統計学Ⅱ 2013 年度秋学期 問題と解答 【注意】以下の設問の解答は解答用紙(別紙)を半分に折り左右2段組みにしたうえで問題 順に記しなさい。*印の問題では答えに至る途中過程も記しなさい。検定では仮説、検定統 計量とその分布、判定と結論を明記しなさい。数字の解答は割り切れるものは小数点表示で、割 り切れないものは分数で記しなさい。 【数表】 自由度 m の t 分布の右側 a%点ta(m)(Pr(t>ta)=a):t5(15)=1.75,t2.5(15)=2.13 自由度 m のχ2 分布の右側 a%点 Wa(m)(Pr(W>Wa)=a) :W97.5(15)=6、W5.0(15)=25、W2.5(15)=27 1 第 1 回レポートでは各自が担当する駅周辺の 20 物件を選んで家賃 Y(万円)と広さ X(㎡)につ いて家賃関数 Y=α+βX+εを最小 2 乗法を用いて推定した。 (30 点) (1)家賃関数でかく乱項εが必要な理由を説明しなさい。 (2*)最小2乗法における最小化の目的関数と 1 階の条件を示なさい。 (3)βの最小 2 乗法推定量 b が不偏推定量であるとはどのような性質かを数式で表せ。さら になぜこの性質が望ましいのかを説明しなさい。 (4)第 1 回レポートではどのように 20 物件のサンプルを選ぶよう指示されたか。 解答 (1)(4)各 5 点 (2)(3)各 10 点 (1)家賃 Y は広さ X 以外にも様々な要因の影響をうけるから よくできていた (2)目的関数:残差2乗和Σ(Yi-a-bXi)2=Σei2 5 点 1 階の条件:Σei=0 とΣeiXi=0 5 点(片方だけだと 2 点) ※意味不明な回答が多かった。過去問暗記の弊害か? (3)E(b)=β 5 点 確率変数bは平均では真の値βと一致し、偏りがないので望ましい 5 点 ※問うていない回答が非常に多かった。不偏性は春学期にもやった重要な概念です。 ※効率性(ちらばりが小さくなること)を説明した回答が多かったが、そんなことを本問では 聞いていない。 (4)家賃順に並べて等間隔にまんべんなくサンプルを選んだ 5 点 ※さすがによくできていた。ランダムに選ぶは誤り。 2 カイ 2 乗分布に関する以下の問に答えよ。ただし自由度 n のカイ 2 乗分布に従う確率変 n / 2 数 W~χ2(n)の積率母関数は Mw(t)= (1 2t ) とする。(35 点) (1*)W の平均 E(W)と分散 Var(W)を積率母関数から求めよ。 (2*)W1~χ2(n1)、W2~χ2(n2)の和 W1+W2 がχ2(n1+n2)に従うことをカイ 2 乗分布の定義に 基づいて示しなさい。 (3) (2)の性質を何というか。 (4*) (2)の性質を積率母関数を用いて示しなさい。 (5)積率母関数 Mw(t)の定義を書きなさい。 (6)2 乗和を簡単に計算するための excel の関数を記しなさい。 解答 積率母関数は毎年出題しているけど、例年出題しているベルヌーイ分布の回答を書く人が 多かった。過去問を丸暗記なんて無益な勉強はやめてください。 (1) E(W)= d dt Var(W)= M W (t ) t 0 n 2 (2)(1 2t ) n / 21 d2 dt 2 t 0 =n M W (t ) t 0 n 2 n- n2 1 2(1 2t ) n / 2 2 t 0 n 2 =n(n+2)-n2=2n ※各 5 点。微分をしていない or いい加減な展開は点数なし。微分自体は簡単でしょ。 (2)標準正規分布に従う確率変数 Z の互いに独立な n 個の 2 乗和 W= n 2 i 1 i z は自由度 n の カイ 2 乗分布に従うから W1+W2= z + i 1 z i2 = i 1 z i2 なので W1+W2 は自由度 n1 2 i 1 i n1 n 2 n2 n1+n2 のカイ 2 乗分布に従う。 ※5 点。(5)の積率母関数を用いて示している回答が多数あったが誤り。 (3)再生性 5 点 意外と出来が悪かった。授業で連呼していたのに。 n1 / 2 (4)Mw1+w2(t)=Mw1(t)・Mw2(t)= (1 2t ) (1 2t ) (5) Mw(t)=E(ewt) 5 点 (6)sumsq 関数 5 点 excel 関連の出題 n2 / 2 = (1 2t ) ( n1 n 2 ) / 2 5点 3 母分散σ2 の正規母集団からの大きさ n の無作為標本の分散 s2 について以下の問いに答えな さい。