2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.1 1 式の計算 1 年生で学習した (であろう) 事柄について簡単にまとめておく. 忘れてしまった事柄に ついては要復習. 1.1 単項式と多項式 単項式 数や文字の乗算 (かけ算) のみからなる式. 例: 2x2 , 4x, −3ab, y, −5 多項式 単項式の和の形で表される式. 多項式の中の単項式一つ一つを多項式の項といい, 数だけの項を定数項という. 2x2 − 4x, −3x2 + 2x2 y + 4xy − 7 次数 単項式でかけあわされている文字の個数. 例: 2x2 の次数は 2, −5xy 2 の次数は 3 多項式の場合は, 各項の次数のうち, もっとも大きいものをその多項式の次数とい う. 例: 2x + 7y の次数は 1. 5x2 − 3y + 2 の次数は 2. 1.2 多項式の計算 同類項 文字の部分が同じ項どうしのこと. 同類項は分配法則 ax + bx = (a + b)x を使ってまとめることができる. 例: 3a2 + a + 4 − 3a + 4 − 1 =3a2 + 2a2 + a − 3a + 4 − 1 =(3 + 2)a2 + (1 − 3)a + (4 − 1) =5a2 − 2a + 3 【注】a2 と a は文字は同じでも次数は異なるので, 同類項とは言わない. 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.2 多項式の加法・減法 カッコを外して同類項をまとめればよい. 例: (1) (3x + 2y) + (2x − 5y) (2) (3x + 2y) − (2x − 5y) =3x + 2y + 2x − 5y =3x + 2y − 2x + 5y =3x + 2x + 2y − 5y =3x − 2x + 2y + 5y =5x − 3y =x − 7y 筆算でやっても良い. その場合, 同類項を揃えて縦に並べること. 例: (1) (2) −5x − 4y + 3x + 5y −2x + y 2x2 + 7x − 2 − x2 −3 x2 + 7x + 1 多項式と数の乗法・除法 分配法則を使う. 除法は乗法になおす. 例: (1) 3(2x + 5y − 1) (2) =3 × 2x + 3 × 5y − 3 × 1 =6x + 15y − 3 3 2 2 =(12a − 6b − 9) × 3 =8a − 4b − 6 (12a − 6b − 9) ÷ 上記 2 つの組み合わせ • カッコを含むもの 例: 2(x2 + 3x − 2) − 3(2x − 1) =2x2 + 6x − 4 − 6x + 3 =2x2 − 1 • 分数を含むもの . . . 基本的には「通分 → 分配法則」 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.3 例: 3x + 2y x − 3y − 4 6 3(3x + 2y) 2(x − 3y) − = 12 12 9x + 6y − 2x + 6y = 12 7x + 12y = 12 1.3 単項式の乗法・除法 単項式どうしの乗法 それぞれの::::::::: 単項式の積に:::::::: 文字の積をかければ良い. 例: − 4x × 2y (1) (2) 3xy × 2y (3) =(−4) × 2 × x × y =3 × 2 × y × y = − 8xy =6xy 2 (7xy 2 )2 =(7xy 2 ) × (7xy 2 ) =7 × 7 × x × x × y × y × y × y =49x2 y 4 単項式どうしの除法 同じ数どうし・同じ文字どうしで約分する. 例: (1) 6ab ÷ (−2b) 6ab −2b 6×a×b =− 2×b = − 3a = (2) 5 2 5 x y ÷ xy 2 6 2 5x y 5xy = ÷ 2 6 5×x×x×y 6 = × 2 5×x×y =3x 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.4 乗法と除法の組み合わせ 計算をし始める前に, 符号を先に決めるとミスが減る: • − が偶数個 ⇒ + • − が奇数個 ⇒ − 例: (1) 4xy 2 × 3x ÷ (−2y 2 ) =− (−12x2 y) ÷ (−2x) ÷ 4x (2) 4xy 2 × 3x 2y 2 12x2 y 2x × 4x 3 = y 2 = = − 6x2 1.4 式の値 与えられた文字の値を:::: 代入して計算する. 例: (1) x = −2 のとき, x2 + 3x の値は, (−2)2 + 3 × (−2) = −2 (2) a = 3, b = −1 のとき, 2a − 5b の値は, 2 × 3 − 5 × (−1) = 11 練習 1.1 x = −3, y = 2 のとき, 次の式の値を求めなさい. (1) 2x + 5y (2) −3x − 4y (3) x2 − xy ♣ 式を簡単にしてから代入すると, 計算がしやすくなる. 例: a = 4, b = −2 のときの, 3(a − 3b) − (2a − 5b) の値を計算する; 3(a − 3b) − (2a − 5b) =3a − 9b − 2a + 5b =a − 4b なので, a = 4, b = −2 を代入して, 4 − 4 × (−2) = 12 練習 1.2 x = 2, y = −3 のとき, 次の式の値を求めなさい. (1) 3(x + 2y) − 2(x + y) (2) 4xy 2 ÷ (−8x2 y) 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.5 演習 教科書では扱われていないが, 問題集では扱われているタイプの問題を取り上げよう. 