憲法1 第9回 権力分立原理・国会と内閣の組織 2006年11月29日 Ⅰ 権力分立原理 1.立憲主義との関係 立憲主義の目標=権利の保障(自由主義) 憲法13条「……生命,自由及び幸福追求に対する国民の権 利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他 国政の上で,最大の尊重を必要とする。」 ⇒権力のコントロール ①法の支配 ②権力の分割と分担=権力者相互間の均衡と抑制 2.権力分立思想 (1) ジョン=ロック ①立法権(法の定立)と②執行権(法の執行) ②から③「連合権」(外交・軍事)を分ける (2) モンテスキュー ①立法権,②執行権,③裁判権 3.権力分立の目的 「統治にある程度の非効率性をもたらすことを承知の上で,特定 の者・機関に権力が集中することを排除して,市民の自由を守 ることにある。」 4.立法・行政・司法の概念 (1) 実質的(客観的)定義 =活動(作用)の内容・性質による定義 ① 立法=法規範の定立 ② 司法と行政=法規範の適用 ⓐ 司法=紛争の裁断 ⓑ 行政=国家作用-(①+ⓐ) (控除〔消極〕説) ※ 憲法13条・41条・65条・76条 (2) 形式的(主観的)定義 =活動(作用)の帰属主体による定義 ① 立法=立法部の活動 ② 行政=行政部の活動 ③ 司法=司法部の活動 ※ 憲法66条3項・77条1項 5.権力分立の現代的課題 (1) 民主主義との衝突 民主集中制が正統かつ効率的か? (2) 行政国家現象 行政部への情報とノウハウの集中 (3) 政党国家現象 行政部 vs. 立法部 ⇒ 行政部+立法部の多数派 vs. 立法部の少数派 (4) 司法国家現象 司法部に「行政部+立法部の多数派」を抑制する役割 が割り当てられる。 (5) 垂直的権力分立(地方分権) 中央政府(国) vs. 地方政府(地方公共団体) 6.日本国憲法における権力分立 『アルマ2』 227頁 表35-1,35-2,35-3 Ⅱ 国会と内閣の組織 1.議会の意味 ①選挙によって選出された複数の議員により構成 ②立法などの重要事項の決定権をもつ 2.内閣の意味 合議制の最高行政機関 ⇔ 大統領 独任制の最高行政機関 3.議院内閣制 議会の信任が在職要件となる内閣が最高行政機関となる制度 4.議院内閣制の変遷 ①大権型(旧一元型)議院内閣制=君主に対してのみ責任を負う ②二元型議院内閣制=君主と議会に対して責任を負う ③一元型議院内閣制=議会に対してのみ責任を負う ④新二元型議院内閣制=大統領と議会に対して責任を負う(半 大統領制) 5.議院内閣制の本質 ※ 何を基準に議院内閣制か否かを区別するのか? ①責任本質説 内閣が議会に(政治的)責任を負い,議会の信任を在職要 件とする。 ②均衡本質説 ①に加えて,元首あるいは内閣が議会解散権をもつ。 6.日本国憲法上の内閣の制度 『アルマ』p.19~29 (1) 成立 ①国会の議決による内閣総理大臣の指名(67条1項) ②各議員による異なった指名(67条2項) ③天皇による任命(6条1項) ④内閣総理大臣による国務大臣の任命(68条1項前段) (2) 大臣の資格要件 内閣総理大臣……国会議員(67条1項) 国務大臣の過半数……国会議員(68条1項後段) 文民(civilian)(66条2項)……現役自衛官ではない者 (3) 内閣の責任 国会に対する責任(66条3項) (4) 各大臣の責任 不信任決議(衆議院)・問責決議(参議院) (5) 内閣の終了 ①任意的辞職 ②義務的辞職 (i) 不信任決議を受けて衆議院を解散しないとき(69条) (ii) 首相が欠けたとき(70条前段) (iii) 衆議院総選挙後国会が召集されたとき(70条後段) (6) 衆議院の解散 天皇の国事行為(7条3号) 実質的決定権は内閣にある 「助言と承認」(7条本文) 限界 Ⅲ 国会の権限(1) 1. 立法の概念 「実質的意味の法律は形式的意味の法律として定立されなけれ ばならない」(二重法律概念) (1) 実質説 ⓐ 一般的権利制限説 「国民に新たに義務を課し権利を制限する一般的抽象的成文法 規範」 ≒法規説……「『法規(Rechtssatz)』〔すなわち〕一般的・抽象的 な法規範のうちで国民の『自由と財産』を制限する法規範の制 定だけを議会の権限として留保〔する〕」という考え方) 内閣法11条,国家行政組織法12条3項は「法規説」に拠る。 ⓑ 市民生活規範説 「直接に憲法を受けて,市民生活に関係する,原則として一般 的抽象的な成文法規範を制定する行為」(新正幸) ⓒ 一般的規範説 「一般的・抽象的な法規範すべて」(芦部・憲法) 「一般性」……法律が不特定多数の人に適用される 「抽象性」……不特定多数の場合ないし事件に適用される 例外的に「処分的法律(措置法)」を認める ◎ 権力分立原理の核心が侵害されず社会国家にふさわし い処遇を設定する場合は許容される(デューリッヒ,芦部) (2) 形式説 フランス憲法 「法律」=一般意思の表明→法律の淵源の一般性と対象の 一般性を含意する 「立法専制に対する防壁」(シュミット) アメリカ合衆国憲法 特定の個人,団体,地域を対象とする法律であるprivate act も制定可能
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