第4日目第2時限の学習目標 検査(テスト)の信頼性について学ぶ。 (1)検査得点の構成について知る。 (2)検査の信頼性の定義を知る。 (3)検査得点に対する仮定を知る。 (4)検査の信頼性の別表現を知る。 (5)信頼性係数と信頼性指数の違いを 知る。 (6)その他の信頼性(係数)の求め方 を学ぶ。 (検査)テスト得点の一般的な定義 最初に、テスト理論では、一般にテス トの得点 Xiは、その真値 Ti と測定誤 差 Ei を用いてつぎのように表される: Xi Ti Ei テスト得点の分散の分割 ここで、もし真値 Ti と誤差項 Ei が互 いに独立ならば、T と E は無相関(共 分散がゼロ)となり、 V ( X ) V (T ) V (E) 検査(テスト)の信頼性の定義とは? 2つの平行テスト X, Y 間の相関係数 ρXY を、信頼性係数と呼ぶ。 これにより信頼性を求める方法は、平行 検査法と呼ばれる。 平行検査法では、同一被験者に等質なテ ストを2時点で行わせる。 平行テストとは、つぎのような性質を 持ったテストとして定義される: 2つの検査(テスト)の定義 まず、2つの検査を、 Xi(u) ると、 X i (u ) Ti (u ) Ei (u ) , X i (v ) Ti (v ) Ei (v ) . , Xi(v) とす 平行性の概念-(1)平行測定 平行測定 2つの検査が平行測定 (parallel measure- ment) であるとは、 (1) Ti (u ) Ti (v) , (2) V (Ei (u ) ) V ( Ei (v) ), すなわち、 平行測定の意味 2つの検査が平行(測定)とは、 (1)両検査は、同一の特性を測定 していること、 (2)両検査は、同一の精度を有し ていること、 を意味する。これに対して、 その他の平行性の概念ー本質的 τ 等価測定 本質的 τ 等価測定 2つの検査が本質的 τ 等価測定 (essentially τequivalent measurement) であるとは、 Ti(u) Ti (v) cuv, ここで、cuv は定数である。 平行検査(テスト)とは -平行検査(テスト)の条件 両検査(テスト)が平行検査(テスト)であれ ば、つぎの条件を満たす: (1) Ti (u ) Ti (v ) Ti , (2) E(Tu ) E(Tv ) T , (3) V ( X u ) V ( X v ) V ( X ), E( Eu ) E( Ev ) 0, (4) Cov(Tu , Eu ) Cov(Tv , Ev ) Cov( Eu , Ev ) 0. 平行検査とは ー平行検査間の相関係数-1 この時、Xu と Xv の相関係数 Xu Xv は、 Cov( X u , X v ) X X V ( X u ) V ( X v ) E[( X u T )( X v T )] V ( X u ) V ( X v) u v 平行検査とは-2 平行検査間の相関係数-2 ここで、先ほどの平行検査の満たすべき条件 を考慮すると、上記両検査間の相関係数 X X は、つぎのように書ける: u v X X u v V (T ) V (X ) 検査の信頼性(係数)のまとめ 元来、2つの平行性検査間の相関係数と して定義される、検査の信頼性(係数) は、当該検査得点 X の分散 V(X) と真値の 分散 V(T) を用いて、つぎのように書け る: V (T ) X V (X ) 検査の信頼性のもう1つの表現-1 上記の検査の信頼性(係数)は、既 に紹介した検査得点の分割、すなわ ち v(X)=V(T)+V(E) を用いると、つぎのようにも書け る: V (T ) V ( X ) V (E) V ( E) X 1 V (X ) V (X ) V (X ) 検査の信頼性のもう1つの表現-2 すなわち、検査の信頼性は、検査の誤 差分散 V(E) と、測定値(検査得点)の 分散 V(X) の言葉でも表現できることが わかる: V ( E) X 1 V (X ) 検査の信頼性(係数)と 信頼性指数-1 検査得点 X とその真値 T との共分散 Cov (X, T) が、 Cov (X, T)= Cov (T+E, T) = V(T) と書けることに注意すると、X と T の相 関係数 ρXT は、 Cov( X ,T ) V (T ) V (T ) XT V (X ) V ( X ) V (T ) V ( X ) V (T ) 検査の信頼性(係数)と 信頼性指数-2 すなわち、 X XT 2 ここで、ρXT は、検査の信頼性指数 (index of reliability) と呼ばれる。この指 数と、信頼性(係数)の区別が重要であ る。 信頼性(係数)と 信頼性指数との関係 言い換えれば、 (1)検査得点とその真値の相関係数 は、信頼性指数と呼ばれる。 (2)検査の信頼性指数の二乗は、信 頼性(係数)に等しい。 平行検査法の特徴と問題点 同一被験者に対して、同質な(平行テストの意 味)検査(テスト)を、2時点で行う。 しかし、平行テストの意味で同質な検査を作成 することは、大変難しい。 そこで、検査の信頼性(係数)を求めるには、 平行検査法以外の方法を用いることが多い。 その他の信頼性係数の求め方 (1)平行検査法 これまでに紹介した信頼性係数の定義にかか わる平行検査法の他に、信頼性を測定したり推定 したりする方法として、つぎの方法がある: (2)再検査法 (3)折半法 (4)内部的一致性による方法 (4-1) クーダー・リチャードソンの(第20)公式 (4-2) (クロンバックの)アルファ係数 再検査法とは? 同一被験者に対して、同一検査を2時点で測り、 両時点 s, t での得点間の相関係数をX s Xt とすると、つぎの関係を導くことができる: X X s t V (T ) X V (X ) 再検査法による相関係数 と信頼性の関係 再検査法による(同一被験者の)同一検査の 2時点での得点間の相関係数は、検査の 信頼性に等しい。 再検査法の特徴と問題点 同一被験者に対して、同一な検査(テス ト)を、2時点で行う。 再検査法による信頼性係数は、安定度係 数 (coefficient of stability) とも呼ばれる。 しかし、再検査法を用いると、被験者が 前の検査結果を記憶していることが多く、 そのために信頼性が大きくなる傾向があ り、あまり使われない(Kuder & Richardson, 1937, p.151)。 折半法とは? 1つの検査を同質な2つの部分に分け、 両得点間の相関係数ρ12 を計算すると、平 行性の条件が成り立つとき、つぎの関係 を導くことができる: V (T ) 212 X V ( X ) 1 12 折半法の特徴と問題点 折半法では、平行検査法や再検査法による信頼性と は異なり、1つの検査を2つの部分に分けて、両得 点間の相関係数から、うえの関係を使って検査の信 頼性(係数)を求める。 折半法の計算式は、スピアマン・ブラウンの公式と 呼ばれる。 折半法で検査の信頼性(係数)を計算できるために は、折半した2つの検査が平行性の条件を満たして いないといけない。
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