中学生:ウインドカーを作ろう

スターシリーズ・中学生
ウインドカーを作ろう
担当者:
協力学生:
場所:
小林正明
芦原幸治、大村佳苗、高森雅祥
工学部 32 号館 2F
概要
風の力の講義では、風車の効率や理想的な風車を紹介し風の力について考えて頂いた。講義の
後、発泡スチロールや竹串など身近にあるモノを使って風上に向かって走行するウインドカーを
製作しました。ウインドカーの製作では、どのようにすれば早く走行できるか創意工夫しながら
製作していきました。自分で工夫した事によって結果が変わることに実感して頂きました。
第 1 回 Science Lab スターシリーズ参加中学生と実施担当者
- 5 -
学習内容
生産工程
(1)実習に関する講義
構想
“モノづくり”における“モノ”とは何を表している
のだろうか?
モノづくりのモノとは、有形無形を問わ
設計
ず人が作り出す全てが“モノ”である。自動車や飛行機
などを造る製造はモノづくりであるが、小説や音楽など
試作
もモノづくりである。このように、人類はモノづくりの
評価
歴史でもある。産業界においてもモノづくりは大変重要
である。製品または作品は、
“構想”
、
“設計”
、
“試作”
、
“評
製作
価”などの課程を経て製作されている。
“構想”、
“設計”、
“試作”、“評価”などの課程はそれぞれ独立しているも
のではなく密接に関係している。それぞれの課程において最も大切なのが“創造すること”、“工夫す
ること”である。
「モノづくりにおいて“創造すること”、“工夫すること”がどれだけ楽しいのか」をこの短い講義
と実習によって紹介した。
子どもたちがモノづくりの楽しさを経験するのは玩具などの遊びからである。しかし、現在の玩具
の多くはどれもハイテク化されたものやキット化されたものが多くモノづくりを楽しむことは困難で
ある。理科離れ(工作離れ)の背景には子どもたちの遊び方や玩具に問題があると言われている。
理系離れ(工作離れ)を減速させるためには、モノづくりの楽しさを体験的に学習する機会を増や
すことが最も重要なことといえる。本講座では、風の力だけで風上に向かって進むウインドカーの仕
組みを学習しどのように工夫すれば効率よく走らせることが出来るのかの一例を紹介した。
講義終了後には、生徒たちが工夫したウインドカーの競争を行った。参加した生徒たちからモノづ
くりの楽しさと創意工夫することの重要性を実感したとの感想が得られた。
抗力
風
推進力
●ウインドカーが進む条件
推進力 >
車体の空気抵抗+車輪の転がり抵抗
推進力 = 風力×プロペラの効率×車輪の効率
×動力伝達効率
図1
ウインドカーが走行する原理
写真 1
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風の力に関する講義の様子
(2)ウインドカーの作製実習
ウインドカーは風の力だけで風の抵抗に逆らって風上に進んでいく車である。風の力だけで風上に
進んでいくため風の力とは何か?について実験を行い説明した。また、風の力を推進力に変換するた
めの風車の種類や特徴について紹介した。
カッターナイフやはさみを使用し車体を製作した。車の車体には加工が容易なスチレンボードを使
用した。そのほかの材料もストローや竹串など身近な材料を使用した。風車の形は各自でデザインし
製作した。
丸い羽の風車
三角羽の風車
2枚の風車
図2
ウインドカーの風車の種類
製作したウインドカーは、前部にある風車で風の力を風車の軸の回転運動に変換する。風車軸の回
転運動をプーリーを用いて車輪の回転へ変換する。車輪が回転することによってウインドカーは風上
に向かって進んでいく。各自で製作したウインドカーを扇風機を使用して実際に走行させ製作したウ
インドカーを評価した。評価の結果をもとに、より早く進むウインドカーを製作していった。
参加した生徒から、「風の力について理解できた」「風車の種類によって回転する速度が変わること
