骨粗鬆症と転倒・骨折予防 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 公衆衛生学分野 青柳 潔 寝たきりの原因 脳血管疾患 老衰 骨折・転倒 認知症 関節疾患 パーキンソン病 その他 0 5 10 15 20 25 (%) 脆弱性骨折 • 骨粗鬆症に伴う骨折 – 骨粗鬆症:全身性疾患であり、骨量の減少 と構造の異常により骨の強度が減少し、骨 折の危険性が高まった状態 • 好発部位 – 脊椎椎体、大腿骨頸部 – 橈骨遠位端、上腕骨近位端 • ADL, QOL低下 骨折後の相対死亡リスク Any Symptomatic Non-spine Hip Spine Foream Non-(HWS) 0.3 1 2 Relative Risk 5 10 16 Cauley JA. Osteoporos Int 2000; 11: 556-561 大腿骨頸部骨折発生率/10000 (全国調査1997) (人) 300 250 200 男性 女性 150 100 50 0 40 50 60 年齢 (歳) 70 80 90 大腿骨頸部骨折推計発生数 (人) 300,000 250,000 200,000 女 男 150,000 100,000 50,000 0 2000 2010 2020 2030 2040 2050 (年) 大腿骨頸部骨折発生率は 欧米に比べて日本で少ない スウェーデン アメリカ フランス 男性 女性 香港 韓国 日本(鳥取) 0 100 200 300 400 500 /100,000 (Hagino et al. Bone 1999) 転倒頻度は 白人に比べて日本人で低い 英国(ノッティンガム) 英国(全国) 英国(東北部) 英国(オックスフォード) 男性 ハワイ日系人 女性 日本(広島県御調町) 1.0 2.0 3.0 4.0 (Aoyagi et al. J Bone Miner Res 1998) 女性の椎体変形(既存骨折)有病率 (肥前大島) (%) 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 40- 50- 60- 70- 80- 全体 年齢(歳) (Jinbayashi, Aoyagi et al. Osteoporos Int 2002) 椎体骨折により障害される日常生活動作 14のADL評価項目のうち、95%CIが1をまたがない(有意)項目 「椎体骨折無し」例に対するodds比 0.0 腰を曲げ、軽い物を持ち上げる 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 (年齢補正) 床から5kgの物を持ち上げる 頭より高い所にある物に手を伸ばす 止まらずに階段を10段登る 重い家の仕事や庭の仕事 15kgの鞄又は3,4歳の子供を 持ち上げる 機能障害 (3項目以上に障害) 対象:40~89歳の日本人女性584例(椎体骨折例:86例)。 図は、すべて複数椎体骨折例。 Jinbayashi H. et al.,Osteoporos.Int.,2002;13:723–30.より作図 Female Osteoporosis Self-assessment Tool for Asians (FOSTA) 骨折高リスク者の質問票によるスクリーニング 式:(体重ー年齢)×0.2(小数点以下切り捨て) リスク:<-4:高 -4~-1:中 -1>:低 – 体重50kg、80歳→(50-80)×0.2=-6 – 体重50kg、60歳→(50-60)×0.2=-2 – 体重70kg、60歳→(70-60)×0.2=2 (Koh et al. Osteoporos Int 2001) Female Osteoporosis Self-assessment Tool for Asians (FOSTA) 体重 (kg) 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 85-89 90-94 40-44 45-49 50-54 55-59 低リスク 60-64 年齢 (歳) 65-69 70-74 75-79 中リスク: 骨量測定考慮 80-84 85-89 90-94 高リスク: 骨量測定 95-99 脆弱性骨折の既往: 骨量測定 12 骨粗鬆症の危険因子 • 介入出来ないもの – 年齢、性別、人種、月経の状況 • 介入出来るもの – 体重、栄養、運動、飲酒、喫煙 骨折防止をめざした骨粗鬆症治療 診断:X線像あるいは骨密度測定(YAM:70%) 骨粗鬆症 骨折リスクの判定 X線像:椎体に骨折あるいは変形あり 骨代謝マーカー:骨吸収の亢進あり 70歳以上 1つ以上にチェックがついた場合 骨折リスク大 