8 ボース粒子

統計力学 II (後期)
No.8, 2004/12/16, 1515-1650@3-521
注意これは講義ノートではありません。計算の要点を抜粋しただけのものです。
8-A Bose 粒子の性質(復習)
1) 一つの状態にいくつでも粒子が入れる ⇔ Fermi 粒子は一つだけ
2) Bose 粒子の大分配関数 Z G =
∑e
− β ( e0 − µ ) n0
n0 = 0~ ∞
∑e
− β ( e1 − µ ) n1
n1 = 0~ ∞
(
L = 1 − e − β (e0 − µ )
3) 各エネルギー準位 ε i の平均占有数(Bose 分布) ni ≡ f B (ε )
) (1 − e
−1
)
− β ( e1 − µ ) −1
L
; ei を ε と書いた
各状態の実現確率 P ( n 0 , n1 , n 2 , L ) = e− β ( e 0 − µ ) n 0 e − β (e 1 − µ ) n 1 e − β ( e 2 − µ ) n 2 L Z G を使うと、
1
ni ≡ f B (ε ) = ∑ P ( n 0 ,n 1 , n 2 , L ) n i = ∑ e − β ( e i − µ ) n i ⋅ n i ∑ e − β (e i − µ ) n i = β ( ε − µ )
e
−1
全状態
n i = 0 , 1,L
n i = 0 , 1, L
4) 化学ポテンシャル:占有数 n i は負になり得ないので、常に µ ≤ 0 ( e0 = 0 とした場合)
8-B 三次元の箱の中の理想ボース気体の低温での化学ポテンシャル
(
全粒子数の平均値 N = ∑ e β (ε i − µ ) − 1
)
−1
は一定(箱は硬くて粒子は出入りしない)とし、温度を下
i
げて行くと、N を一定に保つように µ は負からゼロに上昇して行く。
しかし、ある温度 TC で限界に達し、 µ をいくらゼロに近づけても粒子数を保てなくなる。
⇒ 余った粒子は基底状態に入って行く(ボース・アインシュタイン凝縮)
*基底状態のみが占有数増加(励起状態は全て必ず減る)。
*基底状態は状態数=1なので、 T > T C ではエントロピーが損のため入りにくい。
(いろいろな状態にばらばらに入った方がエントロピーが小さい)
c.f. フェルミオンも、温度を下げると µ は上昇する(T=0 まで上昇し続ける)
図(下段)の意味 温度を下げて行くと、 µ
が同じままでは粒子数は減少してしまう(左
図)。よって µ を大きくすることで粒子数をあ
る程度一定に保つことができる(右図)。
しかし、低温(T =1)では、いくら µ を大きくし
ても、高温(T =3)の時の全粒子数(左図)を保
てない。この減少分を補うため、次々と粒子
は基底状態に入って行く。これがボースアイ
ンシュタイン凝縮。
D(ε)
1
1/2
0.8 D(ε)=αε
0.6
0.4
0.2
0
fB(ε)
基底状態に入った粒子)
自由なボース粒子の粒子数と化学ポテンシャル
2
上段:3 次元の状態密度
中段:ボース分布関数
下段:fB ×D
T =1
µ = −1, −0.5,
−0.2, −0.1
T =1, 2, 3
µ = −1
1
0
D(ε) fB(ε)
8-C 励起状態 ε > 0 の占有数 Nf
∞
1
N f = ∑ β (ε i − µ )
≈ ∫ d ε D (ε ) f B (ε )
0
−1
i >0 e
基底状態の状態数はたった1つ。つまり、
r
k = ( 0, 0, 0 ) のみなので、励起状態 k > 0 の
状態数に比べて圧倒的に少ない。
よって、通常、基底状態に入る粒子数は非
常に少なく、 N f = N と考えてよい。
⇒ T < T C では N f < N になる。(差の分は、
T =1
µ = −1, −0.5,
−0.2, −0.1
T =1, 2, 3
µ = −1
1
0.5
0
0
2
ε
4
6
8
0
2
ε
4
6
8
統計力学 II (後期)
No.8, 2004/12/16, 1515-1650@3-521
8-D 状態密度の導出の簡単な覚え方 (三次元の箱の自由粒子でスピン S=0 の場合)
r
3 2
2