が理解できた」「いろいろ自分で工夫することが楽しかった」などの感想を得ることができた。
図3
製作するウインドカー
図4
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ウインドカー制作中
感想
◆中学生スターシリーズの感想
・自分で作ったプロペラが回ってよかったです。
・ウィンドカーが風で動く仕組みを楽しく勉強することができてよかったです。
・自分で作れて楽しかったです。
・ウィンドカーを作ってレースをしておもしろかったです。
◆担当者の感想(小林正明)
今回の講義では、モノづくりの楽しさを体験してもらうためにウインドカーの製作を行いました。
ウインドカーは簡単な仕組みですが風車を工夫することで性能が大きく変わってきます。モノづく
りの大切さは、ただ単に製作するだけでなく創意工夫することであることを伝えました。
モノづくりが単なる工作だけで終わることなく、
“創造すること”
、
“工夫すること”の楽しさを体験
してもらい工学への興味を抱かせる活動を続けていきたいと思っている。
- 8 -
スターシリーズ・高校生
エネルギー資源と省エネ
担当者:
協力学生:
場所:
占部逸正、佐川宏幸
楠見洋平、久保佳央
工学部 3 号館 1F エネルギー系実習室
概要
エネルギー資源と省エネに関する講義で、省エネルギー技術による環境改善の提案、発光ダイ
オードがエネルギーの効率的な利用例であることなどを紹介し、省エネルギーに関する人類の夢
への挑戦について説明した。講義の後、発光ダイオード、スピーカー、マイコンを用いた電子回
路作製の実習を行った。
実習では、マイコンから発光ダイオードへの電流の流れを考えながら作製し、完成品の発光ダ
イオードの美しさやメロディを楽しむことができた。
第 1 回 Science Lab スターシリーズ参加高校生と実施担当者
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学習内容
(1)実習に関する講義
人間活動の拡大
人類のもの作りの歴史を概観することで、人
は自然に働きかけて学びこれに新たな挑戦を行
なう存在であることが分かる。身の周りに生じ
○蓄積された知識
○高められた技術
る環境問題は、こうした人類の活動そのものの
在り方を問うもので、人間活動による廃棄物と
資源やエネルギー活用の問題と大きくかかわる
問題である。地球環境問題は極めて深刻な現状
○環境負荷の観点から生活、生産技術な
どの改善
○エネルギー供給システムの再構築
にあるが、こういった状況を克服し、持続可能
な発展の方向を見出すのもまた人類に課せられ
持続可能な発展
た究極の課題である。しかし、地球規模での環
境問題を解決するために、また新たな資源とエ
ネルギーを必要とする。そして、その必要量は以前にも増して膨大な量となる危険性がある。この人
類のジレンマに解決の糸口を見つけることは可能なのか?この短い講義ではその糸口こそ、集積され
た人類の知識と高められた技術の発展の仕方にあること、そしてその発展の方向はこれからを生きよ
うとする若者が必然的に担うことを紹介した。
電子・電気、情報・通信などの技術は、社会生活の便利さを実現するもので、それ自身が省エネの
効果を有するものである。しかし、技術は、使い方によっては善にも悪にも変りうる性格のものであ
る。理系(物理)離れの背景には、もの作りを軽視する社会的風潮と技術の進歩に対する否定的な見
方が共存していると言われている。理系離れを減速させるためには、生産や生活の中で技術がどのよ
うな役割をはたしているのかを体験的に学習する機会を増やすことが最も重要なことといえる。本講
座では、照明の歴史と LED 利用の現状、LED の仕組とコンピュータ制御による応用範囲の拡大などにつ
いて紹介した。
講義終了後には、出席した生徒より、環境問題を資源、エネルギー問題として捉えることは重要で、
省エネルギーに科学技術の果たす役割が大きいとの感想が得られた。
図1
