育児サポート講習会 第5章「子どもの心の 発達過程と保育者の関わり」 (1)乳児期(0~1歳) (2)幼児期前期(2~4歳) (3)幼児期後期(4~6歳) (4)学齢期(小学生頃) 講師:倉掛 秀人 せいがの森保育園 園長 第1節 乳児期(0~1歳頃)の 心の発達と保育者の関わり 発達心理学の流れ 健康な心の発達の筋道 人格発達論=漸成的発達理論 エリク・ホーンブルガー・エリクソン (E.H.Erikson) 『幼児期と社会』(1950年) 人の生から、死に至る過程を8つの段階でし めし、それぞれの課題と危機を定めた。(ライ フサイクルは、最後は9段階になった) 人間の8つの発達段階 円熟期 自我の統 合VS絶 望 成年期 生殖性V S停滞 若い成年 期 親密さV S孤独 思春期と 青年期 同一性V S役割混 乱 潜在期 勤勉VS 劣等感 移動性器 期 自発性V S罪悪感 筋肉肛門 期 口唇感覚 期 自律VS 恥・疑惑 基本的信 頼感VS 不信 1 2 3 4 5 6 7 8 心の動き方はどう変化するか ⇒心はどう育つのか 3~6歳の頃 児童期 2~3歳の頃 幼児期 0~1歳の頃 乳児期 •自発性 •自律 •基本的信頼感 発達段階ごとの特徴について 保育者は、赤ちゃんから小学生になるまでの「育ち」 を発達段階ごとに、その特徴と発達課題、援助すべ き内容を把握しながら保育にあたる。 保育所保育指針(8つの発達過程) 6ヶ月未満、6ヶ月から13ヶ月未満、13ヶ月から満 2歳未満、2歳、3歳、4歳、5歳、6歳と区分 ここでは、4つの区分で説明(久保田まり) ①乳児期(0~1歳頃) ②幼児前期(2歳から4歳頃) ③幼児後期(4歳から就学前まで) ④学齢期 乳児期 赤ちゃんから1歳半ぐらい (出生、歩行、言語を獲得するまで) 1.乳児の知覚世界 2.対人世界とスキンシップ(身体接触) 3.愛着(アタッチメント)の発達と機能 人見知り・後追い 4.物と人の世界の分化へ (二項関係から三項関係へ) <基本的信頼感の獲得> 子と母は最初から向かい合うようにできている まずは「赤ちゃん」の側から ○ 持って生まれた能力の高さが再発見され つづけている。 ○ 赤ちゃんのコンピテンシー ○ 人類学的な意味づけ 「やさしく、弱く、依存する存在として生まれる 人類の生存戦略」・・・ 1.乳幼児の知覚世界 ~赤ちゃんは人の顔が好き Fantz 1961 「選好注視法」 6種類の円盤状の視覚刺激への総注視時間 生後5日以内の新生児でも「人の顔」にもっともよく視 線を向ける。人の顔に明確な好みを持って生まれてく る。 新生児の視力:ピントが20㎝~30㎝で固定 母子関係 養育者の胸に抱かれたときの顔の位置 生後6ヵ月ごろにピント調節が可能になっていく 新生児は人とかかわる能力を持って生まれてく る 乳児の注視時間からみた図形パ ターン ~赤ちゃんは聞いていた!母子関係 生後1日の新生児 男性よりも女性 他の女性よりも母親の声に反応 母親の声を子宮内で聞いていた そしてそれを記憶している DeCasper & Fifer (1980) 他の言葉(アラビア語)より母国語(英語) DeCasper & Spence(1986) 2.乳児期早期の対人世界 赤ちゃんは女性の声が好き 母子関係 180 175 170 165 160 正期産児群 早期産児群A 早期産児群B 155 150 145 140 135 男性の声 4歳児の声 女性の声 いろいろな人の「よしよし」の声かけへの新生児 の反応(平均心拍数) 赤ちゃんの泣き声 ウィッセンフィールド(1982) 生後3日目までに母親は自分の赤ちゃんの泣き声と 他人の赤ちゃんの泣き声には異なる反応を示す。(次 のグラフ) フィールド(1982) 母子関係 新生児の眼前で「喜び」「悲しみ」「驚き」の表情 それに対して識別して模倣する → 相互作用 泣き声(微笑・喃語)が意味をもつ信号となり、親 子の情緒の伝え合いが始まる 3 母親の心拍の 変化(BPM) 2 自分の赤ちゃんの泣き声 1 0 1 2 3 4 5 6 7 -1 9 10 秒 -2 -3 知らない赤ちゃんの泣き声 -4 8 怒り 痛み 怒り 痛み 共鳴動作「喜び」 共鳴動作「悲しみ」 共鳴動作「驚き」 3.