第3章 慢性頭痛の病態 その1 ホメオスターシス・・ストレスとの関係から・・

第3章 慢性頭痛の病態
その1
ホメオスターシス・・ストレスとの関係から・・
ストレスと恒常性(ホメオスターシス)
私達は普段何気なく「ストレスが溜まってる」
などと口にしますが、実際にはストレスの存在を
目にすることが出来ず、心身に及ぼす障害の発生
機序やメカニズムを把握してる方は少ないと思い
ます。しかし私達は日常的に心身相関(体とここ
ろの結びつき)状態にあり、身体症状にあらわれ
る障害は強いストレスに起因していることも多
く、これは心身が深く影響しあっている証拠でも
あります。
そしてそこには自律神経をはじめ、さまざまなしくみが介在しています。
外部の環境変化にかかわらず、体温や血圧、血糖値など、体内環境を常に最適な状態に
保つ仕組みを恒常性(ホメオスターシス)と呼びます。さまざまな変動は、この恒常性を
維持するための「環境に対する適応力」といえます。
恒常性には自律神経、内分泌系、免疫系の 3 つの働きが深く
かかわっており、それはストレスなどに大きく影響されます。
例えば自律神経を失調させるストレスは内分泌を乱し、免疫
力も低下させてしまいます。3 つの相関関係は「ホメオスター
シスの三角形」と呼ばれます。
【自律神経】
こころと体を結ぶ一つに自律神経があり、体の様々な働きをコントロールしています。
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相対する働きを持つ交感神経と副交感神経が協調しながら恒常性などを保っています。
体内に張り巡らされている末梢神経には、体の機能をつかさどる「体性神経」と、内臓
の働きをつかさどる「自律神経」に区別されます。「自律」というのは意識することなく、
状況に応じて自動的に調節することを意味します。
自律神経は全身の内臓、血管、分泌腺などに広がり、意思とはかかわりなく働き、循環
や呼吸、消化、代謝など生命を保つために欠かせない生理機能を支えています。自律神経
はその役目から、主に生理機能を活発にする交感神経と、生理機能をしずめる副交感神経
とに分けられます。
さまざまな環境の変化に対応して行くための「自律神経」という調整機能がホメオスタ
シスとしてあります。
たとえば、自動車には必ずアクセルとブレーキとが備わっています。アクセルしかない
車、ブレーキだけしかない車では運転し続けることはできません。同じようにアクセルと
ブレーキの働きを受け持つのが自律神経です。アクセルにあたる交感神経とブレーキにあ
たる副交感神経です。
自律神経は無意識のうちにホメオスタシスによって、夜眠っているときにも心臓が動き、
呼吸が途絶えたりしないのも、自律神経が働いているためです。
日中は交感神経が優位になって血管を収縮させ、脈拍が上がり、呼吸数も増え、仕事や
勉強に精を出すことができます。逆に、睡眠や食事をしているときには副交感神経が優位
になって血管を拡張させ、脈拍や呼吸数を減らし、消化を促します。
自律神経がホメオスタシスによりバランスよく働くことで、毎日の生活を健康で元気に
送ることができるのです。
人間の体は一定の生体リズムに沿って、一定の収縮(活動)と弛緩(休息)を繰り返し
ていますが、社会環境の変化、不規則な生活習慣やストレス状態が続くと生体のリズムの
誤差が大きくなりホメオスターシスの修正ができず不調を感じたりして、健康維持が難し
くなってきます。
ホメオスタシスは、異常を正しくする防衛力で、活性酸素の害やストレスにより乱され
る自律神経の調整、免疫の働き、やる気や睡眠を誘導する脳内ホルモンの分泌等さまざで
