Ⅵ.患者・家族の個別支援 1. 九州大学病院による取り組み 1.1 相談窓口について 平成 26 年 10 月より九州大学病院医療連携センター内に「福岡県小児等在宅医療連携拠点事業部」を 設置。今年度は専用の相談窓口の設置には至っておらず検討している段階である。今後、協議を重ねてい く予定であるが、当面は対象を医療機関に限定し、相談窓口設置予定としている。 1.2 在宅コーディネート 九州大学病院医療連携センターでは、退院後も医療処置が必要な患者に対して、在宅に向けたコーディ ネートを行っている。在宅療養支援を円滑に行うために本人家族と面談による意向の確認や、各病棟へ の巡回で在宅療養生活における問題点を抽出し、アセスメントを行い、医療処置の手技習得状況や、必要 な社会資源、経済的問題など情報の整理を行っている。医療連携センターの看護師、社会福祉士とともに 情報共有しながら、具体的な支援内容について検討し、地域医療機関や行政、医療機器・医療材料の各業 者等と社会資源導入のための様々な調整を行っている。また、必要時は退院後に患者が関わる予定とな る各関係機関への参加を依頼し、退院前カンファレンスを開催している。 平成 26 年 10 月より九州大学病院医療連携センター内に福岡県小児等在宅医療連携拠点事業部を設置 し、事業部専任の看護師、社会福祉士は医療連携センター内スタッフと共に在宅コーディネートを行っ ている。医療資源調査結果をもとに訪問診療や訪問看護ステーションの受入先を検討し、各関係機関と の連絡調整を行っている。 平成 25 年度は計 22 件の小児患者の退院前カンファレンスの実施に比べ、平成 26 年度は 2 月末まで に計 25 件、小児患者の退院前カンファレンスを開催。開催件数は増加傾向にある。 退院前カンファレンスでは、退院までの治療経過、医療処置の手技習得状況、今後の外来通院につい て、今後の治療方針、家族が抱えている不安、今後の予防接種や健診について等をカンファレンス参加者 で情報共有している。また、退院前カンファレンス時には在宅支援ネットワーク図を提示することで、退 院後の連絡体制を明瞭化している。 在宅支援ネットワーク図 九州大学病院 訪問診療・ かかりつけ医 訪問看護 患者・家族 行政 ヘルパー 消防署 TEL:119 療養通所介護 相談支援事業所 医療機器業者 1.3 在宅療養指導 九州大学病院医療連携センターでは、在宅療養指導管理料を算定している在宅療養児・者に対して ①在宅療養指導管理算定による必要な医療材料の一元管理、②看護や介護に関する相談及び療養指導、 ③在宅医療機器使用に関する一括した窓口を役割とした、在宅療養指導を行っている。在宅療養支援室 看護師は各診療科主治医からの在宅療養指導指示書を電子カルテ上で確認し、その指示内容に基づいて 医療処置の手技や医療材料の使用方法、洗浄から廃棄に至るまでの管理方法を指導し、その指導内容に 基づいて医療材料の調整を行っている。また、生活状況や体調管理の状況を確認し、年齢やライフステ ージに合わせた個別的な在宅療養支援を行っている。 毎月平均 224 件の在宅療養指導件数に対応しており、うち毎月平均 95 件は在宅療養児が対象であ る。在宅療養指導で得た情報は、訪問看護ステーション等関係機関と情報共有を行いながら、地域との 連携を図っている。 平成 26 年 10 月より福岡県小児等在宅医療連携拠点事業部を設置し、事業部専任の看護師、社会福祉 士も在宅療養指導に関わり、家族が抱える不安や問題、在宅療養の現状を把握することで、福岡県小児 等在宅医療連携拠点事業として取り組むべき課題を抽出した。 2. 北九州市立総合療育センターによる取り組み 国は、 「小児等在宅医療連携拠点事業」の実施など小児在宅医療の推進に向けて舵を切っています が、課題はまだまだ山積しています。 その課題の一つが、在宅で生活をする医療依存度の高い子ども達やその家族を支える調整役が不在で あるということです。高齢者の世界には介護保険上、ケアマネージャー(介護支援専門員)と言われる 調整役が存在します。 しかし、小児の世界にはこうした調整役が明確には位置づけられていません。 2012 年の児童福祉法改正により、障害児の相談支援が実施されることになり、障害児やその家族のケ アマネージャー役が初めて法に位置づけられました。 しかし、その対象は障害児通所支援(児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援)を 利用する場合に限定されています。障害児の相談支援を担当する相談支援専門員についても、資格取得 には一定の実務経験と研修への参加が必要とされてはいるものの、それだけで十分に人材育成ができる のかと、疑問視する声もあります。 障害児者のケアマネージャー役である相談支援専門員は、福祉施設などの出身者が多く、医療機関や 医療職との関係構築の経験が希薄です。医療との共通言語もままならない中、医療依存度の高い子ども 達やその家族の調整役を担うには、専門的な研修や医療機関での実習などその育成にかなりの時間と労 力が必要になると考えられます。むしろ、こうしたスーパー相談支援専門員を育成するよりも訪問看護 ステーションや当地域支援室が担っている障害児等療育支援事業等を展開している事業所に社会福祉士 等の相談員を配置し、コーディネーターチームを形成する方が現実的で効果的なものになると感じてい ます。配置された福祉職もOJT(On-the-Job Training)の利く環境で学びながら実践できるという 利点もあり、人材育成の点でも効果的ではないかと考えます。
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