愛着の発達と機能 (1)愛着の発達 (2)安定した愛着を形成する「応答的関わり」 布おむつ (取替え・赤ちゃん体操・家庭へも貸す) 抱っこして授乳 (温かいまなざし・保育者の笑顔) (3)意図・注意・情動・対象の「共有」 「共視」「共食」 微笑と泣く意味 大人が「かわいい」と反応。愛情的働きかけを誘導 あやす、抱っこ、スキンシップ 大人が微笑を返す 大人が「非常に不安」になる。居ても立ってもいられない お腹がすいた?眠い?のどが渇いた?むずがゆい?・・・ 大人は欲求の探り当てを学習していく 赤ちゃんは学習 泣くことで欲求が満たされること 期待をもって「泣く」ということ 自分の働きかけが、他者に通じること 他者や大人への信頼の芽生えを生む*重要 親と子の愛着形成 泣くこと、発声、注視、後追い 大人を呼び寄せ、相互交渉を継続させる 親と子の愛着(アタッチメント)を形成へ 親子のしっかりとした信頼関係 微笑の意味 動物行動学「幼児体型」 「かわいい」と感じる<かたち> 人見知り・後追い(発達の指標となる) 見知らぬ人に警戒と不安 認知能力の発達と愛着関係の形成があってこそ 未知の人や場所への不安←接触や言葉かけで 安心感 不安の沈静体験が絆を強め安定感を得る 母子分離不安 強化されると不信感・無気力を生む 馴れ保育の重要性(子どもの気持ちに添うこと) 外界への興味や探索欲求を生む基地・ベース 物と人の世界の分離 (二項関係から三項関係へ)その1 外界への探索活動が活発に (物の世界で遊ぶ) 視覚と手の運動の統合(いじり回す、叩く、投げる) 移動範囲の拡大(這う、伝い歩き) 大人との相互的な遊びを楽しむ(二項関係) 声を出して大人の注意を呼び込む いない、いない、ばあ 物と人の世界の分離 (二項関係から三項関係へ)その2 赤ちゃんと人の間に「物」(第三項)が入る 物を媒介にして気持ちを共有して遊ぶ 自分と物、自分と相手を分けて考えること 大人が物を関係付けてあげる 相手の物との関わり方をまねて自分に取り入れる 大人の行動や言葉に興味をもち、まねる→まなぶ 相手の気持ち、行動の状況と意味を理解 お互いに同調しながら適応行動を身につける それとって、これ入れて、あれください はい、どうぞ。はい、ありがとう これおいしいね(パクパク) もし、一人遊びだけだったら・・ もし、言葉のやりとりがなかったら・・ 三項関係の形成は、言語活動の原形でもある まとめ①:基本的信頼感 人を信じることは自分を信じること 子どもが望んでいるように愛すること 相手の存在を尊重することと自分の価値を知 ること 世界は信じるに足るものであるという基本的 な信頼が心の底に根付くこと 参照:佐々木正美 まとめ② 共同注意が決定的 「指さし」はしない類人猿 ジョイント・アテンション (マイケル・トマセロ) 世代を超えて継承されていく知恵 人間だけが爆発的に文明を進化させることが できた理由 脳科学が物質的な特定を研究中 なので 子どもの「見て」への対 応がとても大切 赤ちゃんの気質 ① Easy type (アメリカ,トーマス.A 1970) 非常に周期性が高く、新奇な環境に対して の順応性が高い。いつも機嫌がよく気分が 安定している。 → 親の対応やしつけに合わせるために、 親のあり方がそのまま子どもの反映される。 たとえば親のかかわりが最小だと、独りでい ることが得意な独立傾向の強い子どもにな ると言った具合。 赤ちゃんの気質 ② Difficult type (アメリカ,トーマス.A 1970) 周期性はかなり不規則で、順応性も低い。す ぐに驚き、泣く反応も強い。気分は不機嫌な ことが多く、不安定。 → 親の我慢強さと方針の一貫性が大切に なる。やたらな罰はこどもを反抗的にしやす い。 赤ちゃんの気質 ③ Slow to warm-up type (アメリカ,トーマス.A 1970) 活動水準がやや低く、新奇な環境に対して、初期の 逃避傾向がある。順応性はやや低いが、時間をか ければ適応できる。 → 子どもが自分のペースで環境に順応できるよう に心を配ることが必要で、急激な変化は引っ込み思 案を強めることになる。マイペースでやらせれば問 題はないが、親がせっかちだったり、はやく社会化さ せようとすると、不安や恐怖を強めてしまい、自閉的 な傾向を強めてしまう。
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