有効性

特 集 2 型糖尿病の新しい治療戦略:新規糖尿病治療薬をどう活用する?
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特 集 2 型糖尿病の新しい治療戦略:新規糖尿病治療薬をどう活用する?
Ⅰ.SGLT2 阻害薬の糖尿病治療における戦略的位置づけ
有効性
神子一成,寺内康夫
1 有効性
SGLT2 inhibitors
Bromocriptine
Colesevelam
DPP-4 inhibitors
Inhaled insulin
Pramlintide
GLP-1 receptor agonists
Glinides
Thiazolidinedione antidiabetics
Insulin analogues
α-glucosidase inhibitors
Human insulin
15
10
糖尿病治療薬の種類
I
I
5
Metformin
Sulfonylurea antidiabetics
横浜市立大学大学院 医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学
Animal insulin
0
0
1920
1930
1940
1950
1960
西暦
1970
1980
1990
2000
110
112
2010
(年)
図 1 糖尿病治療薬の歴史
(文献 2)
2013 年の時点で全世界に 3 億 8200 万人の糖尿病患者がいると考えられており,2035 年には 5 億 9200 万人に上
1)
ると予想されている .その大半が 2 型糖尿病患者であり,合併症進行に伴う心身の苦痛に加え,それらの合併
症治療にかかる経済的負担も大きい糖尿病のよりよい管理は喫緊の課題である.
120
これまでさまざまな薬剤が 2 型糖尿病の治療薬として開発,使用されてきたが,そのほとんどがインスリン分
泌刺激やインスリン抵抗性の改善といったインスリン作用に関わる薬剤であった.SGLT2 阻害薬は糖尿病の病
うカロリーロスによる体重減少や脂質プロファイルの改善も報告されており,浸透圧利尿による血圧の低下な
ど Pleiotropic effect(多面的効果)が期待できるなど,今後の 2 型糖尿病診療の重要な一手となる可能性のあ
100
ページ数
態の中心ともいえるインスリン分泌とは独立した新規糖尿病治療薬で,画期的な治療薬である.尿糖排泄に伴
106
93
86
80
78
65
60
る薬剤である.
40
49
1999
53
(年)
2000
20022003
20042005
20062007
20082009
2010
20122013
20142015
図2
3)
排泄調整系という位置づけに置かれた (
図3
).
海 外 で は ADA,EASD か ら Position statement が
はじめに
2 型糖尿病の病態
発表され,患者それぞれに合わせた Patients centered
図4
機序
).現在の SGLT2 阻
害薬の位置づけは,メトホルミンの次に使う薬剤のひとつ
療とビグアナイド薬,SU 薬による治療しか選べなかったも
ではあるが,体重減少効果や低血糖頻度が少ない特性を
のが,1990 年代に入りα - グルコシダーゼ阻害薬,チアゾ
考えると,今後の 2 型糖尿病診療に不可欠なものになっ
リジン誘導体,グリニド系薬剤が使用可能になり,21 世
てくると考えられる.
インスリン
抵抗性
増大
インスリン
分泌能低下
紀に入り DPP-4 阻害薬,GLP-1 受容体作動薬,そして国
糖毒性
内では 2014 年 4 月から SGLT2 阻害薬が使用可能になる
2)
など 2 型糖尿病治療の選択の幅が広がってきた (
図1
).
作用機序について
図2
)
.その「糖尿病治療ガイド 2014-2015」では,
食後高血糖
SGLT2 阻 害 薬 は, 腎 近 位 尿 細 管 からの 糖 再 吸 収 を
SGLT2 阻害薬はインスリン分泌機構から独立した新しい
阻害し,尿糖として血中のグルコースを排泄させること
機序のため,α - グルコシダーゼ阻害薬とともに糖吸収・
によりインスリン 非 依 存 的 に 血 糖 を 降 下 させる 薬 剤 で
10 ● 月刊糖尿病
2015/6 Vol.7 No.6
ビグアナイド薬
肝臓での糖新生の抑制
チアゾリジン薬
骨格筋・肝臓での
インスリン感受性の改善
スルホニル尿素薬(SU 薬)
インスリン分泌の促進
速効型インスリン分泌
促進薬:グリニド薬
より速やかなインスリン分泌
の促進・食後高血糖の改善
DPP-4 阻害薬
血糖依存性のインスリン分泌
促進とグルカゴン分泌抑制
α- グルコシダーゼ
阻害薬(α-GI)
炭水化物の吸収遅延・
食後高血糖の改善
SGLT2 阻害薬
腎での再吸収阻害による
尿中ブドウ糖排泄促進
インスリン作用不足
高血糖
は年々厚みを増し,複雑化する糖尿病治療の変遷がみて
とれる(
主な作用
糖吸収・
排泄調節系
日本糖尿病学会から発行されている糖尿病治療ガイド
種類
+
インスリン
分泌促進系
2 型糖尿病の治療薬として 1980 年代まではインスリン治
経口血糖降下薬
インスリン
抵抗性改善系
4)
approach が提言されている (
糖尿病治療ガイドページ数変遷
空腹時高血糖
図3
病態に合わせた経口血糖降下薬の選択
(文献 3 より改変)
月刊糖尿病 2015/6 Vol.7 No.6 ● 11