高温溶体化処理による歯科鋳造用金銀パラジウム合金

日本金属学会誌 第 79 巻 第 5 号(2015)265272
高温溶体化処理による歯科鋳造用金銀パラジウム合金
硬化機構に対する濃度変調の役割
田 中 康 弘1
池 下 雄 一2
香川大学工学部材料創造工学科
J. Japan Inst. Met. Mater. Vol. 79, No. 5 (2015), pp. 265
272
 2015 The Japan Institute of Metals and Materials
Role of Concentration Modulation on the Hardening of Dental Casting Gold
Silver
Palladium
Alloys after High Temperature Solution Treatment
1 and Yuichi Ikeshita
2
Yasuhiro Tanaka
Department of Advanced Materials Science, Faculty of Engineering, Kagawa University, Takamatsu 7610396
Dental casting AuAgPd alloys exhibit a singular phenomenon that they get hardened after softening solution treatment
when the temperature is higher than 800°
C. The purpose of this study is to clarify the hardening mechanism in terms of the
concentration distribution of the constituent elements. Two types of commercial dental alloys with different Ag/Cu ratios were
subjected. Samples were solutiontreated using a vertical furnace and dropped into ice water to quench the specimens. During the
solution treatment, the specimens were kept in a vacuumed silica tube or in Argas flow. The cooling rate was slightly different
between both situations and the cooling rate in the former was slightly slower than in the latter one. The samples stayed soft after
solution treatment below 750°
C. At 800°
C, only the vacuumed samples got hardened. Elemental maps using SEMEDX were not
able to find distinguished difference in the microstructure between the softened and hardened specimens, even the difference
based on the composition of the commercial dental alloys was detected. HigherAgcontaining alloy revealed twophase structure in which one is a phase of fcc matrix and the other is rodlike b phase of B2 type ordered CuPd. HigherCucontaining alloy
did threephase structure in which the fcc matrix was separated into a fine eutectic structure composed of Agrich a1 and Curich
a2 phases. Coherent precipitation of b′phase with L10 type ordered structure was detected in the a or a1 fcc matrix from the
hardened specimens. STEMEDX results revealed rapid evolution of concentration fluctuation between Ag and Cu that occurred
during quenching. The rapid evolution of the concentration fluctuation was considered to spontaneously proceed from spinodal
decomposition between Ag and Cu in the a or a1 fcc matrix. The spinodal decomposition caused the concentration modulation,
and the Cuconcentrated part immediately formed the coherent b′precipitation by coupling with Pd.
[doi:10.2320/jinstmet.J2014053]
(Received October 30, 2014; Accepted January 26, 2015; Published May 1, 2015)
Keywords: microstructure, interface lattice coherency, L10type ordered precipitate, precipitation hardening, spinodal decomposition,
scanning transmission electron microscopyenergy dispersive Xray spectroscopy elemental map
については,前者は 200 VHN に満たない軟質材,後者は
1.
緒
言
200 VHN を超える硬質材であることが求められている.幅
広い機械的性質の要求に応えるため,歯科鋳造された補綴物
歯科鋳造用金銀パラジウム合金は日本独自に開発され,保
は 700 °
C 付近での溶体化熱処理で軟化させた後,用途に応
険治療に用いることができる歯科補綴材料で,Au, Pd, Ag
じて 350 °
C 付近の時効熱処理で硬化させる歯科技工手順が
をそれぞれ 12, 20, 40 mass以上含むことが定められてい
用いられている.時効熱処理によって fcc 母相中に非常に微
る1).その他 Cu や Zn 等を含む材料である.主成分は Ag で
細な板状の L10 型規則構造の整合析出物 b ′
が生成する析出
あり,銀合金として分類されるが,貴金属の持つ優れた耐食
硬化機構であることが知られている2,3) .これに対して福井
性に加え, Au や Pd 添加によって優れた耐硫化性を示し,
らは 800 °
C 以上の温度で溶体化処理を行うと,急冷したま
日本における質の高い歯科治療に貢献している.歯冠齲蝕部
まで硬化することを見いだした4).歯科技工において時効処
が除去された窩洞の充填に用いるインレーや歯冠の多くが除
理の操作手順を省くことができるので,実用的にも興味深い
去された後に残存歯冠を被覆するクラウンと,欠損歯の両側
現象である.X 線回折を用いた検討の結果,700°
C の軟化溶
の歯台を橋脚として橋体が欠損歯の機能を代用するブリッジ
体加熱処理では,Agrich fcc や Curich fcc 相,CuPd 相が
では求められる機械的性質は大きく異なり,ビッカース硬さ
確認されたが,850°
C の硬化溶体加熱処理では,X 線プロフ
ァイルにおけるこれらの分裂が消失し,fcc 単相のプロファ
1 Corresponding author, Email: tanaka@eng.kagawa
u.ac.jp
株 ( Graduate
2 香川大学大学院生,現在ジェイワイテックス
Student, Kagawa University, Present address: JWitex Corp.)
