化学概論

化学概論 第6回
GO⇒41⇒GO
1. を押してください
先週のまとめ
原子の電子配置
電子が2個以上ある場合、主量子数nだけではなく、方位量子数
l によっても原子軌道のエネルギーが変化する
構築原理、Pauliの排他律、Huntの法則にしたがって電子が入る
原子番号により最外殻より内側に電子が入ることがある
(遷移元素、ランタノイド、アクチノイドなど)
原子の周期的性質
原子番号順に元素を並べたものを周期表
横の並び:周期 同じ主量子数の元素が並ぶ
縦の並び:族 最外殻の電子配置が似ていて、性質が似る
先週の内容で特に記憶に残ったことは?
1. 電子軌道の種類
2. 多くの原子の電子配置
3. 原子の周期的性質と
電子配置の関係
4. 遷移金属の性質と電
子配置の関係
5. あまり記憶にない
32%
25%
20%
15%
金
属
に
な
い
記
憶
...
あ
ま
り
の
性
質
と
電
と
...
質
性
移
遷
原
子
多
の
周
くの
期
原
的
子
電
子
の
軌
電
道
の
子
配
種
置
類
7%
原子の電子軌道をエネルギー順に並
べて、正しいものは?
1s < 2s < 3s <2p < 3p
1s < 2p < 2s < 3p < 3s
1s < 2s < 2p < 3s < 3p
上記は正しくない
78%
9%
し
くな
い
<..
.
2p
2s
記
1s
<
2s
は
正
<
<
2p
<
1s
上
<.
3s
<
2s
<
4%
<..
.
..
9%
1s
1.
2.
3.
4.
次の原子の電子配置で正しいものは?
1. 6C 1s22p4
2. 7N 1s22s12p4
3. 8O 1s22s22p4
4. 9F 1s22s22p43s1
5. いずれも間違い
77%
11%
9%
p4
い
ず
れ
も
間
s2
2
22
1s
9F
違
い
4
s2
1s
22
8O
7N
1s
22
s1
2p
2p
p4
22
1s
6C
.. .
2%
4
2%
4.化学結合
• 原子の性質の指標:イオン化エネルギー、電
子親和力
• イオン結合
• 共有結合、分子軌道法
• 混成軌道、分子構造
• 電気陰性度と分子の分極
原子の性質の指標
その1
イオン化エネルギー(Ip) (ionization energy, ionization potential)
気体状態の単独の中性原子から電子を取り去る(原子から
無限の距離にする)のに必要なエネルギー
その電子のエネルギー準位と同じエネルギーを与えると、
ポテンシャルエネルギーが相殺されて、原子から取り去られる
A(g) →
A+(g) →
A+(g)
A2+(g)
+ e+ e-
第1イオン化エネルギー Ip
第2イオン化エネルギー
最外殻電子が最も外れやすい ← 軌道のエネルギーが高い
↓
価電子(内側の閉殻配置を内殻電子)
第1イオン化エネルギーも電子配置に依存する→周期性
1族のアルカリ金属が低く、18族希ガスが高い
水素型原子の電子のエネルギー
e4m Z 2
Z2
En  - 2 2  2  - Rhc 2 n=1,2,3,... (主量子数のみで決まる)
8 0 h n
n
R:リュードベリ定数
一般の原子では、内殻電子による遮蔽効果により、最外殻電子
の受ける核電荷が小さくなる。
有効核電荷を Zeff=Z- とすると、最外殻の電子のエネルギーは
e4m (Z -  )2
(Z -  )2
En  - 2 2 
 - Rhc
n:最外殻の主量子数
2
8 0 h
n
n2
第1イオン化エネルギーは
(Z -  )2
I p  - En  Rhc
n2
最外殻の主量子数 n が同じ原子では、Zの増大と共に Ip が増大
→ 同一周期ではアルカリ金属が最小、希ガスで最大
アルカリ金属は1個の電子を放出し、陽イオンになりやすい