例題 1(問題集 P.20) A = 2x − 5y, B = −4x + y のとき, 次の式を x, y を使って表しなさい. (1) A − 2B (2) 3(A − 4B) − (5A − 3B) 【解答】 (1) それぞれ代入して計算をする; A − 2B = (2x − 5y) − 2(−4x + y) = 2x − 5y + 8x − 2y = 10x − 7y (2) まず, 代入する式を簡単にすると, 3(A − 4B) − (5A − 3B) = 3A − 12B − 5A + 3B = −2A − 9B. この式にそれぞれ A, B に与えられた式を代入すると, −2A − 9B = − 2(2x − 5y) − 9(−4x + y) = − 4x + 10y + 36x − 9y =32x + y 練習 1.3 A = 5x − 3y, B = −2x + 7y のとき, 次の式を x, y を使って表しなさい. (1) 2A − 5B (2) 2(2A + B) − 3(A − 4B) 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.6 例題 2(問題集 P.21) 次の空欄 (1) ( に当てはまる式を求めなさい. ) + (4x + 3y) = 7x − 5y (2) ( ) × 5x2 y = 20x5 y 2 【解答】 数字の時と同様に, 逆算をしてやれば良い; 「たし算 ⇔ ひき算」「かけ算 ⇔ わり算」 = (7x − 5y) − (4x + 3) (1) (2) = 3x − 8y = 20x5 y 2 ÷ 5x2 y = 20x5 y 2 5x2 y = 4x3 y 練習 1.4 次の空欄 に当てはまる式を求めなさい. ) + (3x + 7y) = 6x − 2y ) × (−2a3 b2 ) = 16a5 b4 (1) ( (3) ( (2) ( (4) ( ) − (7a + 5b) = 3a + 2b ) ÷ (−a2 b3 ) = 5a3 b4 挑戦問題 ( ( ) 1 3 2 2 4 3 15 ) × x y ÷ − x y = 3 2 の空欄に当てはまる式を求めなさい. 5 5 2x y 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.7 2 文字式の利用 文字式を使って整数や図形のいろいろな性質について「説明」してみよう. 2.1 整数の性質の説明 例題 1(教科書 P.23) 偶数と奇数の和はいつでも奇数になることを文字を使って説明しなさい. 《注》 問題で「説明しなさい」と指示をされているが , これは後に図形の章 (数学 β の授 :::: 業で扱う) で出てくる「証明しなさい」と指示されているのと変わらない . 「証明」の時 :::: に必ず書かなければならないことや「こう書くと良い」などのポイントを板書で説明する ので, しっかりメモしておこう. ♣ なぜ, 文字を使って説明しなければならないのか, 考えてみよう. 【解答】 板書にて示す. 練習 2.1 次のことが成り立つことをそれぞれ文字を使って説明しなさい. (1) 2 つの奇数の和は偶数になる. (2) 連続する 3 つの整数の和は 3 の倍数になる*1 . (3) 連続する 4 つの奇数の和は 8 の倍数になる*2 . *1 ヒント: 「連続する 3 つの整数」とは, 例えば, 「5,6,7」や「13,14,15」などである. これを文字を使っ て表すには... 例えば, 3 つの整数のうち, 真ん中の数字を n としてみよう. *2 ヒント: ある奇数を 2n + 1 としたら, 次の奇数はどう表されるだろうか? 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.8 例題 2(教科書 P.24) 2 桁の自然数と, その数の十の位と位置の位を入れかえた自然数の和は, いつも 11 の 倍数になることを文字を使って説明しなさい. ♣ やることは先ほどとさほど変わりはないが, 問題文に書かれていることをうまく「文字 で表す」ためにはどうしたら良いだろうか? 【解答】 板書にて示す. 練習 2.2 次のことが成り立つことをそれぞれ文字を使って説明しなさい. (1) 2 桁の自然数と, その数の十の位と位置の位を入れ替えた自然数の差は, いつも 9 の 倍数になる. (2) 3 桁の自然数から, その自然数の百の位の数と一の位の数を入れかえた自然数をひく と, 99 の倍数になる*3 . (3) 7272 のように, 千の位と十の位, 百の位と一の位がそれぞれ等しい 4 桁の自然数は, 101 でわり切れる*4 . *練習 2.3 成り立つことを文字を使って表しなさい. (1) 2 桁の自然数について, 各位の和が 3 の倍数ならば, この自然数は 3 の倍数である. (2) 3 桁の自然数について, 各位の和が 9 の倍数ならば, この自然数は 9 の倍数である. *3 *4 ヒント: 元の自然数をどう表したら良いだろうか? また, 位を入れかえた数は...? 「◦ でわり切れる」=「◦ の倍数になる」ということに注意しよう. 千の位の数字を a, 百の位の数字を b とすると, この 4 桁の数はどのように表されるだろうか. 