イルとなったことから,固溶硬化機構が提案された4,5) .し
かし, TEM 観察の結果, fcc 母相中に板状の L10 規則相が
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日 本 金 属 学 会 誌(2015)
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整合析出することが確認され,析出硬化機構であることが判
るのに対して,v は石英ガラス管が間に入るので冷却速度が
明している68).ところで,本合金は Ag, Cu, Pd, Au を主成
若干遅くなる.冷却速度の測定は困難であるが,氷水に落下
分とした合金で fcc 相の AgCu 間の相分離,B2 型規則相の
して試料が赤熱したままの時間を比較すると,目視で a に比
CuPd の出現などが X 線回折より知られている812).これら
べて v は 1~2 s 遅い.(以後試料名の略称として,メーカー
元素の空間分布状況について SEM EDX 分析などがなされ
頭文字(M or G),溶体化処理温度,溶体化処理雰囲気を続
ているが,微細組織や元素の分布状況はまだ十分には理解さ
けて表記することにする.例えば M850v と表記する場合,
れていない9,1315).市販の歯科用金銀パラジウム合金におい
真空封入した M 合金を 850°
C で溶体化処理し,氷水中に焼
て Au, Pd はコストが高く,規定最小限の含有量である.一
き入れた試料であることを示す.)溶体化処理後,試験片の
方, Ag や Cu の含有量は耐食性や歯科技工操作性等のバラ
中央付近から 0.5 mm 厚さの円板状試料を切り出した.円板
ンスと関連してくるので,製品によって Au と Cu の含有量
試験片中心付近のマイクロビッカース硬さ測定を行った.荷
には差が見られる.成分組成の違いによる微細組織の変化や
重負荷条件は試験荷重 2.94 N ,保持時間 30 s で 1 試料につ
元素分布状況への影響についても十分な理解が得られている
いて 7 点の測定を行い,平均値と標準偏差を得た.また,
とは言いがたい1416) .高温溶体化処理による硬化作用を促
Ar イオン研磨した試験片を用いて, FE SEM 観察および
進する Ag/Cu 比を知ることは,合金設計をする上で非常に
FE TEM 観察を行った. EDX による元素分布分析を行っ
た.本研究で観察した試料は AgCu 共晶凝固が関与してお
重要である.
そこで,本研究では Ag/Cu 比の異なる 2 種類の歯科用金
り,凝固組織は粗大なものから微細なものまで見られた.
銀パラジウム合金について,微細組織,特に元素濃度の分布
SEM
EDX 分析は微細組織が形成されている領域で行った.
状況を解明すること,歯科用金銀パラジウム合金の高温溶体
化処理における硬化機構に及ぼす合金元素濃度分布の影響を
明らかにすることを目的とする.
2.
実 験
結
3.
3.1
方 法
果
マイクロビッカース硬さ
マイクロビッカース硬さ測定結果を Fig. 1 に示す. M と
G が合金組成の違い,a と v が冷却速度の僅かな違いを示す.
本実験では市販の歯科鋳造用金銀パラジウム合金として,
ニュー金パラジウム
750°
C 以下の溶体化処理温度では,合金組成,冷却速度に関
株 モリタ製)とキャストウェ
プルミエ(
係 な く , す べ て の 試 料 の ビ ッ カ ー ス 硬 さ は 最 大 で も 200
株 ジーシー製)の 2 つを用いた.(製造メーカーの頭
ル MC(
VHN 程度で軟化熱処理となった. 800 °
C の溶体化温度で
文字を使い,以後,前者を M ,後者を G と表記する.) M
は,冷却速度が僅かに遅い真空封入した v の試料は M が
と G の成分組成を Table 1 に示す.市販歯科用金銀パラジ
290 VHN,G が 260 VHN まで硬化したが,冷却速度が速い
ウムにおける Au と Pd の含有量は JIS 規格を満足する最低
a の試料は 200 VHN 以下で硬化しなかった. 850 °
C の溶体
限の量であるが, Ag や Cu の含有量には差がある.モル分
化処理では,真空封入した v 試料に加え,より冷却速度が
率で比較すると,Ag 含有量が多い M 合金は Ag/Cu 比が約
速い a 試料の内,Ag/Cu 比が約 2 と Ag の割合が高い M は
2 であるのに対して, Cu 含有量が多い G 合金では Ag / Cu
硬化したが, Ag /Cu 比が約 4/ 3 と Cu 含有率の高い G は硬
比は約 4 / 3 である.直径 3 mm ,長さ 10 mm の円柱形状試
化しなかった.
