外傷・熱傷の 湿潤治療 練馬光が丘病院 傷の治療センター 夏井 睦 (なつい まこと) 湿潤治療とは・・・ 傷を乾かさない 傷を消毒しない 乾燥下で 細胞は死滅する 消毒薬は 組織破壊薬 乾燥と消毒は 創治癒の最大の阻害因子 従来の傷治療の2大原則は 傷を消毒して 感染予防 ガーゼで 傷を乾燥させて 感染予防 1950年代に 完全否定された 19世紀医学の 標準理論 [消毒してガーゼ]をしている 医者は19世紀生まれ? 湿潤治療の流れ ① ② ③ ④ ⑤ 創面を水道水で洗浄 異物を除去 必要に応じてドレナージ 創傷被覆材で創面を覆う 感染の可能性があれば抗生剤投 与 ⑥ 毎日,創洗浄して被覆材を交換 治療材料 商品名 ハイドロコロイド 被覆材 アルギン酸塩被覆材 プラスモイスト® ズイコウパッド® OPWT (穴あきポリ袋 & 紙おむつ) 適 応 浅い傷・出血のない傷 出血している傷 浅い傷~やや深い傷 深い傷 浸出液の多い傷 壊死組織のある傷 浅い傷~深い傷 壊死組織のある傷 治療材料 一般名 特定保険医療材料 それ以外 ハイドロコロイ ド被覆材 デュオアクティブ ハイドロコロイド包帯 キズパワーパッド アルギン酸塩被 覆材 カルトスタット ソーブサン ヘモスタパッド ポリウレタン フォーム ハイドロサイト ハイドロファイ バー アクアセル その他 プラスモイスト ズイコウパッド モイスキンパッド 褥瘡パッド(穴あきポ リ袋) ハイドロコロイド被覆材 浅い傷に最適 深い傷では1日数回張り替えが必要 目立たないので露出部の傷に使いやすい アルギン酸塩被覆材 カルトスタット®,ソーブサン®など 強力な止血作用あり フィルム材で密封する プラスモイスト® 私が開発 薄くて柔軟,吸収 力あり,自由に 切って使える 浸出液が多い場合 は,プラスモイス トの上を紙おむつ で覆う 団長@安田大サーカスも愛用! 創感染のメカニズム 細菌 創面 皮膚 貪食細胞 細菌が傷に入ると感染する ・・・というイメージだが 普通なら感染は起きない 細菌 創面 皮膚 貪食細胞 細菌が創面に侵入/付着しただけ では創感染は起こらない 細菌の隠れ家があると・・・ 隠れ処となる スペース 細菌の隠れ家があると・・・ 1μm (1/1000mm) 15~20μm (1/50mm) 隠れ処の細菌は 貪食されない 数μmのスペースに入れば 貪食されない 増殖⇒創感染 細菌の隠れ処(=感染源) 縫合糸(編み糸) 表面に凹凸のある異物(木片など) 血腫 創内に貯留したリンパ液・浸出液 壊死組織 数μmのスペースで 細菌は増殖できる 隠れ処を除去すれば 創感染は起こらない 消毒しても感染源は除去できない ⇒消毒に創感染予防・治療効果なし 治療例供覧 10歳男:自転車転倒 6日後 初診時の状態 ハイドロコロイドを 貼付 2日後 16歳女:体育祭の練習で転倒 初診時の状態 ハイドロコロイドを 貼付 11日後 3日後 391日後 顔面外傷:36歳男性 4日後 自転車転倒 14日後 顔面外傷:85歳男性 翌日 転倒 7日後 56歳男:小指裂傷だが注射が苦手 3日後 ヘモスタパッド 14日後 21日後 25歳男:バイク整備中に母指損傷 初診時 15日後 36日後 60日後 初診時 155日後 5歳男: 7日前,ドアに指を挟まれ不全切断。 指切断が必要と言われ,ネット検索して当科へ 初診時の状態 5日後 10日後 26日後 初診時 初診時 118日後 118日後 1歳女:環指・小指不全切断 6日前に受傷。指切断が必要と言われた。 初診時 6日後 37日後 13日後 骨折用プレート・人工関節露出は感染しない 2011年11月21日 45歳男性。 2011年8月16日,左脛骨・腓骨開 放骨折。〇〇病院でプレート固定 術。 術後,皮膚が壊死してプレート露 出。 