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.9 2.2 図形の性質の説明 例題 3(教科書 P.25) 大小 2 つの円があります. 2 つの円の半径の差が a であるとき, 2 つの円の周の長さ の差を求めなさい. ♣ 図形の性質について説明しろと言われたら, 適当な長さや面積を文字で 置くと良い. この場合は, 小さな円の半径を r として解答を進めよう. a ♣ ここでは, 円の周の長さや面積, 柱形や錘形の体積の公式が必要になっ r てくる. 忘れてしまったものは, しっかり覚えなおそう. 【解答】 板書にて示す. 練習 2.4 2 つの円 A, B がある. 円 B の半径が円 A の半径の 2 倍であるとき, 円 B の 面積は円 A の面積の何倍か答えなさい*5 . 1 倍にし, 高 3 さを 3 倍にした円柱を作ると, できる円柱はもとの円柱の体積の何倍になるか答えなさい. 練習 2.5 底面の半径が r, 高さが h の円柱がある. この円柱の底面の半径を 練習 2.6 教科書 P.25 問 5 を解きなさい. *5 ヒント: 円 A の半径を r とすると, 円 B の半径はどう表されるだろうか? 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.10 2.3 * 規則性に関する問題 授業では取り扱わないが, 規則性に関する問題も文字式を用いて解くことができる. こ れは, 高校生で勉強する『数列』の単元にも通じる考え方だ. 例題 4 右図のように, 画用紙をその一部が重なるようにして 横に並べ, マグネットでとめて掲示します. (1) 画用紙が 5 枚のとき, マグネットは何個必要か. (2) 画用紙が a 枚のとき, マグネットは何個必要か. 【解答】 (1) 最初の 1 枚をとめるのにマグネットは 4 個, あとは, 1 枚画用紙が増えるごとにマグ ネットは 2 個増えるので, 4 + 2 × (5 − 1) = 12(個) (2) 上の考え方を使えば, 4 + 2 × (a − 1) = 2a + 2(個) 同様の問題を解いてみよう. 練習 2.7 右図のようにマッチ棒を並べて正方形を作って いきます. (1) 正方形を 7 個作るのには, マッチ棒は何本必要か. (2) 正方形を n 個つくるには, マッチ棒は何本必要か. 次の問題は少し難しめである. 練習 2.8 右図のように, 1 辺に同じ個数の碁石を並べ, 正三角形と正方 形を作る. 次の問に答えなさい. (1) 1 辺に並べる碁石が 5 個のとき, 碁石は全部で何個か. (2) 1 辺に並べる碁石が n 個のとき, 碁石は全部で何個か. 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.11 2.4 等式の変形 y = 3x + 4 (1) を変形して x = ······ (2) の形の等式を導くことを「(1) を x について解く」という. そのためには, 次のような計算 をしてやれば良い; 1. 両辺から 4 を引く: y − 4 = 3x + 4 − 4 = 3x 2. 両辺を 3 で割る: y−4 =x 3 y−4 となる. 3 1 年生の時に 1 次方程式の章で学習したと思うが, 上のように等式を変形することを等 よって, (1) を x について解くと, x = 式変形という. 等式変形でやって良いのは, 以下の通りである; • 両辺に同じものをたす; a = b → a + c = b + c • 両辺から同じものをひく; a = b → a − c = b − c • 両辺に同じ数をかける; a = b → ac = bc • 両辺を同じ数で割る. :::::: ただし,:: 0 :::::::::::::::::: でわってはいけない!; a = b → • 等式の両辺を入れかえる; a = b → b = a a b = c c 担当:岡崎正悟 2 年生 数学 α 第 1 章《式の計算》 No.12 練習 2.9 次の等式を [ ] 内の文字について解きなさい. a − 2b [a] (1) y = 5x − 1 [x] (2) c = 3 1 (3) S = ah [h] (4) l = 2(a + b) [b] 2 ♣ ちなみに . . . (3) と (4) はそれぞれ何を表しているだろうか? babababababababababababababababab 分母をはらう際の注意 文字式の計算と方程式の解き方の違いを見てみよう; 2x − 1 x + 3 − を計算しなさい. 3 2 2x − 1 x + 3 − 3 2 2(2x − 1) − 3(x + 3) = 6 4x − 2 − 3x − 9 = 6 x − 11 = 6 2x − 1 x+3 = を解きなさい. 3 2 両辺に 6 をかけると, 2(2x − 1) = 3(x + 3) ⇔ 4x − 2 = 3x − 9 ∴ x = 11 ♣ 文字式の計算と方程式の解き方を比べると, どこが違うだろうか. また, 右の 計算のように分母をはらっていいのはどんなときだろうか. 高校生の数学 I で, 「恒等式」の考え方を勉強すれば, きちんと理由を説明でき るだろうが, 今は, 「式の計算をすること」と「方程式を解くこと」とは根本的 に違うことを実感しよう. 担当:岡崎正悟
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