LED の外観と発光の原理
写真 1
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省エネに関する講義の様子
(2)光とメロディを楽しむ電子回路の作製実習
近年、省エネルギーで長寿命の発光ダイオードが照明など身近なところで多く使用されている。白
熱電球と比べ、発光ダイオードは温度上昇が小さく、電力消費量が小さいことを紹介した。
材料が揃っているかどうかを確認しながら、ダイオードの極性や、抵抗値の読み方などを説明した。
光とメロディの制御はマイコンで行なっているが、時間の都合上、電子回路部品の配線のみを行なっ
た。
図2
マイコンによる電子部品制御
図3
発光ダイオードの電流イメージ
部品を接続する基板には、扱いが容易で手軽なブレッドボードを使用した。ブレッドボードにマイ
コンやジャンパー線を差込み、スイッチを取り付けた。抵抗は金属線の部分をニッパーで切断して長
さを調整した。途中、電流が流れるイメージを確認しながら作業を行なった。
抵抗、発光ダイオード、スピーカー、電池ボックスを取り付けて電子回路の作製を完了した。完成
品は 9 本の発光ダイオードが美しく点灯し、10 曲以上のメロディを楽しむことが出来る。
左側のスイッチは、押すたびに光の点滅パターンが変わる。点滅パターンは 4 種類プログラムして
あり好きなパターンを選べる。右側のスイッチは、好みの曲まで早送りするためにあり、押すたびに
次の曲の先頭に移動する。
図4
完成した電子回路
写真 2 実習の材料に関する説明の様子
今回の実習で、工作の過程を楽しむことができ、「自分の力で完成できた」「なんとなく仕組みが分
かった」「
(完成品の)音と光の点滅がとても面白かった」などの感想を得ることができた。
- 11 -
(3)高校生からよせられた質問
質問:他にもいろいろ考えて欲しいです
回答:今回の実習についてご満足頂けた結果、「その他にも実習して楽しい電子回路や、省エネルギ
ー装置として実現されている物が知りたい」という質問と判断して、私たちが考え出したものではあ
りませんが、いくつかお答え致します。
・
小サイズ(20cm 程度)の車をリモコンで操作する回路とプログラム作成
・
ラインの上を走行する小サイズの車の作成(回路とプログラム)
・
ハンドルを回すことで充電する省エネルギーライトの作成など
若い柔軟性や創造性を活かして、自分自身で新しく面白い装置を考えてみて下さい。未来を便利で
快適にするのは、新しいものを生み出す技術力と創造性と思います。Science Lab は素晴らしい実習で
すので、ぜひ第 2 回目以降も参加して技術力や創造性を伸ばして下さい。
(回答:占部逸正、佐川宏幸)
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感想
◆高校生スターシリーズの感想
・難しかったけど音楽や光が点滅するのはとても面白かったです。
・初めの講義が長かったです。
・楽しかったので次回がとても楽しみです。
・1つずつ順番に図を使って説明していただいたのでわかりやすかったです。なんとなく仕組み
がわかりおもしろかったです。
・初めはローズシリーズの方が面白そうだなぁと思っていたけどこのシリーズもとても面白かっ
たです。とても小さいのにいろいろなことができてすごいなぁと思いました。2 回目も参加し
たいです。
・実際に作れて楽しかったです。
・地球温暖化にはCO 2 だけではなくて、エネルギーも関係していることがわかってよかったです。
・作る時詳しく説明してくれたことや、できているか見に来てくれたことがうれしかったです。
・楽しく自分の力で完成させることができたのでよかったです。
・自分で作り、遊ぶことができたことがおもしろかったです。
◆担当者の感想(占部逸正、佐川宏幸)
今回の講義では、人類が自然や社会に働きかけて生きてきた歴史を簡単に紹介し、生きるための
工夫が技術の発展であり、新たな夢への挑戦が省エネ技術にあることを理解して欲しいとのメッセ
