平成 24 年度新潟薬科大学薬学部卒業研究Ⅱ 論文題目 フラーレン(C60)をマトリックスとして用いる MALDI 法に関する研究 MALDI measurement using C60 as a matrix 物理化学研究室 6 年 07P048 齋藤 瞳 (指導教員:星名賢之助) 1 要 旨 質量分析法において MALDI 法はマトリックスと試料の混合物にレーザーを照射し、化 合物が壊れないようソフトにイオン化をすることのできる手法である。そして、少ない試 料でも効率よくイオン化を行うことができるため生体分子などの質量分析に有用で、医学、 生物学、生化学などの様々な分野において幅広く使われている。しかし、MALDI スペクト ルではマトリックスとの混合イオンピークが出ることや、マトリックス由来のピークが低 質量域に強く出ることなどが原因となり、そのスペクトルが分子を同定・定量することが 困難な場合がある。そこで、分子の中で特に安定性があり、H 原子をもたないバックミン スターフラーレン(C60)をマトリックスとして利用することで、スペクトルが単純となり、 MALDI 法での分析の正確さを向上させることができると思われる。本論文では実際に C60 をマトリックスとして用いた実験についてまとめ、結果からその特徴について考察した。 キーワード 1.マトリックス 2.バックミンスターフラーレ 3.LC-MS ン(C60) 4.MALDI プルーム 5.TOF-MS 6.スペクトルの単純化 7.レーザー強度 8.pMZ-Val-Val-Thr-OMe 9.pMZ-Gly-Phe-Met-OMe 2 目 次 1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2.薬学との関連性 3.MALDI 法の概論 4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 4.C60 をマトリックスとした MALDI 法 ・・・・・・・・・ 7 5.まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 3 論 文 1.はじめに MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化)法は、質量分析法においてマトリッ クスという光吸収物質とタンパク質などの高分子との混合試料にレーザーを照射し、化合 物が壊れないようソフトに、そして少ない試料でも効率よくイオン化を行う方法であり、 生体分子などに有用で医学、生物学、生化学などの様々な分野に幅広く使われている。 MALDI スペクトルでは親イオンだけでなく、多量体やフラグメントなど多種類のイオン が観測される。さらにマトリックスのフラグメントなどに由来するピークが被測定物質の ピークと重なってしまうことなどもしばしばあり、スペクトルが複雑になることもある。 近年、分子の中で特に安定性があり H 原子をもたないバックミンスターフラーレン(C60) (以下C60 と記載する)をマトリックスとして利用することでマトリックス由来のフラグメ ントイオンが生成せず、スペクトルが単純となることが報告されている。すなわち、C60 を使用することで前述のスペクトルの複雑化を回避できる可能性がある。本論文では C60 をマトリックスとして利用した MALDI 法について実験し、その有用性を考察する。 2.薬学との関連性 MALDI 法に基づく質量分析は、プロテオミクス(タンパク質の構造と機能に関する研究) 研究において、SDS-PAGE や二次元電気泳動による分離操作と組み合わせて用いられてお り、代表例としてペプチドマスフィンガープリティング(タンパク質同定方法の一種)が ある。 C60 をマトリックスとして利用した MALDI によってスペクトルが単純になったことで、 今までの MALDI 法や LC 法などのイオン化法では同定できなかった分子イオンピークを求 めることができるようになった。同時に、マトリックス由来のイオンピークが出るために 分析が難しかった質量 1000 以下の医薬品などの分析もスペクトルが単純になることにより 容易にできるようになった。 このように C60 を用いた MALDI で低質量の定量が容易になったことで、今まで MALDI の性質を利用して分析するのが困難だった物質を測定しやすくなった。 4 3.MALDI 法の概論 MALDI 法は従来のイオン化法よりも広範囲な試料(気体は除く)に適用が可能であり、数 百の試料から数十万の高分子量の試料まで測定できることから、現在広く用いられているイオ ン化法となっている。更に、MALDI 法と相性が良い飛行時間型質量分析(TOF-MS)を用い ることで現在使用されている質量分析計のイオン化法の中では最も高質量域までの測定が可 能となった。 さらに ESI 法を凌ぐ数フェムトモルオーダーという極微量の試料量から測定可能である ことや、ESI 法のように試料を高純度に調製する必要は無く試料の純度に対する許容度も 大きいことから、高純度試料を大量に用意することが困難かつ微量である生体由来試料に 対しての適性が高く、分析が容易に出来るようになった。 