Higashino Lab. 障害物の存在する空間における レンジスキャナを用いた 人流モデル化手法の提案 和田 悠佑†,中村 嘉隆‡,東野 輝夫† †大阪大学 大学院情報科学研究科 ‡公立はこだて未来大学 システム情報科学部 Higashino Lab. 研究背景 センサ技術の発展 実世界の事象をデジタルデータとして収集・解析 物理システムと情報システムを結合させるサイバーフィジ カルシステム (CPS) への注目 CPS の例: 道路に設置したセンサからの情報による渋滞回避 人流のセンシングの重要性 2011/7/7 人の移動パターンに合わせた新しいサービス 都市計画,ショッピングモール計画 避難誘導計画,混雑の解消 DICOMO2011シンポジウム 2 Higashino Lab. 研究目的 センサによる計測データを利用した 地下街の広場などの空間における リアリティのある人流モデルの作成 特に,個々の歩行者の軌跡ではなく,群単位の歩行 者の移動をモデル化することを目指す 2011/7/7 歩行者群を対象としたアプリケーションへの利用 DICOMO2011シンポジウム 3 Higashino Lab. 人流モデルの利用例 デジタルサイネージによる避難誘導計画 デジタルサイネージ: 通路や広場の壁に設置された 平面ディスプレイ 平時は広告等の情報表示 災害時は避難路情報の表示 人流モデルの利用 2011/7/7 避難誘導のシミュレート 誘導用サイネージの設置位置の検討 DICOMO2011シンポジウム デジタルサイネージ 4 Higashino Lab. 人流計測方法 カメラを用いた手法 RFID タグを用いた手法 撮影画像から歩行者を抽出し,それに基づき人流を計測 プライバシの問題から設置に制限がかかる 歩行者に RFID タグを持たせ,それを観測することで計測 計測環境構築のためのコストが大きい 出入口での入出量計測による手法 計測された入出量に基づき人流を推測 2011/7/7 歩行者の移動経路に偏りがある可能性 立ち止まっている人 (滞留者) の検出不可 DICOMO2011シンポジウム 5 Higashino Lab. LRS を用いた人流計測方法 メリット 1 台で広範囲をスキャン可能 計測データサイズが小さい センサに対する角度と距離 UTM-30LX 北陽電機株式会社 プライバシ侵害のおそれが少ない データの差分を使った簡単な行動追跡が可能 半径30m,計測角270°,25ms/scan 滞留者も検出可能 デメリット 個々の歩行者の特徴の検出はできない 2011/7/7 歩き方,服の色等の情報 障害物に弱く,個々の歩行者の厳密な動線取得が難しい DICOMO2011シンポジウム 6 Higashino Lab. 地下街での実測実験 (1/2) 地下街の広場での実測実験 大阪市北区「Whity うめだ」 レンジスキャナ 4 台を用いた同期計測 2011/7/7 歩行者の腰あたりの高さに,地面と水平に設置 DICOMO2011シンポジウム 7 Higashino Lab. 地下街での実測実験 (2/2) 約 33m 黄色のエリアが歩 行者が通る場所 オレンジ色の図形 が LRS を表す 約26m 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 円形の部分が LRS のレーザ射 出部を表す 8 Higashino Lab. レンジスキャナの計測データ 計測データ 計測時刻 1 秒毎の歩行者の位置座標 歩行者に割り当てられた ID LRS での行動追跡 スキャンデータの差分から同一人物を判断 行動追跡に成功すれば ID によって人の移動がわかる 行動追跡に失敗したところで ID は消滅 2011/7/7 同一人物を再び発見しても,別 ID が割り当てられる DICOMO2011シンポジウム 9 Higashino Lab. 実験データの解析 行動追跡に成功しているのは数秒 30% ~ 40% が 1 秒間だけの観測 (追跡失敗) 柱などの障害物の影響 歩行者自体も障害物となる 2011/7/7 腰の位置を狙って計測したので,人の陰の影響が大きい DICOMO2011シンポジウム 10 Higashino Lab. モデル化へのアプローチ 全歩行者が完全に観測されているわけではない 各個人の完全な動線でなく,人流の傾向を把握する 観測領域をいくつかの区画 (セル) に分割 セル内の歩行者群の特徴を捉える セル毎の人口密度の分布に着目 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 11 Higashino Lab. 生成する人流モデルについて 群単位の歩行者の移動傾向のモデル 適当な大きさのセルごとに分割したモデル 障害物による計測不能部分が,人流モデル全体に影響を 与えてはならない 滞留者のモデル 人流制御等の目的には,個人単位の移動軌跡は重要で ない 広場等の大きな空間では通路等より立ち止まる人が多く, 人流の傾向が異なる 人流は移動方向と流量をフロー形式で表現 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 12 Higashino Lab. 提案手法 アルゴリズム 1. フローの経路候補設定 2. 人口密度を用いた経路決定 3. 移動方向を用いたフロー算出 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 13 Higashino Lab. 