ージを送ったつもりである。もの作りに比べ、関心はそれほど高くないが、もの作りを単なる楽し
さに終わらせるのではなく、生徒の学習や日常生活と結びつけるために、様々な観点から技術の重
要性や今日的意義を伝えて行きたいと思っている。(占部逸正)
ブレッドボードに電子部品を差し込む作業は、ほとんどの高校生が初めての体験だと思います。
実習中、うまく差し込むコツをつかんで手早く作業できる高校生もたくさんいましたが、コツをつ
かむのに時間のかかった高校生もいました。うまくコツをつかむためのアドバイスを考えて、全員
が快適に作業できるようにすることが今後の課題と思います。全員が真剣に工作に取り組み、工学
分野の楽しさを感じて頂けたと思います。(佐川宏幸)
- 13 -
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ローズシリーズ・中学生
アサリの浄化能力を調べてみよう
担当者:
協力学生:
場所:
北口博隆、高村克美、山岸幸正、藤井啓子
高橋淑瑛、西澤安也佳、村田真保
生命工学部 16 号館 1F 学生実験室Ⅱ
概要
干潟にすむ生物とそのつながり、そして干潟の持つ浄化機能について紹介した後、干潟にすむ
生物の代表であるアサリの水の浄化能力を簡単な実験によって確認してもらった。また、アサリ
とサザエの解剖を行なって二枚貝と巻貝の体の構造の違いを観察して頂いた。これらの体験が、
生物のもつ不思議な機能や仕組みに興味を持つきっかけになることを期待している。
第 1 回 Science Lab ローズシリーズ参加中学生と実施担当者
- 15 -
学習内容
(1)干潟の機能
干潟は、1 日に 2 回干上がったり水没したりを繰り返す平らな砂泥地のことで、波の影響を受けにく
い穏やかな入り江や湾内で、砂や泥を運んでくる河川が流れ込む場所に多く発達する。干潟は、地形
的な特色により「前浜干潟」、
「河口干潟」、
「潟湖干潟」も 3 つに分類される。瀬戸内海の干潟は、大
部分が前浜干潟と河口干潟である。
干潟には、アサリなどの二枚貝や、ウミニナ、アラムシロガイ、ツメタガイなどの巻貝が住んでい
る。また、カニ類やアナジャコなど、砂にもぐって生活する生き物もいる。砂の中にはゴカイの仲間
が、潮溜まりにはハゼ類などの魚も見られる。そして、シギ類やチドリ類といった鳥も集まってくる。
また、肉眼では観察できない細菌や植物プランクトンなどの微生物もたくさん住んでいる。さらには、
カブトガニやアオギス、ハマグリなど、最近では希少になってしまった生物たちの生活の場でもある。
このように、干潟はその沖にある藻場とともに、沿岸の様々な生物の生育場所としてとても重要な場
所で、これらの場所を「海のゆりかご」ということもある。
干潟は陸上から多くの栄養分が運ばれてくるうえに浅くて光がよく降り注ぎ、一次生産が活発に行
われるため、多くの生物にとって生産や生息に重要な場所であるばかりでなく、流れ込んできた栄養
分を浄化するという重要な機能を持っている。干潟に流れ込んだ有機物は、アサリなど、餌をろ過し
て食べる生き物や底泥を漉して食べるゴカイなどによって利用される。また、干潟は干出によって酸
素が十分に供給されるため、バクテリアによって活発に有機物が分解される。そして、有機物が分解
されて生じる無機態のリンや窒素などの栄養塩は、植物プランクトンによって取り込まれて再び有機
物になる。それらをアサリなどの濾過食者が食べ、成長したアサリなどを人間や鳥などが採取するこ
とで、干潟から有機物が取り除かれる。
干潟の浄化機能を経済効果の面から考えてみても、とても大きなものだという調査結果もある。愛
知県三河湾での研究によると、約 1000 ヘクタールの干潟は人口 10 万人の都市の下水処理場に匹敵す
る水質浄化能力があると試算されている。単純に比較することはできないが、上記の結果から試算す
ると、瀬戸内海で戦後失われた 3500 ヘクタールの干潟は建設費 3500 億円の浄化施設に相当すること