また、従来のイオン化法では壊れやすかった大型の生体分子(タンパク質、ペプチド、 多糖など)のイオン化にも向くことから、医学や生物学、特に生化学分野を中心とした研 究に非常に大きな発展をもたらした。 3-1 基本原理 MALDI 法開発以前に使用されていたレーザー脱離イオン化(LD)法ではサンプルが直接 高エネルギー状態に励起されフラグメンテーションを起こしやすかったが、MALDI 法ではマト リックスを用いてサンプルをソフトにイオン化することで、熱に不安定で LD 法では分解されや すかったサンプルの測定も可能にした。(図1) サンプルに紫外線レーザー(主に窒素レーザー(波長 337 nm))を照射させるため、マトリッ クスには紫外線領域に吸収帯をもつシナピン酸などのケイ皮酸系の化合物が主に用いられる。 そのマトリックスと試料の混合物(混晶)に紫外線レーザーのパルスを照射するとマトリックスが 励起される。吸収された光エネルギーが熱エネルギーに変換された結果、マトリックスと試料は 瞬時に気化する。気化直後に形成される MALDI プルーム内でマトリックスと試料の分子間で プロトンや電子の授受がおこって試料がイオン化され、[M+H]⁺ や[M+Na]⁺、[M-H]⁻など のイオンが生じる。 5 図1 LD 法と MALDI 法のイオン化 MALDI 法は EI 法や FAB 法と同じように高真空下でイオン化を行うので、ガスクロマトグラ フィー(GC)や液体クロマトグラフィー(LC)、キャピラリー電気泳動(CE)といった分離分析法と 組み合わせるのは困難である。そのため、現在は主にクロマトグラフィーを用いていったん試 料を分離、分取し、分けられたそれぞれの試料を MALDI 用の試料ホルダー上に塗布して測 定するという間接的な手法をとっている。 3-2 ピークの現れ方 MALDI 法では正負どちらの極性のイオンが発生しやすいかは、試料の酸性度と塩基性度 で決まり、酸性試料なら [M-H]⁻ を負イオンモードで、塩基性試料なら[M+H]⁺ や[M+Na]⁺ を正イオンモードで検出する。また、他にもマトリックスや試料溶液の pH 値も[M+H]⁺ や[M- H]⁻ の生成量に影響を与えている。 マトリックスの pKa 値も試料のイオン生成に大きな影響を与えており、試料の pKa 値>マト リックスの pKa 値の場合は、マトリックスから試料分子へ効率よくプロトンが渡され [M+H]⁺ が 生成されやすくなり、反対に、試料の pKa 値<マトリックスの pKa 値の場合は、試料分子から マトリックスへプロトンが渡され [M-H]⁻ が生成されやすくなる。pKa 値の小さいマトリックスを 用いた場合は [M+nH]n⁺ (n は2~3程度)などの多価イオンが生成する場合もある。マトリック 6 ス量が多い場合は多価イオン、マトリックス量が少ない場合やレーザー強度が大きい場合は試 料分子の多量体 [nM+H]⁺ (n は 2~10 程度)が検出されやすくなる。 4.C60 をマトリックス剤とした MALDI 法での実験 4-1.マトリックス剤と試料と溶媒液 MALDIマトリックス(C60)は東京化成工業株式会社製のものである。2種類のアミノ酸(Lis、 Gly)とステアリン酸、Na と K、溶媒液(ベンゼン、TFA0.1%水+アセトニトリル、アセトニトリル)と マトリックスの CHCA (2-Cyano-3-(4-hydroxyphenyl)acrylic Acid) は和光純薬工業株式 会社製のものである。溶媒液(エタノール)は関東化学株式会社製のものである。2種類のペ プチド(pMZ-Val-Val-Thr-OMe、pMZ-Gly-Phe-Met-OMe)は薬品製造学研究室の北川教 授から提供していただいた。(pMZ = p-methoxy benzyloxy carboryl) 4-2.MALDI試料調製 本研究におけるMALDI試料は1μL のC60(0.02g のC60 を 20ml のベンゼンで溶解し、1.3μ M/ml としたもの)をターゲットプレートに滴下し、乾かないうちに1μL のペプチド(50μmol~ 0.5e-6μmol)を滴下した後に自然乾燥することによってMALDI試料を作成した。 ステアリン酸(50μmol)とC60、2種類のアミノ酸(50μmol)とC60 のMALDI試料の調製も同様 に行った。2種類のペプチド/NaCl、KCl比(25~0.5×10-6)のMALDI試料を調製した。 4-3.MALDI-MSの測定方法 正イオンの質量スペクトルはMALDI-TOF(time-of-flight)スペクトロメーター(Autoflex Ⅲ、Bruker Daltonics)により測定した。測定は 19kV の加圧電圧でリフレクションモードによ って行い、2000 レーザーショット(355nm、<100μJ、200Hz)を積算することでそれぞれのスペ クトルを得た。MALDI試料の結晶が不均一であることによってシグナルにばらつきが出るた め、10 レーザーショット毎に照射スポットをランダムに移動させた。 