(15 点) (1) (n-1)s2/σ2 が自由度 n-1 のカイ 2 乗分布に従うことを示しなさい。 (2*) E(s2)をカイ 2 乗分布の性質を利用して求めよ。 (3*) Var(s2)をカイ 2 乗分布の性質を利用して求めよ。 解答 各 5 点 即レポでもやった問題です (1)s2=Σ(xi- x )2/(n-1)より与式=Σ(xi- x )2/σ2=Σ xi x 2 はカイ 2 乗分布に従うが、Σ(xi - x )=0 なので自由度は n-1 になる 厳密な証明は難しいです (2)W=(n-1)s2/σ2 とすると E(W)=n-1 より(n-1)/σ2E(s2)=n-1 を解いて E(s2)=σ2 ※ E(W)=n とした誤りや E(W)= (n-1)2/σ4E(s2)とする誤りが散見されました。 (3)Var(W)=2(n-1)より(n-1)2/σ4Var(s2)=2(n-1)を解いて Var(s2)=2σ4/(n-1) ※ Var(W)=2n とした誤りが散見されました。 4 スーパーで買った 16 個の LL サイズの卵 1 個当たりの重さを図ったところ平均 65g、標準 偏差 5g であった。※(1),(2)については有意水準 5%で検定をしなさい。 (20 点) (1*)LL サイズは規格上 70g/個である必要があるが、購入した卵は規格以下といえるか。 (2*)卵パックのちらばりは規格上母標準偏差 3gが望ましいと考えられているが、購入した 卵のちらばりは規格より大きすぎるといえるか。 (3*)この卵の母分散σ2 の 95%信頼区間を求めよ。 解答 (1)(2)各 5 点、(3)10 点 (1) Ho:μ=70 H1:μ<70 帰無仮説 Ho が真の時t=( x -μ)/(s/ n )は自由度 n-1 のt分 布に従うが、調査結果より t=(65-70)/(5/ 16 )=-4<-t5(15)=-1.75 なので Ho は棄却さ れる。よって対立仮説 H1:μ<70 が有意水準 5%で採択されるので規格以下だといえる。 ※多かったミス:仮説設定の誤り(Ho: x =70 など)。t=( x -μ)/(s n )。無理やり 2 母集団 問題の形にする など (2)Ho:σ=3 H1:σ>3 帰無仮説 Ho が真の時 W=(n-1)s2/32 は自由度 n-1 のカイ 2 乗分布 に従うが、調査結果より W=(16-1)52/32=125/3>W5(15)=25 なので Ho は棄却。よって対 立仮説 H1:σ>3 が有意水準 5%で採択され、スーパーの卵パックは規格よりばらつきが大 きいといえる。 ※多かったミス:仮説設定の誤り(Ho:s=3 など)。無理やり t 検定しようとする など (3)Pr[6<(n-1)s2/σ2<27]=Pr[(n-1)s2/27<σ2<(n-1)s2/6]=Pr[15・25/27<σ2<15・25/6] =Pr[125/9<σ2<125/2] よくできていました。 総評 受験者数 358 平均 45.4 中央値 47 標準偏差 19.8 最低 0 最高 90 予告通り「カイ2乗責め」にして、基本的な問題を出題したのですが、出題傾向を変え たためか、想定したよりずっと平均点が低かったです。 採点していると設問では聞いてもいない過去問の回答を長々と書いている答案が多数あ り、非常に残念に思いました。内容を理解せずに、過去問を暗記するだけの勉強を誰から 教わったのかは判りませんが、全く意味がないので止めましょう。 また、春学期にやった検定を根本的に理解していない答案も目立ちました。検定の考え 方は、何度も説明したのに残念です。これからも出てくるので、理解していない人はもう 一度勉強しなおしてください。 下図は得点の分布です。 大きな偏りはありませんが、例年より平均点が 10 点近く低下しています。 成績は、期末得点×0.9 をしないで、総点=期末得点+本レポ得点(2 回)で、以下の基準で 成績をつけます(C のボーダーを 50 ではなく 40 に下げました)。 A:総点≧80 B:60≦総点<80 C:40≦総点<60 D:総点<40 成績の人数分布は A:63 人(18%) B:100 人(28%) C:116 人(32%) D:79 人(22%) になり、経済学部のガイドライン内におさまりました。
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