補助率下げ・交付金化を指針に盛る 三位一体改革で自民 - JA愛知中央会

農 政 対 策 資 料
平成22年11月
農政をめぐる情勢
目
次
1.平成22年度補正予算をめぐる情勢 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
2.特別会計仕分けをめぐる情勢 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
3.TPPをめぐる情勢 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
J
A
愛
知
中
央
会
9
今月号のあらまし
1.平成22年度補正予算をめぐる情勢
10月26日、農林水産省は平成22年度農林水産関係補正予算の概要につい
て明らかにした。
その中には、輸入急増の作目や異常気象の影響を受けている作目の産地体質強
化、口蹄疫からの復興を図る取組みに必要な共同利用施設整備等を緊急的に支援
するための交付金、園芸産地が異常気象の状況下でも安定的な生産が可能となる
支援等が示されている。
2.特別会計仕分けをめぐる情勢
10月27日から30日にかけて、政府全ての特別会計(18特別会計)に対
し行政刷新会議による事業仕分け第3弾が行われた。
食料安定供給特別会計では、米や麦の備蓄にかかわる食糧管理について、10
~20%程度の国庫負担の削減と判定された。また、米と麦の備蓄量の引き下げ、
麦のマークアップの水準、ミニマムアクセス(MA)米の輸入方式の見直し等が
求められた。
3.TPPをめぐる情勢
11月14日、横浜市で開催されていたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)
において、将来的なFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)構想実現への道筋を
示した首脳宣言である「横浜ビジョン」が採択された。
FTAAPの土台として、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)やASEA
N(東南アジア諸国連合)等を軸とすることを確認し、3つの道筋(① ASEA
N+3、② ASEAN+6、③ TPP)が例として提示された。
また、APEC首脳会議では、菅直人首相は11月9日に閣議決定した「包括
的経済連携に関する基本方針」を説明し、高いレベルの経済連携を目指す考えを
表明している。
1.平成22年度補正予算をめぐる情勢
―― 農林水産関係補正予算は1,932億円 ――
10月26日、農林水産省は平成22年度農林水産関係補正予算の概要を明らか
にした。
その中には、食料自給率向上・産地再生緊急対策(円高により輸入が急増してい
る作目や異常気象の影響を受けている作目の産地体質強化、口蹄疫からの復興を図
る取組みに必要な共同利用施設整備等を緊急的に支援するための交付金を県に交付
するもの)や、異常気象対応型園芸産地強化事業(高温等の被害を受けた園芸産地
が異常気象の状況下でも安定的な生産が可能となる支援)等が含まれている。
< 平成22年度農林水産関係補正予算の概要(総額1,932億円) >
(1)食料自給率の向上に向けた生産基盤の強化
① 農業農村整備事業(公共)
② 農山漁村地域整備交付金(公共)
③ 農業活性化緊急基盤整備事業
④ 食料自給率向上・産地再生緊急対策
⑤ 経営体育成交付金
⑥ 異常気象対応型園芸産地強化事業
⑦ さとうきび産地緊急支援対策
⑧ 製糖施設緊急整備対策事業
279億円
321
30
170
6
25
4
14
(2)森林・林業再生プランの実現
(略)
(3)農山漁村の6次産業化の推進
① 資源循環型地域活力向上対策事業
② 6次産業化推進人材育成事業
③ 食を核とした地域活性化支援事業
④ 農山漁村活性化プロジェクト支援交付金
45億円
1
2
20
(4)水産業の振興
(略)
(5)口蹄疫対策
① 口蹄疫緊急対策
② 口蹄疫畜産再生基金事業
164億円
15
(6)災害復旧等
① 災害復旧事業等(公共)
② 養殖施設災害復旧事業
225億円
5
1
< 農林水産関係補正予算の主な内容 >
