体力向上の取り組み

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新体力テスト実施にあたっての留意点
いきなり、『体力テストをやります』と言ってもきちんとした運動の動きや準備がで
きていないとできません。
文部科学省から各校に配布された”活用シート”の中にこういう記述があります。
①体力向上のためには、1週間に7時間以上の運動や十分な睡眠、毎日の朝食
が大切であることを知ろう。
②体育の授業で『運動のコツやポイントがわかる』方が体力合計点が高いこと
を知ろう。
③動きのコツやポイントを確認するためには〈聞く〉〈見る〉〈取り組む〉の3
つを意識した授業に取り組もう。
このことから、北海道教育大学旭川校
古川教授はエキスパート養成講座の中で
それぞれの運動内容の意味と動き(動き方)を教えることで結果がかなり
変わってくる。満点を目指すのではなくしっかりとした動きで学校平均7点
を目指していく。
と指導がされた。
例えば・・・・
体力向上のために、縄跳びを行い、できた種目によって検定を行って級をつける
→これは縄跳びを行うことで、続ける力から持久力の向上を狙いとしたものであるが、
実はいろいろと縄を操作して、跳ぶことに主眼が移ってしまっていくので、持久
力の向上にはならず、巧緻性(巧みな動き)を高めるものとなってしまう。
テストの種目それぞれに動きのねらいがあるので、それを子供たち自身がしっかりと押
さえることが大事である。
体力テストは20mシャトルランなどを中心に『つらい』『つまらない』といったイ
メージが児童にあるが、きちんと教えたら『気持ちいい』『楽しい』といった爽快感、満
足感が得られるものである。
よって
体つくりの運動などの時間や体力テストの実施前に
きちんとした動きを教えること
が各学校、各学年ともに必要である!
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各種目のポイント
①長座体前屈(体の柔らかさ)
・計測前に十分な準備運動、
ストレッチを行う
・背筋を伸ばして行う
・行かなくなったらそこから
体の力を抜いて、息を吐き出
す
体つくりの授業では・・・
立った状態でチョキで前屈→グーで前屈→パーで前屈
『チョキで
指がつくかな?』
『グーなら
どうだろう?』
『パーでべったり
つくかな?』
長座の状態でチョキで前屈→グーで前屈→パーで前屈
『座ってつま先が触れるかな?』
※どれもハムストリング(太ももの裏側の大きな筋肉)を伸ばす運動になる
それでも行かないときはPNFストレッチを行う
PMFストレッチとは・・・・前屈の状態から動きに反するように力を入れ(押
し返して)筋肉を緊張させる。それを何回か繰り
返し、意図的に筋肉の緊張と弛緩を繰り返す。
1回のみの計測ではなく数回計測を行い、一番いい記録を記録とする。
②
反復横跳び(素早さ、タイミングの良さ)
・足をいろいろと動かすことを経験させる
・反復横跳びのステップを理解させる。
・動きの楽しさを経験させる。
・場の設定をする。
体つくりの授業では・・・
二人一組で手をつないでステップ練習
(タッカ・タッカ・タッカタン)
※独特のリズム、ステップを体験させる
鏡になって ステップ練習
(タッカ・タッカ・タッカタン)
ステップドリル
エアロビクス経験
ボックスステップ、サイ
ドステップなどを十分に
体験させる。
列やグループで見せ合っ
たり、リズムを速くした
りすると楽しく活動がで
きる。
☆独特の動きと、重心を真ん中に置いた
動きをきちんと理解させる。
場の設定としては・・・
新聞紙の対角線がちょうど1mになっている。
これを半分におって児童に持たせると簡単に1mの
幅を作ることができる。真ん中の基準線を決めれば
簡単に1m幅の場が多数設置することができる。体
育館に長い1mの幅の線を設置しなくても二人一組
であれば大人数を一度に計測できる。
③
20mシャトルラン
(動きを持続する能力
粘り強さ)
・子供たちは1番いやがる種目
・全力を出しきってダメージが大きい
・全力を出し切るのではなく、同じ動きを長く続けることを理解させる
体つくりの授業では・・・
5分~6分程度走り続けことができる場を設定する
→いきなり20mを走らせない!きつい、つらいが先に来てしまう。
12m・・・全部歩いても十分間に合う距離
14m・・・歩きから軽い早歩きくらいの距離
16m・・・全部早歩きくらいの距離
になる。
☆リズミカルに動き続けること
を体験させる。
・楽しく活動するのを体験させるので、向かい合わせて、半分くらいの
ところでハイタッチ!声かけ!を入れる。
☆楽しく動き続けることを体験させる
④
上体起こし
