日本磁気共鳴医学会 2009.9 教育講演 中枢神経① 脳血管障害 脳梗塞急性期を中心に 荏原病院放射線科・総合脳卒中センター 井田正博 1st Neuroimaging Refresher Club 脳血管障害:脳梗塞急性期を中心に Outline 画像診断 • 出血の否定 – 脳梗塞以外の可能性 • 脳梗塞の診断 • 原因検索 – – – – 頭蓋内動脈 頸動脈plaque 左心耳血栓 椎骨動脈解離 • 合併症の診断 – – – – 腎梗塞、大動脈瘤、ASO 悪性腫瘍 深部静脈血栓、肺動脈塞栓 肺炎など 脳梗塞超急性期の診断 • 動脈閉塞部位 – 病変の血管支配 • 非可逆的組織障害の検出 • 灌流異常の検出 – Diffusion-perfusion mismatch • 循環予備能の評価 – rCBF, rCBV • 病型・病因の診断 – 治療法選択 超急性期脳虚血のMR診断のポイント • 超急性期脳虚血(発症24時間以内)? • できるだけ早期にMRを施行,可逆的なうちに診断→治療 1.拡散強調画像 既に非可逆的な虚血領域(→梗塞)の診断 2.灌流異常領域の診断 1.2.より、拡散異常<灌流異常に可逆的な可能性がある虚血領域 (treatable penumbra)が存在する - 出血を否定するためにMRに先行してCTを施行する必要はない - T2WI・FLAIR:発症直後の出血は診断可能 - 時期を逸した再灌流療法は脳浮腫の増悪や出血性梗塞をきたす 血栓溶解療法の適応 diffusion-perfusion mismatch ① ② ③ ④ 主幹部~皮質枝 閉塞 diffusion-perfusion mismatch ⑤ ⑥ ⑦ 穿通動脈閉塞 (ラクナ梗塞) diffusion-perfusion mismatch 灌流異常域( TTP または MTT) 拡散異常域 脳梗塞超急性期の画像診断 • 動脈閉塞部位 – 病変の血管支配 • 非可逆的組織障害の検出 • 灌流異常の検出 – Diffusion-perfusion mismatch • 循環予備能の評価 – rCBF, rCBV • 病型・病因の診断 – 治療法選択 • 臨床症状 – 発症時間、発症様式 – 神経症状、NIHSS – 背景因子 • • • • • • • • 心房細動(脈を診る) 糖尿病 高脂血症 高血圧 喫煙 脳血管障害既往歴 職業 D-dimer 脳卒中strokeとは NINDS CVD-III (1990) 脳卒中病型分類 脳出血 クモ膜下出血 動静脈奇形からの頭蓋 内出血 4. 脳梗塞 b. 1. 2. 3. 脳梗塞の分類 a. 発症機序による分類 ① 血栓性 ② 塞栓性 ③ 血行力学的 b. ① ② ③ ④ 臨床カテゴリーによる分類 アテローム血栓性 心原性塞栓 ラクナ その他 脳梗塞の分類:臨床病型と発症機序をあわせて 脳梗塞は単一病態ではない! *同一機序、病態 臨床病型 発症機序 病態・原因 塞栓性梗塞 塞栓性 心原性(心房細動→左心耳血栓) 動脈原性*(頸動脈plaque破綻) 奇異性(右左シャント) アテローム血栓性 血栓性 主幹部から皮質枝レベル 塞栓性* plaque破綻→遊離→末梢塞栓 血行力学的 主幹動脈狭窄~閉塞→灌流圧↓ 穿通動脈梗塞 細小動脈硬化 穿通動脈細動脈硬化(ラクナ梗塞) (広義のラクナ梗塞) 血栓性 起始部血栓による分枝粥腫型梗塞 塞栓性 微小塞栓 主幹動脈に一過性閉塞→再開通 血行力学的 主幹動脈狭窄~閉塞 凝固異常 悪性腫瘍合併など 脳梗塞の分類:臨床病型と発症機序をあわせて 臨床病型 発生機序 心原性脳塞栓症 28% 塞栓性 アテローム血栓性 血栓性 塞栓性(動脈原性) 血行力学性 34% ラクナ梗塞 32% (穿通動脈梗塞) *小林祥泰編 脳卒中データバンク 2009 中山書店 細小動脈硬化 血栓性 微小塞栓 血行力学性 凝固異常 塞栓症 血栓症 皮質を含む 梗塞 側副血行 白質優位の 梗塞 心原性 塞栓 アテローム (粥腫)形成 • • • • 頭蓋外からの塞栓子による閉塞 側副血行ができにくい、突発完成 重篤な意識障害、失語、片麻痺… 高度浮腫 / 再開通→出血性梗塞 • • • • 急速発症→段階的進行 側副血行ができやすい 一過性脳虚血発作(TIA)が前駆 神経学的には重症ではない 塞栓症 皮質を含む 梗塞 1. 