TPPとは、何か ・TPPとは=Trans-Pacific Partnership:環太平洋連携協定 シンガポール、NZ、チリ、ブルネイの4カ国による経済連携協定(通称P4)が2006に発効。 2010年4月より米国、豪州、ペルー、ベトナムが、10月よりマレーシアが加わり、9カ国で 環太平洋連携協定(TPP)の交渉開始。 小国間の経済連携から、 米国の加入で大きく変質 ・TPPの内容 物品貿易・・・原則的として即時または10年以内に段階的関税撤廃、特定のセク ターの自由化を除外しての交渉参加は認められない。 サービス貿易、人の移動等を含む包括的協定の締結に向けて24の作業部会で議論 を進めている。 【24の作業部会】 主席交渉官協議/市場アクセス(工業)/市場アクセス(繊維・医療品)/市場アクセス(農業)/ 原産地規則/貿易円滑化/衛生植物検疫/強制規格、任意規格及び適合性評価手続き/ 貿易救済(セーフガード等)/政府調達/ 知的財産/競争政策/サービス(越境サービス)/ サービス(金融)/サービス(電気通信)/サービス(商用関係者の移動)/電子商取引/投資/ 環境/労働/制度的事項/紛争解決/協力/分野横断的事項 ・原則関税撤廃を宣言し なければ交渉に参加すら できない。この点は交渉 の余地がない。(例外品 目原則なし) ・関税だけではなく、政府 調達、金融・電気通信・労 働などの規制・制度の改 革も求められる。 ・WTO、EPA/FTAとの違い WTO(世界貿易機関)・・・153の加盟国・地域で貿易自由化や貿易関連のルール 作り。加盟国は他の全加盟国の同種の産品について、 同じ関税率を適用 FTA(自由貿易協定)・・・一部の国・地域の間だけで貿易をWTOより自由化(関 税撤廃・引き下げ) EPA(経済連携協定)・・・FTAに加えて、投資の自由化や規制・制度の調和など 幅広く経済関係を強化 ・WTOのように交渉成立 で世界中が対象となるわ けではない。 ・EPA/FTAのように各国 の事情に応じた柔軟な交 1 渉ができるわけではな 1 い。 TPPとは、何か② 日本の主な貿易相手国/経済連携の状況 TPP参加国+日本のGDPの割合 豪州 日本 米国 ・TPP交渉参加国で、日本とEPA/FTA交渉を 行っていないのは米国(とNZ)だけ。 ・日本の貿易ベストテンでみてもTPP交渉参加国 は米国と豪州(EPA交渉中)だけ。 ・仮に日本が加盟した場合、加盟国のGDPの割 合は日米が圧倒的となり、実質的な日米EPAに なるだけ。一方、日本が参加しない場合には、小 国相手のみの米国にはメリットなし。 ・中国、EU、韓国、台湾等が参加しないTPPに加 盟しても、日本は自由貿易のメリットはあまり大き くない。 2 ・したがって、「TPPに参加しなくては日本は自由 貿易から取り残される」というのは大袈裟な議 2 TPPとは、何か③ 日本の関税率 農産品関税率 70 【例外的高関税の農産物の例】 62.2 60 50 40 34.6 30 20 精米:778% 小麦:252% バター:360%(北海道等) 粗糖:328%(北海道、奄美・沖縄等) 19.5 11.7 10 5.5 3.3 0 日本 米国 EU 豪州 韓国 タイ ・日本は農業も含めて決して国を開いていないわけ ではない。むしろ世界有数の低関税の開放国。 出典:OECD/ Post-Uruguay Round Tariff Regimes1999 鉱工業品等関税率 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 8.0 6.6 2.5 日本 3.3 米国 4.0 3.8 EU 豪州 ・日本の高関税品目は、食料自給率の維持、国土 や環境保全等の多面的機能の維持という国家戦略 に関するものや、それがなければ地域経済が成り 立たない道東や離島の基幹産業に限定。 ・日本にとっての自由貿易の目的は、「国を開く」こと ではなく、いかにして相手国を「開かせるか」というこ と。 