プラズマ工学 九州工業大学電気工学科 趙孟佑 No.6 〜荷電粒子の基礎過程〜 Rate方程式 換算電界とエネルギー 1 Rate方程式 箱の中の電子、イオン、中性ガスの密度は一様。 しかし、時間によって変化する(非定常) 電子、イオン、中性ガスの密度の時間変化を調べる • 一様(uniform):場所によって値が変わらない • 定常(constant):時間によって値が変わらない 2 衝突電離と再結合 collide 電離衝突 fast electron 3体再結合 electron (-) proton (+) neutron 3 光電離と放射再結合 light light electron (-) 光電離 放射再結合 proton (+) neutron 4 Rate方程式 電子 イオン 中性粒子 電離衝突 A+e→A++e+e ↗ ↗ ↘ 光電離 A+hν→A++e ↗ ↗ ↘ 放射再結合 A++e→A+hν ↘ ↘ ↗ ↘ ↘ ↗ 3体再結合 A++e+e→A+e • 中性粒子:原子やイオン • 電子・イオンの増加は中性粒子の減少に等しい vice versa 5 Rate方程式 dne dt Se Le dn i S L i i dt dnn dt Sn Ln 電子密度 正イオン密度 中性粒子密度 S:単位時間・単位体積あたりの増加する反応の回数 L:単位時間・単位体積あたりの減少する反応の回数 6 Rate方程式(電子の増加) • 電子は電離により増加する – 電子1個が単位時間あたりに電離衝突をする数 ion nn ion ve 標的の中性粒子の密度 電離衝突断面積 電子のスピード 単位時間にσionveという体積を進むが、そこにある標的粒子の数 で決まる ion ve ion (v)vg(v)dv 0 g(v)はスピードの分布関数 (2回目の講義を参照) m g(v)dv 4 2 T 3/2 2 mv v2 exp dv 2 T 7 マクスウェル分布の時 Rate方程式(電子の増加) ion ve ion (v)vg(v)dv 0 σionは電子のスピード(エネルギー)で値が違う 電子もまちまちのエネルギーをもつので、平均を とらないといけない <σionve>を電離の速度係数と呼ぶ 単位体積・単位時間あたりの電離衝突の総数 電子密度 Sec neion nenn ion ve (1) 8 Rate方程式(電子の増加) • 単位体積・単位時間あたりの光電離で生まれる電 子の総数 Se p ap nn (2) 中性粒子の密度 光電離係数 ap:中性粒子一個が単位時間に光を受けて電離する確率(1/s) 光(但し紫外線より波長が短い)の強度に比例 9 Rate方程式(電子の増加) • 体積V中の電子が時間dtの間に増える総数 dNe d neV dneV • 体積V中の電離衝突の総数と光電離の総数の和 S ec Se p Vdt • 両者を等しいとおくと dneV Sec Se p Vdt dne Sec Se p dt (3) 10 Rate方程式(電子の減少) • 電子は再結合により減少する – 電子1個がイオンと出会って放射再結合をする数 recomb n rr ve i 標的の正イオンの密度 放射再結合衝突断面積電子のスピード •単位体積・単位時間あたりの放射再結合衝突の総数 Ler nerr neni rr ve (4) 教科書ではneで置き換え(プラズマは準中性なので) 11 但し、負イオンを考慮したりして、厳密にやろうとすると正イオン密度で考える Rate方程式(電子の減少) • 単位時間・単位体積あたりの3体再結合衝突の起こる回数 Le3 n n 2 ei e i (5) 電子1個とイオン1個が出会う確率 ∝(電子の数)×(イオンの数)∝neni 電子2個とイオン1個が出会う確率 ∝(電子の数)2×(イオンの数)∝ne2ni αeiは再結合係数(単位はm3s-1) 12 Rate方程式(電子の減少) • 体積V中の電子が時間dtの間に減る総数 dNe d neV dneV • 体積V中の付着衝突の総数と放射再結合衝突の総数と3体再結合 衝突の和 Ler Le3 Vdt • 両者を等しいとおくと dneV Ler Le3 Vdt dne Ler Le3 dt (6) 13 Rate方程式 • 