準天頂衛星による 航空用衛星航法システムの構成

電子情報通信学会
SANE研究会
June 24, 2010
準天頂衛星による
航空用衛星航法システムの構成
電子航法研究所
坂井 丈泰、 福島 荘之介、 伊藤 憲、 工藤 正博
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はじめに
• 準天頂衛星「みちびき」の打上げ準備が進められている:
– 準天頂衛星システム(QZSS) :準天頂衛星軌道上の測位衛星による測位サービス。
– GPS補完信号(測位衛星として動作)に加え、補強信号(付加的な情報を提供して全
体の性能向上を図る)を放送。L1帯はL1-SAIF信号。
• 航空用GPS補強サービスMSAS:
– 航空局が運用中(2007年~)の静止衛星によるGPS補強サービス。
– 航空用補強システムとして国際標準に完全準拠。
– ひまわり6号・7号を使用。GPS L1周波数と同様の信号にて補強情報を提供する。
• 衛星プラットフォームの共用について検討:
– 高価な人工衛星を個別のサービスごとに打ち上げるのは効率的とはいえない。
→ 単一の衛星で、準天頂衛星システムとMSASの両サービスを提供できないか?
– 具体的には、準天頂衛星によりMSASサービスを実施できないか検討した。
– 結論:いくつかの制約はあるものの、基本的には可能と思われる。
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(1)
航空用GPS補強サービスの概要
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SBAS規格の概要
• SBAS(satellite-based augmentation system)規格:
– GPSのみでは不足する機能・性能を補強する補強システムの一つ。
– 国際民間航空機関(ICAO)による国際標準規格として条約の附属書で規定。
– 航空機ユーザは、GPSとSBASを併用することで、航空用航法システムに求められ
る機能・性能を得る。測位精度改善と信頼性に関する指標の提供。
• SBAS信号の規定:
– GPS L1 C/A信号と同一のRF信号形式。距離測定もできる。アンテナ・受信機フロン
トエンドは共用が前提。
– 情報伝送速度はGPSより速く、250bps。毎秒1個のSBASメッセージを放送。
• 世界的な普及状況:
– 米国WAAS(2003~)、日本MSAS(2007~)、欧州EGNOS(2010~)がすでに運
用中。他にも、インドGAGAN、ロシアSDCMといった計画がある。
– 受信機はFAA TSO-C145/146に準拠。対応機上装備の製品化も拡大中。
– 航空以外のユーザ:すでに大多数の受信機チップが対応済み。測位精度改善。
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SBAS信号の規定
項目
周波数
変調方式
コード変調速度
拡散コード
仕様
備考
1575.42 MHz
GPS L1
BPSK
右旋円偏波
1.023 Mcps
以上はGPS L1 C/Aと同一
GPS C/Aコード
PRN 120~138
シンボル変調速度
500 sps
データ速度
250 bps
キャリア周波数安定度
≦ 5×10-11
10秒間での値
帯域幅
≧ 2.2MHz
GPSは20MHz、MSASは
2.2MHz、WAASは4~8MHz
• ICAOの国際標準規格(GNSS SARPS)による規定。
• 衛星の軌道は特に規定されていない(静止衛星でなければならないわけではない)。
• 受信機は、以上の規定を想定してSBAS信号を探索・捕捉し、補強情報を得る。
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SBASメッセージ
プリアンブル
8 ビット
メッセージタイプ
6 ビット
データ領域
212 ビット
この順に送信
メッセージ
タイプ
内 容
CRCコード
24 ビット
250ビット/1秒
更新間隔
(秒)
メッセージ
タイプ
6
17
GEOアルマナック
300
300
内 容
更新間隔
(秒)
0
テストモード(使用不可)
1
PRNマスク情報
120
18
IGPマスク情報
高速補正(FC+UDRE)
60
24
高速補正・長期補正
6
インテグリティ情報(UDRE)
6
25
長期補正
120
7
高速補正の劣化係数
120
26
電離層遅延補正(+GIVE)
300
9
GEO航法メッセージ
120
27
SBASサービスメッセージ
300
10
劣化係数
120
28
クロック・軌道情報共分散
120
12
SBAS時刻情報
300
63
NULLメッセージ
2~5
6
—
静止衛星を対象としているメッセージ