韓国 タイ 出典:WTO/World Tariff Profiles 2010 3 TPPの効果 経済への影響(各省の試算) ・各省の試算は前提条件に よって必ずしも信頼できな いが、TPPに参加だけでは たいした経済効果がない。 ・一方、農業への影響は壊 滅的。 4 TPPの効果② 【米国の主な高関税品目】 乗用車:2.5%、トラック:25% ベアリング:9% ポリエステル:6.5% カラーTV:5%、スピーカー:4.9% 仮に日米EPAだとしても、 ・米国の有税品目のほとんどは極めて低率 ・むしろ為替レートの変動の方が貿易に与える影響は大 ・日本は米国に対して3/4は無税で開放しており、米国に 5 とって日本の関税メリットはごく一部のみ 5 TPP交渉で要求が予想される規制改革 政府審議会等へのアクセ ス改善 規制解釈の透明性の保証 牛肉の月齢制限撤廃 IT調達制度の調和 6 TPP交渉で要求が予想される規制改革② 外国人弁護士の業務拡大 郵政事業の見直し 農協等の共済への参入 保険事業の対等競争 電気通信網の開放 国境を越えたM&A促進 会計基準の見直し 7 TPP交渉で要求が予想される規制改革③ ・米国にとってのTPPのメリットは、関税撤廃というより、絶えざる規制改革要求を条約にしたがっ て出せること。いわばかつての「規制改革イニシアティブに基づく米国政府からの要望書」(いわ ゆる年次改革要望書)を恒例化すること。 ・現在のところ日本政府はこの交渉の詳細な状況を把握していない模様であるが、入ってみなけ れば内容がわからないというのは「ぼったくりバー」と同じ。 8 日本のとるべき自由貿易戦略 ・貿易額が大きくいずれもTPP交渉参加国ではない韓国、中国、EU、台湾と、いかに二国間・多国間で戦略 的に経済連携協定を結べるかが鍵。 9 ・米国を除けばTPP交渉参加国の豪州、NZやカナダともEPA交渉が進みつつある。経済連携協定で米国 包囲網を作り、米国との有利な交渉状況を作るべき。 9 日本のとるべき自由貿易戦略 包括的経済連携に関する基本方針(2010年11月9日閣議決定) 【決まっていること】 ・アジア太平洋地域内の二国間EPA、広域経済連携及びAPEC内における分野別取組の積極的 な推進に向け主導的な役割を果たし、アジア太平洋地域における21世紀型の貿易・投資ルール 形成に向けて主導的に取り組む。 ・特に、政治的・経済的に重要で、我が国に特に大きな利益をもたらすEPAや広域経済連携につい ては、センシティブ品目について配慮を行いつつ、すべての品目を自由化交渉対象とし、交渉を通 じて、高いレベルの経済連携を目指す。 ・FTAAPに向けた道筋の中で唯一交渉が開始している環太平洋パートナーシップ(TPP)協定につ いては、その情報収集を進めながら対応していく必要があり、国内の環境整備を早急に進めると ともに、関係国との協議を開始する。 ・センシティブ品目について配慮を行いながら、戦略的にアジア太平洋地域での経済連携を進めるべきであ り、情緒的な「開国論」や「乗り遅れ論」に惑わされるべきではない。 ・TPPは情報収集のための協議開始を決めただけであり、交渉参加国の真の狙いを見極め、日本の経済連 携の推進や国益に適うものなのかどうか前のめりにならずに冷静に判断すべき。 ・その際、世界の成長センターである中国、韓国、台湾、ASEAN、インド等のアジア諸国との連携のために はいかなる道のりをとるのがよいのかを冷静に考慮するべき。 10 農業戦略 ・TPPの推進とは関係なく、日本の農林水産業強化、農山漁村の再生のための政策転換はす でに政権交代後始まっている。 ・昨年の3月30日に、まさに政治主導の議論によって「食料・農業・農村基本計画」が策定され 閣議決定。同計画では、食料・農業・農村政策を日本の国家戦略と位置付け、戸別所得補償 制度の導入、農業・農村の6次産業化の推進、食の安全と消費者の信頼の確保などによって 食料自給率50%を達成することを目標としている。(別添) 11
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