CCU 1 Green Note 当センター CCU の実績 KEY WO R D S 急性心筋梗塞,院内死亡率,Killip 分類 Ⅰ 当センター統計における急性心筋梗塞の診断基準 当センターにおいては開設以来より急性心筋梗塞症 (AMI: Acute Myocardial Infarction)の登録を行って おり,過去データとの整合性を保つために現在でも WHO(World Health Organization) の MONICA (multinational monitoring of trends and deter- minants in cardiovascular disease)Criteria に基づ き,下記基準を用いたデータ収集を行っている. 症状の発症,入院ないしは症状再発から 3 日以内(72 時間)に心筋逸脱酵素上昇(血清クレアチニンキナーゼ, ないしは血清心筋型クレアチニンキナーゼアイソザイム が正常値上限 2 倍を超える)を認めた上で下記所見のう ち 1 項目が加わった場合 20 分以上続く典型的な症状 心電図上の ST-T 変化(連続する 2 誘導の上昇ないし は低下も含め),ないしは Q 波の形成 剖検にて新鮮な心筋梗塞所見を認め,かつ / または冠 動脈閉塞を認めるもの Ⅱ 急性心筋梗塞の統計 1978 年から 2014 年まで上記診断基準に基づき入院 症例数は 5935 例. 急性期再灌流療法の発達,特に Primary PCI(percutaneous coronary intervention)の施行比率増加に従 い院内死亡率が減少している.AMI 院内死亡率は 1989 年以前 13.5%,1990 年代 7.3%,2000 年以降 5.0%, 2012 年からは 3%前後で推移している. Door to Balloon 90 分未満は 84%前後で推移している 図 1 . 2007 年以降においては,Killip 分類 I 型 76.5%,II 型 8.1%,III 型 4.7%,IV 型 7.4%,不明 3.5%.しか し,Killip IV 型の院内死亡率(2007~2014 年)は 35.1 %と依然として高い 図 2 . 機械的合併症である心破裂〔左室自由壁破裂(Free Wall Rupture: FWR), 心 室 中 隔 穿 孔(Ventricular 498-13422 1 図 1 AMI の症例数と院内死亡率 当センター CCU の実績 1 人 250 % 50 200 40 150 30 100 20 50 10 0 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 院内死亡数 AMI 症例数 死亡率 0 図 2 AMI の入院時の Killip 分類 Ⅳ型 7.4% (104 例) 不明 3.5% (49 例) Ⅲ型 4.7% (66 例) Ⅱ型 8.1% (114 例) Ⅰ型 76.4% (1081 例) (2007~2014 年)(n=1414) 図 3 心破裂合併率と院内死亡率 % 4.0 心破裂合併率 3.0 60 2.0 56% 50% 40 1.0 0.0 心破裂院内死亡率 % 100 心室中隔穿孔 (VSP) 自由壁破裂 (FWR) VSP+FWR 80 死亡率 90% 20 1977~1989 年 1990~2000 年 2001~2011 年 0 心破裂合併率と院内死亡率 2 498-13422 CCU Green Note Septal Perforation: VSP)〕合併率は減少傾向である. 心破裂合併症例の院内死亡率は低下傾向であるが,2000 年代においても 50%と高率である 図 3 . ■参考文献 ❶WHO MONICA Project. Circulation. 1994; 90: 583-612. ❷Honda S, et al. J Am Heart Assoc. 2014; 3: e000984. 〈小永井奈緒・浅海泰栄〉 498-13422 3 2 循環器救急 循環器救急では一刻も早い対応が要求される.本項で は以下の順に解説する. ①プレホスピタルケアの整備(循環器救急疾患患者のト リアージ) ②心停止患者における早期の自己心拍再開 循環器救急 2 ③心拍再開直後から集中治療を展開 ④心停止に至る前のショック対策 ⑤救急患者における循環器疾患の早期鑑別 (1)プレホスピタルケア KEY WO R D S プレホスピタル 12 誘導心電図,モバイル・テレメディシン, ドクターカー わが国における全年齢層の死因として心疾患は第 2 位 で,院外心停止の原因の半数以上は心原性(多くは冠動 脈関連疾患)であり,救急患者において循環器疾患の早 期鑑別,治療介入は重要な意義を持つ.そのため本邦で も近年,救急救命士の院外心停止患者に対して行う医療 行為の規制緩和,非医療従事者による自動体外式除細動 器の使用などプレホスピタルケアの整備充実がなされて きている. Ⅰ 急性心筋梗塞におけるプレホスピタルケア 循環器疾患の中でも急性心筋梗塞は,発症から治療ま での時間経過で予後が大きく左右されるため,早期診 断,早期治療が求められる. JRC ガイドライン 2010,2013 ACCF/AHA STEMI ガイドライン,および日本循環器学会「ST 上昇型急 性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013 年改 訂版)」においても早期再灌流の重要性は強調されてお り,発症から 120 分以内の再灌流達成を目標とし,そ のためには救急隊接触から 30 分以内の血栓溶解薬の 静脈内投与,90 分以内の冠動脈カテーテル治療を推奨 している. 4 498-13422 CCU Ⅱ プレホスピタル 12 誘導心電図の重要性 Green Note 図1 プレホスピタル 12 誘導心電図は,治療までの時間短 縮における中心的役割を担うことが,上記の最新のガ イドライン 2010 でも強調されている. プレホスピタル 12 誘導心電図の記録・伝送を行うこ とで,再灌流療法が可能な専門施設へ時間の遅れなく 搬送できること,病院到着前に ST 上昇型急性心筋梗 塞の診断が可能となること,冠動脈カテーテル治療に よる再灌流までの時間が短縮することが報告されてい る. Ⅲ 国立循環器病研究センターにおけるプレホスピタル 12 誘導心電図電送システム 図2 当センターでは救急現場から収容病院へ 12 誘導心電 図を伝送する方法として,通常使用されている移動体通 信(携帯電話)を用いて,搬送中の救急車内から連続 12 誘導心電図,さらには血圧,呼吸,脈拍などの連続する 生体情報と,小型カメラによる車内映像データをリアル 図 1 JRC Guideline 2010 ACS 再灌流療法の目標:発症から再灌流達成≦120 分 救急隊接触から血栓溶解薬静注≦30 分 救急隊接触から冠動脈カテーテル治療≦90 分 救急隊による 12 誘導心電図判読または伝送により,患者の病院到着以前から 心臓カテーテル室の準備やカテーテルチームの早期召集が可能となる 症状の早期認識 救急車の要請 プレホスピタル 12 誘導心電図 を推奨 救急隊による 病院選定 12 誘導心電図 所見から 治療方針決定 再灌流療法 発症 救急隊接触 トリアージ 病院到着 循環器専門医 患者による遅延 搬送の遅延 (病院前システムの遅延) カテーテル治療の 遅延 システムの遅延 治療の遅延 心筋壊死 ( 一部改変) 498-13422 5
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