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補強サービスの機能(1)
インテグリティ(完全性)
• GPS衛星が放送する信号の品質に関する情報を提供する。
• GPSが誤った信号を送信したとき、受信機が誤って使用しないようにするのが目的。
→ 航法の安全を確保するための機能。
• 警報時間(TTA:time to alert) =情報が提供されるまでの時間:航空路・ターミナル空
域では5分~15秒以内、非精密進入では
10秒以内、精密進入では6秒以内。
GPS衛星
• 基本的な仕組み:
– 地上監視局でGPS信号をモニタ。
– 品質に関する情報を生成・伝送。
– 異常検出時は、警報メッセージを
送信。
異常信号
SBAS衛星
Uplink
Downlink
ユーザ
監視局
異常検出
警報
メッセージ
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補強サービスの機能(2)
測位精度の改善
• GPS衛星の信号により測定した距離の補正情報。
• GPSによる測位精度を改善する:ディファレンシャル補正。
• 広域ディファレンシャル補正方式:衛星クロック・軌道、電離層伝搬遅延、対流圏伝搬遅
延を個別に補正 → 大陸規模の広い範囲で有効な補正情報。
• 補正により、1m程度の測位精度が得られる。
GPS衛星
• 基本的な仕組み:
– 地上監視局でGPS信号をモニタ。
– 距離測定の誤差要因を、衛星ク
ロック・軌道、電離層伝搬遅延、
対流圏伝搬遅延に分解。
– 誤差要因別に補正情報を生成、
メッセージにして伝送。
クロック誤差
軌道誤差
電離層
ユーザ
対流圏
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補強サービスの機能(3)
擬似距離の測定
• SBAS衛星までの距離を受信機が測定し、位置計算に利用するための機能。
• SBAS信号のRF特性はGPS信号と同一なので、GPSの場合と同様の方法により距離
を測定できる。
• SBAS衛星の軌道情報は、SBASメッセージ(タイプ9)により提供する。
• 距離の測定精度はSBAS信号の帯域幅で
決まる。
• 基本的な仕組み:
– GPSとほぼ同期したタイミングで
SBAS信号を生成・放送。
– 複数の地上監視局で測定した
擬似距離を利用して、SBAS衛星の
軌道情報を生成・放送する。
時間差から
距離を算出
GPS衛星
ユーザ
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(2)
準天頂衛星
L1-SAIF補強信号の概要
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準天頂衛星のメリット
準天頂衛星(QZS)
緯度(度)
GPSや静止衛星
経度(度)
東経135度を中心に配置
離心率0.1 軌道傾斜角45度
• 高仰角からサービスを提供可能。
• 山間部や都市部における測位・放送ミッシ
ョンに有利。
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準天頂衛星の軌道
傾斜地球同期軌道(IGSO)
=(南北対称な)8の字軌道
地球
静止軌道(GEO)
高度35,786km
SBAS
低軌道衛星(LEO)
NNSS(極軌道)
中軌道衛星(MEO)
GPS, GLONASS, Galileo
緯度(度)
準天頂衛星の
軌道
経度(度)
東経135度を中心に配置
離心率0.1 軌道傾斜角45度
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全体構成
QZSS衛星
測位信号
L1CA/L1C/L1-SAIF: 1575.42 MHz
L2C: 1227.60 MHz
L5: 1176.45 MHz
LEX: 1278.75 MHz
GPS衛星
双方向時刻同期信号
測位信号
Up:
4.43453GHz
Down: 12.30669GHz
L1CA/L1C*: 1575.42 MHz
L2C: 1227.60 MHz
L5*: 1176.45 MHz
衛星レーザ測距
(SLR)
*今後対応予定
TT&C / NAV
Message Uplink
SLR局
モニタ局ネットワーク
時刻同期
管理局
主統制局 (MCS:Master
Control Station)
TT&C・航法メッセ
ージアップリンク局
ユーザ受信機
GEONET
(国土地理院)
関係機関が実験を実施
時刻管理系:NICT
広域DGPS補正:ENRI など
(JAXA QZSS PT提供の図より)
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準天頂衛星初号機(QZS-1)