心原性 2. 動脈原性 心原性 塞栓 – – 心原性>動脈原性塞栓子 心原性>動脈原性梗塞 3. 奇異性 – 右左 shunt • • • • 頭蓋外からの塞栓子による閉塞 側副血行ができにくい、突発完成 重篤な意識障害、失語、片麻痺… 高度浮腫 / 再開通→出血性梗塞 心原性塞栓症 Cardioembolism 皮質を含む、支配域、境界明瞭 • 非弁膜性心房細動 – 高齢者 – 慢性 or 発作性 (pAf) – 左房・左心耳に血栓形成 • 大きな塞栓子が頭蓋内動脈 分岐部に閉塞をきたす。 • 突然発症、側副血行発達不 良、重篤な症状 – 意識障害、片麻痺 側副循環発達不良 心原性 塞栓 心原性塞栓症 Cardioembolism 皮質を含む、支配域、境界明瞭 • 動脈支配域に一致した境界 明瞭な梗塞。 • 早期に信号変化 • 灰白質優位 →血管性浮腫は白質優位 • 塞栓子が自然溶解することも – 発症直後に症状が改善すること も • 破砕塞栓子が皮質枝末梢に 再塞栓→局所神経症状が出 現することがある。著明な血 管性浮腫 • 出血性梗塞 • 再開通が増悪因子 側副循環発達不良 心原性 塞栓 アテローム血栓性(血栓性、境界領域、塞栓性) アテローム血栓性Athrothrombotic 境界領域梗塞Watershed 動脈原性塞性artery-to- infarction infarction artery infarction 皮質含む、末梢 域もしくは境界域 プラーク潰瘍形成、 内出血、破綻 アテローム斑 (プラーク)形 成→狭窄 • 白質優位の梗塞 高度狭窄+ 灌流圧低下 • 血管支配境界域(分 水嶺領域)の梗塞 フィブリン血栓 遊離→塞栓 • 末梢の皮質を含む 小梗塞 Virchow’s Triad 1. 血液成分の異常 2. 血管壁の異常 3. 血流の異常 • Risk factors – 高脂血症、耐糖能異常、 高血圧、喫煙… • 血管内皮損傷を受ける と、白血球が内皮下に 侵入 • マクロファージとなって 酸化LDLを取り込むこ とにより、壁の中にプ ラーク(粥腫、脂質)を 形成する。 アテローム血栓症.jp http://www.atherothrombosis.jp/quickguide/q3.php 高脂血症オンライン http://sageru.jp/LDL/hc01/hc01_6.html Virchow’s Triad 1. 血液成分の異常 2. 血管壁の異常 3. 血流の異常 ずり応力=血液粘度x速度勾配 t = m ・ dV / dr • プラークの破綻 – 血小板に富む血栓が形成される(血小板血栓)→内腔狭小化 • 血栓は血管内腔に向かって増大→血管内腔の狭小化に伴う血流速度 増大や血液粘度の影響(高ずり応力)を大きく受けながら成長。 アテローム血栓症.jp http://www.atherothrombosis.jp/quickguide/q3.php 高脂血症オンライン http://sageru.jp/LDL/hc01/hc01_6.html ラクナ梗塞 穿通動脈 • • • • 高血圧 穿通動脈硬化(Lipohyalinosis) 基底核、視床 症状はさまざま • 5-15mm程度の小梗塞 • 穿通動脈領域梗塞 • 終末動脈で側副血行は発 達しない • 症状は比較的軽微 – 前脈絡動脈閉塞では片 麻痺 • 出血性梗塞はない。 – Microbleeds はありえる 高血圧性脳血管症 Hypertensive angiopathy 1. 小動脈硬化(ヒアリノーシス・リポヒアリノーシス) – – 小動脈直径100m~300m)の内膜、中膜の肥厚と硝子化 小動脈硬化に脂質を貪食したマクロファージ浸潤を伴う 2. 