経メディアラボ坪田知己所長講演資料より 鹿児島建築市場紹介資料-2 出展:KANSAI@CANフォーラム05.06.16日経メディアラボ坪田知己所長講演資料より 鹿児島建築市場紹介資料-3 出展:KANSAI@CANフォーラム05.06.16日経メディアラボ坪田知己所長講演資料より 2007年度版中小企業白書より作成 5.中小・ベンチャー企業等に見る地域資源の活用 ●地域に存在する特有の経営資源と差別化のポイント ①観 光 型:食材としての地域内の農林水産品の使用 温泉の知名度 ②農林水産型:原材料としての地域内の農林水産物の活用 地域の知名度 ③産地技術型:販売先との強固な信頼関係 商品デザインやイメージ 日本ベンチャー学会事務局長 田村氏講演資料2007.06.22 2007年度版中小企業白書より作成 5.1.地域資源活用 新商品・新サービス創出の効果 3つのタイプいづれも地域資源を活用して新商品・新サービスを創出した企業の方が、 増収傾向企業がやや多い。 ①観 光 型 ・温泉地内における共通手形の発行 健康・美容関連のツアー企画など ②農林水産型 ・地域資源が、新商品の開発による新たな 事業を創造する可能性など ③産地技術型 ・地域資源に伝統的な技術を応用すること で新商品などを創出する傾向の割合が高 いなど • 四国:(株)内子フレッシュパークからり • http://www.karari.jp/ • 1997年 4月に創立し、増収増籍の決算を続けて現 在、49人の社員を雇用するまでに事業は拡大。 • 地元にこだわった直売所、レストラン、農産加工場を 経営。利用者は60万人を超え、交流と情報化により 順調に売上を伸ばし、農家の所得向上に寄与する。 • 多くの内子町民(677名)が出資した第三セクター。 • 農産物を中心に地域資源を活用。町民の資本で就 業の場が確保され、地域活性化の一翼を担うまで に成長している。 内子フレッシュパークからりHPより抜粋 内子フレッシュパークからりHPより抜粋 • 九州:(株)ウッドサークル • http://www.immwood.jp/ • 1998年 9月設立。杉間伐材を使った食品トレーの開 発・販売で全国展開。FFCテクノロジーによる、化学 的除菌法を取らず健康に付加を与えない木材加工 技術、免疫木材の開発。 • その技術を地場産業の家具の開発に応用し、地域 の家具メーカー10社と連携し全国展開。パラマウント ベッド(株)発注の医療家具に免疫木材イムウッドの 採用、受注を伸ばす。 • 2007度東京都の賃貸マンションに起健康家具イム ウッド家具を地元ベンチャーグループ企業で納品。 2007年 2月新工場可動。 ウッドサークルHPより抜粋 • 中国:漂流岡山 • http://www.hyouryuu.co.jp/ • 2001年、岡山県内産果物のインターネット販売を主 たる業務として創業。 • 消費者ニーズである『適熟果物』を実現するために、 特に県内若手農業者との信頼関係を構築。 • 若手農業者は各地域で情報が分断され、販路も乏 しいことから農業者のネットワーク『地産地消ギルド 岡山』2005年に設立、事務局として農業者を取りま とめる。その農業者グループが差別化を求めるスー パー等に受け入れられ地元農産品の卸し業に取り 有限会社 漂流岡山HPより抜粋 組んでいる。 有限会社 漂流岡山HPより抜粋 2007年度版中小企業白書より作成 5.2.地域資源活用の問題点 ①観 光 型 ・問題点は地域全体のまとまりをどうするか。 ⇒観光地においては、1社の努力のみなら ず地域全体の魅力を高めることが必要。 ⇒地域一丸となって活性化に取り組む仕 組むつくりなどが容易ではない。 ⇒温泉宿泊施設では、施設の新設や維 持・修繕に多額の設備投資が必要。 ⇒事業化に伴う資金調達が困難。 5.3.地域ブランドのイメージとは ●こだわり・本物 ⇒ 魅力的・健康的 ●期待・信頼 ⇒ 無農薬・無添加 ●差別化・高付加価値化 ⇒ 高価 ●手に入りにくい・期間・地域・数量限定 ⇒ 地域らしい手作り ●その他 2007年度版中小企業白書より作成 5.3.