料を通常のロストワックス法による歯科鋳造法で作製した.
縦型イメージ炉を用いて鋳造試験片の溶体化熱処理を行っ
3.2
SEMEDX による組織観察
た.溶体化熱処理は 700~850°
C の温度範囲で 3.6 ks 行い,
800°
C で溶体化処理後した M および G 合金の SEMEDX
氷水中に落下急冷した.この時,試料の熱処理雰囲気として
分析結果を Fig. 2 に示す.( a ) , ( b )は Ag の割合が高い M
2 つの方法を採用した. 1 つは石英管中に 5 × 10-3 Pa の真
合金,( c ) , ( d )は Cu の割合が高い G 合金の結果である.
空度で真空封入したもので,もう 1 つは純度 99.99 の Ar
ガス雰囲気下で熱処理したものである.前者の方法を v,後
者の方法を a と略することにする.本合金は貴金属系の合金
であり,どちらの方法でも酸化の影響は無視できる.ただ
し,氷水中での冷却速度を考えると,a は氷水と直接接触す
Table 1 Chemical components of dental casting AuAgPd
alloys. Mol fraction is calculated excluding other elements.
Sample
Ag
Cu
Pd
Au
Others
Morita: M
(mass)
(mol)
50.0
49.3
14.4
24.1
20.0
20.0
12.0
6.5
3.6
―
GC: G
(mass)
(mol)
46.0
43.0
20.0
31.8
20.0
19.0
12.0
6.2
2.0
―
Fig. 1 Changes in Vickers hardness of G and M alloys after
solution treatments for 3.6 ks at various temperatures.
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号
高温溶体化処理による歯科鋳造用金銀パラジウム合金硬化機構に対する濃度変調の役割
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Fig. 2 SEMEDX elemental maps of Ag, Cu, Pd and Au elements solutiontreated at 800°
C for 3.6 ks with conditions of (a)
vacuumed and (b) Aratmosphere M alloy, (c) vacuumed and (d) Aratmosphere G alloy.
( a ) , ( c )は溶体化焼入で硬化した真空封入の v 試料,( b ) ,
の明確な濃度分布の違いは,見いだされていない9,1315) .
( d )はより冷却速度が速く,硬化しなかった Ar ガス雰囲気
SEM EDX 分析では電子線がバルク試料内で多重散乱する
下の a 試料である. M 合金と G 合金との間には,明確な組
ので,X 線の発生領域は 1 mm 近くに拡がり,元素分布の分
織の違いが認められるが,硬化した v 試料と硬化しなかっ
解能は 1 mm 程度となる.今回の SEM EDX による元素分
た a 試料の間には組織の違いを認めることはできなかった.
布分析では,分解能限界に近い元素マップを得ることができ
具体的には,Ag の含有率が高い M 合金では AuAg rich の
た.M 合金と G 合金の成分組成の違いによる組織の違いは
マトリックス中に数百 nm 幅の棒状 Cu Pd 相が析出した 2
確認できたが,溶体化焼入後に硬化した v 試料と硬化しな
相状態である.後の TEM 観察で示すが, Au Ag rich のマ
かった a 試料間で微細組織の違いは認められなかった.
トリックスは fcc の a 相,棒状の Cu Pd 相は B2 型規則構
M, G 合金ともに a, v どちらでも硬化しなかった 750°
C溶
造の b 相である.一方, Cu の含有率が高い G 合金では,
体化処理について,冷却速度が速い a 試料の SEMEDX 元
Au rich 領域は微細な Ag Cu 共晶ラメラ組織となっている
素分布マップ結果を Fig. 3 に示す.(a)は M 合金,(b)は G
様子が分かる.(c), (d)を比較すると,硬化した v 試料の共
合金の結果である.軟化状態にある Fig. 3(a)と Fig. 2(b)の
晶ラメラは,硬化しなかった a 試料より細かいように見える
M 合金の組織を比較すると, 800 °
C からの焼入では単相状
が,実際にはラメラの細かさは観察箇所によって大きく変化
態であった Au Ag rich fcc マトリックスの内部に 750°
Cか
していた.ラメラのサイズは鋳造凝固時に決まるものと考え
らの焼入試料では微細な Curich 相が出現している様子が見
られる.Pdrich の棒状組織の箇所は Cu map でやや暗いコ
られる.つまり M750a では fcc の a マトリックスの内部に
ントラストを示す.この Pdrich 棒状組織は,硬化した v の
Curich の a2 相が出現している.一方,G 合金の場合,Fig.