細動脈硬化 – 細動脈直径以下の内膜、中膜の肥厚と硝子化 3. フィブリノイド壊死、血漿動脈壊死 4. 小動脈瘤 – – 小動脈瘤破綻→高血圧性脳出血 小動脈瘤血栓化→器質化→血管結節瘤 ラクナ梗塞 分枝粥腫型梗塞 穿通動脈 アテローム (粥腫)形成 • • • • 高血圧 穿通動脈硬化(Lipohyalinosis) 基底核、視床 症状はさまざま • 糖尿病、高脂血症、喫煙… • 主幹動脈~穿通動脈分岐部のアテ ローム→穿通動脈閉塞 • ラクナより大きな梗塞 • 治療はアテローム血栓症 分枝粥腫型梗塞 Branch-atheromatous disease (BAD) • 穿通動脈分岐部のアテローム 血栓性機序→穿通動脈起始部 閉塞 • 穿通動脈走行に一致した長い 梗塞 – 高血圧性ラクナ梗塞より大 きい。 • 好発部位 – MCA→外側線条体動脈 – 脳底→脳幹穿通動脈 • 糖尿病、高脂血症、喫煙… • 治療はアテローム血栓症 穿通動脈起始 部の主幹動脈 にアテローム (プラーク)形成 →穿通枝閉塞 • ラクナより大きな梗塞 • ~48時間 徐々に神経症状 が増悪することがある。 ラクナ梗塞 高血圧性脳出血 穿通動脈 • • • • 高血圧 穿通動脈硬化(Lipohyalinosis) 基底核、視床 症状はさまざま 穿通動脈 • • • • • 高血圧 穿通動脈硬化(Lipohyalinosis) 微小動脈瘤内破綻→実質内出血 基底核、視床 ラクナ梗塞よりは重篤 脳梗塞:臨床病型の特徴 心原性塞栓症 (CE) アテローム血栓症 (ATI) ラクナ梗塞 閉塞部位 主幹部から皮質枝分岐前 主幹部から皮質枝分岐後 穿通動脈 TIA頻度 ATIよりは低い 高い まれ 発症形式 突発完成 急性、段階的進行 急性だが軽微 Risk factors 心房細動 HL, HC, DM, AT 高血圧 側副血行代償 生じにくい 生じやすい なし 梗塞伸展範囲 皮質を含む支配域 皮質下~深部白質 穿通動脈限局 多発性 ありうる ありうる 同時はない 意識障害 高率、重度 低率、軽度 なし~一過性 皮質症状 ++ + - 再開通 高率 完全再開通なし なし 血管性浮腫 重篤化あり 軽微 なし 出血性梗塞 急性期に重篤 軽微 なし • 境界領域梗塞、分枝粥腫型梗塞はATI HL:高脂血症、HC:高コレステロール結晶 DM:糖尿病、AT:動脈硬化 脳梗塞の病因・臨床分類 心原性塞栓症 28% • 左房左心耳内血栓 • 心房細動 • 内頸動脈から中大脳動脈M1M2 粥状硬化(アテローム硬化) 34% • 大動脈~内頸動脈~中大脳動脈近位側 • 椎骨脳底動脈~後大脳動脈近位側 • 高脂血症、糖尿病 • アテローム血栓性梗塞 高血圧性血管症 32% • 穿通動脈 • 高血圧 • ラクナ梗塞 • (高血圧性脳出血) 大動脈解離 • Stanford type A • 総頸動脈への解離進展 による内頸動脈閉塞→ 脳梗塞 • 右頸動脈>左頸動脈 • 左片麻痺、失語 • 高血圧、胸部痛 • 血栓溶解療法は禁忌 • 大動脈解離 Stanford 分類 • 解離の進展範囲 脳梗塞超急性期の画像診断 • 動脈閉塞部位 – 病変の血管支配 • 非可逆的組織障害の検出 • 灌流異常の検出 – Diffusion-perfusion mismatch • 循環予備能の評価 – rCBF, rCBV • 病型・病因の診断 – 治療法選択 • 拡散画像 – 拡散強調画像 – ADC • Early CT sign 超急性期梗塞:Early CT sign • 灰白質濃度↓、灰白質/白質コントラスト↓ 細胞性浮腫>>血管性浮腫 非可逆的 ≒ DWI高信号 島回皮質の濃度↓ 1. – Loss of the insular ribbon 基底核の輪郭の不明瞭化 2. – Obscuration of the lentiform nucleus 灰白質/白質境界の不明瞭化 3. – Loss of gray-white matter