発達心理学への招待

教育心理学
第2回
子どもの発達(1):
発達の基本原理
今日の流れ
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ミニレポートの解説と質問への回答
発達とは何か
発達段階
発達課題
ミニレポートの解説と質問への回答
前回のテーマ
1.
2.
3.
心理学の基本的な特徴について説明せよ
心理学における測定対象は何か
(この授業に対する質問・要望など)
心理学の基本的な特徴
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科学的
–
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目に見えない対象を扱う
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観察、実験、調査による体系的なデータ収集と統計
的解析に基づいて理論を構築・検証する
感情、動機づけ、知能、性格、記憶など、客観的に観
察できない対象について研究する
個人に着目する
–
社会的要因や教材・教育方法の影響を媒介・調整す
る個々人の心理過程や特性に着目する
心理学における測定対象
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質問紙や面接によって、個人の「主観」を測定
行動観察、テスト(課題)などを用いて、「行動」を
測定
発汗、心拍、体温といった抹消神経活動や脳内
の中枢神経活動などの「生理的活動」を測定
心理という目に見えない現象を扱うため、複数
の対象を測定することで、知見の客観性を高め
る
質問

「社会→行動」という学問がなくても、「社会→心
理→行動」で解決する気がするのですが?
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現象を予測あるいは制御するという観点では、媒介
するプロセスがわからなくても事足りることがあります
例:教材Aと教材Bでは、教材Aの方が学力の向上に
効果がある→教材Aを採用する
より踏み込んだ検討をするには、媒介プロセスの解
明が必要になります
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より優れた教材を開発したい
効果の個人差の原因を明らかにしたい
質問

心理学では、ある行動に対する心理を研究する
ために、どれくらいのデータをとっていますか?
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条件の厳密な統制を行う実験研究で10~20名以上、
統制を行わない調査研究で100~200名以上
検討したい要因の効果の強さと誤差(測定誤差や他
の要因の効果)の程度の比によって、統計的に有意
な効果を見出すのに必要なデータ数が決まる
「有意性」(偶然か必然か)にこだわらず、要因の効果
について正確な推定結果を得たいときには、データ数
は多ければ多いほどよい
質問
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ミニレポートの返却はありますか?
–
–
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期末にまとめて採点を行うため、個別の返却はして
いません
毎回の授業の冒頭で、前回のミニレポートの解説をし
ます
授業中の飲食は可能ですか?
–
常識の範囲内でお願いします
質問

期末試験は、ミニレポートと「同じ形式」の問題
か、「同じ内容(テーマ)」の問題か
–
大部分は「同じ内容」の問題です(ミニレポートのテー
マの中から出題します)
発達とは何か
発達とは
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受胎から死に至るまでの時間経過の中で、個体
の心身の構造や機能には、さまざまな変化があ
らわれる
そのうち秩序と方向性をもって進行し、漸次的な
変化としてとらえられるものを発達と呼ぶ
–
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言葉の獲得○
感情の分化○
病気や怪我×
成熟と学習
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発達は成熟と学習の相互作用の産物である
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成熟:生物学的な内的要因により自発的に生じる変化
学習:環境から提供される経験(外的要因)を通して、
心身の機能や行動に生じる変化
成熟か学習か
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成熟優位説
–
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レディネス(準備状態)の重要性
学習優位説
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野生児
ホスピタリズム
成熟か学習か
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相互作用説
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ジェンセンの環境閾値説
発達段階
発達段階
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胎児期:受胎から誕生まで
–
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母親の喫煙、アルコール摂取などの物理的要因やス
トレスなどの精神的要因の影響を強く受ける
ある程度の感覚能力が備わっている
乳児期:誕生から約18ヶ月まで
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生理的早産によって、環境の影響をより強く受けるよ
うになっている
当初考えられていたよりも有能
発達段階
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幼児期:約18ヶ月から約6歳まで
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第一反抗期を迎える=自我の芽生え
自己中心的思考:第三者の視点から客観的に物事を
捉えられない≠利己的
児童期:約6歳から約12歳まで
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親子関係から仲間関係へ
ギャングエイジ
第二次性徴により青年期へ移行
発達段階
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青年期:約12歳から20代ごろまで
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急激な身体的・心理的変化が生じ、不安定になりや
すい
周辺人(マージナルマン)
第二反抗期=自我の確立
自我同一性(アイデンティティ)が獲得されていく
青年期は、以前より、始まりが早く(発達加速現象)、
終わりが遅くなっている(モラトリアムの長期化)
発達段階
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成人初期:20歳代から40歳代まで
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成人中期:40歳代から60歳代まで
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恋愛から結婚へ
育児
親になることによる発達
成人後期(老年期):60歳代から死まで
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子離れ
退職
死への準備
発達課題
発達課題
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
それぞれの発達段階において獲得することがふ
さわしい課題
エリクソンの心理社会的発達理論
–
乳児期から老年期までの8つの発達段階における発
達課題と、それと対立する心理的危機を対として記
述した
発達課題
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乳児期:基本的信頼感 vs. 不信
幼児期前期:自律性 vs. 恥
幼児期後期:自発性 vs. 罪悪感
児童期:勤勉性 vs. 劣等感
青年期:アイデンティティ vs. 拡散
成人初期:親密 vs. 孤立
成人中期:生殖性 vs. 停滞
老年期:統合 vs. 絶望
ミニレポート
テーマ(1つ選択)
1.
2.
発達の成熟優位説、学習優位説、相互作用説
について、それぞれ根拠となる例を挙げながら
説明せよ
エリクソンの心理社会的発達理論における乳
児期から青年期までの発達課題と心理的危機
について説明せよ