質量
Approx. 1,800kg (dry)
(NAV Payload:Approx. 320kg)
発生電力
Approx. 5.3 kW (EOL)
(NAV Payload: Approx. 1.9kW)
設計寿命
10 years
Radiation Cooled TWT
TWSTFT Antenna
C-band TTC Antenna
Laser Reflector
L1-SAIF Antenna
L-band Helical Array
Antenna
(図:JAXA QZSS PT)
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QZSSの放送信号
信号名
周波数
帯域幅
最低受信電力
L1CD
24 MHz
–163.0 dBW
L1CP
24 MHz
– 158.25 dBW
QZS-L1-C/A
24 MHz
– 158.5 dBW
QZS-L1-SAIF
24 MHz
– 161.0 dBW
24 MHz
– 160.0 dBW
25 MHz
– 157.9 dBW
25 MHz
– 157.9 dBW
42 MHz
– 155.7 dBW
QZS-L1C
1575.42 MHz
補完信号
(JAXA)
QZS-L2C
1227.6 MHz
L5I
補強信号
(ENRI)
QZS-L5
L5Q
QZS-LEX
補強信号
(JAXA/GSI)
1176.45 MHz
1278.75 MHz
• 補完系:L1C/A、L2C、L5はGPSとほぼ互換(PRN193)
• 補強系:L1-SAIFはGPS/SBASとほぼ互換(PRN183)、LEXは独自仕様
• 詳細はIS-QZSSに規定あり
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補完と補強
補完信号
• 測位衛星として動作:
補強信号
• 追加的な情報を提供:
– 距離測定が可能=測位衛星
が1機増える効果。
– 測位精度や信頼性を向上する
ための補強情報を放送。
– 測位衛星が不足(4機に満た
ない)して測位できなくなる状
況を減らす。
– すべてのGPS衛星について
補強情報を提供する。
• 準天頂衛星による補完:
– GPSに対する補完。
– GPSとほぼ互換の信号形式
で放送(対応受信機開発の負
担軽減)。
– 日本上空の滞空時間がGPS
衛星より長い:日本付近に対
して効率的にサービス。
• 準天頂衛星による補強:
– 補強信号は、補完信号として
の機能も有する(距離の測定
に使える)。
– GLONASSやGalileoの補強
も可能(現在のところ未対応)。
– L1-SAIFはGPSに近い信号形
式により放送(対応受信機開
発の負担軽減)。
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L1-SAIF開発体制
• 電子航法研究所が開発を担当:
– 国土交通省(研究開発4省)総合政策局の委託を受けて、高精度測位補正実験シス
テムの開発を実施。
– 具体的には、補強信号(L1-SAIF)の信号形式の設計、プロトタイプ受信機の開発、
補正情報リアルタイム生成・配信システムの開発を行ってきた。
• システム開発はほぼ完了:
– H21年度にJAXA主制御局と接続して連接稼動試験を実施、良好な結果を得た。
H15年度
H16
H17
H18
H19
補正情報
生成方式開発
高精度測位補正
実験システム開発
方式調査・
評価検討
補正情報リアルタイム
生成・配信システム開発
評価用ソフトウェア
作成
プロトタイプ受信機開発
官民連携プログラム開始
H18.3 計画見直し
H20
H21
H22
評価試験
総合試験
技術実証実験
H22夏期 準天頂衛星打上げ
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L1-SAIF信号形式
• 航空用補強システムSBASと同一のフォーマット:
–
–
–
–
GPS L1 C/Aコード、PRN183で送信。毎秒1個のメッセージ。
メッセージの内容はメッセージタイプで識別。送信順序は任意=フレキシブル。
SBAS用ソフトウェアを流用可能:受信機ソフトウェアの開発負担を軽減。
サブメータ級の測位精度は達成可能。
• 補強メッセージの内容:
– 日本全国で利用可能な広域ディファレンシャル補正情報:衛星軌道・クロック・電離
層遅延・対流圏遅延をそれぞれ別々に補正。
– 補強対象:GPS・準天頂衛星自身・(GLONASS)・(ガリレオ)
– 基本的な補強情報はSBAS互換メッセージで、高度な補強処理については拡張メッ
セージで対応。
プリアンブル
8 ビット
メッセージタイプ
6 ビット
この順に送信
データ領域
212 ビット
CRCコード