V dk V 4π k 2 d k V 2 m ε h ⎛ 2mε ⎞ V ( 2 m ε h 2 )
ε
V m3 2
=
=
d⎜ 2 ⎟=
dε =
ε dε
2π 2
2π 2
2π2 h3
(2π ) 3 (2π ) 3
⎝ h ⎠
A
8-E 全粒子数 N を一定に保てなくなる限界の温度 TC (Bose-Einstein 凝縮温度)を求める
x
}
∞ βε
β d (β ε )
A ∞
x
N=Nf = A ∫ β ε − β µ
dx
; e − x + β µ < 1 を分子分母に乗じて、
= 3 2 ∫ x −β µ
0 e
0
e
−1 β
−1
β
=
A
β
3 2
∫
∞
0
x e− x e βµ
dx
−x βµ
11−4e2
e
4
3
Tayler展開
=
=
A
β
3 2
2A
β
3 2
∫
∫
∞
0
∞
0
(
x e − x e β µ 1 + e − x e β µ + (e − x e β µ
(y
2
)
2
)
+ L dx
;変数変換 x = y して、
)
e − y e β µ + y 2 e −2 y e 2 β µ + y 2 e −3 y e 3 β µ + L dy ;
2
2
π n
注)
=
1
= 1 + X + X 2 + L と分母をテイラー展開して、
1− X
;
2
2
∞
= ∫ e − n x d x = xe − n x
2
2
0
∞
0
∞
π
= ∫0 x 2 e − β x dx を使って、
32
4β
2
∞
− ∫ − 2n x 2e− nx d x = 2 n ∫
2
0
∞
0
x 2e − nx d x
2
⎞ A π ⎛ e β µ e 2 β µ e 3β µ
⎞
2 A ⎛ π βµ
π 2βµ
π 3β µ
⎟=
⎜
⎜
e
e
e
+
+
+
L
+ 3 2 + 3 2 + L ⎟⎟
3 2
3 2
3 2
3 2⎜ 3 2
3 2 ⎜
⎟
4⋅2
β ⎝ 4 ⋅1
2
3
4⋅3
⎠
⎠ 2β ⎝ 1
( e βµ )
A π
=
; µ ≤ 0 であるので確実に収束
∑
2 β 3 2 n =1 ~ ∞ n 3 2
粒子数を保つためには µ を増やせばよい。しかし µ ≤ 0 という限界がある。その限界では、
n
N =
A π
1
A π
=
× 24
L であり、この温度 TC を「臨界温度」と呼ぶ。
.612
3 2
3 2 ∑
24
3
2 β n =1 ~ ∞ n
2β 3 2 1
ζ ⎛⎜⎝ 3 2 ⎞⎟⎠ ツェータ関数
8-F ボースアインシュタイン凝縮(凝縮=一つの状態にまとまってしまうこと)
臨界温度以下では粒子は基底状態にどんどん入って行き、積分の減少を補う。
この個数を n 0 ( T ) とすると、 N =
∫
∞
0
d ε D (ε )
(e
βε
− 1 ) + n 0 (T )
エントロピーを損
する(=小さくな
る)から入らない
[ T > TC ] µ を何とか調整して、積分値( ε > 0 の占有数)=N を保っている。
励起状態の方が場合の数が圧倒的に多いので基底状態にはあまり入らない。
[ T = TC ] µ を限界値0まで上げて、やっと、積分値=N が保てる。
[ T < TC ] µ = 0 でも積分値<N となる。そこで仕方なく基底状態の占有数 n 0 ( T ) が増える。
N =∫
∞
0
A ε
π
Vm 3 2 ε
(
)
d
ε
n
T
=
⋅
⋅ ζ (3 2 ) + n 0 ( T ) = V
+
0
βε
3 2
2
3
e −1
2π h 2 β
(
⎛ m k B TC ⎞ 3 2
⎟ ζ (3 2 ) ⋅ (T TC ) 3 2 = N ⋅ 1 − (T TC ) 3 2
∴ n0 ( T ) = N − V ⋅ ⎜⎜
2 ⎟
πh ⎠
⎝ 24
14
424443
N
⎛ mk BT ⎞
⎟ ⋅ ζ (3 2 ) + n 0 ( T )
⋅ ⎜⎜
2 ⎟
⎝ 2π h ⎠
3 2
)
粒子の波動関数
の干渉効果
8-G ボースアインシュタイン凝縮の臨界温度 TC の直感的な意味
熱的ドブロイ波長 λ T = h 2 2π m k B T が粒子間隔 (V N
)1 3 とだいたい等しくなる温度。