番外編:いろいろな電気泳動

補足:分子量の求め方
SDS-PAGEの泳動像から分子量を推定するに
は?
タンパク質のバンドの移動距離を、分子量が既知のタンパク質の
ものと比較することで、目的のタンパク質の分子量を算出できる
同じゲルの中で既知のタンパク質(分子量マーカー)を泳動する
分子量マーカーのバンドの移動距離を測り、分子量と対応する
移動距離を片対グラフにプロットする
これを検量線として目的のバンドの移動距離から分子量を求める
SDS-PAGEの分子量マーカーに使用される代表的なタンパク質
タンパク質
ミオシン
βガラクトシダーゼ
フォスフォリラーゼb
フルクトース-6-リン酸キナーゼ
ウシ血清アルブミン
グルタミン酸デヒドロゲナーゼ
卵白アルブミン
乳酸ジヒドロゲナーゼ
カーボニックアンヒドラーゼ
トリオースリン酸イソメラーゼ
トリプシンインヒビター
リゾチーム
αラクトアルブミン
アプロチニン
由来
ウサギ骨格筋
E .coli
ウサギ骨格筋
ウサギ骨格筋
ウシ血清
ウシ肝臓
ニワトリ卵白
豚骨格筋
ウシ赤血球
ウサギ骨格筋
大豆
卵白
ウシ赤血球
ウシ肺
分子量(Da)
205,000
116,000
97,000
84,000
66,000
55,000
45,000
36,500
29,000
26,600
20,100
14,400
14,200
6,500
分子量算出の手順~バンドが綺麗に揃ったゲルの場合~
1)分子量マーカーの各バンドの位置を明確にし、分離ゲルの上端からの
移動距離を正確にはかる
分子量マー
カー
サンプル
3.6
6.7
12 .7
23.6
33.5
44.6mm
2)片対グラフの横軸(普通目盛)に移動距離、縦軸(対数目盛)に分子量
をとり、分子量マーカーの各バンドの値をプロットする
Protein
Phosphorylase b
Albumin
Ovalbumin
Carbonic anhydrase
Trypsin anhydrase
α-Lactalbumin
分子量(M.W.) 移動距離(㎜)
97000
3.6
66000
6.7
45000
12.7
30000
23.6
20100
33.5
14400
44.6
3)移動度-分子量標準曲線を求める
100000
-0.7341
分子量(M.W.)
y = 267249x
2
R = 0.9816
10000
0
10
20
30
移動距離(mm)
40
50
4)目的のバンドの位置を明確にし、移動距離を正確にはかる
5)その数値を3)で求めた標準曲線の式(y=267249x-0.7341)に代入し
分子量を算出する
分子量マー
カー
サンプル
28.5mm
267249×28.5 -0.7341=22851.49
求めるタンパクの分子量
分子量算出の手順~スマイリングしたゲルや別のゲルで比較する場合~
1)分子量マーカーの各バンドの位置を明確にし、分離ゲルの上端からの
移動距離を正確にはかる
2)レーンの同じ場所で泳動のフロントラインの移動距離を正確にはかる
分子量マー
カー
BPB
サンプル
3)フロントラインの移動距離を1として、それぞれの分子量マーカーのバン
ドの移動距離の相対値(=相対移動度:Rf値)を計算する
分子量マー
カー
サンプル
0.25
0.67
1.0
4)片対グラフの横軸(普通目盛)にRf値、縦軸(対数目盛)に分子量を
とり 、分子量マーカーの各バンドの値をプロットする
5)Rf値-分子量標準曲線を求める
Protein
Phosphorylase b
Albumin
Ovalbumin
Carbonic anhydrase
Trypsin anhydrase
α-Lactalbumin
分子量(M.W.)
97000
66000
45000
30000
20100
14400
Rf値
0.07
0.13
0.25
0.47
0.67
0.89
100000
-0.7245
分子量(M.W.)
y = 15154x
R2 = 0.9813
10000
0
0.2
0.4
0.6
Rf値
0.8
1
7)目的のバンドの位置を明確にし、移動距離を正確にはかる
8)そのサンプルが流れているレーンの同じ場所で、泳動のフロントライン
の移動距離をはかる
9)フロントラインの移動距離を1として、目的のタンパク質のRf値を計算し
5)で求めた標準曲線の式(y=15154x-0. 7425)に代入すると、分子量が
算出できる
分子量マー
カー
サンプル
0.57
1.0
15154×0.57 -0.7425=22771.73
求めるタンパクの分子量
二次元電気泳動での分子量マーカーの使い方
分子量マーカー
のバンド
SDS-PAGEで分子量を測定する上での注意点
・塩基性に富んだタンパク質はSDSの結合量が少なくなるため、移動度が
小さくなる=見かけの分子量が大きくなる
・タンパク分子内に疎水性に富んだ部分が多い場合は、SDSの結合量も
多くなり、移動度が大きくなる=見かけの分子量が小さくなる
・糖タンパク質や酸性タンパク質はSDSの結合量が少なく、移動度も小さい
=見かけの分子量が大きくなる
・多量体やサブユニット構造をとっているタンパク質分子では、SDS-PAGEで
わかるのはその単一ポリペプチドの分子量だけで、その分子が生体内で
機能している状態の分子量はわからない
例)
免疫グロブリン=重鎖2本と軽鎖2本がS-S結合した構造をもつ
S-S結合の切断により約50kDaのバンドと約22kDaのバンドがそれぞれ現れる
免疫グロブリンの構造
2本のL鎖と2本のH鎖で
構成されている
黄色い部分=Light chain
(L鎖)
緑色の部分=Heavy chain
(H鎖)
L鎖とH鎖、H鎖とH鎖同士はS-S結合で結ばれている