農業研究成果情報 No.206(平成16年8月) 分類コード 02-09 不知火の完熟栽培における分割採収法 2月∼3月まで樹上に成らせる完熟栽培は従来の1月一括採収に比べ品質が向上する。さらに 完熟栽培において1月、2月、3月に分割採収を行うことで、翌年には1月一括採収と同程度の 収量が得られ、隔年結果が軽減できる。3月採収分は全果実の3割程度が望ましい。 農業研究センター 天草農業研究所(担当者:三原 崇史、奥田 良幸) 研究のねらい 従来、不知火の露地栽培では1月中・下旬に採収を行うが、3月まで樹上に成らせておく完熟栽培 の方が品質が良好である。しかし、不知火は樹勢が弱いことから、全果実を3月まで樹上完熟させる と樹に負担をかけ、隔年結果を助長することが考えられる。 そこで、不知火の完熟栽培において樹に負担をかけない分割採収法を確立する。 研究の成果 1.1m 3 当たりの年次別収量では、分割採収は1月一括採収と同等の収量が見込まれ、その中でも 3月採収分が全果実の3割の区で収量が高い傾向にある(図1)。 2.2月、3月の一括採収では年々収量が減少する(図1)。 3.翌年の葉花比、着果率をみると、3月採収分が全果実の3割の区で年次間のバラツキが少ない (図2、3)。 4.採収時期を遅らせることで、樹上での減酸が進み、貯蔵果実に比べ品質が向上する(図4)。 5.水腐れの発生率は、採収時期が遅いほど多くなる傾向にある(図5)。 普及上の留意点 1.摘果により適正着果に心掛ける。 2.分割採収においては、品質の面から樹の外部・上部から採収し、最後に内部・下部を採収するこ とが望ましい。 3.完熟栽培では、水腐れ等の果皮障害が多くなるだけでなく、寒害や鳥害も考えられることから、 袋掛けあるいは樹体被覆等の対策が必要である。 [具体的データ] 表1 時期別の採収割合(%) 採収時期 1月上旬 2月上旬 3月上旬 100 100 100 40 30 30 70 30 50 50 1999 16 14 12 10 8 6 4 2 0 2000 2001 120 2002 80 60 40 20 0 A B C D E 図1 1m3当たりの年次別収量 80 70 A F B C D E F 図2 翌年の樹体(葉花比)への影響 1.70 2001年 2002年 クエン酸(%) 50 40 30 20 1月上旬採収 2月上旬採収 3月上旬採収 1.60 1.60 60 1.50 1.43 1.40 1.30 1.30 1.27 1.21 1.20 1.17 10 1.10 0 A B C D E 図3 翌年の着果率への影響 F 1月上旬 2月上旬 3月上旬 分析日 図4 貯蔵期間のクエン酸の推移 30.0 25.0 発生率(%) 着果率(%) 2001年 2002年 100 葉花比 収量(kg) 区 A B C D E F 20.0 15.0 10.0 5.0 0.0 1月上旬 2月上旬 3月上旬 図5 採収時期別の水腐れ発生率
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