提案手法 - 経路候補の設定 1. 観測領域をセルで分割 2. 出入口となるセルを指定 3. 二つの出入口セルに対し、考 えられる経路を全て算出 歩行者は廻り道しない 歩行者は隣接するセルへ移動 2011/7/7 ここでは,簡単に上下左右に動くもの とする DICOMO2011シンポジウム 14 Higashino Lab. 提案手法 アルゴリズム 1. フローの経路候補設定 2. 人口密度を用いた経路決定 人口密度: 位置データを用いて歩行者数をカウント 3. 移動方向を用いたフロー算出 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 15 Higashino Lab. 提案手法 - 滞留者の算出 1. セル内に現れる歩行者を一 定期間カウント 滞留 3 2. 基準となる速度 v を設定し, v 以下の速度で移動する人 を滞留者として取り出す ここでは v = 20cm/s と設定 計測期間における滞留者の 平均人数をセル毎に表示する 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 16 Higashino Lab. 提案手法 - 経路の決定 (貪欲法) 1. 経路一本を歩行者一人の移動 に対応させ,密度の高いセル を通る経路候補を経路として 決める 人口数 0 以下のセルを通る経路 は可能な限り選ばない 歩行者は経路上の移動中,各セ ルで 1 度観測されると仮定 2. 決定した経路を取り除いた密 度を考え, 1. の動作を繰り返 し,全てのセルの人口数を 0 に近づける 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 17 Higashino Lab. 提案手法 アルゴリズム 1. フローの経路候補設定 2. 人口密度を用いた経路決定 3. 移動方向を用いたフロー算出 移動方向: 位置データの差分を用いて判定 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 18 Higashino Lab. 経路の向きの算出方法 1. 経路が通る各セル内の歩行 者の数を移動方向別にカウ ント 2. 歩行者の移動方向割合に基 づいて、経路の向きの割合 を決定 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 19 Higashino Lab. 実測データの例 1 セルからセルへの移動方向と流量をフローで表現 矢印の方向: 人流の向き 矢印の太さ: 人流の流量 滞留数: 計測時間の平均値 朝 10 分間の計測の平均 1 分間のフロー 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 20 Higashino Lab. 実測データの例 2 矢印の方向: 人流の向き 矢印の太さ: 人流の流量 滞留数: 計測時間の平均値 夕方 10 分間の計測の平均 1 分間のフロー 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 21 Higashino Lab. 人流モデルの可視化 2011/7/7 生成したフローに基づく,歩行流の再現 (MobiREAL Animator を利用) DICOMO2011シンポジウム 22 Higashino Lab. 性能評価 (1/2) 擬似的にシナリオデータを生成して提案手法のモデ ル化を評価 シナリオデータ 実測データをモデルに歩行者を発生させる 全歩行者に対して完全な行動追跡ができていると仮定 2011/7/7 ここでは,朝のデータを用いる シナリオで発生させた歩行者の移動と,提案手法で生成した人流 モデルを比較 マップの大きさ,出入口セルの位置は実験データと同じ DICOMO2011シンポジウム 23 Higashino Lab. 性能評価 (2/2) 入口から出口まで移 動する歩行者を発生 シナリオデータをモ デル化し,比較 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 矢印の向き: 歩行者の移動方向 矢印の太さ: 歩行者数に対応 OD 別の流量 (Origin-Destination) 歩行者の経路 24 Higashino Lab. 評価結果 (OD 別流量の比較) 起点から終点へ向かう歩行者人数を比較 シナリオデータ シナリオデータで発生 させた歩行者の人数と モデル化によって生成 されるフローの流量を 比較する. 10人発生 生成モデル 流量: 8 右図の例では,再現率 は 80 % と表現する 全体の再現率は平均 80.69 % 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 25 Higashino Lab. 評価結果 (移動経路の比較) OD が一致する歩行者が通ったセルを比較 シナリオデータ 生成モデル シナリオデータで発生 させた歩行者が通るセ ルとモデル化によって 生成されるフローが通 るセルを比較する. 