方が硬化しなかった a より長いように見えるが,観察試料表
3(b)に示す組織の上側は Fig. 2(c)と似ており,下側は Fig.
面に現れている面方位が異なっているためと考えられる.共
2 ( d )と似ており,組織に明確な違いは見いだせなかった.
晶ラメラの Curich の領域は Pd map ではやや暗いコントラ
以上のように SEMEDX 分析では,M 合金と G 合金の組成
ストを示す. G 合金は 3 相共存状態にあり, AuAg , AuCu
の違いによる組織の相違点を見いだしたが,高温溶体化処理
(s)Pd(w),Cu(w)Pd(s)となっている.(ここで(s), (w)は
による硬化機構を説明できるような硬化試料と軟化試料間の
マッピングで強いコントラストと弱いコントラストを意味す
明確な組織の違いは見いだせなかった.
る.)後の TEM 観察で示すが, AuAg は Ag rich fcc の a1
相,AuCu(s)Pd(w)は Curich fcc の a2 相,Cu(w)Pd(s)は
3.3
TEM による微細組織観察結果
B2 型 規 則 構 造 の b 相 で あ る . 従 来 の SEM EDX 分 析 で
真空封入した M 合金を 750°
C で溶体化処理し焼き入れた
は,このようなサブミクロンレベルでの a, a1,a2, b 相間
試料( M750v )の TEM 像および a / b 2 相界面から得られた
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制限視野回折像( SAED )を Fig. 4 に示す.この熱処理条件
方位となっている.矢印で示すように,どちらの場合でも a
で は M 合 金 は 軟 化 状 態 に あ っ た . M 合 金 は 750 °
C では
の 111 と b の 110 回折斑点の方向はほぼ平行になっている
AuAgrich の fcc a 相中に Curich fcc a2 が析出し,さらに
ことが分かる.つまり a 母相と棒状 b 相は,fcc の最密面と
棒 状 の CuPd rich の b 相 が 共 存 す る 状 態 で あ る こ と が
bcc の最密面が平行になるような結晶方位関係を持っている
SEM EDX 観察で示された( Fig. 3 ( a )). M750a の SEM 
と考えられる.
EDX 結果(Fig. 3(a))に注目すると,棒状 b に接する a 母相
真空封入した G 合金を 750°
C で溶体化処理し焼き入れた
領域は Curich 相の無析出帯となっており,a 母相内に析出
試料(G750v)の TEM 観察結果を Fig. 5 に示す.この熱処理
する Cu rich a2 相は a 相の内部に分布していることが分か
条件で G 合金は軟化状態であった.低倍像(a)を見ると共晶
る.つまり a 母相と棒状 b 相との界面には Curich fcc a2 相
ラメラ組織中に棒状の b 相が生成していることが分かる.
は出現しない.Fig. 4 中に丸印で示す界面から得られた回折
やや倍率を上げた( b )は Ag rich fcc の a1 と Cu rich fcc の
図形は a 母相と b 相の重ね合わせである.a 母相については
a2 の共晶界面像である.その高分解能像および回折図形を
[110]入射方位で,それに対する b は[100]または[111]入射
(c)に示す.回折図形は fcc の[110]入射方位で,Agrich a1
と Cu rich a2 の結晶方位が一致していることが分かる.格
子定数は a1 相が 0.402 nm,a2 相が 0.385 nm となっていた.
a1 相と a2 相の界面は fcc の最密面である(111)面となってい
た.高分解能像中に▲の矢印で(111)界面を示す.
真空封入した M 合金を 850°
C で溶体化処理し焼き入れた
試料( M850v )の TEM 観察結果を Fig. 6 に示す.この熱処
理で本合金は著しく硬化した.低倍像(a)を見ると a 母相中
に棒状の b 相が生成していることが分かる.a 母相の高倍像
( b )をみると,縦横方向に厚さ 10~ 20 nm ,長さ 100 nm 程
Fig. 3 SEMEDX elemental maps of Ag, Cu, Pd and Au elements solutiontreated at 750°
C for 3.6 ks with a condition of
Aratmosphere (a) M alloy and (b) G alloy.
Fig. 4 TEM micrograph and diffraction patterns in insets
taken from vacuumed M alloy with solution treatment at 750°
C
for 3.6 ks that led the sample soft.
Fig. 5 TEM micrographs and diffraction pattern taken from
vacuumed G alloy with solution treatment at 750°
C for 3.6 ks
that led the sample soft, (a) lower and (b) magnified images
and (c) highresolution image and diffraction pattern in inset.
