第 56 回日本人類遺伝学会・第 11 回東アジア人類遺伝学会 共同大会 2011.11.09~12. 千葉(幕張) 着床前診断を実施し出生児が得られた非ロバートソン型 2 動原体染色体を有する習慣流産 1症例 中岡義晴1、西澤知佳1、大西洋子1、姫野隆雄1、井上朋子1、伊藤啓二朗1、大垣彩2、福 田愛作2、森本義晴1 1 IVF なんばクリニック 2 IVF 大阪クリニック 【目的】日本産科婦人科学会は均衡型染色体異常に起因する習慣流産を着床前診断(PGD) の適応としている。その多くが相互転座またはロバートソン転座の転座である。2 動原体染 色体のほとんどはロバートソン転座であり、端部着糸型染色体以外の染色体を含むものは 非常に稀である。今回、非ロバートソン型 2 動原体染色体を有する症例に対して着床前診 断を行い、生児を得たので報告する。 【症例】妻 33 歳、夫 33 歳。3 回経妊 3 回流産、妊娠はすべて自然妊娠であった。不育症検 査として実施した夫婦の末梢血リンパ球染色体検査で、妻に 45,XX,dic(10;22)(q26.3;p12) の 2 動原体染色体を認めた。妻の表現型には異常を認めなかった。また、妻の両親の染色 体には 2 動原体染色体を認めなかった。 【方法】ロバートソン転座に類似する分離様式が考 えられることを夫婦にカウンセリングした。PGD は 3 日目胚から 1 割球を採取し、プローブ に CEN10q および CEN22q FISH Probe(GSP 社)を用いた FISH 法により染色体分析を実施し た。 【結果】1 回目の PGD では、6 個の胚すべてが染色体異常であった。2 回目は PGD を行っ た 8 個の胚の 1 個が染色体正常であったものの、胚質不良のため胚移植には至らなかった。 妻のインスリン抵抗性を診断しメトホルミン投与後に実施した 3 回目の PGD では、9 個の胚 うち染色体正常胚を 4 個認め、1 個の胚盤胞を移植し妊娠成立した。妊娠 37 週 4 日にて 3118g の男児を分娩し、児には先天異常は認められなかった。 【結論】今回、de novo に生じた次 中部着糸型染色体と端部着糸型染色体との 2 動原体染色体症例に着床前診断を実施し、生 児を得ることができた。非ロバートソン型 2 動原体染色体症例も、胚質改善によりロバー トソン転座と同程度の染色体正常胚が形成されることが示唆された。
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