す。生体リズムを正し、ホメオスターシス機能を発揮して、健康が保てる生体リズムを誤
差範囲内にとどめることが大切です。
ストレスなどによって自律神経が乱がれても、ホルモンバランスや生体リズムに悪影響
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が及びます。
どれかひとつでも乱れが生じれば、連鎖的に他の2つにも影響が出て、ホメオスタシス
の機能が崩れてしまうのです。
両者は一方が強いときには他方は弱まっているというように、互いにバランスを取り合
いながら働いています。その結果、外部刺激を受けても体内環境は一定に保たれるようコ
ントロールされ、恒常性が維持されています。
しかしこの自律神経のバランスはストレスにより乱されてしまいます。交感神経と副交
感神経のバランスが崩れることで、様々な自律神経失調症を招くことになります。
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【内分泌】
体内では多種のホルモンが分泌され、体内環境を常に安定した状態に保っています。ホ
ルモンは体内での変化、体外からの刺激に反応してもっとも望ましい状態になるよう調節
する内分泌システムの主役でもあります。「分泌」というのは、細胞が特定の化学物質(分
泌液)を作って放出することを指し、それをになう細胞の集まりを「腺」といいます。分
泌には内分泌と外分泌があります。
ホルモンが働きかける細胞(組織)を「標的細胞」といい、標的細胞にはホルモンを受
け入れるためのレセプター(受容体)が備わっています。ホルモンの作用はとても強力な
ので、必要なときにだけ分泌されます。
内分泌をコントロールしているのは脳にある視床下部、下垂体です。あるホルモンの量
が少ないときは分泌を促し、多いときには分泌を抑えるよう様々な内分泌腺に刺激ホルモ
ンで指令を伝えます。
このコントロールの仕組みを「フィ
ードバック」と呼びます。
心身がストレスにさらされたとき、
自律神経と同様、内分泌システムも変
化して対応しようとします。
強い抗炎症作用、抗ショック作用を
持つ副腎皮質ホルモンや、アドレナリ
ン、ノルアドレナリンといった神経伝
達物質(カテコールアミン)を分泌し、ストレスに対抗します。
神経伝達物質は交感神
経の働きをもたらすもので、自律神経と内分泌系が連動していることがわかります。
【免疫】
体外から侵入してくる異物に対して体は抵抗力を発揮します。体内には自己成分でない
ものを見分けて排除する防御機能が備わっています。防御システムは初めから持っている
初期防御システム(自然免疫)と、ある特定の病原体が体内に侵入して初めて獲得する抵
抗力(獲得免疫)の二つに分けられます。
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免疫の主役は血液中の白血球で、免疫細胞の一つであるナチュラルキラー細胞と呼ばれ
るものが存在します。体内に一定数存在(白血球の 15 ~ 20%ぐらい)していますが、心
身がリラックスすると力が強まり、逆にストレスがかかると弱まるという性質を持ってい
ます。
免疫系は脳とネットワークを形作ってい
て、互いに情報をやり取りしています。それ
は免疫系が心理状態の影響下にあることを示
しています。
イライラや不安、恐れ、憎しみ、怒り、追
い詰められる気持ちなど、このような気持ちを常に持っていれば些細なことでも「カリカ
リ」していたり、常に「ビクビク」していたりします。人間と動物が違う点は脳が発達し
すぎた為に、本来過剰に反応しなくてもよいものまでストレッサー(ストレスのもと)と
して受け取ってしまうことではないでしょうか?