24 ビット
250ビット/1秒
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L1-SAIF性能試験例
• 電子基準点940058(高山)におけるユーザ
測位誤差。
南北方向誤差(m)
• モニタ局配置は、札幌・茨城・東京・神戸・福
岡・那覇の6局構成。
• 実験期間: 2008年1月19~23日 (5日間)
水平
測位誤差
垂直
測位誤差
RMS
1.45 m
2.92 m
最大
6.02 m
8.45 m
RMS
0.29 m
0.39 m
最大
1.56 m
2.57 m
システム
GPS単独測位
L1-SAIF補強
GPS単独
L1-SAIF
補強
東西方向誤差(m)
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(3)
準天頂衛星による
SBAS信号の放送
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準天頂衛星の座標と速度
• GPSで用いるECEF直交座標系(原点:地球重心、X軸:北緯・東経0度の方向、Z軸:自転軸)。
• 現行IS-QZSSのパラメータ(離心率0.075、軌道傾斜角43度、近地点引数270度)。
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距離とその変化率
• 東京・稚内・那覇の各地点からの距離とその変化率に換算した結果。
• 距離は遅延時間に、距離の変化率はドップラシフトに対応する。
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準天頂衛星の軌道の影響
• 準天頂衛星の位置による影響:
– たとえば、東京からだと39033kmまで遠ざかる。
– 遅延時間は0.130秒。東経140度にある静止衛星の場合(37144km、0.124秒)と大
きな違いはない。
– この距離差による受信電力の差は-0.43dB程度でそれほど大きくない。
– 静止衛星と違い、ECEF座標系でのZ座標値が比較的大きい(静止衛星の場合は0
付近) → タイプ9メッセージで表現しきれない。
• 準天頂衛星の移動による影響:
– 視線方向速度が最大で200m/s程度となる(静止衛星の場合は0付近)。
– GPS L1周波数では1kHz程度のドップラシフトとなる(L1周波数の0.0000634%)。
– 通常のGPS受信機はSBAS信号についても10kHz程度までのドップラシフトを許容
するので、それほど問題とはならない。
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SBASメッセージ:タイプ9
データ
ビット数
範囲
分解能
予備
8
—
—
13
0~86384 s
16 s
4
0~15
—
X
30
±42949673 m
0.08 m
Y
30
±42949673 m
0.08 m
Z
25
±6710886.4 m
0.4 m
VX
17
± 40.96 m/s
0.625 mm/s
VY
17
± 40.96 m/s
0.625 mm/s
VZ
18
± 524.288 m/s
4.0 mm/s
AX
10
± 6.4 mm/s2
0.0125 mm/s2
AY
10
± 6.4 mm/s2
0.0125 mm/s2
AZ
10
± 32.0 mm/s2
0.0625 mm/s2
af0
12
±0.9537 ms
2-31 s
エポック時刻
t0
URA
座標
速度
加速度
クロック補正
af1
8
±0.11642 ns/s
2-40
s/s
備考
日内時刻
インデックス値
準天頂衛星の軌道
を表現できない
静止衛星を想定
GPSより厳しい
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メッセージ伝送にかかる時間
• 準天頂衛星はストアアンドフォワード型:
– RF信号の生成は衛星上で行う。
– 変調データについては搭載計算機(NOC)が生成・出力する:地上施設からTTC回
線経由で受信したメッセージをNOCが処理し、タイミングを見計らって出力する。
– 地上施設側は、毎秒1個のメッセージをTTC回線経由でNOCにアップリンクする:航
法メッセージのように、あらかじめ蓄積したデータを繰り返し送信するのではない。
– TTC回線によるメッセージ入力から、RF信号として出力されるまでに、少なくとも2~
3秒かかる(NOC試験結果より)。
• メッセージ伝送時間に対する要求:
– 航空用航法システムでは、安全確保のため、インテグリティ要件に警報時間(TTA:
time to alert)の規定が含まれている。
– メッセージ伝送に要する時間を考慮したとき、警報時間が規定を満たすか?