になる。実験に先立ってこのような内容を紹介し、干潟やそこに住む生物の重要性について考えてい
ただいた。
有機物・栄養塩
人間
鳥類
細菌
植物プランクトン
二枚貝
(アサリなど)
多毛類
(ゴカイなど)
動物プランクトン
図1
魚類
干潟の食物連鎖の模式図
写真 1
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干潟についての説明
(2)アサリの浄化能力を確認する実験
アサリは、入水管から水中の懸濁物を取り込み、えら
で餌とそうでないものを選別する。餌として取り込まれ
たものは消化管へ送られ、そうでないものは粘液で固め
て出水管を通して排泄される。この過程によって水中の
懸濁物は取り除かれる。
この浄化能力を確認するための実験を行なった。米の
とぎ汁で濁らせた海水をビーカーに入れ、一つのビーカ
写真 2
実験に用いたアサリ
ーには生きたアサリを、もう一つには死んだアサリを入
れた。何も入れない陰性対照も用意し、15 分毎にそれぞれのビーカーから試験水の一部をピペットで
採り、分光光度計で波長 500 nm における吸光度を測定した。吸光度の変化をグラフにあらわして、各
ビーカーにおける濁りの減少を図で表現した。
参加者は意欲的に実験に取り組んでいて、終了時にはわかりやすく面白かったという感想が聞かれ
た。
写真 3
実験の準備
写真 4
分光光度計による測定
(3)アサリとサザエの解剖
(2)の実験の間に、二枚貝であ
るアサリと巻貝のサザエの体の仕組
みの違いを確認するために、解剖を
行なった。餌のとり方によって口の
形が違うことなど実物を見せながら
写真 6
説明すると、興味を持ってじっくり
観察を行なっていた。
写真 5
学生によるアサリの構造の説明
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解剖したサザエ
(4)中学生からよせられた質問
質問:米ぬかに関してテレビでやっていたのですが、東京湾の土に米ぬかを
入れる(?)とヘドロができるというのですが、なぜなのですか?
回答:ヘドロは有機物を多く含む泥のことですが、一般には有機汚濁が進んだ(いわゆるキタナイ)
海の底にある黒くてやわらかい卵の腐ったようなにおいのする泥のことを指します。米ぬかも有機物
ですから、それを海底の砂と混ぜると有機汚濁が進んだ海底を再現することになりますから、ほうっ
ておくとヘドロが出来ると思います。
有機物がたくさんあると海の底にヘドロが出来るのはなぜかを簡単に紹介します。有機物は細菌に
よって分解されていきますが、そのときに酸素が使われます。そして,酸素がなくなると普通の細菌
は有機物を分解できなくなってしまいます。そうすると、酸素がなくても有機物を分解できる細菌が
活躍します。このような細菌は、有機物を分解するときに硫化水素という物質をつくります。これが
卵の腐ったようなにおいの原因です。また水中には鉄などの金属が少し溶けているのですが、硫化水
素が金属とくっつくと黒くなるので泥が黒くなるのです。(回答:北口博隆)
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感想
◆中学生ローズシリーズの感想
・少しわからないところもあったけど、全体を通してとても楽しかったです。良い経験ができま
した。
・最初は大学見学で十分楽しくて「もういいや」と思ったけれど、実験しているととても楽しく
て夢中になりました。大学の先生や学生さんと一緒に実験することはとても興味深く、またや
ってみたいと思いました。
・アサリだけじゃなく、サザエの中とかと比較して説明してくれたので、軟体動物のしくみにつ
いて、すごく分かりました。
・実際に感じたりできて、文章だけで勉強するよりも理解しやすいので参加して良かったです。
・全部、普段はできない事ができたので楽しかったです。
