二段式コリメータ装置( L- MLC )の 不整形照射野におけるMU値検証 大阪大学医学部附属病院医療技術部 ○圓尾 浩康 ・ 川越 康充 ・ 小水 満 【目的】 MU値の決定には散乱係数が用いられ、これを正しく評価することは治療精度向上のために重要 である。不整形照射野に対して、従来この評価には全散乱係数(Scp)が使用されていたが、近年、 欧米などで取り入れられているScpをSc(コリメータ散乱係数),Sp(ファントム散乱係数)に分離す る考え方があり、その有用性について多数の報告がある。Scpでは考慮されていなかったScにつ いて、当院の装置Lower jaw MLC (L-MLC)において正しい評価が可能であるかを検討した。 【方法】 本実験では、不整形照射野としてアレイ形、T字、全骨盤、臨床リンパ節、矩形照射野として 非対称、開度差大の長方形、の6種類の照射野を対象とした(Fig.1 参照)。これらの照射野に A/P , Modified Day-A/Pe , Clarkson の3種類の照射野補正を使用し、①Sc,Spの両方に補正し たもの(k-factorなし)と②Spのみ補正しScは矩形のもの(k-factorあり)からそれぞれ算出さ れたMU値の比較を行い、さらに吸収線量を測定し絶対線量(100cGy)と比較を行った。 【結果】 方法①と②から算出されたMU値を比較すると、全体的に見ても②の方が約1~2 MU低い値を示 した。各々の吸収線量と絶対線量の誤差(Fig.2 参照)を比較すると、②の方がマイナス側に誤 差が大きくMU値と同様の結果になった。それに対して①の誤差は少なく、中でもClarksonの手法 が最小であった。矩形照射野の場合では、それほど目立った差はなかった。 【考察】 今回の結果より不整形照射野の場合、Spのみ補正しScは矩形の方を用いると誤差が大きかった ので適応できないと考えた。これはフラットニングフィルタからの散乱線が関与する位置にMLC があるためである。つまり外付けMLCタイプと違ってScの影響は矩形照射野の場合と異なる。LMLCのようなタイプ(主コリメータの部分にMLC)には、投影される照射野の形状だけでなく、 ヘッドからの散乱の形状に関しても不整形補正を行わなければならない。これはScpの考え方と 同じである。 これと反対に矩形照射野の場合、Spのみ補正しScは矩形の方を用いることで誤差がわずかに小さ くなった。これはコリメータ反転効果による影響を考慮したからだと考えた。 【結論】 当院の装置において不整形照射野および矩形照射野の散乱係数には、Sc,Spの両方に照射野補 正を用いて(Scpと同じ)MU値の算出を行う方が有用であると示唆された。 4.0 アレイ形 全骨盤 リンパ節 3.0 2.0 1.0 T字 Error (%) アレイ形 T字 非対称 長方形 0.0 -1.0 -2.0 -3.0 全骨盤 非対称 -4.0 -5.0 -6.0 RTPS リンパ節 長方形 RTPS Scp Scp Scp Sc*Sp Sc*Sp Sc*Sp Scは矩形 ① Sc,Sp 両方に補正 ② Spのみ補正 A/P M.D A/Pe Clarkson A/P M.DM.D A/Pe Clarkson M.D A/P Clarkson A/P Clarkson A/Pe A/Pe Methods , , , method Fig.1 照射野パターン Fig.2 吸収線量の実測値と絶対線量との誤差
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