右図の例では,一致率 は 67 % と表現する 全体の一致率は平均 80.79 % 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 26 Higashino Lab. モデル化の失敗について 複数の移動経路が重なりあってできた人口密度分 布から,元の経路を算出する戦略に問題がある 現在の戦略: 「人口密度の高いセルを優先して繋いで経路選択」 モデル化 元の経路と違 う経路 残る人口密度 分布に影響 シナリオデータ 2011/7/7 生成モデル DICOMO2011シンポジウム 27 Higashino Lab. 改善案 グリーディ法の戦略の改善 経路の選び方が,全セルの人口密度を 0 に近づけるため の最適解から遠い 戦略を改善することで,最適解へ近づける LRS による行動追跡データの利用 提案手法では,経路選択時に歩行者の軌跡を活用してい ない 2011/7/7 行動追跡データを参照して正しい経路を選ぶ DICOMO2011シンポジウム 28 Higashino Lab. まとめ 広場における人流のモデル化手法の提案 性能評価 レンジスキャナを用いた計測 完全な行動追跡が可能でなくてもモデル化可能 擬似生成したシナリオを平均 81 % の精度でモデル化 今後の課題 2011/7/7 モデル化精度の向上 より少ない LRS での計測を実現 DICOMO2011シンポジウム 29 Higashino Lab. 補足 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 31 Higashino Lab. 生成モデルの使用例 100 人 通過 100 人 通過 通路と違い,入出量だけ では歩行者の移動の偏り はわからない サイネージによる情報提 供では,各個人を特定し て動線を得る意味が薄い 人流モデルを利用 100 人 通過 2015/10/1 サイネージ設置位置 歩行者群への避難誘導 100 人 通過 32 Higashino Lab. 関連研究 (1) “複数のレーザレンジスキャナを用いた歩行者トラッキン グとその信頼性評価”, 中村克行(東京大学) 他, 2005 歩行者のトラッキング ――― 精度 81 % 歩行者の検出 ――― 精度ほぼ 100 % レンジスキャナ 6 台 20m * 30m が計測領域 (柱等はなし) “レーザスキャナを用いた群衆の追跡および流動の可視 化”, 帷子 京市郎(東京大学) 他, 2007 2011/7/7 歩行者の OD 評価 ――― 精度 81.2 % レンジスキャナ 8 台 計測領域 60m * 30m DICOMO2011シンポジウム 33 Higashino Lab. 関連研究 (2) 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 34 Higashino Lab. 性能評価 (2/2) 2015/10/1 特別研究報告 朝の実測データが モデル 矢印に添うように歩 行者が移動 提案手法を用いて フローを作成し,モ デル化 シナリオデータと生 成モデルの流量を 比較し,再現率を 評価 35 Higashino Lab. 評価結果 セル単位での処理による誤認識の発生 全体の再現率は平均82.93% 2015/10/1 特別研究報告 36 Higashino Lab. まとめ 地下街における人流のモデル生成手法の提案 性能評価 レンジスキャナを用いた計測 完全なトラッキングでなくてもモデル化可能 仮想シナリオに対し,82.9 % の精度で正しく再現 今後の課題 人流モデル化の精度の改善 避難誘導のシミュレーションシステムの構築 2015/10/1 特別研究報告 37 Higashino Lab. 性能評価 その2 (1/2) 夕方の実測データをモデルにしたシナリオデータ 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 38 Higashino Lab. 性能評価 その2 (2/2) セル単位での処理による誤認識の発生 全体の再現率は平均82.90% 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 39 Higashino Lab. まとめ 地下街における人流のモデル生成手法の提案 性能評価 レンジスキャナを用いた計測 完全な行動追跡が可能でなくてもモデル化可能 仮想シナリオに対し,平均 82.9 % の精度で正しく再現 今後の課題 2011/7/7 セルの設定の改善 人流モデル化の精度の改善 DICOMO2011シンポジウム 40 Higashino Lab. 不必要になったスライド 2011/7/7 DICOMO2011シンポジウム 42 Higashino Lab. サイネージ設置位置の検討 100 人 通過 100 人 通過 通路と違い,広場では 入出量の計測だけで は,設置位置を検討で きない 100 人 通過 2011/7/7 100 人 通過 人の移動に偏りがある かも知れない レンジスキャナでは, 更に立ち止まっている 人も検出可能 DICOMO2011シンポジウム 混雑回避等の目的には 重要な情報 43 Higashino Lab. 評価結果 出入口とセルの位置関係による誤認識の発生 全体の再現率は平均82.93% 2011/7/7 概ね正しく再現できているが,改善の必要性あり DICOMO2011シンポジウム 44
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