SGLT2 阻害薬の可能性 を考える〜心血管疾患 防止の観点から

12 SGLT2 阻害薬の可能性を考える〜心血管疾患防止の観点から
特 集 SGLT2 阻害薬の新時代〜機序から臨床まで
空腹時血糖
1.2
1.0
0.8
0.8
0.8
0.6
0.4
0.2
0.2
0.2
0
る治療は,HbA1c のみならず,低血糖をきたさずに動脈硬化を進行させる食後高血糖を改善させるような血糖
E
1.0
0.8
0.8
図1
0.4
0.2
0.2
F
MAGE(血糖変動)
1.2
P=0.044
R=ー0.589
P<0.001
R=ー0.571
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
n=12
0
20 40
60 80 100
血糖200以上 時間(%)
100 150 200 250 300 350
平均血糖(mg/dl)
0
5
10
15
血糖70以下 時間(%)
0
20
0
50
100
150
MAGE(mg/dl)
200
血管内皮機能と血糖
(CGM)
との関係
(文献 7)
n=57
に対して期待される多面的効果について概説する.
1)
はじめに
16
0.6
0.4
0
糖をきたしにくい.さらに体重減少
(とくに内臓脂肪),血圧低下,中性脂肪値低下,HDL コレステロール値増加,
10
12
14
HbA1c(%)
血糖 70 以下 時間
1.0
0
コントロールが必要である.SGLT2 阻害薬は,インスリン作用を介さずに血糖降下作用をもち,単剤では低血
8
1.2
P=0.028
R=ー0.292
0.6
0
6
血糖 200 以上 時間
P=0.068
0.6
0.4
L_RHI
L_RHI
と比較すると,虚血性心疾患による死亡や心筋梗塞の発症は約 2 ∼ 6 倍とされている.大血管合併症を阻止す
尿酸値低下など多面的作用を有する可能性が示唆されている.本稿では,SGLT2 阻害薬の心血管イベント抑制
0.6
0.4
1.2
者の生活の質や寿命を護ることにある.2 型糖尿病患者において,大血管障害合併症のリスクは非糖尿病患者
L_RHI
1.0
L_RHI
D
1.2
P=0.365
1.0
50 100 150 200 250 300 350
空腹時血糖(mg/dl)
産業医科大学 医学部 第 1 内科学
平均血糖
C
1.2
P=0.285
0
岡田洋右,森 博子
血糖コントロールの目標は,血糖値や HbA1c を低下させるのみならず,血管合併症の発症進展を抑制し,患
HbA1c
B
L_RHI
SGLT2 阻害薬の可能性
を考える〜心血管疾患
防止の観点から
A
L_RHI
12
特 集 SGLT2 阻害薬の新時代〜機序から臨床まで
く関わっている .Monnier らは CGM で測定した食後
血管内皮機能がとくに低血糖や血糖変動と強く関連する
の急速な血糖変動が HbA1c を指標とした慢性高血糖よ
ことを臨床的に明らかにしている(
7)
) .
2)
を超えた付加価値が求められる時代となっている.本稿
りも酸化ストレスの増加に寄与すると報告し ,Ceriello
では,インスリン作用を介さずに尿糖排泄を促進すること
らも血糖クランプ法を用いた試験において,血糖変動に
で血糖低下をきたす SGLT2 阻害薬の血糖コントロール,
伴う酸化ストレス亢進が慢性高血糖よりも内皮機能障害
およびその他の多面的効果について概説する.
図1
3)
を進行させたと報告している .筆者らも 2 型糖尿病患
日本人 2 型糖尿病患者の BMI の変化と SGLT2 阻害薬の特徴
糖尿病診療において心血管疾患発症阻止を見据えた
者において血糖変動と血管内皮機能指標である reactive
治療を実践するには,HbA1c のみならず低血糖をきたさ
hyperaemia index(RHI)を測定し,RHI に最も影響を
日本人の 2 型糖尿病は非肥満でインスリン分泌不全を主
与える因子について検討した.RHI は血管内皮機能と相
因とする患者が多かったが,食生活の欧米化,および運
ずに食後高血糖を良好にコントロールすることが重要で
ある.とくに冠動脈疾患を予防するためには,Steno2 や
心血管イベント抑制のために目指す
血糖コントロール
4)
関があり ,心血管イベントの発症危険因子と関連してい
動量の低下によりインスリン抵抗性を主因とする肥満 2 型
5, 6)
糖尿病患者が増加している.実際に,糖尿病データマネジ
ることが報告されている血管内皮機能障害指標である
UKPDS23 が示すとおり,血糖のみならず,血圧や脂質も
.
コントロールすることが重要であることは明らかである.本
低血糖,食後高血糖が動脈硬化を促進する因子である
筆者らの結果でも,RHI は ①血糖変動指標として用いら
メント研究会による 2013 年のデータでは,2 型糖尿病患者
邦でも食生活の欧米化に伴い肥満 2 型糖尿病患者が増加
ことを踏まえると,心血管疾患発症阻止を見据えた今後
れている the mean amplitude of glycemic excursions
の平均 BMI は 25.0 kg/m まで増加している(
している.肥満は,血糖のみならず高血圧や脂質異常症
の糖尿病診療においては,食後高血糖,低血糖,および
(MAGE)と負相関を認めること,②食後高血糖に該当す
かし,従来の血糖降下薬は,体重増加をきたすことが多
の原因ともなり,心血管疾患の大きなリスク因子である.
血糖変動を考慮することが重要である.血管内皮機能障
る血糖 200 mg/dl 以上の時間帯割合と負相関を認める
く,
体重管理に難渋することが多かった.その体重増加が,
そのような観点から,薬物療法においても血糖降下作用
害は,動脈硬化発症の初期より生じ,動脈硬化進展に深
こと,③血糖の時間帯割合と負相関をすることが示され,
高血圧,脂質異常症,内臓脂肪蓄積などの心血管イベン
78 ● 月刊糖尿病
2015/7 Vol.7 No.7
2
図2
)8).し
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