differentiation 脳回の腫脹、脳溝の消失 4. – Effacement of the cortical sulsi 閉塞血管が高吸収域 5. – Hyperdense sign 超急性期梗塞: Early CT sign • 3時間以内の31%に検出 可能 – Patel SC. JAMA 2001;286:2830-2838 • 中大脳動脈閉塞5時間以 内の81%に検出可能 – von Kummer R. AJNR 1994;15:9-15 • しかし、専門医でも熟練し ていないと診断が難しい – – – Hacke W. Lancet 1998;352:1245-1251 Schringer DL. JAMA 1998;279:1293-1297 Grotta JC. Stroke 1999;30:1528-1533 • DWIの方が、より早期に確実 に細胞性浮腫を検出する。 • Fiebach JB. Stroke 2002;33:2206-2210 拡散強調画像と超急性期脳虚血 超急性期虚血の検出率が 最も高い CTやT2WIよりも早期に検出 可能 Sensitivity; 81-100% Specificity; 100% – Gonzalez RG Radiology 1999;210:155-162 – Fiebach JB. Stroke 2002;33:2206-10 SE-EPI DWI b=1000–1200 sec/mm2 高速撮像法 秒単位以下の撮像 救急にも対応 拡散強調画像とADC画像 左中大脳動脈閉塞急性期 拡散 拡散強調画像 ADC(画像) 病態 大 低信号 高値(高信号) Gliosis, 浮腫 小 高信号 低値(低信号) 梗塞超急性期 拡散異常 ≦ 最終梗塞 ≦ 灌流異常 Diffusion-Perfusion Mismatch 拡散強調画像による超急性期脳虚血診断 • 発症早期(約30分前後)より高信号 (ADC低下)を呈しうるが、症例に より高信号の出現時間は、虚血の 強度や病態により様々である。 • 虚血強度が強いほど早期に出現 虚血強度 側副血流の程度 発症1時間後 塞栓症>血栓症>ラクナ 発症24時間以内は経時的に増大しう る(→最終梗塞)。 Baird AE. Ann Neurol 1997;41:581-589 Beaulieu C. Ann Neurol 1999;46:568-578 発症4時間後 拡散強調画像による超急性期脳虚血診断 • 発症早期(約30分前後)より高信号( ADC低下)を呈しうるが、症例により高 信号の出現時間は、虚血の強度や病態 により様々である。 • 虚血強度が強いほど早期に出 – 虚血強度、側副血流の程度 – 塞栓症>血栓症>ラクナ • 発症24時間以内は経時的に増大しうる →最終梗塞 拡散強調画像による超急性期脳虚血診断 • 臨床的には、拡散強調画像高信号 の殆どは非可逆的で最終梗塞に至 る。 – TIAや再開通後で可逆的なことがある。 • 拡散異常領域よりも広い範囲で灌流 異常領域がある 拡散異常領域 Core • 拡散異常 ≦ 最終梗塞 ≦ 灌流異常 • Diffusion-Perfusion Mismatch • 拡散異常領域は最終梗塞の最小範 囲を示し、灌流異常領域は最大範囲 を示す 最終梗塞 灌流異常領域 Penumbra 急性発症の神経症状を有し… • DWIで高信号 • T2WIで信号変化なし • ADC低下 細胞性浮腫 脳梗塞超急性期 脳梗塞超急性期→非可逆的 • DWIで信号変化なし • T2WIで高信号 • ADC上昇 血管性浮腫 脳梗塞超急性期ではない。 PRES→可逆的 悪性腫瘍合併脳梗塞 • 多血管支配域に多発 • 2次線溶亢進マーカー • 凝固・線溶亢進状態 • 脳梗塞急性期にDdimer↑があるときは全 身の血栓化、凝固亢進 状態を考える。 – とくに悪性腫瘍 – 両側 – 前方+後方循環系 • 末梢領域(皮質を含む) • D-dimer高値 脳梗塞→悪性腫瘍のscreening 考察:D-dimer • D-dimerは2次線溶亢進 のマーカーで、凝固・線 溶亢進状態で上昇する。 • 2次線溶亢進をたすDIC や各種の血栓性疾患の 診断、病態把握、治療効 果判定の指標となる。 • 脳梗塞急性期にDdimer上昇があるときは 悪性腫瘍の合併を検索 する必要がある。 D-dimer Fibrinogen • 2次線溶亢進のマーカー – 安定化フィブリンのプラス ミンによる分解亢進 – 1次線溶亢進と2次線溶亢 進の病態との鑑別 Thrombin Fibrin monomer Plasmin Fibrin • 凝固・線溶亢進状態 – 2次線溶亢進をたすDIC や各種の血栓性疾患の診 断、病態把握、治療効果 判定の指標。 Plasmin FDP X D E Y FDP XmXy Y D-dimer D E 悪性腫瘍とD-dimer Blackwell K. Cancer 101, 2004:77-82. • • • • 転移のある結腸癌症例を対象 88%にD-dimer上昇、84%にCEA上昇 D-dimerは腫瘍量、転移数と相関 疾患の増悪時に84%にD-dimerの上昇が みられ、CEA上昇(71%)よりも良好に相関 する • D-dimerはCEAよりも結腸癌転移、予後と 相関する。 脳梗塞超急性期の画像診断 • 動脈閉塞部位 – 病変の血管支配 • 非可逆的組織障害の検出 • 灌流異常の検出 – Diffusion-perfusion mismatch • 循環予備能の評価 – rCBF, rCBV • 病型・病因の診断 – 治療法選択 • MRA – TOF効果消失 • T2WI/ PDWI – Flow void 消失 • FLAIR – Intra arterial signal • T2*WI & SWI • SWI – Susceptibility sign • 造影3DT1WI – 造影欠損 梗塞の病変部位 動脈支配による記載が重要 • 脳梗塞は脳動脈の閉塞 → 支配領域に病変をきたす。 • 病変の局在表記には、閉塞動脈、支配動脈を記載する 必要がある。 • さらに機能解剖を考えた梗塞の進展範囲の記載が必要。 血管支配領域からみた記載(例) 頭頂葉に → 中大脳動脈皮質枝領域に 後頭葉内側に → 後大脳動脈皮質枝領域に 基底核に → 中大脳動脈外側線条体動脈領域に 放射冠に → 中大脳動脈皮質枝からの髄質動脈領域に 視床に → 後大脳動脈からの視床膝状体動脈領域に 脳幹に → 橋傍正中動脈領域に 脳動脈支配領域 「よくわかる脳MR」より • 内頚動脈 – • ACA:前大脳動脈皮質枝 – • LSA:外側線条体動脈 PCA:後大脳動脈皮質枝 – • MSA:内側線条体動脈 MCA:中大脳動脈皮質枝 – • Acom:前脈絡動脈 視床への穿通動脈 椎骨脳底動脈 – – – – PB:橋枝 PICA:後下小脳動脈 AICA:前下小脳動脈 SCA:上小脳動脈 前方循環系と後方循環系 前方循環系 Anterior circulation 内頸動脈系 • 内頸動脈 • 前大脳動脈 • 中大脳動脈 – 外側線条体動脈 • (後大脳動脈) 後方循環系 Posterior circulation 椎骨脳底動脈系 • 椎骨動脈 – 後下小脳動脈PICA • 脳底動脈 – 前下小脳動脈AICA – 橋枝 – 上小脳動脈SCA • 後大脳動脈 – 視床への穿通動脈 皮質枝(半球枝)と穿通枝 Hemispheric arteries & perforating arteries (branches) 皮質枝 hemispheric a. • 脳表のくも膜下腔を走行 する。 • MRA で描出される. – ACA . MCA 、 PCA 心原性塞栓症 アテローム血栓症. 穿通枝 perforating artery • 主幹動脈、皮質枝から直 接分岐し脳実質内を穿通 し、脳組織深部に到達. – 高血圧→血管内皮障害。 