質量分析の原理 どのようにして計測するのか? バネや圧力センサーでは分子レベルの計測 は不可能 1907 J.J.Thomsonが電場・磁場を利用し た質量測定方法を開発 質量分析の概要 試料 イオン化 Ionization EI, CI, FAB, ESI APCI, MALDI フラグメント Sector MS, QMS TOFMS, FT-ICRMS 質量分析 Mass analyzer マススペクトル 質量分析法の特徴 強力な物質同定能力 未知の物質の同定 物質の量の測定 分子の構造的、化学的な性質の解明 高い検出能力 ごく微量の試料でも測定可能 質量分析装置 磁場型質量分離装置 Sector MS 四重極型質量分離装置 QMS 飛行時間型質量分離装置 TOFMS フーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分離 装置 FT-ICRMS 磁場型質量分析装置 Sector MS 電場 磁場 イオンが磁場中で運動するときに 働くローレンツ力(F1)と遠心力(F2) はつりあっているので、 F1 vBq, F2 m 2 mv v r r qB イオンが電場中で運動するときに働く電場 から受ける力(F3)と遠心力(F2)はつりあって いるので、 イオン源 検出器 m 2 mv2 F2 v , F3 qE r r qE 運動エネルギーが異なるイオンは同じ質量であっても磁場の中での曲率半径rは変化 磁場に入ってくるイオンの運動エネルギーをそろえるために、電場を用いる。 四重極型質量分離装置(QMS) 4本のロッドを平行に束ねて分離装置を作る 装置が小型 ロッドには高周波電位に直流電位を重ね合わせた電位を与える 4本のロッドの間にイオンを送り込むと質量電荷比に応じて振動し ながらロッドの間を進み、一定範囲の質量電荷比のイオンだけが 通り抜けることができる。 測定可能な質量の上限は2000~4000 イオントラップ型質量分離装置 ITMS エンドキャップ電極 リング電極 四重極ロッドの入り口と出口をつないでリング状にしたもの 安定に振動するイオンは外に出ることなく内部にとどまる 印加する高周波の電圧を徐々に強くしていくと、質量電荷比の小さい ものから順にイオントラップの外に出てくるのでマススペクトルが得ら れる。 飛行時間型質量分離装置 TOFMS イオン反射器 m 1 t 72.0 l z V イオンを加速してから検出器に到達するまでの時間を測定する。 イオン反射器を用いることで、運動エネルギーのぶれを打ち消すことで、 高い分解能をもったスペクトルを得ることができる。 いかにしイオン化するのか? そもそもイオン化しなければ質量分析できな い イオン化する際に試料が壊れてしまっては困 る ⇒イオン化の方法が重要 イオン化法 電子イオン化法 EI 化学イオン化法 CI 高速原子衝撃法 FAB エレクトロスプレーイオン化法 ESI 大気圧化学イオン化法 APCI マトリックス支援レーザー脱離イオン化法 MALDI 電子イオン化法 EI / 化学イオン化法 CI EI = electron ionization CI=chemical ionization 分子量1000以下の低分子量の試薬で揮発性の高い試料や常温で 気体の試料に用いられる CIでは、イオン化室内に試薬ガスを封入することで、試料分子より先 に試薬ガスがイオン化し、次に試薬がそれらによってイオン化される ためEIよりもソフトなイオン化ができる フィラメント フィラメントから発した熱電子(e-)が試料分子 近傍をかすめ、試料分子Mはイオン化される M + e- → M+ + 2e- 高速原子衝撃法 FAB FAB = fast atom bombardment Ar アルゴンイオン化室 アルゴンイオン中性化室 アルゴンビーム照射管 分子量が3000付近までの質量分析が可能 常温で固体・液体・の試料に用いられる 加熱処理されないため、熱に弱い試料の測定 も可能 電子衝撃によってイオン化したアルゴン(一次イ オン)を同種のガス(中性原子)を導入した中性 子化室を通過させると、運動エネルギーを失わ ずに中性原子ビームに変換される マトリックスとよばれる低揮発性有機溶剤を混 合した試料に一次ビームを照射すると、試料の 気化とイオン化を同時に起こすことができる。 