ストレスを放置していればアドレナリンやノルアドレナリンが常に身体や脳で駆け巡っ
てしまいます。またあまり追い詰められれば脳の神経伝達物質の流れが悪くなり、自律神
経がうまく働かなくなります。
またこれらのホルモンだけではなく、副腎からコルチゾ-ルなどが常に放出されるよう
になります。更に免疫システムであるリンパ球(獲得免疫)を減少させます(獲得免疫と
はガンやウィルスを処理してくれる免疫です)。
リンパ球が減少すれば顆粒球と呼
ばれる自然免疫が多くなります。こ
れらは活性酸素を放出します。よっ
てこのような状況(ストレス状態が
大きい)ことを放置しておくことで
さまざまな精神的、身体的な症状を
引き起こしてしまう危険性がありま
す。
このようにして人の体はコントロールされているのですが、それがストレスにさらされ
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ることでバランスを崩し、頭痛に繋がっていくことになります。
ストレスによる影響
(1)ストレスと脳内セロトニン
ストレスを受けると、脳にある視床下部がそれを感知し、副腎から副腎髄質ホルモン(カ
テコールアミン)と副腎皮質ホルモン(コルチゾールなど)の分泌を促します。また間脳の橋
の青斑核にあるノルアドレナリン神経からはノルアドレナリンが、交換神経末端からはア
ドレナリンが分泌されます。
さらに、ストレスが続くと交感神経が過敏となり、アドレナリンやノルアドレナリンの
分泌が高まります。セロトニンは過剰に分泌されたこれらのホルモンを抑制して、自律神
経のバランスを整える働きも担っています。人間の感情の基本は、"快"と"不快"です。快
を感じた時にはドーパミンが分泌され、不快を感じた時にはノルアドレナリンが分泌され
ます。どちらにしても過剰の分泌は問題ですので、この時、セロトニンが働いて過剰分泌
にブレーキをかけます。
脳の中で”快・不快”を感じるのは大脳辺
縁系といわれる場所です。辺縁系には記憶の
中枢である「海馬」や、情動を感じる「扁桃
体」があります。扁桃体の刺激は視床下部と
いう場所に伝わり脳内に色々なホルモン物質
が出て自律神経を刺激します。幸せな気分は
セロトニンやエンドルフィンが放出され、不
快や恐怖ではアドレナリンやノルアドレナリンが放出され交感神経の働きを強めます。
嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記憶”を扁桃体に伝えます。扁桃体では不快・
恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激は視床下部に伝わりアドレナリンやノルアド
レナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させますから肩や頸の筋肉の血流が
減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運び出せなくなります。このため
筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、緊張性頭痛が引き起こされま
す。
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このようにして、体がストレスを受けると、最終的にストレスの影響を緩和するために
副腎皮質ホルモンが分泌されます。
副腎気質ホルモンはセロトニンが神経細胞を伝
わっていく時にセロトニン回収口を塞いでしまいま
す(脳内セロトニンは生成量が少ないので、8割程
度は回収しながら溜まりを作り、一部だけを神経の
伝達に使う仕組みになっています)。
副腎皮質ホルモンが回収口を塞ぐと、一時的に神経伝達に使われるセロトニンは増える
のですが、ストレスが長く続くと貯まりが少なくなって、セロトニン不足を起こすことに
なります。
このようなことが繰り返し起きますと、セロトニンの再回収口は完全に機能を失い、慢
性的なセロトニン不足を招きます。
縫線核に細胞体を持つセロトニン神経系(セロトニンが神経伝達物質)は脊髄後角でシ
ナプス接続して、痛みを抑制します。
以上のことから、慢性的にストレスに晒されることによって、脳内セロトニン不足を来
すことによって、痛みを制御ができなくなって、頭痛を感じやすくなります。
(2)ストレスとマグネシウム