(1)食料自給率の向上に向けた生産基盤の強化
① 農業農村整備事業(公共)……… 278億75百万円
ア 対策のポイント
農業水利施設の保全管理や畑地かんがいの促進、小水力発電の整備支援
など、生産基盤の整備による地域活性化
イ 政策目標
・ 適時適切な補修や更新等を通じて、基幹的水利施設が有する約170万
haの水田(全国の水田の約7割)及び約40万haの畑(全国の畑の約2割)
に対する農業用水の安定供給機能等を確保
・ 基盤整備の実施により対象農地の耕地利用率を平成27年度までに10
8%以上に向上
・ 水田の汎用化のための整備により対象農地での麦・大豆の作付率を平成
27年度までに17%以上に向上
※ 耕地利用率とは、耕地面積を100とした作付延べ面積の割合を示す。
食料・農業・農村基本計画において、平成32年に耕地利用率を108%として
目標設定している(作付面積495万ha、耕地面積461万ha)。
ウ 具体的な内容
1)農業水利施設の保全管理
2)再生可能エネルギーである小水力発電の整備支援
3)基盤整備による地域活性化の推進
② 農山漁村地域整備交付金(公共)……… 321億29百万円
ア 対策のポイント
自治体が地域ニーズにあった計画を自ら策定し、地域の自主性と創意工
夫による農山漁村地域の総合的な整備を推進
イ 政策目標
・ 耕地利用率を108%以上に向上、約170万haの水田及び約40万ha
の畑に対する農業用水の安定供給機能の確保等
・ 京都議定書の森林吸収目標1,300万炭素トンの達成に向けた間伐等
の森林整備及び必要な路網の整備等
・ 自給率目標達成のため水産物を約14.5万トン増産等
ウ 具体的な内容
1)都道府県又は市町村は、農山漁村地域整備の目標等を記載した農山漁
村地域整備計画を策定し事業を実施
2
2)農業農村、森林、水産の各分野における整備を自由に選択できるとと
もに、これと一体となって事業効果を高めるために必要な効果促進事業
を総合的、一体的に実施
農業農村分野 …… 農用地整備、農業用用排水施設整備、農地防災、
農業集落排水施設整備等
3)国から都道府県に交付金を交付し、都道府県は自らの裁量により地区
毎に配分(都道府県の裁量で地区間の融通が可能)
③ 農業活性化緊急基盤整備事業 ……… 30億円
ア 対策のポイント
地域農業の活性化に向けた産地振興や多様な畑作物の生産拡大等を通
じ、元気な地域づくりに貢献
イ 政策目標
・ 約170万haの水田及び約40万haの畑に対する農業用水の安定供給機能等
を確保
ウ 具体的な内容
1)農業者の所得を確保し、農村地域の経済の活性化が図られるよう、地
域農業の振興に必要な整備を緊急的に実施
・ 畑作物の高付加価値作物への転換等を促進するための、畑地かんが
い施設の整備や農地の保全
・ 米以外の作付や二毛作等を可能とする排水施設や暗渠排水等の導入
・ 安定的に農業用水を確保するため、老朽化が進んだ農業用水利施設
の補修・修繕
④ 食料自給率向上・産地再生緊急対策 ……… 170億円
ア 対策のポイント
食料自給率50%を実現し、農業分野の成長産業化を図るための戦略作
物の生産拡大等の取組、円高により輸入が急増している作目や異常気象の
影響を受けている作目の産地の体質強化、及び口蹄疫からの復興を図る取
組に必要な共同利用施設整備等を緊急的に支援するため、都道府県に交付
金を交付
イ 政策目標
・ 戦略作物の生産拡大等や輸入急増作目等の体質強化による良質な農産物
の安定供給(事業効果544億円)
・ 口蹄疫の被害を受けた地域における地域農業の復興
3
ウ 具体的な内容
1)農業分野の成長産業化を図るための戦略作物の生産拡大等の取組
2)円高による輸入急増や高温障害等に緊急的に対応するための取組
3)口蹄疫の被害からの復興のための取組
⑤ 経営体育成交付金 ……… 5億83百万円
ア 対策のポイント
現行の経営体育成交付金のうち雇用創出効果が特に期待できるメニュ
ーに重点を置き、意欲ある経営体が経営規模の拡大や加工・流通・販売等
の経営の多角化・6次産業化等に取り組む際に必要となる農業用機械・施
設の整備等の経費を支援
イ 政策目標
・ 雇用者数の増加40,800人・日(常勤雇用者170人に相当)
ウ 具体的な内容