・普段できないことが大学の器具を使ってできたのでおもしろかったです。
・身近なアサリを、パワーポイントなどを使って分かりやすく説明してくれた上に、色々な器具
を使えたので、とても面白かったです。
・分からないときにスタッフの方がやって来てくれて、分かりすいように説明してくれたことが
良かったです。
- 19 -
◆担当者の感想(北口博隆、高村克美、山岸幸正)
今回の実験を通して,生物のもつ力と不思議に興味を持ってもらえればと思って内容を考えまし
た。また,実験の中で「対照」をつくることや,結果を客観的にかつわかりやすく表現するにはど
うすればよいか,といったことにも気付いてもらえればと思っていました。参加してくれた学生たち
は,みんな積極的に取り組んでくれ,感想でも「わかりやすかった」という声が聞かれてとてもう
れしく思いました。今後も,理科,そして生物に興味を持ちつづけてくれると良いなと思います。
(北口博隆)
参加者たちは,とても熱心に実験に参加してくれたと思います。生き物の体の仕組みにも,とて
も興味を持ってくれて,「なぜ」という好奇心にあふれていたと思います。ただ,時間がやや短くて,
詳しく説明し切れなかったところが残念でした。(高村克美)
普段なにげなく食べているアサリという貝が,海の中でどのように暮らしていて,海の生態系の
中でどのような役割を果たしているのかについて知ってもらい,さらに自然界の生物や環境は互い
に関わり合いながら成り立っていることを感じてもらう機会になったならいいなと思います。これ
からも学生のみなさんがなぜだろう,どうしてだろうという好奇心を持って生き物をみていって欲
しいなと思います。
(山岸幸正)
- 20 -
ローズシリーズ・高校生
化学実験「発色する化学」
担当者:
協力学生:
場所:
町支臣成、日比野 俐、藤岡晴人、岸田早由利
東 修平
石原裕介、佐藤智美、平田康二郎
薬学部 31 号館 1F 学生実習室
概要
実験の基本操作である「ピペットを使って試薬を移す」
、
「試験管を振り混ぜる」
、そして「視覚
的に化学反応を観察する」といった点を体験してもらう。そこで、今回化学反応が起こると光を
発する「ルミノール反応」
「生物発光・ホタルの光」および「サイリューム」などの化学発光実験
を通して、化学の楽しさを知ってもらう。さらに、その原理を応用したものが実際に我々の身の
回りで使われていることを知り、化学への興味を深めてもらう。
第 1 回 Science Lab ローズシリーズ参加高校生と実施担当者
- 21 -
学習内容
化学発光とは
(1)実習に関する講義
化学発光には、2 つのタイプがある。その 2
物質が基底状態から励起状態になり、再び基底状態にもどるときエネルギーを光
の形で放出する。これを化学発光という。
励起状態になるには
☞光のエネルギーを吸収したとき
☞化学反応によって励起状態の物質(励起分子)を生じる
種類の基本的原理について講義した(図 1)。
1 つは、物質が化学反応により、基底状態か
光
高エネルギー
光
化学反応
緑分子
ら励起状態になり、再び基底状態に戻るとき
低エネルギー
赤分子(励起状態)
にそのエネルギーを光として放出するタイプ。
赤分子(基底状態)
一般的な化学反応は
高エネルギー
もう 1 つは、同様に励起した状態から、元に
緑分子
戻るとき別の物質にそのエネルギーを与え、
低エネルギー
青分子
発光に発展しない化学反応
その物質が光を放出するタイプがあることを
説明した(図 2)。
図1
化学発光基本原理
化学発光には、2つのタイプがある
(1)反応で生成した励起分子が直接光を放出する場合(タイプ1)
光
高エネルギー
緑分子
低エネルギー
赤分子(励起状態)
赤分子(基底状態)
発光に発展する化学反応(赤分子が光を放出する)
(2)反応で生成した励起分子が、余分なエネルギーをいったん他の物質に渡して、
エネルギーをもらった分子(新しい励起分子)が光を放出する場合(タイプ2)
光
高エネルギー
緑分子
青分子
低エネルギー