地域ブランド構築のポイント ● 地域イメージの価値の明確化 ● 強み・弱みの徹底的な検証と統一的なコンセプトが必要 ● 消費者のニーズを把握しながら顧客を選定し、販売方法を明確化 ・卸し(百貨店、商社、スーパー等) ・直販(道の駅、物産展、アンテナ ショップ等) ・通信販売、オンラインショップ ● 価格戦略とマーケティング戦略が課題 ⇒ リピーター、口コミ ● 主体的に取り組む旗振り、キーマンがカギ ⇒ 地場の中小・ベンチャー 企業の役割 ● 地域ブランドの取り組みが一過性のものではなく、成果を出していくことが大切 ● 行政や商工団体等だけでなく、地域内の生産者や住民、NPO、中小・ベンチャー 企業、その他の団体、さらには地域外のものとも連携し、統一的なコンセプトのも とで取り組むことが重要 2007年度版中小企業白書より作成 5.5.まとめ ・ 地域資源を認識している割合は、観光型で9割、農林水産型で6割、 産地技術型で3割と大きな差があった。 ・地域資源活用のきっかけとしては、地域資源が地元の特産・特色で あったことが高い割合を占めている。 ・地域の中小・ベンチャー企業は地元が持つものの市場価値を十分に認識 して、外部の意見も参考にしつつ地域資源を活用していくことが必要。 ・自社の強みを見出して差別化を図るとともに、消費者ニーズが多様化 している 中では、「地域」自体の差別化が求められている。 ・ 改めて地域を見直し、地域資源の活用により地域内外の需要を取り込む ことで、中小・ベンチャー企業の持続的成長と地域全体の活性化を図ること がポイント だろう。 6.観光について(須田 寛氏講演内容に追記) ①観光は情報と表裏一体の関係にある。 ②観光資源は情報があってこそ生きてくる。 存在や意義が知られることにより、 資源としての価値を発揮できる。 ③語源は中国の「観国の光」 国の光を観る。心を込めて見るので 単なる「見る」ではない。 地域の優れたものを見たり見せたりするのが 元来の意味であり、 極めて重要なこととされた。 観光には「単なる物見遊山」「非生産的」 「遊びに過ぎない」という誤解もあるが、 それは間違いである。 ④ブランドの大事さ ・認知度:いかに多くの人が知っているか ・浸透度:何がイメージできるか ・人気度:他と差別できるものがあるか ⑤大事なのは「悉皆(しっかい)」 ・コーディネーター、プロデューサー ・目利き、人脈、センス ・こだわり、えこひいき ⑥今後の課題 ・地域の特色を生かした観光を。 ・過去から現在、未来まで見通した観光 ・産業という観点からの見直しを。 ・広域展開←現在は市町村単位。 観光客の行動範囲に合わせて横のつながりを ・国際展開: 外国人客の観光対象を発掘。 地域活性化のツールとしての観光 ①改めて地元の人に地元の価値を認識してもらうのが重要。 ・普段近くにあるものは、あるのが当たり前であり、 その価値を見過ごしがち。 ・価値認識を通じてアイデンティティーの再確立を。 ②地域振興は「よそ者」「若者」「ばか者」に。 ・地元の人間はしがらみが多く、動けない。 ・有力者は現在の枠組みの方が居心地が良いため、 率先して変化を起こすのが難しい。 ・ 「よそ者/若者/ばか者」を引き付ける道具としての観光。 ・ 「よそ者/若者/ばか者」を邪魔せず見守る旦那文化を。 7.ITを生かした地域活性化:BLOG 「BLOGによる地域おこし」 ヨソモノ・ワカモノ・バカモノの 新しい知恵とパワーを集めて 墨田区を活性化する私案 「ブログ道」「メール道」著者 久米繊維工業 代表取締役 久米信行氏 シンポジウム2007.06.22講演より 首長ブログの可能性 武豊町長ブログ「籾山芳輝の日記」 • 時事通信の講演で最前列でご聴講 • 名刺交換したらブログURL発見 • 感激して日経ITPROの記事に • ↓↓↓ • 首長ブロガーの勧め(1) • 武豊町長 籾山芳輝さんのブログに 学ぶ • 首長ブロガーの勧め(2) • よくある5つの不安を解消 • 首長ブロガーの勧め(3) • 首長ブログから始める • 「ブログ合衆都市」の可能性 • http://blog.goo.ne.jp/momyyoshi
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