1)経営体に対する以下の支援を市町村が策定する計画に基づき実施
・ 融資主体型補助
・ 追加的信用供与補助
⑥ 異常気象対応型園芸産地強化事業 ……… 25億円
ア 対策のポイント
高温等の被害を受けた園芸産地が、異常気象の状況下でも安定的に農業
生産を可能とするための支援
イ 政策目標
・ 被害のあった事業実施地区において、次期作における対象作物の単収を
平年単収以上に回復
ウ 具体的な内容
1)園芸作物推進対策
2)園芸施設対策
(2)農山漁村の6次産業化の推進
① 資源循環型地域活力向上対策事業 ……… 45億円
ア 対策のポイント
農山漁村に賦存するバイオマス等を活用する取組のうち、雇用創出効果
を早期に発現することが見込まれるものについて施設整備を支援
4
イ 政策目標
・ 今後5年間で30万炭素トン相当のバイオマス、再生可能エネルギーの
利活用を増進
ウ 具体的な内容
1)施設整備
2)事業成果拡大
② 6次産業化推進人材育成事業……… 50百万円
ア 対策のポイント
農林漁業者等による農山漁村の6次産業化を推進するため、6次産業化
に取り組む農林漁業者等をサポートする人材を育成
イ 政策目標
・ 6次産業化についての専門的知識を総合的に習得した人材を育成し、農
林漁業者等の加工・販売への取組等を支援することにより、農山漁村の6
次産業化を促進
ウ 具体的な内容
1)6次産業化に関する専門的知識の習得
2)現場での実地研修
③ 食を核とした地域活性化支援事業 ……… 2億円
ア 対策のポイント
地域の資源である「食」を核とした地域興しの取組を支援することによ
り、地域経済を活性化
イ 政策目標
・ 3年後の売上高を20%増加、観光客数の増加及びそれに伴う経済波及
効果
ウ 具体的な内容
1)関係者の枠組構築
2)事業戦略の策定・ブラッシュアップ
3)商品・メニュー開発
4)販路拡大を核とした地域の取組
④ 農山漁村活性化プロジェクト支援交付金 ……… 20億円
ア 対策のポイント
農山漁村活性化法に基づき市町村等が作成した定住・交流促進のための
活性化計画の実現に必要な施設整備を中心とした総合的取組を支援
5
イ 政策目標
・ 生産された地域産物や地域資源の活用、販路拡大に係る取組みを新たに
創出(今後5年間で250グループ)
・ 全国の市町村の過半(1,000以上)で定住、交流に資する農山漁村
の活性化を促進(平成27年度)
ウ 具体的な内容
1)生産基盤及び施設の整備
2)定住環境の整備
3)地域間交流の促進
6
2.特別会計仕分けをめぐる情勢
―― 事業仕分けによる特別会計の評価結果は予算圧縮と見直し ――
10月27日から30日にかけて、政府全ての特別会計(18特別会計)に対し
行政刷新会議による事業仕分け第3弾が行われた。
その中で農林水産省関係は5つの特別会計(農業関係は食料安定供給特別会計と
農業共済再保険特別会計の2つ)が対象となった。
食料安定供給特別会計では、米や麦の備蓄にかかわる食糧管理について、10~
20%程度の国庫負担の削減と判定された。また、米と麦の備蓄量の引き下げ、麦
のマークアップの水準、ミニマムアクセス(MA)米の輸入方式の見直し等が求め
られた。
米の備蓄については、コストを削減する観点から、
① 米の需要量が減ったので備蓄量も減らすべき
② 政府米備蓄については赤字のたれ流し
③ 輸入米で備蓄をしても何の問題もない
等の意見が出され、農水省の筒井副大臣による、
「今後の世界的食料危機に対する
食料安全保障の観点からの重要性」については理解を得られなかった。
また、農地集積を支援する農地利用集積事業、農地保有合理化促進事業は、とも
に予算要求は10~20%程度の圧縮との判定となった。
農業共済再保険特別会計仕分けでは、農業共済で被害がなかった場合に掛け金の
一部を戻す無事戻し金について議論が集中した。無事戻し金を不要とする声が相次
ぎ、結論として廃止を含めた抜本的な見直しが必要と判定され、共済掛け金を減ら
すことと合わせて検討するよう求められた。
政府は、11月1日に23年度予算編成に向けた閣僚委員会を開催し、子供手当
の上積み等、今後の調整に難航が予想される主要項目について、月内に方向性を出
すことを決めている。今後、国家戦略室を中心に省庁間の調整を行い、12月上旬