赤分子(励起状態) 赤分子(基底状態)
紫分子(励起状態)
紫分子(基底状態)
発光に発展する化学反応
写真 1
図2
実習講義風景
化学発光の種類
その説明のあと、今回実際に行う「ルミノール反応」
「生物発光・ホタルの光」および「サイリューム」の実
験を安全に行うための注意と器具の基本的な扱い方の
説明指導を行った(写真 2)。
写真 2
- 22 -
大学生から器具の扱い方の説明を受ける
(2)化学発光の実験
ルミノール反応は、まず各グループで 2 種
類の試薬を調製することから、始まった(写
真 3)。早速、ピペットを使って、各自がそれ
ぞれの試薬を試験管で混合し、いよいよ、そ
こへ血液に見立てたヘキサシアノ鉄(III)酸
カリウム水溶液を滴下し、化学発光の原理を
写真 3
ルミノール試薬を調製する
(溶媒を量る・固体を量る)
確認してもらった(写真 4)。次いで、疑似体
験として、事件現場の鑑識官になったつもり
で血液成分を染み込ませた布等を用い、ルミ
ノール反応を体験した(写真 5)。
写真 4
試験管内での化学発光の準備中
写真 5
事件現場を発見できるか?
次に、生物発光として、ホタルの光が代表的なものとして知られている(図 3)。これは、ホタルの
おしりのところでルシフェリンという物質と ATP (アデノシン三リン酸)が酵素(ルシフェラーゼ)の作
用で化学反応を引き起こし、別の物質に変化する過程で光を発する。この現象を各自が試験管内で再現、
観察した。ルミノールの青白い光と違い、黄色く非常に明るい光を発していた。その実験の後、日頃直
接目にすることはないが、市場に出回る食品の安全を確保するために、乳製品等の微生物による汚染の
有無を測定する ATP 法がこの原理を応用し開発され実用化されていることなどを解説した(図 4)。
N
NH2 O
O
N2
N
NH2 O
酸化剤
従来の食品衛生検査法は、培養の操作を含む
ため、数日間から1週間程度の日数がかかり、
検査期間の短縮化が求められてきた。ホタルの
発光酵素ルシフェラーゼを用い、すべての生物
にエネルギー物質として含まれるATP (アデノシ
ン三リン酸)を微生物や汚れの指標として測定す
るATP法が開発された。
NH2 O
O
ON
ルシフェラーゼの発光原理とその応用
H2O2
N
NH
(タイプ1)
O
O
NaOH
NH
O
*
O
O
O
O
h
+
NH2 O
NH2 O
基底状態
励起状態
HO
N
N
S
S
luciferase
N
N
O2
COOAMP luciferase
N
N
S
S
O
S
S
H
ATP, Mg2+
COOH
O O
O
O
CO2
HO
N
S
S
firefly oxyluciferin
図3
O
O
h
N
N
S
S
O*
dianion
タイプ 1 の化学発光
104
103
102
101
10-17
10-16
10-15
10-14
10-13
10-12
ATP(mol/assay)
O
N
N
S
S
現在では、乳製品、果汁、缶飲料、PETボトル
飲料などの微生物検査が可能となっている。
結婚式場で・・・
firefly luciferin
N
105
ATPの検量線(RLU:Relative Light Units)
生物発光(化学発光)ー ホタル ー(タイプ1)
H
106
発光量(RLU)
O
ルミノール反応
O*
monoanion
- 23 -
図4
化学発光の応用
第 3 の実験は、お祭りの夜店などで、売られているサイリューム(ケミカルライト)の化学発光を試
験管の中で再現してみた。この場合、タイプ 2 の化学発光であり、シュウ酸ジエステルと過酸化水素の
化学反応によって得られるエネルギーを別の物質である fluorescence (FL)に与え、その物質が励起状
態から基底状態に戻る時に蛍光を発するというものである(図 5)。よって、添加する FL によって化学
発光の色が異なるため、用意した 3 種類の FL から各自 1 つを選び何色の蛍光を発色するのか実験して
