軟膏・創傷被覆材の選択

軟膏・創傷被覆材の選択
皮膚排泄委員会
柳田 佳美
軟膏
役割
・感染が落ち着いた後に創部の治癒(肉芽形成、上
皮化)を促す。
・保湿により創部を保護する。
性質
・油脂性:油分による創面の保護。
・乳剤性:乾燥した組織に水分を与える。
・水溶性:浸出液を吸収する。
創傷被覆材
役割
①創面を閉鎖し湿潤環境を形成させる。
②乾燥した創を湿潤させる。
③滲出液を吸収し保持する。
被覆材選択
①浸出液が少ない場合
②浸出液が多い場合
③感染や炎症が多い場合
④発赤などが見られた場合
⑤水疱を生じた場合
⑥びらん、浅い潰瘍を認める場合
選択
滲出液が少ない場合
・ハイドロジェル(製品例:グラニュゲル)
(シート・ジェル)
・ハイドロコロイド(製品例:デュオアクティブCGF)
・ポリウレタンフォーム(製品例:ハイドロサイト薄型)
滲出液が多い場合
・ポリウレタンフォーム(製品例:ハイドロサイトプラス標
準型)
・ハイドロファイバー(製品例:アクアセル)
・アルギン酸塩(製品例:カルトスタット)
・アルギン酸/CMC(製品例:アスキナソーブ)
感染や炎症がある場合
・毎日の洗浄が必要なので剥離刺激の少ない低粘着
性の被覆材を選択する。
・銀含有ハイドロファイバー(製品例:アクアセルAg)
・アルギン酸Ag(製品例:アルジサイト銀)
※感染創に対して、被覆材で密閉すると細菌の繁殖
し感染を助長させる。多量の膿汁や悪臭がある場
合は、被覆材の使用は適さないので避ける。
発赤などが見られた場合
・アズノール
・白色ワセリン
水疱を生じた場合
・白色ワセリン、酸化亜鉛+非固着性の創傷被覆材
びらん、浅い潰瘍をみとめる場合
・酸化亜鉛
・ジメチルイソプロピルアズレン
滲出液が多い場合
・カデキソマー・ヨウ素
・ポビドンヨード・シュガー
ハイドロコロイド・ドレッシング材
デュオアクティブ(①)
・内側の親水性コロイド粒子は浸出液を
吸収。
・創部の毛細血管形成が促進。
創面のコロイド粒子がゲル化するため,創面に癒着する
ことはない。
ポリウレタンフォーム・ドレッシング材
ハイドロサイト(①)
・高い吸水性を持つ。
・創面の湿潤環境を保つ。
被覆材自体が溶けないため,創面に被覆材が残ることはない。
アルギン酸塩被覆材
カルトスタット(②)
・創面の湿潤環境の保持。
・止血作用。
通常はフィルムドレッシング材で密封して使用する。
ハイドロジェル・ドレッシング材
グラニュゲル(①)
・デブリードメント作用。
・肉芽形成・上皮再生の促進。
浸出液が少ない創面に効果があり、深く陥没している開放創に
も使用できる。
亜鉛華単軟膏
・浸出液を吸収し乾燥させる。
・消炎作用。
(熱傷、凍傷、湿疹、皮膚炎、白癬、びらん、潰瘍、湿潤面)
事例
患者:S氏 86歳男性 直腸癌
12/24腹腔鏡下低位前方切除術施行。
肛門括約筋機能低下により下痢便持続。
まとめ
• 創部の状態を観察し、カンファレンスを行い、
適した処置を適宜検討していく。
• 患者の自己管理能力を検討し、家族の協力を
得る。
• 創部改善後も、継続して観察していく。