Fig. 6 TEM micrographs and diffraction pattern taken from
vacuumed M alloy with solution treatment at 850°
C for 3.6 ks
that led the sample hard, (a) lower and (b) magnified images
and (c) highresolution image and diffraction pattern in inset.
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5
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高温溶体化処理による歯科鋳造用金銀パラジウム合金硬化機構に対する濃度変調の役割
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度の板状析出物の生成が確認できる.(b)中に四角で示した
子反射 001 であり,c 軸が fcc の[200]および[020]方向を向
領域から得た高分解能像および制限視野回折図形を(c)に示
いた L10 規則バリアントによるものである.また c 軸が fcc
す.高分解能像を見ると,板状析出物は fcc 母相と格子整合
の[002]方向を向いた L10 規則バリアントによって 110 規則
性を持つことが分かる.回折図形には fcc の[ 001 ]入射パ
格子反射が生じる.回折図形の解析より L10 型規則構造 b ′
ターンに加え,200 や 020 反射の外側に弱い反射が生じてい
の格子定数は a = 0.404 nm , c = 0.338 nm ,軸比 c / a = 0.84
ることが分かる.また 200 や 020 反射の内側に非常に弱い
であり,従来の報告68) と一致する.[ 020 ] fcc //[ 020 ] b ′
,
反射が現れ,110 の位置にも非常に弱い反射が認められる.
( 200 ) fcc //( 002 ) b ′
の結晶方位関係を持ち,整合析出する
110 反射の位置は fcc の 220 基本格子反射のちょうど中点に
によって M850v 試料は硬化した.
b′
位置する一方, fcc 母相の 200 , 020 反射の内側の非常に弱
M 合金は 850°
C 溶体化処理では真空封入(v)でもアルゴン
い反射はその中点より外側に位置し, fcc の 200 , 020 反射
雰囲気下( a )でも硬化した.一方, 850 °
C で溶体化処理した
の外側に生じた弱い反射の中点に位置する.これらの反射は
G 合金は v の場合に硬化したが, a の場合は硬化しなかっ
の c 軸方向の基本格子反射 002 とその規則格
L10 型規則相 b′
た.軟化状態の G850a の TEM 観察結果を Fig. 7 に示す.
Fig. 7 TEM micrographs and diffraction pattern taken from Aratmosphere G alloy with solution treatment at 850°
C for 3.6 ks that
led the sample soft, (a) lower and (b) magnified images and (c) highresolution image and diffraction pattern in inset.
Fig. 8 TEM micrographs and diffraction pattern taken from vacuumed G alloy with solution treatment at 850°
C for 3.6 ks that led
the sample hard, (a) magnified image, (b) diffraction pattern and (c) highresolution image.
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第
日 本 金 属 学 会 誌(2015)
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(a)に低倍像を示す.(a)中に四角で示した領域の高倍像(b)
詳細に比較すると, G850v の方が規則格子反射の強度が弱
で見られる Agrich fcc a1 と Curich fcc a2 の界面の網状コ
いように見える.この点については考察で検討する.
ントラストは 2 相間の格子定数の差より生じる(111)界面の
界面転位が起源である.(b)中に四角で示した領域から得た
4.
考
察
高分解能像および制限視野回折図形を(c)に示す.この結果
より Ag rich a1 相, Cu rich a2 相ともに不規則 fcc 相であ
組成の異なる 2 種類の歯科用金銀パラジウム合金を 700~
ることが分かる.回折図形は 2 つの fcc の[001]入射パター
850°
C の範囲で 3.6 ks の溶体化処理を行い,氷水中に落下急
ンの重なりで,内側が Ag rich a1 相,外側が Cu rich a2 相
冷した. 800 °
C で溶体化処理した試料の SEM EDX による
からの回折図形である.
元素分布解析では,組成の違いによる微細組織の違いが確認
これに対して硬化した G850v の TEM 観察結果を Fig. 8
できた.モル分率で Ag/Cu 比が約 2 の M 合金では AuAg
に示す.( a )に示す高倍像では G850a の場合と同様に a1 と
rich の fcc a マトリックス中に棒状の CuPd 相が出現する 2
a2 相の(111)界面に界面転位のコントラストが生じている.