Li : 1s22s1
Be : 1s22s2
B : 1s22s22p1
N : 1s22s22p3
O : 1s22s22p4
原子の性質の指標
その2
電子親和力(Eea) (electron affinity)
気体状態の単独の中性原子が電子と結合して(電子が加わって
陰イオンとなるときに、放出するエネルギー
電子の入る軌道のエネルギー準位と同じエネルギーが
放出される
X + e- → X- + A
17族のハロゲンが高い(大きなエネルギーを放出して、
安定な陰イオンになりやすい)
イオン結合ー静電引力による化学結合
イオン化エネルギーが小さい原子 A と
電子親和力の大きな原子 B が組み合わされたとき
A + B → A+B陽イオンと陰イオン間に静電引力が働き、二つのイオンを結びつけ
る「イオン結合」が生じる。
例えば、NaClの場合 (p.73 表4.1より)
Na(g) → Na+(g) + eIp=5.139 eV=496 kJmol-1 (吸熱)
Cl(g) + e- → Cl-(g)
Ea=3.617 eV=349 kJmol-1 (発熱)
Na(g) + Cl(g) → Na+ (g) + Cl-(g)
Ip-Ea=147 kJmol-1 (吸熱)
単にNaとClを陽イオン、陰イオンにするだけでは147 kJmol-1のエネ
ルギーを加える必要がある(元の状態より不安定)
→ 安定化するために、陽イオンと陰イオンが対になる(イオン結合)
エネルギーの単位:1 eV(電子ボルト) = 96.48 kJmol-1
陽イオン(Z+価)と陰イオン(Z-価)間の静電ポテンシャルは
e2 Z  Z Eatt  
4 0
r
→ r が小さいほど大きな負の値になり、安定化する
しかし、近すぎると、電子同士の斥力が働く
 r
Erep  a exp - 
 
(a、 は定数)
EattとErepがつりあって、ある距離 r で
Etotal = Eatt + Erep が最小となる
NaClの場合 r = 0.238 nm
Etotal = -494 kJmol-1
147-494 = -347
Na + Cl →Na+Cl- :347 kJmol-1(発熱)
Na(g) + Cl(g) →Na+Cl-(g) :347 kJmol-1(発熱)
⇒ 気体状態の Na と Cl が気体状態のNaCl分子になるときには、
エネルギーを外に出すので、NaCl分子のほうが安定である。
しかし、固体状態のNaCl(食塩の結晶)では、Na+とCl-の距離は
0.281 nmであり、気体状態とはかなり異なる。
固体中では、Na+とCl-とが交
互に並び、さらに安定な構造
となる
⇒ 格子エネルギー U
NaCl結晶では、
U = -777 kJmol-1
と見積もられていて、NaCl分
子よりもはるかに安定になる
Na+とCl-のペア(引力)
Cl-とCl-のペア(斥力)
共有結合ー電子の共有による化学結合
電子の共有と八偶子説(オクテット則)
希ガス原子:最外殻に8個(Heは2個)の電子⇒安定な閉殻
希ガス原子以外:他の原子と電子を共有して、最外殻に8個の
電子で取り囲まれると安定⇒八偶子説
↓
共有結合
ルイス構造
(電子式)
H + H → H H
共有電子対
Cl + Cl → Cl Cl
なぜ電子を共有すると安定な構造となるか
電子の共有と原子核間の力
原子核
fAB
A
電子
fA
½ rAB
fB
B
fAB
fA、fB:核と電子の引力
fAB:核と核の反発力
½ rAB
① 電子が2つの原子核(電荷+e)の中央に位置するとき、
核間距離を rABとすると、核間の反発力は
e2
f AB 
2
4 0 rAB
e2
e2
f A  fB 
4
 4 f AB
2
2
1
4 0 rAB
