講演要旨 自由貿易と日本の農業 岩佐 ∼TPP交渉参加に関する要請∼ 透氏(コープネット事業連合 013/05/07 コープのまなび場 総合企画政策推進担当) 於 いばらきコープ本部 1、自由貿易とルール作り ①人類の発展にとって自由貿易は不可欠なものだった。自給自足の生活からそれぞれの生 産物を交換することが貨幣を生み、分業化が進むなかで生産の効率化・高度化が進んだ。 ②自由貿易にはメリットとデメリットがある(諸刃の刃) 。自国に無いものやより安価で手 に入れることが出来るようになり、また、輸出を通して稼ぐことがメリットとしてあげ ることが出来る一方で、競争が激しくなることで自国の弱い産業は淘汰されたり、他国 の影響をより受けやすくなるというデメリットが挙げられる。 ③自由貿易に対して関税障壁(税金を掛けて内外価格差を縮める)や非関税障壁(数量の 制限・国内基準の適用)を設けて自国の産業の保護するのが保護貿易。日本では米、小 麦、乳製品などに設定し守ってきた。 ④1929年の世界恐慌が第2次世界大戦の原因の一つになったことの反省(=不自由貿 易は戦争の原因になる)から国際協力と自由貿易(無差別的対応の確保、関税の軽減) をベースにした国際的な貿易のルールづくりが進められてきた(1995年にWTOが 157カ国の参加で設立)。しかし参加国やルール作りの対象が広がる中で国際的な合意 づくりが困難になってきて、暗礁に乗り上げてきた。 ⑤157カ国での合意づくりが停滞してしまったので、個別の国の間での関税の軽減をベ ースにした「先取り」ルール作りが広がっていった。その中の一つの枠組みがTPP。 2、TPPとは ①アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想を実現する過程として出現してきた枠組み。 3月15日の安部首相の交渉参加の表明では政権公約を守り、日本の主権・農・食を守 ること、国民への情報提供を約束している。 ②TPP参加で心配されていることについて ・ アメリカ等の基準の押し付けにより日本の食品安全基準が低下することが懸念され ている。食品の定義や規制は国によって異なり、食文化も食料生産の事情も違い、日 本の方が基準が緩いものもある。TPPへの参加に関わらず、科学的知見に基づく国 際基準を遵守し、予防原則を尊重し、リスクコミュニケーションが食の安全確保には 大切。 ・ 共済制度への攻撃が懸念されている。共済制度は相互扶助を基本とした日本ならでは の制度。規制に対しては生協としては強く反対していく。 ・ 自由診療の枠が拡大されることが国民皆保険制度の崩壊につながることが懸念され ている。収入が少ない人が必要な医療が受けられないことにつながるのが心配。生協 としても現状の制度が後退しないように求めていく。 ・ 日本の農業の崩壊につながるとの懸念。関税を下げたら、国際競争力が弱い分野は大 打撃を受ける可能性がある。関税を下げるのであれば、弱い分野への対策、一定程度 の例外的な扱い、農業再生のための方策が必要。 ③農業の問題を考えるにあたっては、農業が民間のものなのか、公共のものなのかといっ た論点からの整理が必要。具体的には、食料安全保障機能(国民への食料の安定供給は 国の責務であること)、農業の持つ多面的機能(環境対策、過疎化対策、…)などからの 検討が必要。 ④関税が撤廃された時にはこの2つの機能を維持するために税金を投入しての支援(国)、 農家・農業関係者による食料自給力の維持・向上、消費者の支持の3点から支えること が必要。 ⑤農業を守るためには消費者にも選ぶ責任があるという自覚も必要。消費者がどういう意 志をもって何を選ぶかがフードチェーンの生命線であることを自覚して行動することが 大切。 ⑥いばらきコープでは、これからも消費者の持つ権利としての選択の自由を維持しながら、 自らの意志として食と農を守る立場からの選択につながる応援(「産直」の取り組み、商 品の供給を通した情報提供と参加の機会の提案)を推進していく。 以 上
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