相組織だった.一方, Ag / Cu 比が約 4 / 3 と Cu の割合が増
( b )の回折図形には 2 つの fcc の重ね合わせに加えて, 100
す G 合金では Aurich の領域は AgCu 間の共晶組織を形成
や 110 の位置に弱い反射が生じている.この反射は外側の
し,AuAg rich fcc a1 相と AuCu rich fcc a2 相,それに加
fcc 基本格子反射の中点にあり, Cu rich fcc a2 相が規則化
えて棒状の CuPd 相が出現する 3 相組織となった.このよう
していることが分かる.(a)中に四角で示した領域から得た
な明確な組織は従来の SEM 観察では捕らえることができて
高分解能像(c)を見ると,Agrich fcc a1 相は単なる fcc であ
いない9,1315) .近年の EDX 検出器の進歩など装置の進歩の
るが, Cu rich 相側は一点おきに明暗が現れており, Cu 
寄与が大きい.一方で,800°
C 溶体化処理において,真空封
となっているこ
rich 相は L12 型規則構造の Cu3Au 規則相 a2′
入した硬化 v 試料と Ar ガス雰囲気で熱処理し冷却速度が僅
とが分かる.
かに速かった軟化 a 試料については SEMEDX では明確な
硬化した G850v では Cu
規則化に加えて,
rich fcc 相の a2′
組織の特徴を捉えることはできず, SEM EDX で硬化の原
Ag rich fcc a1 相中に板状析出物が出現する様子も見られ
因を見いだすことはできなかった.一方で 800 °
C と 750 °
C
た.そのような組織の TEM 観察結果を Fig. 9 に示す.や
の溶体化処理後の組織に関して, M 合金の場合,変化を見
や高倍像の Fig. 9 ( a )を見ると, Fig. 6 ( b )で示した M850v
いだすことができ, 750°
C では a マトリックス中に Curich
の高倍像と同様に縦横方向に厚さ 10~ 20 nm ,長さ 100 nm
fcc の a2 相が出現した.
程度の板状析出物の生成が確認できる. Fig. 9( b )に示す回
一方,TEM 観察では組織変化を捉えることができた.硬
折図形も Fig. 6 ( c )で示した M850v からの回折図形と同様
化した M 合金では a マトリックス中に,G 合金では AuAg
の特徴を示す. Fig. 9 ( a )中に四角で示した領域から得た高
が整合析出した.
rich a1 相中に,板状の L10 型規則相の b ′
分解能像(Fig. 9( c))には Agrich fcc 母相中に(001)で規則
さらに硬化した G 合金では AuCu rich 相が不規則 fcc a2 相
化した格子縞が確認された.以上のことから G850v の場合,
から L12 型規則相へ規則化し a2′
相となった.これらの結果
相が析出している
Agrich fcc a1 相中に L10 型規則構造の b′
を Table 2 にまとめる.一般に規則相のバーガーズベクトル
ことが確認できた.しかし M850v と G850v の回折図形を
は不規則相の状態より長くなるので,規則相は不規則相より
Fig. 9 TEM micrographs and diffraction pattern taken from vacuumed G alloy with solution treatment at 850°
C for 3.6 ks that led
the sample hard, (a) magnified image, (b) diffraction pattern and (c) highresolution image.
第
5
号
高温溶体化処理による歯科鋳造用金銀パラジウム合金硬化機構に対する濃度変調の役割
271
Table 2 Summary of microstructures of M and G alloys, and
hardening, b ′formation and a ′
2 ordering behaviors after solution
treatment over at 800°
C.
Alloy
Heat
b′
a 2′
Microstructure
(determined by SEM) treatment Hardening formation ordering
b
850v
850a
800v
800a
○
○
○
×
○
○
○
×
―
―
―
―
a1
850v
○
○
○
850a
×
×
×
800v
○
○
×
800a
×
×
×
AuAg matrix
M
(Ag/Cu
=2/1) CuPd rodlike
a
Au
Ag eutectic
G

(Ag/Cu Au Cu eutectic
=4/3) Containing Pd
a2
Cu
Pd rod
like
b
硬化する.その点から考えると G 合金で生じた L12 型規則
は硬化にある程度は寄与することが期待される.し
相の a2′
の整
かし,硬化した条件すべてにおいて L10 型規則相の b ′
合析出が認められることから,本合金系における高温溶体化
処理での硬化機構は b ′
の整合析出による析出硬化機構であ
る.M 合金の a マトリックスあるいは G 合金の Agrich fcc
相は a 軸の格
a1 相の格子定数に対して,整合析出する fct b′
子定数がほぼ等しいが, c 軸の格子定数は 0.84 倍小さいの
で,板状 b ′
相の周囲では母相との間に著しい格子ひずみが
発生する.この GP ゾーン like な整合ひずみの発生が硬化
に寄与する.一方, a2 ′
規則相に対する不規則相のバーガー
ズベクトルは逆位相境界として作用するが, a2′
規則相の規
則度は非常に低く,容易に逆位相境界が生成できる状況にあ
Fig. 10 STEMBF images and STEMEDX elemental maps
taken from the M alloy solution treated at 850°
C and quenched
in ice water with the conditions of (a) Aratmosphere and (b)
vacuumed in silica tube.