通常、ストレスがかかるとアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンによって心拍数が上がって、血圧上昇、血管収縮、筋肉収縮が起こります。
こうやって外部からのストレスに身体が対処しようとするわけです。しかし、こういった
作用には必ずマグネシウムが必要で、ストレスがかかる状況が続けば、マグネシウム欠乏
に陥ります。
ストレスの研究で有名な、ハンス・セリエによれば、身体の短期的な闘争反応、逃避反
応から、慢性的ストレスに移行する際にもマグネシウムが消耗されると言います。また副
腎(ストレス調整臓器)は、コルチゾールやストレスホルモンであるノルエピネフリンを
作り出しますが、ノルエピネフリンはアドレナリンに似た作用を示し、同じくマグネシウ
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ム不足を生じさせます。
またストレスによる副腎の酷使は、マグネシウム不足を生みますが、体内のマグネシウ
ムレベルが低い時にストレスにさらされると、より多くのアドレナリンが放出されてしま
うのです。
アドレナリンは、イライラや怒りっぽさ、短気、感情の爆発などを作り出すので、まさ
に悪循環の流れが出来上がるわけです。こういった悪循環をストップさせるのには、マグ
ネシウムレベルを回復させることが重要になってきます。
またストレス反応が続く間は、アドレナリンの放出を促進するのにカルシウムが必要と
されますが、元々カルシウムが過剰になっているとアドレナリンが溢れかえってしまいま
す。しかし十分にマグネシウムがあれば、余剰カルシウムを抑えてくれ、通常レベル以下
にしてくれるので、ストレス反応が抑制されます。
ストレス状態にある人の尿に含まれるマグネシウム濃度を測ると通常時に比べてマグネ
シウムの排泄量が増えています。
これは、ストレスに対する防衛反応として、ノルアドレナリンというホルモンが分泌さ
れるときにマグネシウムが消耗されたためです。
強いストレスを感じると体内のマグネシウムがどんどん使われ益々ストレス状態が悪化す
るという悪循環に陥ります。
マグネシウムはストレスによって奪われます。
ストレスにより起こる現象で、例えば甘いものを食べることも体にとってはストレスに
なります。
甘いもの=ストレス
ちょっと結びつかないないかもしれませんので、どういうことか説明します。
まず、甘いものや小麦を食べると血糖値が急上昇し、それを抑えるためにインシュリン
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が分泌され、今度は血糖値が大幅に下がります。すると、今度は血糖値を上げるために副
腎からアドレナリンが放出されます。人体には低血糖に対し数段階の回避システムが用意
されています。
血糖値が約 65-70mg/dL に低下すると、
血糖値を上げるホルモンであるグルカゴ
ン、アドレナリンが大量に放出され始めま
す。
血糖値が約 60-65mg/dL に低下すると、
三番目の血糖値を上げるホルモン、 成長
ホルモンが放出されます。
最後に血糖値が 60mg/dL をきるようになると、 最後の血糖値を上げるホルモン、コル
チゾールの分泌が亢進します。
血糖値を上げるために分泌されるホルモンの順番は、①グルカゴン、アドレナリン②成
長ホルモン③コルチゾール です。
血糖値を上げるためのアドレナリンは、他にも心臓のポンプ機能を速めたり、 筋肉を
活性化させたりします。アドレナリンは闘争反応、逃避反
応を刺激します。
すると、マグネシウムはアドレナリンによって緊張状態
になった筋肉や臓器を弛緩させるために消費されます。
このため、アドレナリン由来のこういった機能亢進にはすべてマグネシウムが必要にな
り、消費されます。
「ストレス⇒アドレナリン放出⇒マグネシウム消費」という流れがあるわけです。
このように、マグネシウム不
足は、脳過敏を来たし、頭痛を
悪化させます。
この点については、後に詳し
く述べることにします。
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(3)ストレスと活性酸素
ストレスがたまると活性酸素が増える
活性酸素を増やす要因には、食生活の乱れやタバコや大量の飲酒、過激なスポーツ、紫
