第Ⅱ部 帝国主義

第Ⅱ部 帝国主義
最初に社会学的用語をまとめて確認しておこう。
1.旧帝国と近代国民国家
2.資本主義の最高段階としての帝国主義
3.生権力論
4.目的論的思考と過程的思考
5.身分制的な戦争から総力戦体制へ
6.モッブ
1 旧帝国と近代国民国家
境界が曖昧
→ 領土概念が不在
旧帝国
(WWⅠ当時)
オーストリア=ハ
民族間や身分間、そ
ンガリー帝国
して時間や空間など
ロシア帝国
の諸領域まで含めて、
さまざまな障壁が設 オスマン=トルコ
帝国
けられ、世界は均質
中華帝国
に広がっているわけ
ではなかった。
(ドイツ第2帝国)
・ 宗教によってゆるやかに網
をかけ、統一を保つ。
権力は被支配民の
すべてに及ばない。
・ 農業生産を基本に成り立つ。そのうえで、広大な領土内の交通・交易
によって得られた富を王権に集中させ、権力を強大化していく。
近代的国民国家
(近代国家、国民国家、主権国家、
ネイション・ステート・・・など)
2
資本主義の最高段階としての帝国主義
資本の回転
共同体社会
自
然
資本主義 = 増殖する価値の運動体
(マルクス経済学における定義)
・ 旧帝国 = 前近代的秩序
・ 帝国主義 = 近代資本主義
の発展型
帝国主義
注
意
!
近代資本主義国家
植民地
植民地
植民地
植民地
資本主義が発展していくためには国内の市場/資源
獲得地だけでなく、海外にも植民地を必要とする。資本
主義は必然的に海外へむけて膨張し、そうした資本主義
諸国はやがて植民地争奪戦(世界の再分割)に突入して
世界大戦が勃発する。(レーニンの説)
3
生権力論
(フーコー)
王
植福
民祉
地国
経家
営
伝統的な権力
近代的権力
「死なせるか、
生きたままかに
しておく権力」
「生きさせるか、
死のなかへ廃棄するか」
雑草を抜くように殺す
植物を育てるように生かす
(要らなくなったら捨てる)
4
目的論的思考と過程的思考
過程的思考
目的論的思考
なぜ、なんのためにといった
<<問い>>へとむけて、その答
えを出すために積み重ねられ
る思考のパターン
目的や終わり(=エンド)がある
すべては過程であり、終わりはなく、
したがってこの世界に目的などない。
存在するのは(=エンドレスな)過程だ
けである。できること、そして必要なの
は、その過程をすすめること。
↓
では、どんな過程が存在するのか?
第
↓
Ⅲ
自分のなかに目的をもたないニヒリス 巻
ティックな精神がめざすものは何か?
5 身分制的な戦争から総力戦体制へ
身分制時代
の戦争
近代以前、多くの社会は身分制だった。
そのとき戦争は基本的には戦士階級がするものであ
り、平民は駆りだされることがあるにせよ、基本的には
ノータッチだった。
そして敵地の平民はやがて支配すべき存在であり、
恨みを買うことを怖れ、攻撃しないのが原則だった。
総力戦 ・・・
国民の科学力・技術力・経済力・身体・教育・文化・
医療・・・など、すべての力を総動員する戦争形態
軍事力
国民の生産力
軍事力
国民の生産力
軍事力は、その国の科学力やその科学力を兵器に転化し、それを大量生
産する国民の経済力によって左右されるようになった。だから、敵国を叩き
潰すためには相手国の生産力そのものをそがねばならない。
(空襲・・・そしてのちの原爆へ)
国民国家の登場/経済社会化 → 戦争形態の変容
なぜ第1次世界大戦はあれほど巨大な
災禍を生み出したか?
なぜ人権や福祉の思想が普及しはじ
めた近代20世紀にあれだけの戦争が
起きたのか?
→ 旧帝国は版図は大きくても「巨象のように」動きが鈍かった。
資本主義のような膨張の原理をもたず、
戦士階級だけの「局地戦」であり、兵器の大量生産も不十分で、
どこかに歯止めがかかっていた。
だが、近代国家は国民の「生」と「生産」を重視する。
そして初期の荒々しい資本主義は、生と生産のために帝国主義化した。
帝国主義による世界の再分割、
「われわれに最大の生を!」の論理のエスカレート、
そして国民の生産力をすべて注ぎ込んだ総力戦の登場によって
世界大戦は未曽有の規模へ発展した。
6
モッブ
「あらゆる階級から
こぼれ落ちた脱落者たち」
・・・・・・・・・・・・・・・
ムラ共同体の
伝統からこぼ
れ落ち・・・
従来の社会モデル
善悪や好悪をべつに
して、いずれも秩序は
安定する。
都市労働者
としても組織
されず・・・
人間の行動を律するあらゆるものから
切断され、たしかに一方では自由だが、
おのれが確信するものを何も持たず、そ
して互いに孤立したまま、<<なんでもあり
>>の没倫理性を特徴とする、「不定形な
<<根なし草>>たちのかまたまり」がモッブ
(しばしば「大衆」と訳される)である。
大衆社会論の系譜
オルテガ(大衆社会のエリート主義的批判)
フロム( 〃 民主主義的批判)
リースマン(代表作『孤独な群衆』)…etc
『全体主義の起源』におけるモッブの位置
「モッブは(当時の)時代精神だった」
他者との結びつきを失って孤立した存在が大量に出現した・・・まるで彼ら
も工場によって大量生産されたようだ。彼らもまた<<故郷喪失者>>である。
公共意識を欠き、私的な利益・感情だけを暴走させる。
(枯れ草は燃えやすい・・・モッブ∽フーリガン)
帝国主義の尖兵
資本の破壊力 / モッブの破壊力
故郷喪失者が故郷喪失者を排撃する / 自身をゴミと思う者が他者をゴミ扱いする