るので,不規則 fcc a2 相から L12 型 a2′
相への規則化はほと
んど硬化に寄与していないと考えられる.
従来の研究より整合析出する b ′
は L10 型規則構造の準安
とが知られている.本合金では高温側で潜伏期間が見られず
定 CuPd 相とされている2,3,68) が,その濃度分布の様子は従
に,瞬間的に高密度の析出物が生成し,非常に波長の短い濃
来の研究では明らかとなっていない.そこで STEM EDX
度変調が確認できることから,スピノーダル分解が生じてい
による元素分布分析を行った. 850 °
C で溶体化処理した M
ると考えられる.
合金より得た Ag, Cu, Pd, Au の STEMEDX 定量マップを
溶体化処理からの落下焼入という極短時間に数十 nm の波
Fig. 10 に示す.(a)は M850a ,(b )は M850v の元素分布定
長の濃度変動が起こり得るかについて検討する.落下焼入過
量マップである.どちらの場合も AgCu 間で明瞭な相分離
程における温度の経時変化を正確に測定することができな
が確認できる.相分離による濃度揺らぎの波長は M850a で
い.しかし,例えば 1 s の間に固体中の原子が移動する距離
10 ~ 20 nm , M850v で 20 ~ 100 nm 程度の非常に小さなも
については拡散係数から見積もることができる.Table 3 に
が生成していることが分かる.Pd の分布に
ので,緻密に b′
自己拡散係数17)より求めた Ag, Cu, Pd, Au の平均二乗変位
ついては, M850a で僅かに変動が起こり, M850v で Cu 
の平方根を示す.Ag と Cu の値は 850°
C では 850 nm と 240
にやや濃化している様子が見える.これらの濃度
rich の b ′
nm, 800°
C でも 530 nm と 140 nm であり,数十 nm の波長
変動が 850 °
C 3.6 ks の溶体化処理中に起こっているとすれ
の濃度変動は起こりうると考えられる.一方 Pd の値は Ag
ば,焼入速度の違いによる 1 ~ 2 s の冷却期間の違いは組織
の値より 2 桁小さい.Fig. 10 で示した STEMEDX マップ
のサイズの違いには影響しないと考えられる.一方で焼入中
では Ag Cu 間の顕著な相分離は確認できたが, Pd 元素マ
にこの組織形成が進んだとすれば,焼入速度の速い a の条件
ップでは元素濃度の変化は Cu 元素マップほど顕著ではなく,
では Ag Cu 間の濃度揺らぎの波長が小さく, Pd の濃度変
生成に必要な Cu Pd 間のカップリングはさほど認められ
b′
動が小さいのに対して,焼入速度が若干遅い v の条件で
なかった.これは Pd の平均拡散距離が Ag, Cu よりはるか
Ag Cu 間の濃度揺らぎの波長が 2~ 4 倍に成長し, Pd の濃
に短いことが一因として考えられる.
の
度変動が顕著になってくることを説明できる.つまり,b′
また, M 合金と G 合金は 850a の熱処理で硬化に差が出
析出は高温で瞬間的に高密度に生成し, Ag Cu 間の顕著な
て, M では硬化し, G では軟化したままだった.つまり G
濃度変動を伴っていることが STEM EDX 分析で明らかに
合金の方が硬化しにくい,つまり b ′
が生成しにくい結果が
できた.析出が核生成成長機構の場合,高温側では,析出相
得られている. G 合金では b ′
は Ag rich fcc a1 相中に整合
の生成前に長い潜伏期間が必要であり,核の密度は小さいこ
析出するが,AgCu 間の共晶組織において,Pd は Curich
272
日 本 金 属 学 会 誌(2015)
Table 3 Selfdiffusion coefficients of main elements and estimated root mean square of displacement diffusion for 1 s.