外線など、さまざまな要因があります。しかしそれだけではなく、ストレスも重要な要因
のひとつです。代表的なメカニズムには、次のようなものがあります。
1.ストレスを受けると、ストレスに対抗する「副腎皮質ホルモン」が分泌される。この分
泌と分解の過程で、活性酸素が発生します。
2.ストレスは、「抗酸化ビタミン」ともいわれるビタミン C を大量に消費します。
3.緊張が続くと血管が収縮し、一時的に血流が阻害されます。その後、血管が拡張したと
きに、血液が勢いよく流れますと、大量の活性酸素が発生します。
4.ストレスがあると高血糖になりやすい。この状態も、活性酸素が増える一因となります。
イヤな仕事や勉強、人間関係などのストレスも、体内で活性酸素がドッと増えます。よ
く、ストレスから胃潰瘍、十二指腸潰瘍になった、とききますがこれも活性酸素が犯人で
す。ストレスにより血管が強く収縮し血流障害がおき、虚血状態に陥った後、血流が再開
する時大量の活性酸素がドッと洪水のように
発生するのです。
ストレスホルモンの一種であるコルチゾル
が免疫機能の重要な役割をになう NK 細胞の機
能を停止させ、生成時に活性酸素も発生させ
ます。
ストレスが体にダメージを与える理由は、
体内のあらゆる栄養素が消耗し、瞬間的に血
管が収縮して血行が悪くなります。この血流が再開されるときにドッと大量の活性酸素(活
性酸素とは、ミトコンドリアがエネルギーを産生する際に発生するものです)が発生する
のです。
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体内のあらゆる栄養素が血液中に動員され、筋肉や副腎といったストレスとの闘いで活
躍する組織に優先的に送られるのです。その一方、そのほかの組織は逆に栄養を絞りとら
れる結果となります。ストレスに対処するのに直接関係しない臓器(消化器や皮膚など)
に送られる血液量が最小限に絞られます。
ストレスが解消されると、これらの臓器にも血液が戻ってきます。このときにも、活性
酸素が大量に発生すると考えられています。現在のように繰り返しじわじわとストレスが
続く状況では、体にとって大きな負担となります。例えば、ストレスがかかると心拍数や
血圧が上がるのは、身に迫る危険に対抗するために自律神経により様々な臓器が調整され
た結果です。身に迫る危険に対抗するための、体の仕組みになっています。
もう少し詳しく説明しますと、精神的なストレスによりアドレナリンが分泌されると、
血糖値(血液中のブドウ糖濃度)は上がり、体脂肪も分解され始めるため体脂肪からの遊離
脂肪酸が生成されるようになります。
本来、これらの体の変化は獣(外敵)などに襲われた時に人間が外敵と戦ったり逃げたり
する時にエネルギー不足を起こさないための緊急的体勢の備えとして身に付いたものと考
えられます。
通常、体脂肪のエネルギーへの利用は空腹時(食事を摂らない時)にエネルギーの不足分
を補うために生じ、生成した遊離脂肪酸は直ちに体に必要なエネルギーとして使用されま
す。
しかし、エネルギーとして必要性がほとんどなく、単に精神的なストレスだけによる緊
張のためだけに生成した遊離脂肪酸は血中の遊離脂肪酸濃度を高めるだけの結果となりま
す。ストレスから開放されると消費されるあてのない遊離脂肪酸は一時的に血中の濃度を
高めるだけの結果となってしまうのです。
その結果、血小板に直接作用して血小板の凝集を促進することや脳血管壁を傷つけ活性
酸素を発生させるなどの現象を引き起こすと考えられます。
このため、ストレスを受けている時に発症するのではなくストレスから開放された時に
片頭痛を発症しやすくなるのです。
このようにして放出された遊離脂肪酸が血小板に直接作用して血小板の凝集を引き起こ
すことにより脳血管内のセロトニン濃度が上昇することで片頭痛を発症すると考えられま
す。
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または、遊離脂肪酸が脳血管壁を傷つけ活性酸素を発生させ、その活性酸素が三叉神経
や脳細胞を傷つけることにより片頭痛を発症させると考えることもできます。
免疫系の貧食細胞やNK細胞が細菌などの病原性微生物を排除するために出す活性酸素
は体にとって有益に働いていますが、活性酸素が過剰発生になると各細胞に炎症を起こし
たり、動脈硬化の引き金になったりと老化の最大要因にもなりうるのです。
