Title Author(s) Citation Issue Date 「白銀比の教材化」 : 中学3年「平方根」の学習場面で( 個人研究)( fulltext ) 松尾,吉陽 研究紀要/東京学芸大学附属小金井中学校(50): 115-118 2014-03-28 URL http://hdl.handle.net/2309/135613 Publisher 東京学芸大学附属小金井中学校 Rights 東京学芸大学附属小金井 中学校 『 研究紀要』第50号 201 4 「白銀比の教材化」 ∼中学 3年 「 平方根」の学習場面で∼ 松尾 吉陽 本校数学科では研究 の柱 に思考 をおいている。 「 思考 した ことをもとにして判断 をす る」 「 思 考 した結果 を友だちに表現 して伝 える」 と考 え,数学科指導の核 となるものを思考 としたのであ る。 このような思考場面で,白銀比が含 まれているルー ト長方形 ( 規格紙)の,教材 としての価値 を明 らかにすることを研究の目的 とする。 研究方法は,身のまわ りにある規格紙 を題材 として,ルー ト長方形 の拡大 ・縮小 を思考する場 面で授業実践 を行 った。その結果,白銀比 となっているルー ト長方形 は,平方根 の学習 において 価値ある教材であるとい う知見 を得た。 [キーワー ド] 教材開発 平方根 白銀比 ルー ト長方形 問題解決学習 1.研究の 目的と方法 1-1.研 究の 目的 3年では, 2次の世界 を学習する。新たな数 「 平方根」である。 数学は,全ての学習が思考場面 といっても良い。その 1つ にこの数概念 の拡張がある。 このような概 念拡張の学習 においては,身のまわ りにある教材 を活用することが有効 と考 えている。それは,生徒 の 学習-の興味関心 を高 めることが期待できるか らである。 生徒が毎 日目にす るコピー用紙 ( ルー ト長方形である規格紙 ) が,教材 として どのような価値があるか を明 らかにすることを研究の目的 とする。端的 に述べれば,平方根 の学習 における教材開発である。 1-2.研究の方法 研究方法は,授業実践である。 3年 「 平方根 」 の単元 において,身のまわ りにある 4種類の規格紙 を教材 として,短辺 :長辺 -1: JFになっているコピー用紙 の長 さの関係 を思考す る場面 を設定す る0 A判同士のA 3とA 4の関係, B判同士の B4とB5の関係 だけでな く, A判 とB判の関係 を追究する思考場面か ら,思考の様相をと らえてい く。 つま り, コピー用紙 の教材 としての価値 を明 らかにするため,問題解決の授業実践 を通 して検証 して い く研究方法 をとる。 2.「平方根」について 平方根の学習の意義 を,以下の 3点か らとらえてみる。 2-l.無理数 とい う観 点か ら 2-1-1.数の拡張 中学校数学の数の世界 は, 1年で負の数-の拡張がなされた。 2回目の拡張が本単元で学ぶ無理数 の 拡張である。無理数の存在 を視野 に入れることで,有理数 の理解 を充実 させる。つま り,無理数が分数 に表せない数であることか ら,有理数の理解 を明確 にしてい く。 2-1-2.計算の拡張 無理数 も, これまでの有理数 と同 じように四則計算ができることか ら,計算でも拡張が行える。交換 法則や結合法則,分配法則が成 り立つ ことより計算の世界での拡張 を感得 させる。 -1 1 5- 2-2. 身の まわ りに ある平 方根 とい う観 点か ら 2-2-1.正方形 0の正 正方形 には,JFが潜 んでい るo対 角線 の長 さである.方眼紙 を利用 して面積 が 2, 5, 8, 1 方形 をかかせ ることか ら, J F,JF,Jg,Ji. すの存在 を知 る。 2-2-2.規格紙 A 3, A 4, B4, B 5の 4種類 の規格紙 (コ ピー紙 )には,短辺 :長辺 - 1 :JT とい う共通 の性質 がある。 この性質 があるので,半分 にして も相似 な長方形 となる。 また この比率 は 「白銀比」 と呼 ばれ 古来 よ り美 しい比 の形 として好 まれている。 A判 は,面積 が 1m2 の 「 ルー ト長方形」 をA Oとしてい る。 B判 は,面積 が 1. 5m2の 「 ルー ト長方形」 を BOとしている。 2-3. 白銀比 の教材 化 とい う観 点か ら 2-3-1.数学的活動 と思考場面 縦 と横 の長 さの比が, 4種類 の コピー用紙 とも 1:1. 41--- とな ることか ら,規格紙 の縦 と横 の長 さの比 を 1 : J f と類推 して確認す る数学的活動 を行 った。 ・規格紙 を 2回折 ることによ り,縦 と横 の長 さの比 を 1 : J f と確認す る。 ・コンパスを用 いて正方形 の対角線 の長 さを移動 し,縦 と横 の長 さの比 を 1: /21と確認す る. 2-3-2.規格紙の拡大 ・縮小 と思考場面 A判 同士 ( A 3とA 4の関係 )とB判 同士 (B4とB5の関係 )は面積 が 2倍 と 1/2の関係 になってい るので, 141%の拡大や 70%( も う少 し正確 には 0. 