• 航空用航法システムとしての認証も必要:
– システム全体(ハード/ソフト、運用も含む)にわたる信頼性・安全性について認証を
受ける(比較的厳しい)。NOCも対象となる。
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トランスポンダ型:MSAS
スペース
セグメント
ベントパイプ 周波数変換
トランスポンダ
地上施設
ダウンリンク
アップリンク
周波数標準
信号生成系
メッセージ
変調器
生成
アンプ
ユーザ
• 地上施設でSBAS信号を生成し、衛星側は受信した信号をそのまま送り返す(周波数
変換のみ):ベントパイプトランスポンダ。
• 衛星側の機器構成が単純:応答が早く、また認証の対象は地上系のみ。
• 地上施設には送信周波数維持や送信電力制御のためのフィードバック制御が必要。
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ストアアンドフォワード型:QZSS
信号生成系
スペース
セグメント
搭載計算機
変調器
受信機
アンプ
周波数標準
衛星通信
地上施設
送信機
•
•
•
•
メッセージ
生成
ユーザ
地上施設ではSBASメッセージだけを生成し、SBAS信号の生成は衛星側で行う。
周波数標準は衛星側に搭載:測距信号としての品質は良好となる。
衛星側の機器構成が複雑:応答に時間がかかり、また認証も対象となる。
地上施設は比較的簡単な構成ですむ。
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警報時間(TTA)の制約
• 警報時間(TTA:time to alert)=インテグリティ上の要件:
– 航法系が警報限界を超える位置誤差を生じる可能性がある場合には、航法装置が
警報を出す必要がある。具体的には航法ディスプレイに異常フラグが現れる。
– 警報時間:警報限界を超える位置誤差が生じてから、警報が現れるまでの時間。
– SBASの性能要件は、警報時間について、航空路・ターミナル空域では5分~15秒
以内、非精密進入では10秒以内、精密進入では6秒以内であること。
• トランスポンダ型が有利:
– 実際のSBASでは、トランスポンダ型でもTTA=6秒がぎりぎり。ストアアンドフォワード
型では実質的に不可能。
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SBAS信号送信における制約
機能・性能
要件
SBAS信号の
放送
メッセージの
伝送
擬似距離の
測定
インテグリティ
状況
特に問題なし
特に問題なし
利用不可
精密進入サービス
は不可
原因
当面の対策
解決策
現行SBAS受信
機の仕様内で捕
捉・追尾可能
—
—
現行SBAS規
現行SBAS受
格のタイプ9メ
信機の仕様内
ッセージでは軌
で受信・復号可
道情報を伝送
能
できない
現行設計の準天頂
衛星ではTTA(警報
時間)が大きい
—
測距機能を利
用しない
当面はAPV-I進入サ
ービスまでとする(認
証には課題あり)
—
新しいメッセー
ジを定義する
(SBAS規格の
改訂が必要)
メッセージアップリン
ク系統の設計を変
更するか,SBAS信
号用のトランスポン
ダを搭載する
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まとめ
• 準天頂衛星によるSBASサービス(日本ではMSAS)実施の可能性:
– 高価な人工衛星を個別のサービスごとに打ち上げるのは効率的とはいえない。
– 具体的には、準天頂衛星によりMSASサービスを実施できないか検討した。
• SBASサービスの要件:
– RF信号仕様及びSBASメッセージについてはすでに定義されている。
– 特にインテグリティ(完全性)に関する要件が厳しい。警報時間について、精密進入
では6秒以内との要求がある。
• 準天頂衛星初号機についての検討結果:
– L1-SAIF補強信号を利用するならば、RF信号には互換性がある。
– 現行のSBAS規格では、準天頂衛星の軌道情報を伝送できない:測距機能を利用し
ないか、あるいはSBAS規格を改訂する必要がある。
– 警報時間(TTA)の要件を満たさない:精密進入サービスを実施しないか、あるいは
SBAS用トランスポンダを搭載する。
– いずれにしても、航空用航法システムとしての厳しい認証を受ける必要がある。