活性酸素制御はストレスや喫煙習慣のような生活習慣のなかでは、免疫系の機能に混乱
がおき、多量の微生物を貧食しても少しの活性酸素しかでないため感染症が治りにくい、
反面、少量に微生物しか貧食していないにも関わらず、多くの活性酸素を出すことになり
ます。余分な活性酸素は各種の炎症の引き金になってしまいます。
体の生体リズムを乱す生活は、健康を維持のメカニズムである体の仕組みを無視した生
活をしていることになります。
慢性頭痛とストレスはどう関与するのでしょうか
(1)緊張型頭痛の場合は・・
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精神的なストレスと、身体的なストレスの両方で起こります。
緊張型頭痛は、筋肉や精神の緊張をうまく解消できない人に起こりやすいのです
・
「身体的なストレス」
前かがみの姿勢やうつむきの姿勢などを長時間続けるような生活習慣などによる筋肉へ
のストレスにより、頸や頭の周りを取り巻く筋肉が収縮して凝り固まる結果重圧感を生じ
ます。
ストレートネックを生み出す最大の原因は、前かがみの姿勢やうつむきの姿勢などを長
時間続けるような生活習慣にあります。原因の 99% は、ここから来ていると言っていいで
しょう。
パソコンの画面に釘付けになっている時間がとても長くありませんか?パソコンを使っ
ていなくても、デスクワークをしていたり、携帯電話・スマホやゲームの画面を見ていた
り、座って本を読んでいたり、車を運転したり・・・。1日のほとんどの時間を前かがみ
やうつむきで過ごしているという人も少なくないのではないでしょうか。そういう毎日の
生活習慣が、ストレートネックをつくる”大もと”になっているのです。
人間の背骨(脊柱)はS状の湾曲を呈していま
す。人間は直立位を保っていますから、背骨が一
直線ですと、全体重が下の背骨にかかることによ
り、すぐに下の背骨がダメになってしまいます。
こうしたことにならないようにS状の湾曲を呈し
ています。ということは頸椎は前に湾曲を示して
いることになります。ところが「ストレートネッ
ク」になって、頸椎が一直線で、なおかつ前に傾斜しておれば、後頸部の筋肉に張力が常
に加わることになり、これが肩こりに繋がり、このこりが上部へと拡がることによって鈍
い痛み、締め付けられるような痛みとなってきます。
・
「精神的なストレス」
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ストレス、不安、抑鬱などが長時間続くと、「精神的なストレス」がたまります。
すると神経や筋肉の緊張が高まり、痛みに敏感となり、頭痛が起こります。
これは先程述べたことですが、嫌なことを経験しますと、海馬が”嫌な記憶”を扁桃体
に伝えます。扁桃体では不快・恐怖・緊張といった反応が起こり、この刺激は視床下部に
伝わりアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。アドレナリンは血管を収縮させ
ますから肩や頸の筋肉の血流が減って筋肉の栄養が不足し、筋肉でできた老廃物を外へ運
び出せなくなります。このため筋肉が凝ってしまうのです。これにより、肩こりが起こり、
緊張性頭痛が引き起こされます。
ストレスが持続すれば、慢性的な”脳内セロトニンの低下”を引き起こし、これが頭痛
の原因になります。
(2)片頭痛では
片頭痛では、前屈みの姿勢を強いられることによる身体的なストレスから「体の歪み(ス
トレートネック)」を併発し、まず緊張型頭痛をスタートに、生まれつき「ミトコンドリア
の働きの悪い」ところへ、ストレスが持続することによりマグネシウム不足を起こしてき
ます。さらにストレスが持続することにより「脳内セロトニンの低下」が追加され、頭痛
を悪化させ、片頭痛へと移行してくることになります。
このように、ストレスは、ホメオスターシスの乱れを引き起こし、ミトコンドリアの働
きを悪化させ、さらにセロトニン神経系の働きまで悪くさせてきます。
そして、ストレスにより活性酸素が産生されることによって、片頭痛発作そのものの引
き金ともなってくることになります。
こういったことから、慢性頭痛を改
善させるためには、ストレス対策がい
かに重要であるかが理解されたと思い
ます。
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