ラクナ梗塞 分枝粥腫型梗塞 境界領域梗塞 脳動脈:血管支配(皮質枝と穿通枝) 前方循環系と後大脳動脈 前方循環系 皮質枝 穿通枝 内頸動脈 (ACA, MCA, PCA) 前脈絡動脈 anterior choroidal a. 側頭葉前半内側、内包後脚 前大脳動脈 大脳半球内側、前2/3 内側線条体動脈 medial striate a. 尾状核頭部 中大脳動脈 大脳半球外側 外側線条体動脈 lateral striate a. 基底核、深部白質 後方循環系 皮質枝 穿通枝 後大脳動脈 側頭葉後半~後頭葉内側 視床・中脳への穿通枝 脳底動脈 小脳上部外側(SCA, AICA) 中脳・橋・中小脳脚への穿通枝 椎骨動脈 小脳内側下面(PICA) 延髄への穿通枝 脳梗塞超急性期の画像診断 • 動脈閉塞部位 – 病変の血管支配 • 非可逆的組織障害の検出 • 灌流異常の検出 – Diffusion-perfusion mismatch • 循環予備能の評価 – rCBF, rCBV • 病型・病因の診断 – 治療法選択 • MRA – TOF効果消失 • T2WI/ PDWI – Flow void 消失 • FLAIR – Intra arterial signal • T2*WI & SWI – 動脈内低信号 • 造影3DT1WI – 造影欠損 – 動脈解離の診断 Time-of-flight効果 Flow related enhancement • 流速に比較して TR が短い場合 • 縦磁化が十分に 回復していない • 2回目以降も信号 が減弱する 井田正博 MRアンジオグラフィー 脳神経外科エキスパート 脳動脈瘤 中外医学社 High-velocity signal loss • MR 信号が発生するた めには、90°pulse と 180°パルスの両方を受 けている必要がある • TE後に90°pulse と 180°パルスの両方を受 けていた血流が面内か ら流出するとflow void と なる 井田正博 MRアンジオグラフィー 脳神経外科エキスパート 脳動脈瘤 中外医学社 動脈閉塞部位の診断 FLAIR Intraarterial Signal • 超急性期から、閉塞した皮質枝 が高信号 1. 塞栓・血栓 2. 閉塞・狭窄後の血流遅滞や側副 血流(血流速度低下)も反映 • 皮質枝閉塞を“陽性所見”とし て描出 – T2WI やMRA よりも診断が容易 • 動脈閉塞/狭窄を過大評価する が、その分布範囲は灌流異常 域にほぼ一致する Maeda M.AJNR 22:632-636, 2001 Toyoda K. FLAIR intraarterial signalの機序 T2-WI T2WIでは、頭蓋内 半球枝は高信号の 脳脊髄液の中に低 信号(flow-void)と して認められる。 FLAIR FLAIRでは、低信号 の脳脊髄液の中に flow-void(→)は認 識できない 内頸動脈 半球枝 脳脊髄 液 T2WIでは、半球枝 閉塞はflow-voidが 消失し、高信号の脳 脊髄液の中に高信 号を呈する。 FLAIRでは、低信 号の脳脊髄液の中 に半球枝閉塞は高 信号に認められる。 Intraarterial signal 動脈閉塞部位の診断 T2* WI & SWI:動脈内の低信号 • 血栓.塞栓子内部のデオキシヘモグロビンによる磁化率効果 – T2*短縮効果, 位相変化 • 著明な低信号 MRA • TOF信号欠損 GRE T2*WI • T2*効果 • 磁化率強調 SWI • T2*効果+位相情報 • <<磁化率強調 脳梗塞超急性期の画像診断 • 動脈閉塞部位 – 病変の血管支配 • 非可逆的組織障害の 検出 • 灌流異常の検出 – Diffusion-perfusion mismatch • 臨床症状 – 発症時間、発症様式 – 神経症状、NIHSS – 背景因子 • 心房細動 • 病変分布 – 発症時間と比較 • 循環予備能の評価 – rCBF, rCBV • 病型・病因の診断 – 治療法選択 • MRA • 頸動脈MR 前大脳動脈ACA Cross circulation A2 1. M2 • 1. 