7071067-)の縮小 は,根号 を含 む式 の 計算 ・有理化が未習 のため,答 えを求 めるための式 が分 かれ ば良い程度 にす る。 また, A判 とB判 との間の拡大縮小 は, A判 の面積 の 1. 5倍 が, B判 の面積 になっている とい う事 実 か ら拡大縮小 を考 えていかな けれ ばな らない。 白銀比 の教材化 とい う観点か ら,平方根 の学習が,思考 と深 く関係 していることが分 かる。特 に本実 践 では, コピーす る時の拡大縮小 の比率が課題 である。 その課題 を問題解決 してい く過程 で平方根 の理 解 を深 めてい く。 3.実践の概要 3-1.単 元名 平方根 3-2.単 元 の指導 計 画 ( 1 2 時間扱 い) 第 1次 平方根 の理解 ・根号 の意味,平方根 の意味,平方根 の基本性質 ・無理数,有理数 の意味 第 2次 身のまわ りにある平方根 ・用紙 の縦 と横 の長 さの割合 ( 本時 3/ 3) ・拡大縮小 か ら平方根 を考 える 第 3次 根号 を含む式 の計算 3-3.本時の 目標 ・規格 紙 の拡大縮 小 に関心 を もち, 身 のまわ りにあ る平方根 を考 え よ うとす る。 ( 数学- の関心∴ 意 欲 ・態度) -1 1 6- ・規格紙の縦 と横 の比率 を平方根で考 え,拡大縮小の求め方 を考 えることができる。 ( 数学的な見方や 考 え方) ・規格紙の比率の求め方 を式 に表す ことができる。 ( 数学的な技能) ・身のまわ りに平方根 が有効 に使われていることを知 る。 ( 数量や図形な どについての知識 ・理解) 3-4.本 時の主題 身 のまわ りにある平方根 3-5. 白銀比 に着 目 した指導 の工夫 本実践 を通 して,実践者は次のような指導の工夫を意図す る。 315-l.数学的活動 実際に規格紙 を折 った り,作図 した りして無理数の存在 を実感 させる指導をする。 3-5-2.倍率の予想 拡大縮小の倍率 を予想する場面では,生徒 の自由な発想 を大切 にして予想 させ る。あ くまで予想なの で,見た目の感 じで予想することを認める。 141%のように、 白銀比が分かっている半端な数の倍率 を答 える反応 も認める。 3-5-3.電卓を利用 した実測値の活用 E3]と匡 司 の関係,匡 j]と匝 司 の関係 をとらえるのに苦労す る生徒がいる場合 には,実測 した 結果か ら導 く方法 を認める。 3-5-4.拡大 コピーの提示 0 0%の拡大 コピーを提示す ることによって, 面積 で縮尺 を求めることにこだわっている生徒 には,2 拡大倍率や縮小倍率が辺の長 さの比であることを理解 させる。 3-5-5.倍率の関係図の活用 A3, A4, B4, B5の拡大縮小の関係 を次のような図でまとめる。 81% 61% E ] 〒 [≡ ] E ∃- -1 1 7- [≡ ] 3-6.規格紙 の関係 1 4 5 6 m m 1 1 8 9 m m B1 - -1 ■ ■ 4.実践の考察 4-1.成果 実践者 の意 図 した指導 の工夫か ら,生徒 の思考 を うなが し考 えを深 める場面 が見 られた。 「 3-5. 白銀比に着 目 した指導の工夫」で述べた観点 と対応 させ,実践 を考察す る。 数学的活動 として取 り入れた,規格紙 を実測 させ る活動,規格紙 を実際 に折 る活動,正方形 を作図す る活動 は,無理数 (白銀比 )の存在 を理解す るために有効であった。 倍率 の予想では,生徒 の 自由な発想 を大切 にして予想 させたため,多 くの生徒 が発言 した./F倍 と い う白銀比 を根拠 に予想 した生徒 が見 られた。 電卓 を利用 した実測値 の計算 は,倍率の値 を求める手段 の 1つ として有効であった。 00% の拡大 拡大 コピーを提示す ることによって,拡大縮小 のイ メージを掴む ことができた。特 に,2 コピーの提示 は,倍率が長 さで表 されていることを視覚的 にとらえることができた。 倍率 の関係図の活用 については,√「一百とい う表現や, B判 の面積 が A判 の面積 の 1. 5倍 とい う 関係 か ら,生徒が白銀比 を掴むのは難 しい とい うことが分 かった。 4-2.課題 実践 を通 し,生徒 の思考 を深 めるための今後 の課題が明 らかになった。 ・生徒 の思考が深 ま らない場面 は,生徒 に 「 何 を考 えれば よいか」 とい う教師の指示がはっき りしてい なかった。教師の発間 ・指示 を どの よ うに構成 してい くかをはっき りさせてい く必要がある。 ・AOとBOの面積 の比 を 1:1. 5と表 した り,平方根 の近似値の表示 が統一できていなかった りし た。生徒 が思考 を深めるための分 か りやすい表現方法 の改善が重要である。 -1 1 8-
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