4-4.C60 をマトリックス剤として用いた質量スペクトル 図1がマトリックス剤としてC60(フラーレン)を使用したときの質量スペクトルである。試料は加 えていない。観測されたのはC60+の強いピークのみであり、図2に示したCHCAなどのマトリッ クス剤とは違い、フラグメントイオンがほとんど観測されないことをMALDIで確認した。 7 図1 C60 の MALDI スペクトル 図2 CHCAの MALDI スペクトル フラグメントイオンが多いほどサンプル由来のピークを判別しにくくなってしまうため、C60 の 方がサンプルのピークを見ることに適していることが上の図からわかった。また、レーザー強度 を上げていったところ、C60 では図3に示すような規則的なフラグメントピークが出現した。 8 図3 C60 の MALDI スペクトル そのため、C60 をマトリックス剤として使うことでフラグメンテーションを起こしにくくし、サンプル のピークを分かりやすく検出できる利点があることが分かった。 4-5.アミノ酸(Lys,Gly)/C60 5μmol/mL、5×10-2μmol/mL、5×10-4μmol/mL の Lys、Gly の2種類のアミノ酸と 50μ mol/mL の濃度のC60 のMALDI試料のスペクトルを測定した。しかし、アミノ酸由来のピークは 観測されなかった。 通常、MALDI法ではマトリックス剤の二量体[MM]が解離し、プロトン化マトリックス[MH+] が生成する。そして、サンプルがプロトン化マトリックスと衝突しプロトン化したサンプルが生成 されることで[M+H]+のピークを出す。 しかしC60 はプロトンを持たないため、サンプルが[M+H]+のピークを出すことができないと 考えられる。 4-6.ステアリン酸/C60 一方、サンプル自身がプロトンを持っていればピークが出ると考え、光吸収はしないがCHC Aなどのマトリックス剤のような構造式を持つステアリン酸をサンプルとして実験をしてみた。 50μmol/mL のステアリン酸と 50μmol/mL の濃度のC60 のMALDI試料をアミノ酸/C60 の実 験と同様に測定した。その結果、ステアリン酸、C60 のどちらのピークも観測されなかった。 9 ペプチド(pMZ-Val-Val-Thr-OMe)をサンプルとして測定をすることにした。 H3C O O H3C H3C CH3 OH O NH NH O H3C O O NH O CH3 CH3 図 4 pMZ-Val-Val-Thr-OMe 4-7.ペプチド(pMZ-Val-Val-Thr-OMe)/CHCA CHCAをマトリクス剤とし、pMZ-Val-Val-Thr-OMe を測定すると 120、534、518 のピークが 目立って出たが、プロトン化ペプチド(m/z=496)のピークは観測されなかった。ペプチドがプ ロトン化されにくいと考えることもできるが、それよりも断片化してしまい図5のようなスペクトルが でたと推測される。一方、534, 518 のピークは、それぞれNa+、K+付加イオンであり、この分子 種では断片化せずに観測されることがわかった。すなわち、このペプチドの場合は、通常のマ トリックス剤によるプロトン付加では質量分析が困難であることを示している。ピーク 120 は保護 基 pMZ が取れたものだと推測される。 図 5 pMZ-Val-Val-Thr-OMe /CHCA MALDI スペクトル 4-8.ペプチド(pMZ-Val-Val-Thr-OMe)/C60 C60をマトリックス剤として、サンプルpMZ-VVT(50μmol~0.5e-6μmol)の測定を行った。そ の結果,CHCAを用いた場合と同様に 120、534、518 のピークが検出された。 10 図 6 pMZ-Val-Val-Thr-OMe /C60 MALDI スペクトル 図 7 pMZ-Val-Val-Thr-OMe /C60 検出されたピーク 518 と 534 は、それぞれペプチドに Na と K が結合したものであると推測し た。 Na、K を添加すれば各ピークの強度が上がると考え、ペプチド(50μmol~0.5e-6μmol) にそれぞれ同濃度の NaCl と KCl を混ぜ、それをサンプルとして用いて同様にMALDIで測定 を行った。 11 その結果、NaCl を加えて測定したものは 518 のピークがよく出て、534 のピークはわずかに 出た。KCl を加えて測定したものは 534 のピークがよく出て、518 のピークもわずかに出た。(図 8、9) 図 8 pMZ-Val-Val-Thr-OMe (Na+) /C60 図 9 pMZ-Val-Val-Thr-OMe (K+) /C60 NaCl、KCl どちらを入れても片方のピークが抜きんでて大きくなるということはなかったが、 NaCl を入れて測定した時に 518 のピークが、KCl を入れて測定した時に 534 のピークが大き く出たことより、ピーク 518 は Na が結合したものでピーク 534 は K が結合したものだとわかっ 12 た。 