2. • A-com:右⇔左前大脳動脈 P-com:前方⇔後方循環 髄軟膜吻合を介する – – ACA→MCA PCA→MCA (穿通動脈からの吻合) (外頸動脈からの吻合) – 急性梗塞ではあまり機能し ない A1 M1 C1 中大脳動脈 MCA 皮質枝末梢の吻合を介する 後大脳動脈 PCA 中大脳動脈閉塞 • • • • Aco m Willis動脈輪を介する Pco m 2. P1 脳底動脈 BA 内頚動脈 IC P2 Cross circulation 1. Willis動脈輪を介する – – 2. A-com:右⇔左前大脳動脈 P-com:前方⇔後方循環 髄軟膜吻合を介する – – 皮質枝末梢の吻合を介する 中大脳動脈閉塞 • • 3. 4. ACA→MCA PCA→MCA (穿通動脈からの吻合) (外頸動脈からの吻合) – 急性梗塞ではあまり機能し ない アテローム 斑(プラー ク)形成 • MCA閉塞 • ACA皮質枝末梢→MCA末梢 皮質枝吻合→MCAへ逆行性 灌流 椎骨脳底動脈の診断 造影 3D T1強調像画像 • Gd 造影 • 3D FISP T1WI – 高い空間分解能とS/N – 造影剤の血液プール効果 • Flow voidの影響がない 「造影MRA原画像」 – MTSなし – 1-2mm – 原画像表示 • 血管内腔や壁の評価 3D造影T1強調画像で椎骨脳底 動脈の解離や閉塞を診断する。 正常 解離 T2-WI 解離腔血栓化 DeoxyHb MetHb Flow void Intimal flap Slow flow 器質化 器質化 Gd T1-WI 増強効果 増強効果消失 Intimal flap 増強効果 突然発症の右片麻痺、意識障害、発症90分 心原性塞栓症疑い DWI T2WI CT MR 所見 病期 • DWIヘム鉄の変化 & T2WI 磁性 局在 T2 WI T1 WI 超急性期 オキシHb Fe2+/反 RBC内 軽度高 軽度低 – 発症90分ですでに高信号、辺縁部に低信号 急性期– デオキシHb Fe /常 血管支配域に一致せず 亜急性期 メトHb Fe3+/常 – 脳室内にも異常信号。 2+ CT 高吸収域 RBC内 低信号 軽度低から等 高吸収域 →脳出血超急性期のオキシヘモグロビン RBC内 低信号 高信号 高吸収域 • CT で急性期出血を確認。RBC外 高信号 高信号 信号低下 低信号 低信号 低吸収域 慢性期 メトHb Fe3+/常 ヘモジデリン Fe3+/常 RBC外 超急性期脳出血 vs 脳虚血 MR所見 脳出血 • 発症直後から信号変化を認 める. • T2強調画像(T2WI) – 中等度高信号 – 辺縁部に低信号 – 周囲に軽度浮腫 • 拡散強調画像(EPI DWI) – 高信号 – 磁化率変化による低信号 超急性期脳虚血 • 発症直後からは所見はみとめ ない. • T2強調画像では12時間以上 経過しないと血管性浮腫によ る信号変化は出現しない. • 拡散強調画像では発症30分程 度で所見が出現しうるが, – 拡散<最終梗塞<灌流 – 虚血の強度,病態による D-WI 発症1時間40 分 発症1時間後 発症4時間後 脳虚血超急性期のMR診断プロトコール 1. 2. 3. 拡散画像 FLAIR SWI 4. T2*WI 5. FSE T2WI 6. MRA 非可逆的組織障害 急性皮質枝閉塞 IAH, SAHの鑑別 急性皮質枝閉塞(塞栓子) IAL Misery perfusion 塞栓子、微小出血の鑑別 陳旧性梗塞、急性期脳出血の鑑別 Willis動脈輪の形態 椎骨脳底動脈閉塞?? FLAIR, SWI, T2*WIで皮質枝閉塞 7. 拡散画造影灌流画像 TTP, MTT, CBV, CBF 7. 造影3D GRE T1WI 解離?閉塞?プラーク?
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