(動きを持続する能力
粘り強さ
力強さ)
・姿勢を維持する、体を動かすには腹筋の動きが大事なことを理解させる
・足の押さえ方によって、支点と作用点が変わるので、しっかりとした動き
ではなく、けがにつながる動きになってしまう。
・リズム良く行うことで数をこなすことができる。
《GOOD》
足の甲に座り、ふくらはぎを
抱えるようにしてしっかりと
押さえる。
足が固定され、上体を起こし
やすい。
《BAD》
つま先だけしか押さえていないので
おしりが動く。
腰が反り返る動きが出てくるので、腰に
痛みが出て、普段鍛えている児童でも、回
数は伸びない
体つくりの授業では・・・・
バンザイ、頭の後ろで組む、胸で組むの手の位置で負荷が大きく変わるこ
とを体験させる。
バンザイで上体を起こす例
1番負荷がかかり、上体を起こすのが大変
※胸の前で腕を組むのが1番簡単
マットと連動させて、素早く立つ、手を使わないで立つなどの動きを体験
させる。
⑤
ソフトボール投げ
(タイミングの良さ
力強さ)
・投動作の体験があまりも少ない。
・上体をねじる、ステップを入れるなどの距離に影響する動きができない。
・運動のコツをキャッチボールなどで理解させる。
体つくりの授業では・・・・
・運動のコツ、発展の様子をキャッチボールからつかませる。
ステップなし
肩の開き、ねじり
動作が入る
手と足が同じ方向
いわゆる女投げ
ステップが入り、大きな
バックスイングが入る
手と足が反対の
普通の投げ方
腕の振り下ろしが
入ってパーフェクト
このような動きを遠投したり、床にたたきつけたりして投動作をつかませる。
場の設定としては
必ずしもこのような場を
設定しなくても良い。
こうするとどうしても
計測回数が少なくなってしまう。
2,3人組にして
着地点を確かめて
真ん中のメジャー
で、どんどん計測
をする。
※ただ投げて、良い記録をとるのでOKである。
⑥
立ち幅跳び(タイミングの良さ、力強さ)
・ただ足の力だけでは跳ぶことができない。
・全身を使った『反動動作』と『バックスイングを入れた大きな腕の振り』
を理解しただけで記録が変わる。
体つくりの授業では・・・・
目標に向かってジャンプをする
マーカーやフラフープなどをおき
目標に向かって、ジャンプをする。
※このときには目標に向かっているだけな
ので、腕の振りなどは見られない。
しゃがみ込んで足を伸ばすまでの『反動
動作』を体感させる。
腕を胸の前に組んで、腕の動きを制限
する。
腕の動きがないと、振り上げ動作による
タイミングがわからなくなる。
ポケットに手を入れて、ジャンプをさ
せる。
手を使うことができなく、さらに『が
に股で!』などと指示すると『反動
動作』を使うことができなくなる。
※『ガラが悪そうに!』などと指示す
ると楽しさも出て他人のジャンプ
の様子も見るようになってくる。
腕を後ろに構えて、足を伸ばすと同時
に勢いよく斜め前へ振り出す、パーフ
ェクトな例。
※この腕の動きが跳ぶときに大きな力
を出すポイントとなる。
着地でなるべく足を前に出すために『前
にいる人に足の裏をみせるように』
『足
を抱え込むように』などと指示すると、
着地の局面にも変化が見られるように
なる。
⑦
50m走(すばやさ
力強さ)
・運動会時期に一緒に計測するのみである。
・しっかりとした動きを経験させにくい。
・腕の振りを意識させるだけで、回転数が変わる。
体つくりの授業では・・・・
腕を後ろで組んだり、
胸の前で組んだりして、
腕の動きを制限する。
リズムが悪く、ピッチ
が上がらないことを経
験させる。
全力疾走をするためには
○腕をしっかりと降って走る。腕を振るとリズムが
整いピッチが上がり,上手に走ることができる。
○最後まであきらめずに全力で走るようにする。
ゴールが近づいたらもうひとがんばりさせる。
○はじめから50mはいらない。
20m位を全力疾走し、走り抜けるように指示す
る。
今年の体力テストでは、急に結果は出ないと思います。しかし、運動のコツを教
え、実施するだけでも、結果は大きく変わってくると思います。私たち教員も運動の
特性をしっかりと理解していれば、ボール投げで『-50cm』などという記録は出ない
と思いました。
カリキュラムにある体つくり運動、体ほぐしの運動をうまく使い、子供たちに運動
のコツを理解させ、十分な準備時間を与えれば、満点ではなく、7点を目指して行け
ば、体力の得点も向上すると思われます。
日常の体育の授業を見直し、普段の研修で行われる教科の授業だけでなく、体育
の時間も授業改善を求められています。学力向上との両輪も大変ですが楽しい体育
の授業を目指していきましょう。
LET'S ENJOY PHYSICAL EDUCATION