に予算編成の基本方針を策定することとしている。
7
< 評価結果の概要 >
(1)食料安定供給特別会計
① 農地保有合理化促進事業、農地利用集積事業
予算要求を10~20%程度圧縮
② 食糧管理
米麦の備蓄量、麦のマークアップの水準、MA米の輸入方式の見直し等を
通じ、予算要求の10~20%程度圧縮
※ 麦のマークアップとは、輸入麦の価格のうち、国家貿易等の麦の制度を運営する
ために必要となる政府管理経費、及び国内産麦等の生産を振興するために必要とな
る経費に充当されるもの。
③ 制度のあり方
・ 食料に関する新たな特別会計に再編(食料安定供給特別会計・漁船再保
険及び漁業共済保険特別会計・農業共済再保険特別会計)
・ 農業経営基盤強化勘定の廃止
・ 国有農地及び政府備蓄倉庫の有利な価格での売却
(2)農業共済再保険特別会計
① 漁船再保険及び漁業共済保険特別会計と統合、また、食料安定供給特別会
計との将来的な統合を検討
② 勘定間の資金融通等の検討と併せて、再保険支払い基金勘定の廃止を検討
③ 無事戻し金の廃止を含めた抜本的見直しを検討
8
3.TPPをめぐる情勢
―― APEC首脳会議でFTA締結に積極的発言 ――
11月14日、横浜市で開催されていたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)
において、将来的なFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)構想実現への道筋を示
した首脳宣言である「横浜ビジョン」が採択された。FTAAPの土台として、T
PP(環太平洋戦略的経済連携協定)やASEAN(東南アジア諸国連合)等を軸
とすることを確認している。
FTAAPとは、アジア太平洋自由貿易圏(Free Trade Area of Asia-Pacific)と
いう、APECの加盟国全域(2010年10月現在で21ヶ国)において自由貿
易圏を構築する構想の名称であり、その実現への道筋として、
① ASEAN+3(日本・中国・韓国)
② ASEAN+6(日中韓・インド・オーストラリア・ニュージーランド)
③ TPP(シンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイ・米国・オース
トラリア・ペルー・ベトナム・マレーシア)
の3つが例として提示された。
APEC(21ヶ国・地域)
TPP(9ヶ国)
日本
カナダ
中国
メキシコ
ニュージーランド
チリ
韓国
ロシア
オーストラリア
米国
ペルー
香港
台湾
フィリピン
マレーシア
パプアニュー
ギニア
タイ
シンガポール
インドネシア
ブルネイ
ベトナム
ミャンマー、カンボジア、ラオス
ASEAN(10ヶ国)
(出典)日本農業新聞
(11/16)
FTAAP構想
(アジア太平洋自由貿易圏)
TPP
ASEAN + 3
(日中韓)
9
ASEAN + 6
(日中韓,インド,オースト
ラリア,ニュージーランド)
FTAAPを「包括的で質が高い」経済連携と位置付け、実現に向け各国で具体
的な措置をしていくことを確認したが、協定にどの程度の拘束力を持たせるかにつ
いて、完全な一致はされていない。
APEC首脳会議では、菅直人首相は11月9日に閣議決定した「包括的経済連
携に関する基本方針」を説明し、高いレベルの経済連携を目指す考えを表明してい
る。その中には、開国と農業再生を両立させる戦略も含まれていると発言している
が、先に農林水産省の提示したTPP交渉参加による食料自給率の低下(40%か
ら14%)等、食料・農業・農村基本計画に反する結果への対策は見えてこない。
また、会合後の記者会見では、2国間のFTA(経済連携協定)やTPP以外の
多国間の経済連携も含めて貿易の自由化を目指すことを強調した。
(1)これまでの経緯
① TPP交渉参加に踏み切ろうとする菅政権
9月9日の第1回新成長戦略実現会議において、菅首相は、11月に横浜
で開催されるAPEC首脳会議までに、わが国としてEPAにいかに取り組
むかの基本方針を決定すると示した。
また、菅首相は、10月1日の衆参両院本会議における所信表明でも、T
PP交渉等への参加を検討し、アジア太平洋自由貿易圏の構築を目指すと発