エレクトロスプレーイオン化法 ESI ESI = electrospray ionization 分子量10万程度以下の全分子領域で測定が可能 特に、FAB法では測定不可能なタンパク質などに有効 大気圧下でのイオン化法であるため、液体クロマトグラフィー(LC)や キャピラリー電気泳動(CE)と接続できる ESI法はFAB以上にソフトなイオン化法 高電圧を印加 液相の多価イオンから気相の 多価イオンが生成する。 大気圧化学イオン化法 APCI APCI = atmospheric pressure chemical ionization 分子量が1500程度以下の化合物の測定が可能 ESI法と同様に大気圧下で測定可能 ESIでは高電圧を印加して試料分子をイオン化するのに対してAPCI 法では送液管を加熱し、窒素ガスを流して試料溶液の気化と噴霧を 行う イオン化は噴霧口近くに設置した針電極に高電圧を印加してコロナ放 電を起こして、溶媒分子をイオン化 マトリックス支援レーザー脱離イオン化法 MALDI MALDI = matrix-assisted laser desorption/ionization 紫外線レーザー 分子量100万程度までの分子について 測定可能 可動ターゲット 試料量は数フェムトモルから測定可能 紫外線吸収性の固体マトリックスを使用 質量分離部へ 試料 イオン引き出し電極 タンパク質の質量分析をするには? ESI法か、MALDI法でイオン化して測定 EI CI FAB ESI MALDI 無機化合物 ○ ○ ○ △ ○ 低質量有機化合物 ○ ○ ○ ○ ○ 脂質 △ △ ○ ○ ○ 糖 × × ○ ○ ○ 核酸 × × △ ○ ○ ペプチド × × ○ ○ ○ タンパク質 × × × ○ ○ PMFの説明 PMF peptide Mass Fingerprinting 試料に含まれるタンパク質を同定する方法 トリプシン処理していくつかのフラグメントに分 割した後、質量分析を行う (トリプシンは、リジン[K]、アルギニン[R]のC 末端を切断するため、K,RをC末端に持つ 様々なフラグメントが生成される) データベースに対して、同じフラグメントを生成 するようなタンパク質を検索して、試料を推定 する PMFによるタンパク質の同定 1993年に提唱されたペプチドの同定方法 タンパク質を特異的なプロテアーゼを用いて分解 個々のフラグメントの質量を計測して得られるス ペクトルと同様のスペクトルを与えるペプチドを データベースから検索することで同定できる 得られるスペクトルは個々のタンパク質に特異的 であることから、Fingerprint(指紋)法と呼ばれ ている。 PMF MASVKLASLIVLFATLGMFLTKNVGAASC NGVCSPFEMPPCGTSACRCIPVGLVIGYC RNP MASVKLASLIVLFATLGMFLTKNVGAASC NGVCSPFEMPPCGTSACRCIPVGLVIGYC RNP マススペクトル データベース を検索 付録:アミノ酸の質量 Alanine Ala A 89.04768 Methionin Met M 149.0511 Cysteine Cys C 121.01975 Asparagin Asn N 132.0535 Aspartic Acid Asp D 133.03751 Proline Pro P 115.0633 Glutamic Acid Glu E 146.04533 Glutamine Gln Q 146.0691 Phenylalanine Phe F 165.07898 Arginine Arg R 174.1117 Glycine Gly G 75.03203 Serine Ser S 105.0426 Histidine His H 155.06948 Threonine Thr T 119.0582 Isoleucine Ile I 131.09463 Valine Val V 117.079 Lysine Lys K 146.10553 Tryptophan Trp W 204.0899 Leucine Leu L 131.09463 Tyrosine Tyr Y 181.0739
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