積極的な骨代謝調節薬の使用 チェックがつかなかった場合 骨折リスク小 骨に必要な栄養素の補充 中村利孝:産業医科大学医学部整形外科 我が国で使用されている骨粗鬆症治療薬の骨折予防効果 薬剤 リセドロネート 椎体骨折 ++ 大腿骨頸部骨折 + 非椎体骨折 + アレンドロネート ++ + + エチドロネート + - - エストロゲン製剤 + + + カルシトニン(筋注) ± - - 活性型ビタミンD3製剤 ± - - ビタミンK2製剤 ± - - ラロキシフェン + - - ++:多数のエビデンスあり ±:前向き研究によるエビデンスあり +:二重盲検比較試験によるエビデンスあり -:エビデンスなし 萩野 浩,骨粗鬆症治療,2004:3;3,23-30. (我が国で骨粗鬆症治療薬として認可されている薬剤を抜粋) 転倒 性・年齢階級別転倒割合 (%) 30 25 20 男性 女性 15 10 5 0 65- 70- 75- 80- 全体 年齢(歳) 青柳、厚生研究大島町転倒調査1999 転倒者の転倒回数 (%) 60 50 40 男性 女性 30 20 10 0 1回 2回以上 青柳、厚生研究大島町転倒調査1999 転倒の時間帯 (%) 50 40 30 男性 女性 20 10 0 早朝 午前 午後 夜 深夜 青柳、厚生研究大島町転倒調査1999 転倒の場所 (%) 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 男性 女性 屋内 屋外 青柳、厚生研究大島町転倒調査1999 転倒の理由 つまずいた 滑った めまい 男性 女性 ふらつき その他 0 10 20 30 40 50 (%) 青柳、厚生研究大島町転倒調査1999 転倒によるケガ 何もなかった すり傷・切り傷 打撲 男性 女性 捻挫 骨折 その他 0 10 20 30 40 50 (%) 青柳、厚生研究大島町転倒調査1999 服薬数別転倒割合 (%) 50 40 30 男性 女性 20 10 0 なし 1-3種 4-7種 7種以上 青柳、厚生研究大島町転倒調査2001 転倒の危険因子1 • 高年齢 筋力低下、反応時間延長、深部感覚低下、平衡機能低下 • 過去6ヶ月以内の複数転倒の既往 • 身体的要因(疾患) 視覚異常:白内障、糖尿病性網膜症、緑内障、眼鏡不適合 筋骨格系疾患:下肢の変形性関節症、関節リウマチ 神経学的疾患:パーキンソン病、脊髄後索障害、てんかん発作 小脳疾患、認知障害、メニエール病 循環器疾患:不整脈、起立性低血圧、高血圧、心不全、 虚血性心疾患、脳循環不全、脳血管疾患 青柳: 骨粗鬆症診療ハンドブック 2002 転倒の危険因子2 • 薬剤 鎮静剤、睡眠薬、抗うつ薬、抗精神薬、降圧薬、血糖降下剤 強心剤、ステロイド剤、非ステロイド性消炎鎮痛薬 • 環境 段差、風呂・階段に手すりがない、照明不良 滑りやすい履き物、床が片付いていない 青柳: 骨粗鬆症診療ハンドブック 2002 転倒防止のストラテジー • • • • • 運動(筋力訓練、バランス能力向上訓練) 複数転倒者には、注意を促す 転倒を来しやすい疾患の治療 適切な薬剤使用(必要最小限の投与) 環境整備 (段差をなくす、風呂・階段に手すりをつける、 常夜灯の使用、滑りにくい履き物の着用、 床を片づける) 青柳: 骨粗鬆症診療ハンドブック 2002 ビタミンD投与は転倒を抑制する 0.7 0.6 確率 0.5 0.4 Ca + D Ca 0.3 0.2 0.1 0 0 1 2 転倒回数 3 4回以上 (Bischoff et al. J Bone Miner Res 2003) ヒッププロテクター ヒッププロテクターによる 骨折リスク減少 120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 • 日本 • 老人ホーム • 骨折リスクは、82%減少 プロテクター 対照 大腿骨頸部骨折発生率 (件/1000人年) (Harada et al. Osteoporos Int 2001) 短足は大腿骨頸部骨折を起こしにくい (発生率/1万人年) 120 100 80 60 40 20 0 70-74 年齢 60-69 40-59 高位 中位 下肢長 下位 (Opotowsky et al. J Bone Miner Res 2003) ご先祖様に感謝 脆弱性骨折の防止 • 個人リスク評価→個別の指導・治療 – 骨強度(骨量、骨質)の維持 • 生活習慣改善 • 薬物治療 Fragility 脆弱性 – 転倒防止 • ヒッププロテクター Fracture 骨折 Falls 転倒 Force 外力
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