その要因、 好発部位・対策

褥瘡
その要因、
好発部位・対策
褥瘡発生の要因
全身的因子
加齢、栄養、基礎疾患、意識障害
組織耐久性
局所的因子
血行障害、皮膚湿潤、皮膚温度
褥瘡発生
持続的圧迫
可動性・活動性の低下、知覚・運動麻痺
ずれ・摩擦
骨突起
圧 力
褥瘡患者の栄養状態の管理
栄養状態の指標
血清アルブミン
血清コレステロール
ヘモグロビン
血中リンパ球
2.5~3.0 g/dL 以上
160 mg/dL 以上
10~11 g/dL 以上
1,200~1,800 /mm3
褥瘡治療に必要な栄養
熱量
タンパク
脂質
ビタミン
微量元素
25~30 kcal/kg/day
0.8~1.5 g/kg/day
必須脂肪酸
A B1 B2 C 等
Ca Zn Cu Fe 等
褥瘡発生どうしてできるの
圧迫×時間
32mmHg以上
2時間
今まではこれだけだった。
ところが、もう少し複雑。
褥瘡発生の機械的機序
荷重(体重)
引っ張られる
(引っ張り応力)
ずれる
(せん断応力)
押し潰される
(圧縮応力)
表面接触圧
組
織
内
の
変
形
褥瘡の出来やすい部位
やってはいけない治療法(古い知識)
・マッサージ
脆弱化した毛細血管に加圧することになり、褥瘡が悪化する。
→入浴を奨励する。患部の血流改善を図る。
・円座
褥瘡の中心部は除圧になるが、周辺の加圧・ずれを生じる。
・無闇なイソジン消毒
ヨウ素が細胞毒となって肉芽形成を妨げる。
→感染創以外に消毒は行わない。生食洗浄で十分である。
・創面の乾燥
天日やドライヤー乾燥している施設がまだある。
→創面を湿潤環境にする方が治癒は早い。
円座が好ましくない理由
足の荷重
対策の一例
ズ
レ
の
力
枕など
圧迫
円座
円座
ウレタンフォーム
消毒の必要性 ー感染と汚染ー
・感染(infection)
→細菌などが組織・細胞に侵入し増殖している状態
局所症状:発赤、腫脹、排膿、熱感、疼痛、滲出液の増加
全身症状:CRP増加、白血球数増加
菌が悪さをしている状態・・・消毒が必要
・汚染(contamination)
→常在菌などが創面に付着している状態
汚染創ならば生食洗浄で菌を除去できる
菌検査する場合良く洗浄した後の壊死組織や不良肉芽を検査する
菌がただ存在している状態・・・消毒は不要
感染創なのか汚染創なのかを見分ける
湿潤環境下での働き
• 細胞増殖因子の活性維持
→細胞分裂、増殖による創傷治癒活性化
• 繊維芽細胞の遊走促進
→肉芽形成による創の収縮・閉鎖
• 血管内皮細胞の遊走促進
→血管新生による良性肉芽の形成
• 表皮細胞の遊走・再生促進
→創の上皮化
• 創面清浄化の促進
→感染予防 など
皮膚(角質層)から中は、湿潤環境にあるのが本来の状態!
褥瘡の深達度による分類
IAET分類:International Association of Enterostomal Therapy
真皮まで
表皮
(発赤)
Ⅰ度
Ⅲ度
Ⅱ度
Ⅳ度
皮下組織
まで
【浅い褥瘡】
【深い褥瘡】
筋肉・骨
まで
他にShea分類、NPUAP分類などがある
厚生省監修:褥瘡の予防・治療ガイドライン, 照林社, pp59, 1998
褥瘡の色による分類
黒色期
滲出液
黒色
壊死組織
黄色期
滲出液
創縁より上皮化
が始まる
赤色期
滲出液(少)
白色期
肉芽組織の増生
表皮
真皮
皮下組織
筋・腱
骨
炎症反応
新生上皮
滲出液(多)
収縮しつつある
肉芽組織
壊死組織
不良肉芽
鈴木定:褥瘡処置マニュアル,日総研,pp50,1999(改変)
褥瘡の病期(色分類)による治療剤・材の使い方
黒色期
黄色期
赤色期
白色期
生理食塩水による洗浄
消毒
(デブリドマンを実施した場合)
フィブラストスプレー
外科的デブリドマン
多い
浸
出
液
カデックス、デブリサン
アクトシン軟膏
ユーパスタ
アルギン酸系(カルトスタット) ポリウレタン系(ハイドロサイト)
ポリウレタン系(デュオアクティブ、コムフィール)
オルセノン軟膏、プロスタンディン軟膏
ゲーベンクリーム
少ない
ハイドロジェル(ニュージェル)
厚生省監修:褥瘡の予防・治療ガイドライン,照林社,pp61,1998
鈴木定:褥瘡処置マニュアル,日総研,pp50,1999(改変)
デブリドマン(débridement)
方 法 ・ 手 技
物理的
デブリドマン
化学的
デブリドマン
注意点・問題点
注射器等を用いて、水圧にて壊死組織を洗い
流す
(生理食塩水洗浄法、過酸化水素水洗浄法等)
・新生肉芽や再生上皮を洗い流さないように