4 0  2 rAB 
原子核に加わる内向きの力は
fA+fB-2fAB=6fAB > 0
→ 2つの原子核は電子を介在して引力を受ける
原子核
fAB
A
電子
fA
B
½ rAB
½ rAB
fAB
fB
-
½ rAB
②電子が2つの原子核の外側(距離½ rAB)に位置するとき、
核間の反発力は
e2
:①の場合と同じ
f AB 
2
4 0 rAB
e2
4
e2
fA 
 f AB
fB 
 4 f AB
2
2
3
1
4 0  2 rAB 
40  2 rAB  9
原子核に加わる内向きの力は
fA-fB-2fAB=(4/9-4-2)fAB = -50/9fAB < 0
→ 2つの原子核には反発力が残る
原子核
fAB
A
電子
fA
fB
-
B
fAB
核間には引力が働く
→結合性
fAB
fAB
A
A
fA
fA
fB
B
B
fAB
fAB
fB
fB
fAB
A
fA
B
fAB
-
-
核間には反発力
が働く
→反結合性
結合性領域
反結合性領域
A
強い結合性
B
反結合性領域
結合性の領域にある電子:結合性電子
反結合性の領域にある電子:反結合性電子
どこに電子がどれだけあるか
→ 電子の確率分布で決まる
↑
電子の波動関数
結合性領域に電子の確率分布が大きな波動関数 :結合性軌道
反結合性の領域に電子の確率分布が大きい
:反結合性軌道
結合性領域に分布が小さい
結合している原子の電子状態(波動関数)
:複数の電子・原子核→波動方程式は厳密には解けない
近似方法 ①原子価結合法(後で簡単に説明)
②分子軌道法
分子軌道法
・孤立原子中の電子 : 原子軌道
・分子全体の電子 : 分子軌道
分子中の原子核を平衡位置(結合している位置)におき、核による
電場ポテンシャル中に、エネルギーが最小になるように分子軌道
に電子を1個ずつ入れていく。
分子軌道の第1近似として個々の原子軌道の線形結合を考える
(LCAO近似、LCAO-MO法)。
たとえば、2個の水素原子から、水素分子の分子軌道は、原子Aと
原子Bとで

MO
 1sA  1sB
核AとBのの符号が同じ
MO
 1sA - 1sB
核AとBのの符号が異なる
水素原子
二つの水素原子を置いて、原子軌道を考える
1sA
1sB
二つの原子間に電子が存在する
「結合性分子軌道」
二つの原子軌道の足し算として分子軌道を作ると
MO+ = 1sA  1sB
二つの原子間に電子がなく、外側にある
「反結合性分子軌道」
二つの原子軌道の引き算として分子軌道を作ると
MO- = 1sA - 1sB
MO+では結合性
領域に電子が存在する
MO-では反結合性
領域に電子が存在する
分子軌道の電子密度(電子の存在確率)
(MO+)2
(MO-)2
結合軸方向から見ると円形になっている分子軌道を  という。反
結合性軌道は*をつけて区別する(*:シグマスター)。
この分子軌道による結合を結合という。
今回のまとめ
原子の性質
イオン化エネルギー(イオン化ポテンシャル)
陽イオンへのなりやすさ
電子親和力 陰イオンへのなりやすさ
イオン結合
陽イオン、陰イオンになるだけではエネルギー的に不安定
→イオン対を作って安定化 イオン結合
→イオン結晶になってさらに安定化
共有結合:原子間で電子を共有する結合
原子間に電子が存在する→原子核同士をひきつける(結合性)
原子間の外に電子がある→原子核同士を反発させる(反結合性)
分子軌道法 : 結合している分子の電子状態の近似方法
もう一度出席確認
レスポンスカードを用意
出席確認、今日の講義はどうでしたか
1. 興味がわかなかった
2. 少し興味が持てた
3. 興味を持って聞けた
60%
22%
け
た
て
聞
持
っ
味
を
味
し
興
少
興
興
味
が
わ
か
が
持
な
か
っ
て
た
た
17%