電子の増減を両方考えると、(3)式と(6)式から dne Sec Sep Ler Le3 dt (1),(2),(4),(5)式から dne nenn ion ve a p nn ne ni rr ve ei n e2 ni dt 電離衝突 光電離 放射再結合 3体再結合 14 Rate方程式 • その他の種の増減も考慮して、 dne 2 dt nenn ion ve a p nn ne ni rr ve ei n ni dni 2 n n v a n n n v n ni e n ion e p n e i rr e ei dt dnn 2 dt nenn ion ve a p nn neni rr ve ei n ni e e e 電離衝突 光電離 放射再結合 3体再結合 15 Rate方程式(簡単な形) • 負イオンがなくて、正イオンが一種類しかないとき ne=ni+ dne 2 3 n n v a n n v n e n ion e p n e rr e ei e dt dnn n n v a n n 2 v n 3 e n ion e p n e rr e ei e dt この連立微分方程式をne,nnの初期条件から解けば、 ある時間における電子、中性粒子の密度がわかる。 普通は、コンピュータを使って数値計算(ルンゲクッタ法等)で解く 16 弱電離プラズマと強電離プラズマ エネルギー損失(光、熱) 中性ガス 電離なし 中性ガス 電離>再結合 エネルギー注入 t=0 中性ガス 電離=再結合 エネルギー注入 t=∞ どこかの時点で必ずエネルギーの出入りが平衡にな り、電離と再結合も平衡して定常状態になる 17 弱電離プラズマと強電離プラズマ • 強電離プラズマ – プラズマ密度が中性ガス密度並かそれ以上にあるもの • アーク放電 • 高度数1000km以上の宇宙 • 核融合 • 弱電離プラズマ – プラズマ密度が中性ガス密度よりも遥かに小さい • 蛍光灯 • 電離層(高度数1000km以下) – 構成する各粒子の温度は必ずしも等しくない • 電子温度>イオン温度≈中性ガス温度 – 電子の衝突相手は普通、中性ガス粒子 18 弱電離プラズマ中の移動度 衝突 外部電界E t 弱電離プラズマに外部電界をかけた時の電子の軌道 • 弱電離プラズマ中に外部電界をかけると、中性ガスとぶつかり ながらも電界と逆方向に動く • 衝突すると、それまでにもっていた速度を全てなくすと仮定する と、衝突時の速度は eE v t me 19 弱電離プラズマ中の移動度 外部電界E 衝突 t eE v t me 衝突と衝突の間の時間は衝突周波数の逆数 eE vd me c 電子の移動速度 (ドリフト速度) 20 弱電離プラズマ中の移動度 eE vd me c e e me c 電子の移動度 vd e E • 衝突周波数はガス密度nnに比例するので e e e E vd E E me c menn ve me ve nn 21 弱電離プラズマ中の移動度 e e e E vd E E me c menn ve me ve nn (7) E/nnを変えても、それほど変わらない • 電子の移動速度はE/nnに比例する E nn 換算電界or実効電界(単位はVm2) Reduce Electric Field 弱電離プラズマの放電応用の分野でよく使われる -21Vm2 -21 2 1Td=10 10 Vm を1タウンゼントという 22 弱電離プラズマ中の移動度 6 105 5 105 N 5 2 3 105 d v [m/sec] 4 10 2 105 SF 6 1 105 0 0 100 200 300 E/n (Td) n 400 500 23 エネルギー平衡 衝突と衝突の間に電子が電界から得るエネルギー 単位時間に得るエネルギー=速度x力 vd F vd eE ee E 2 一回の衝突によって電子が失うエネルギー 3 kTe 2 κは損失係数。弾性衝突の時 単位時間に失うエネルギー 2me M 3 kTe c 2 平衡している時、 両者は等しい 24 エネルギー平衡 3 e e E kTe c 2 2 (8) より kTe 1 1 E e 2 3 nn (9) 25
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