言し、EPAの推進についてきわめて意欲的な発言を行った。
11月6日には関係閣僚委員会において、「包括的経済連携に関する基本
方針」を取りまとめ、9日にこれを閣議決定した。方針の中では、参加か否
かの検討は先送りしたものの、関係国との協議を開始すると明記した。菅首
相は、経済連携の推進と農業再生の両立を掲げた基本方針の実現を目指し、
開国姿勢を強調している。
② EPA推進の働きかけを強める経済界の動き
10月21日、日本経団連は、TPP交渉への早期参加とわが国農業の構
造改革による競争力強化を求める緊急提言をまとめ、第3回新成長戦略実現
会議に提出した。
また、11月1日には、日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友
会の経済三団体主催によるTPPへの参加を求める緊急集会が開催され、政
府に対し、APECの首脳会議での参加表明を求める内容の決議を採択した。
③ TPP交渉参加に関するマスコミの論調
TPP交渉参加に対するマスコミの論調は、毎日新聞は10月26日、「消
極策に甘んじれば悔いを百年の後に残す、勇気をもってTPPへの参加を決
断すべき」と社説に記載し、読売新聞においては10月27日、「この連携
に積極的に参加できるよう決断すべき」とする等、多くの全国紙のTPP交
10
渉参加に積極的な論調を強めている。
一方、地方紙では、地域経済に対する影響をふまえ、TPP交渉参加に慎
重な対応を求める論調が見られる。
④ JAグループの取り組み
9月30日、茂木全中会長をはじめ全国連8団体の代表が鹿野農林水産大
臣と面会し、茂木会長から菅首相発言等に対して懸念を表明した。
また、10月の全中理事会において「EPA基本方針策定に関するJAグ
ループの基本的考え方」を整理し、これに基づき筒井・篠原両農林水産副大
臣や岡田民主党幹事長、民主党APEC・EPA・FTA対応検討PT、自
由民主党農林水産物貿易調査会に対して説明を行った。
また、11月10日には、政府におけるEPA基本方針策定の検討状況を
確認するとともに、TPP交渉への参加に断固反対し、将来にわたって日本
の安全・安心な食を守るという意思結集をはかるため、全国3,000人規模
の全国集会を開催し、併せてデモ行進を実施した。
(2)今後の動向
① 政府の動向
11月11日、政府は2011年度農業予算を検討する初めての関係4閣
僚会合を開催し、「包括的経済連携に関する基本方針」に盛り込んだ農業の
競争力強化に向けて、TPP交渉への参加・不参加にかかわらず、2国間の
EPAやFTAに対応できる農業の競争力強化を急ぐ方針を示した。同時に、
必要に応じて2011年度予算を「総合的に」見直す考えも示している。
菅直人首相を議長とする「農業構造改革推進本部(仮称)」が来年6月を
目途に農業対策の基本方針を取りまとめるが、予算への反映は2012年度
以降になるため、関係4閣僚会合で議論を前倒しで行うこととしている。
今後は、関係省庁の副大臣レベルで協議を進め、関係4閣僚会合で最終決
定する予定である。
また、政府は、11月15日の経済連携に関する閣僚委員会で、「FTA
AP(アジア太平洋自由貿易圏)・EPA(経済連携協定)のための閣僚会
合」の新設を決定している。この中で、日本が協議開始を決めたTPPにつ
いて交渉参加の是非を6月に判断し、また他と合わせ、来年11月に米国ハ
ワイで開かれるAPEC首脳会議に向けて協議を行うこととしている。
② JAグループの動向
JAグループとしては、APEC首脳会議後の取組みとして、
1)マスコミ・関係団体等への理解促進の取組み
2)都道府県知事、市町村長、都道府県・市町村議会議長への要請活動
11
3)TPP交渉への参加に反対する署名活動
について、情勢に応じた対応を提起することとしている。
(3)TPP参加での国境措置撤廃による農畜産物の生産への影響
10月22日、農林水産省は、関税全廃を原則とするTPPに日本が参加し
た場合、国内の農業生産額が4.1兆円減少するとの試算を提示した。2008
年の農業総産出額8兆4,736億円の48%にも当たり、農業は壊滅的な打撃
を受けることとなる。