10月4日,形成外科で皮弁移植+皮 膚移植術 術後,皮弁が壊死してプレート再 露出。 骨髄炎の診断で韓流治療開始する もMRSA消えず。 患者がネットで骨髄炎治療につい て調べ,11月21日,当科受診。 12月1日からリハビリ目的で当院整 形外科に入院し,歩行訓練開始。 12月24日に全荷重歩行。28日退院。 2011年11月25日 2011年12月26日 2012年2月1日 2012年3月1日 2014年1月中旬, プレート抜去 2月初めに治癒 2年5ヶ月間,プ レートが露出し たままで入浴し, 温泉にも入った 感染は一度も起 きていない 2012年7月17日 2013年5月16日 2014年2月10日 19歳女性 2005年(9歳),右大腿骨肉腫の診断をう け,〇〇大学整形外科で腫瘍切除+人 工関節置換術。 2008年9月,人工関節の入れ替え手術 11月に手術創離開。人工関節露出。 その後3年間,人工関節は露出 2011年,〇〇大学病院形成外科では 「人工物を除去しないと傷は治らな い」と説明された。 〇〇大学病院整形外科では「人工関節 除去は技術的に困難なので,大腿近位 部で切断した方がいい」と説明された。 患者がネット検索し,2014年6月に当 科受診。 2014年6月13日 2008年以来6年間,人工関節が露出して いるのに感染が起きていない おそらく今後も感染は起きないだろう 普通に活動していいし,温泉も入って いい。 感染が起きても対処法はある。 金属・人工物が露出していると 感染・骨髄炎は起きない! 金属・人工物が露出 組織液が貯まらない 常に流れている 良好なドレナージが 確保されている 感染源がない 創感染するわけがない 1歳女:カップ麺で顔面・胸部熱傷 △△大学病院形成外科受診し,軟膏ガーゼ治療。痕が残 ると説明され,治療に不信感をいだき,ネットで検索。 41日後 1日後 初診時 14日後 36歳女:左前腕~手熱傷 180℃の油の入った業務用フライヤーに左腕が入っ た。直ちに当院ER受診。2日後に当科受診。 初診時 8日後 11日後 24日後 83歳男:胸腹部熱傷 11月21日,衣服に引火して熱傷受傷。病院嫌いで, 冷湿布を貼って様子を見ていた。12月3日,当院内科 に血圧の薬を貰いに来て熱傷が発覚。入院となった。 初診時 7日後 22日後に歩いて退院 以後は家族が褥瘡パッドで治療 1ヶ月に1回の頻度で通院 49日後 196日後 77日後 102日後 287日後 熱傷治療:ダメ医者・ダメ病院 フィブラスト・スプレー® アクトシン軟膏® ゲーベンクリーム® カデックス軟膏® ユーパスタ® イソジンゲル® 創を消毒 ボディーソープで創洗浄 痛い! アクトシンと フィブラストは 蜂刺症級に痛い! 浅い傷でも 3度熱傷にする 魔法の治療! 消毒薬の組織破壊力 人為的に傷を作り, 1日3回イソジン消毒 72時間後の状態 消毒せずに 1日3回ワセリン塗布 72時間後後の状態 アクトシン軟膏®の破壊力 人為的に傷を作り 1日3回アクトシンを塗布 48時間後の状態 1日3回ワセリン塗布 48時間後の状態 ゲーベンクリーム®の破壊力 人為的に傷を作り 1日3回ゲーベンを塗布 72時間後の状態 1日3回ワセリン塗布 72時間後の状態 2013年10月発行 20万部突破 2009年6月発行 5万部突破 五木寛之氏,大絶賛 スライドファイルは ダウンロードできます 本講演で使用したスライドファイルは http://www.wound-treatment.jp/slide.htm からダウンロードできます 無断改変・無断コピー・無断配布 どうぞ,ご自由に! 科学/医学の情報に著作権は存在しない!
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