もらった。黄色、オレンジ色や水色の鮮やかな蛍光を発し、とても綺麗な色が観察できた(写真 6)。
その後、この原理を応用して、覚せい剤等の微量検出法などが開発されつつあることも解説した。以上
のように、簡単な操作ではあったが、
「ピペットを使って試薬を移す」
、
「試薬を試験管内で混ぜる」
、
「試
験管を温めて化学反応を促進させる」などの基本操作をすべての学生に体験してもらい、この実習を無
事終了することができた。
シュウ酸ジエステルを用いた化学発光 (タイプ2)
Cl
Cl
Cl
O C C O
Cl
+
H2O2
Cl
O
Cl
Cl
Cl
Cl
Cl
Cl
C
O
O
+
Cl
HO
Cl
O
C
C
O
O
FL*
O
C
Cl
OH
O
Cl
OH
O O
Cl
+
FL
Cl
OH
+
2CO2
+
FL*
Cl
FL
+
h
Fluorescence
FL
CH2CH3
CH3CH2
N
CH2CH3
O
N
CH2CH3
C OH
perylene
Cl
O
naphthacene
rhodamine B
図5
タイプ 2 の化学発光
- 24 -
写真 6 化学発光を観察中
感想
◆高校生ローズシリーズの感想
・とても楽しかったです。学校では出来ないようなことが体験できて良かったです。
・光ったときとかたくさん驚きがあった。難しい単語は多かったけど実験とかすごく楽しかった
です。
・全然経験したことのない実験で楽しかったです。
・すごく楽しかったし、今まで以上に科学に興味をもちました。
・普段の理科の授業で使わないような薬品を使って実験できたので良かったです。
・一つ一つわかりやすく教えて頂いたのでとても楽しくできました。
・学校ではやらないような実験ができてよかったです。きれいな発光をしていて素敵でした。
・はじめて使用するものばかりで、少しとまどったりしたけど、A と B をまぜた液に C をまぜる
と反応して色がかわったりしていてなかなか体験できないコトができ、楽しかったと思いま
す。
・思ったより分かりやすくて、大学も綺麗で本当に楽しかったです。2 回目以降も参加して頑張
りたいです。
・今回は、
”色”という事で、色々実験させて頂きました。もっと地味な事しかしないのかなぁ、
と思ってましたが、全然違いました。とっても楽しかったです。これからの化学、生物の授業
が楽しくなりそうです。
・各自1人1人が出来る作業があってよかったです。
・学校の授業では出来ないような実験をできたので楽しかったです。
・発光がきれいでした。
・身近な物に利用されている発光の仕組みについて分かっておもしろかったです。
・ルミノール反応で 3 種のそれぞれの発色がきれいでした。
・先生の説明がわかりやすくて、快調に実験が進みとても楽しかったです。
・全て初めての体験だったので全てよかったです。
・高校にはないたくさんの物質を見たり使ったり出来たので楽しかったです。
・最初に見た青色に感激しました。
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◆担当者の感想(町支臣成)
原理を説明するときには、なぜそうなるのかを示すために難しい化学構造式を出さなければなら
なかったが、極力それには触れず、試験管の中で試薬と試薬を混ぜたときに起こる変化、それによ
る驚きを体感してもらうことで化学の面白さを知ってもらえればということから、内容的には多い
のではとも思ったが「ルミノール反応」
「生物発光・ホタルの光」
「サイリューム」の 3 つの化学発
光の実習を行った。実験を通して、化学反応が起こり色々な光を発する度に、学生からの歓声を聞
くことができ、今回の化学実験は概ね成功したのではないかという感触を得た。この実験を通して、
さらに化学へ興味を持ってもらえるきっかけになったのではと思った。
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