また、食料自給率は、現在の40%から14%まで下落することとなり、食
料・農業・農村基本計画で目標とした自給率50%には遠く及ばなくなる。
一方、本県における影響額については、県及びJA愛知中央会がそれぞれ独
自に試算した。試算の考え方は農林水産省と同様で、大きな影響を受けると思
われる農畜産物は米、牛乳乳製品、牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、小麦、茶、かん
きつ類等で、県試算で824億円、中央会試算で902億円の生産額減少とな
った。
県試算と中央会試算の主な相違点は、次のとおりである。
1)米について、県試算では、銘柄米、有機米等として米生産の 1 割は関税
撤廃後も残るとしているが、中央会試算では、愛知県の米は他県の米と比
べ競争力が弱くコメ生産は全滅するという点。
2)鶏肉・鶏卵について、県試算では、愛知県は名古屋コーチン等の銘柄の
鶏肉・鶏卵が多く、これらは関税撤廃後も残るとしているが、中央会試算
では、鶏肉・鶏卵についても、他県が関税撤廃により影響を受け、そのし
わ寄せにより、全国と同程度の水準での影響を受けるとしている点。
なお、その他、多面的機能の喪失(全国で3.7兆円)
、食品産業等の関連産業
への影響(農業も含めて全国でGDP7.9兆円)がある。
12
(参考1) 国境措置撤廃による農畜産物の生産への影響額試算(比較)
全
品目
米
麦類
甘味資
源作物
牛乳
乳製品
牛肉
国
愛
愛知県試算
国影響額試算
(億円)
19,700
1,000
試算の考え方
影響額
(億円)
新潟産コシヒカリ、有
機米等のこだわり米等
を除いて置き換わる。
311
国内産小麦 100%を
セールスポイントとし
た小麦粉用小麦を除
いて置き換わる。
品質格差が無く、すべ
1,500 て置き換わる。
4,500
乳製品は生クリーム等
を除いて置き換わる。
飲用乳は業務用牛乳
等を中心に 2 割が置
き換わる。
4,500
肉質4,5等級(25%)
は残り、3等級以下は
置き換わる。ただし価
格は32%の低下。
300 残るが、そのほかは置
き換わる。
銘柄豚は残り、その他
豚肉
4,600 は置き換わる。
鶏肉
1,900 が置き換わる。
鶏卵
1,500 当等用と加工用の1/
業務・加工用の 1/2
豆類
高級和菓子用を除い
330 て置き換わる。
でんぷん原料、こんに
その他
合計
1,170 ゃくいも、、加工用トマ
ト、果汁等
4 兆 1,000 億円
―
試算の考え方
346
愛知産は、こだわり米等
は少なく、ほとんどの米
が外国産米等に置き換
わる。
8
愛知産小麦をはじめ麦
類はコストを償えず、す
べての作付けがなくな
る。
―
214
71
214
80
北海道の乳製品向け生
乳が移入され、価格競争
の弱い愛知県の酪農は
消滅する。
肉質4,5等級(15%)は
残り、3等級以下は置き
換わる。ただし価格は3
2%の低下。
1 番茶及び 2 番茶は残る
4
2 が、そのほかは置き換わ
る。
銘柄豚は残り、その他は
158
152 置き換わる。
3
30 置き換わる。
業務・加工用の 1/2が
業務・加工用のうち弁当
49
―
70 等用と加工用の1/2が
置き換わる。
高級和菓子用を除いて
0 置き換わる。
6
(かんきつ
果汁)
824 億円
13
JA愛知中央会試算
8
業務・加工用のうち弁
2が置き換わる。
県
影響額
(億円)
1 番茶及び 2 番茶は
茶
知
―
902.4 億円
愛知県の農業産出額の
28%に相当
(参考2) 「包括的経済連携に関する基本方針」決定後の推進体制
(出典)内閣官房包括的経済連携に関する閣僚委員会提出資料
(平成 22 年 11 月 15 日)
農 政 を め ぐ る 情 勢
平成 22 年 11 月 26 日
編集・発行
180部
愛知県農業協同組合中央会
〒460-0003 名古屋市中区錦三丁目3番8号
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印
刷
有限会社
電話
052(951)6944
〈ファクシミリ
ト
リ
ム
052(505)7422
〈ファクシミリ
1
052(957)1941〉
052(505)7485〉