Selfdiffusion
coefficient/m2
s
-1
RMS of displacement/nm
(t=1 s)
Temp.,
T/°
C
850
800
750
850
800
750
Ag
Cu
Pd
Au
1.22×10-13
9.48×10-15
8.91×10-18
5.08×10-14
4.64×10-14
3.37×10-15
2.36×10-18
2.16×10-14
1.63×10-14
1.09×10-15
5.50×10-19
8.47×10-15
854
238
7
552
527
142
4
360
312
81
2
225
第
79
巻
クロビッカース硬さ測定および微細組織観察を行った.溶体
化熱処理における試料雰囲気に関して,真空封入(v)試料と
Ar ガス雰囲気(a)の場合の比較を行った.この違いは急冷速
度の僅かな違いとなって高温溶体化処理における硬化機構に
影響を与えた.溶体化処理温度が 750 °
C 以下では溶体化処
理は通常の軟化熱処理として作用した.800°
C では真空封入
(v)試料は硬化したが,Ar ガス雰囲気(a)試料は硬化しなか
った. 850°
C では真空封入試料に加え, Ag / Cu 比の高い M
合金は a 試料でも硬化したが, Ag / Cu 比の低い G 合金は a
試料では硬化しなかった.以上のように高温溶体化処理によ
る硬化は,僅かな冷却速度の違いや合金組成の違いの影響を
の a2 相側に多く分配されることが SEM EDX ( Fig. 2 )で明
大きく受けていた.高温溶体化処理による硬化機構は,従来
らかにできている.つまり M 合金の a マトリックス中の
相の fcc マトリッ
の報告どおり L10 型規則構造の準安定 b ′
Pd 濃度と G 合金の Ag
rich a1 相中の Pd 濃度を比較すると,
クス中への整合析出によるものだった.落下急冷の極短時間
G 合金の方が Pd 濃度は低いと考えられる.そのため G 合金
の間に Ag Cu 間の急速な相分離が進行することを STEM 
が生成しにくい状況となっていると考えられる.
では b′
EDX による元素分布マッピングによって見いだした.高温
スピノーダル分解温度 Ts 点について見積もってみる.
における AgCu 間の濃度揺らぎはスピノーダル分解による
800v の溶体化焼入では M, G 両合金とも硬化する.焼入冷
が急速に
ものと考えられ, Cu 濃化部分が Pd と結びつき b ′
却中にスピノーダル分解が起きているので, Ts は 800°
Cよ
生成すると考えられる.Cu の割合が多い G 合金では,冷却
り低温である.焼入冷却の極短時間の間に濃度変調が起きる
速度が速い a 試料で硬化が起きなかった.G 合金は fcc 母相
ためには,短時間で十分な拡散が可能な高温であることが求
が Ag Cu 間の共晶組織となっており, Pd は Cu rich a2 相
められる.それゆえ 800°
C より僅かに低い温度が Ts 点と思
に濃化し,b′
が生成する Agrich a1 相中の Pd 濃度が低下し
われる.一方でスピノーダル温度より低温側と思われる
ていることが,G 合金における硬化遅延の原因と考えられる.
750°
C 溶体化処理でスピノーダル分解が観察されない理由を
考える.Agrich fcc a 相への Cu の固溶限が 750~850°
Cの
文
献
範囲で大きく変化するのではないかと思われる.850°
C にお
ける Cu の a 相へ固溶限は大きく,850°
C での平衡濃度で焼
入れるとスピノーダル線を通過してスピノーダル領域に入
る.一方 750°
C での Cu の a 相へ固溶限は低下し,750°
Cの
平衡濃度ではスピノーダル線の外側で急冷されると考えられ
る. Fig. 2 ( b )と Fig. 3 ( a )の SEM EDX 分析で明らかにな
ったように, M 合金の fcc マトリックスは 800 °
C では単相
状態であった( Fig. 2 ( b ))が, 750 °
C では a マトリックス中
に Curich の a2 相が析出していた(Fig. 3(a)).このことも
fcc マトリックスへの Cu 固溶限が 800°
C から 750 °
C の間で
大きく変化していることを支持している.
高カラット金合金においては L10 型規則構造の AuCu 
型規則相が硬化の主因子となっており,スピノーダルオーダ
リングの存在が報告されている18,19).また 55 mass金合金
では X 線回折ピーク強度の変化とビッカース硬さ変化から
の相関よりスピノーダル分解の報告がある20).しかし SEM
観察では硬化に伴うスピノーダル分解の組織変化は見いださ
れていない20).本報でも SEM EDX 分析では,硬化の原因
を見いだすことはできなかった. STEM EDX によるナノ
レベルでの元素分布分析によって高温から落下水冷の間の極
短時間に生じる AgCu 間の急速な相分離を見いだすことが
できた.
5.
結
論
Ag / Cu 比の異なる 2 種類の歯科用金銀パラジウム合金に
対して,溶体化処理を行い氷水中に落下急冷した試料のマイ
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12) M. H. Cho, Y. O. Kim, Y. H. Kwon, H. I. Kim and H. J. Seol:
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Alloy. Compd. 387(2005) 139146.
15) H. J. Seol, D. H. Lee, H. K. Lee, Y. Takada, O. Okuno, Y. H.
Kwon and H. I. Kim: J. Alloy. Compd. 407(2006) 182187.
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