注意
・感染兆候がなければ消毒剤は用いない
ガーゼ等に壊死組織を固着させて剥ぎ取る
(Wet to Dry dressing 法)
・ガーゼを剥がす際に痛みや出血がある
・黒色期では外科的デブリドマンの後に行う
薬剤を用いて壊死組織を溶解して除去する
(ブロメライン、バリダーゼ 等)
・壊死組織の除去に時間がかかる
・感染がある場合は薬剤の効果が減弱する
湿潤状態を保ち、壊死組織の自己融解を促進
(ハイドロコロイドドレッシング材 等)
・感染がある場合は不可
・大量の浸出液がある場合は不可
外科的
外科的に壊死組織や不良肉芽を除去
デブリドマン
・出血のリスクがある
→主治医や外科医の協力が不可欠
「外科的デブリドマン」が第一選択
それができなければ他の方法を考慮する
デブリドマンの重要性
1.感染の防止のために
→壊死組織は細菌の繁殖の場
2.良性肉芽生成の促進のために
→壊死組織や不良肉芽は良性肉芽の形成を妨げる
3.薬剤の作用発現のために
→薬剤によっては壊死組織があると薬効が発現しないものがある
4.創傷治癒過程の再活性化のために
→治癒反応の休止している創を再活性化する
デブリドマンは褥瘡の治癒を早める
褥瘡の色による分類と治療薬
黒色期
黄色期
赤色期
白色期
ユーパスタ
ゲーベンクリーム
デブリサン
カデックス
オルセノン軟膏
プロスタンディン軟膏
バリダーゼ局所用
アクトシン軟膏
フィブラストスプレー
厚生省監修:褥瘡の予防・治療ガイドライン,照林社,pp61,1998
鈴木定:褥瘡処置マニュアル,日総研,pp50,1999(改変)
褥瘡(Ⅱ度)・・真皮に至る創傷用
真皮に至る創傷用
デュオアクティブET ( Extra Thin )
滲出液量 
キーワード:
上皮再生の促進
半透明
= 貼付したまま観察が容易
優れた柔軟性
= 様々な部位にフィット
皮下組織に至る創傷用
褥瘡(Ⅲ度)
デュオアクティブCGF
滲出液量 
キーワード : 密閉
・ほぼ100%酸素不透過性
=細菌の侵入を防止
=失禁による汚染の防止
=血管新生の促進
(=肉芽増殖の促進)
・弱酸性の湿潤環境を形成
=酸素の供給量増加(ボーア効果)
・CGFの成分が
マクロファージの活性化
褥瘡(Ⅲ度)
皮下組織に至る創傷用
アクアセル
滲出液量 
キーワード: 創部の段差
多量の滲出液
CMC-Na100%からなる繊維
=高吸収性(自重の約30倍の
水分を吸収)
水分を繊維内に吸収
=側方への広がりを抑制
=健常皮膚の浸軟を防止
高保水性能
=細菌を繊維内に確保
褥瘡(Ⅲ度)
皮下組織に至る創傷用
グラニュゲル
滲出液量 
キーワード:
壊死組織
水分を多く含んだゲルが、壊死組
織を軟化
グラニュゲル中の成分が、プラス
ミンの活性を高め、不要な壊死組
織のみの融解を促進
弱酸性のゲルは肉芽の増殖を制
限しません
密封タイプのドレッシング
◎ ph=弱酸性による静菌作用。
◎ ゲル化による疼痛軽減および二次損傷の予防。
◎ 密封による創部汚染の予防や創感染率の軽減。
黄色期の治療
◎化学的デブリードマン
黄土色をした深部の壊死組織、不良肉芽の除去
(蛋白分解酵素剤やグラニュゲルの使用)
浮き上がってきた壊死組織をこまめに除去。
外用剤
・ブロメライン(ブロメライン軟膏)
・塩化リゾチーム(リフラップ軟膏)
・ストレプトキナーゼ(バリターゼ)
・亜鉛華軟膏(10%)
創傷被覆材
・グラニュゲル
・デュオアクティブCGF
赤色期の治療
◎肉芽増殖による処置
ハイドロコロイドドレッシングの使用で
密閉による湿潤環境治療を
肉芽形成期で抗菌剤の使用は
創傷治癒を遅らせる。
創の乾燥・細胞毒性
外用剤
・トレチノイントコフェリル(オルセノン軟膏)
・ブクラデシン(アクトシン軟膏)
・プロスタグランディンE1(プロスタンディン軟膏)
・b.FGF(フィブラストスプレー)
創傷被覆材
・グラニュゲル
・デュオアクティブCGF
感染の治療
外用剤(抗菌剤)
・白糖ポピドンヨード(ユーパスタ)
・カデキソマーヨード(カデックス)
・抗生物質軟膏
・スルファジアジン銀(ゲーベンクリーム)
+
創傷被覆材
・アクアセル(高吸収・保持力・浸軟防止)
・カルトスタット(止血効果)
創の諸相、全身状態、血行状態を考慮にいれた
新旧創傷治療の使い分けの概要
感染期
壊死付着期
消毒剤を
使用しても
構わないが
使用後に
生理食塩水
で洗浄し
創部に残さ
ない。
肉芽形成期
上皮形成期
細胞毒性の
ない
生理食塩水
のみの
使用で洗浄。