次に同じ pMZ 基を持つペプチド(pMZ-Gly-Phe-Met-OMe)をサンプルとして、同様に実験 を行った。 H3C H O O H3C S O NH NH O O NH O CH3 O 図 10 pMZ-Gly-Phe-Met-OMe 4-9.pMZ-Gly-Phe-Met-OMe/CHCA CHCAをマトリックス剤とし pMZ-Gly-Phe-Met-OMe を測定するが pMZ-Val-Val-Thr-OMe とは違ってピークが出なかった。 これはCHCAとサンプルをプレートに滴下後に、スポットが懸濁したことがピークが出なかっ た要因だと考えられる。 4-10.pMZ-Gly-Phe-Met-OMe/C60 C60をマトリックス剤とし、サンプルpMZ-GPM(50μmol~0.5e-6μmol)で測定を行うと、 pMZ-Val-Val-Thr-OMe の場合と同じように 120 のピークが検出され、そして 570、554、586 のピークが目立って出た。(図11、12) 図 11 pMZ-Gly-Phe-Met-OMe /C60 MALDI スペクトル 13 図 12 pMZ-Gly-Phe-Met-OMe /C60 検出されたピーク 554 と 570 は、それぞれペプチドに Na と K が結合したものが出たと推測し た。Na、K を添加すれば各ピークの強度が上がると考え、ペプチド(50μmol~0.5e-6μmol) にそれぞれ同濃度の NaClと KClを混ぜ、それをサンプルとして用いて同様にMALDIで測 定を行った。 結果、NaClを加えて測定したものはピーク 554 もピーク 570 も同じくらい出たが、ピーク 586 は出なかった。KClを加えて測定したものはピーク 570 は出るが、ピーク 554 は出ず、ピーク 586 はわずかに出た。(図 13、14) 14 図 13 pMZ-Gly-Phe-Met-OMe(Na+) /C60 図 14 pMZ-Gly-Phe-Met-OMe(K+) /C60 NaCl、KClどちらを入れても片方のピークが抜きんでて大きくなるということはなかったが、 ピーク 554 は NaClを入れて測定した時には出たが、KClを入れて測定した時には出なかった ことより、Na が結合したものだとわかった。ピーク 570 は NaClを入れて測定した時にも、KCl を入れて測定した時にも出てきた。KClを入れて測定した時の方が強くピークが出ていたこと より、K が結合したものだとわかった。 この結果より、K は溶液中に微量でも存在すればピークにあらわれると考えられる。 15 5.まとめ 本研究では、C60をマトリックス剤としたMALDI測定を行い、通常使用されているマトリックス 剤であるCHCA と比較した。そして、以下の結果が得られた。 1.CHCAをマトリックス剤として用いる場合、マトリックス剤がプロトンをサンプルへ供与し、分 子イオンピークはプロトン付加体として観測される。しかし、今回用いたペプチドのように、ピー クとして現れるものと現れないものがあるうえ、マトリックス分子自身のフラグメンテーションが大 きく、フラグメントイオンから試料分子の構造を求めるのは難しい。 2.一方、今回実験で使用したC60 は、プロトン供与体ではないが、レーザー光を吸収しサンプ ル分子を脱離・気化するためのマトリックス剤として働くことができる。また、フラグメンテーショ ンが極めて少ないためにC60自身のピーク以外はサンプル由来のピークを邪魔しないことが分 かった。したがって、サンプル由来の分子イオンピークが容易に判別できた。 3.C60にプロトンがないことから、アルカリ金属を混ぜて陽イオン付加体として検出することを 試みた。その結果、NaCl、KCl を加えていない場合よりも Na、K が付加したピークの強度は 上昇しており、pMZ-ValValThr や pMZ-GlyPheMet により強く結びつくことが観測された。 以上の結果より、不純物としてアルカリ金属イオンが全く入っていないサンプルの場合,そこ にアルカリ金属を加えることにより,MALDI 信号が得られると期待される。 6.謝辞 本論文を作成するにあたり、ご指導頂いた指導教員の星名教授、試料をご提供していただ いた薬品製造研究室の北川教授に感謝致します。 16 引 用 文 献 1. L. Michalak et al., “C60-Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry”, Org. Mass Spectrom., 29, 512-515 (1994). 2. F.G.Hopwood et al. “C60-Assisted Laser Desorption/Ionization Mass Spectrometry in the Analysis of Phosphotungstic Acid“ Rapid Commun. Mass Spectrom., 8, 881-885 (1994). 17
© Copyright 2025 ExpyDoc