第 153 回 現代日本語学研究会 要旨 発表者:大西美穂(名古屋短期大学) 題 目:属性の知覚と談話の階層についての予備的分析 本研究では、A)「名詞+がする」および B)「名詞+をしている」を取り上げ、(i)名詞の種類、(ii)文構 造、(iii)談話の構造の各レベルから、A)と B) を分ける要因と、両用法を特徴づける共通の要因を考察す る。A)、B)はそれぞれ(1)、(2)に示した例のような構造を持つ。 (1) このシャンプーはいい匂いがする。 (2) 彼は青い目をしている。 この構造を持つ文は、影山(1990、2004、2008、2009 他)、角田(1991、2009)、佐藤(2005) 、澤 田(2003、2012)などで軽動詞、属性叙述の時間的な特徴、所有名詞と内在的/外在的特徴、知覚の過 程と属性との関係などの点から議論されてきた。本発表では、まず、知覚の特徴および所有文の構造の 点からこの現象を再考する。さらに、これまでなされていなかった談話レベルでの要因を考察する。 論点は以下の 2 点である。1 点目は A)と B)に生じる名詞の種類から両構造を特徴づけることである。 まず、知覚という現象に伴う主客の融合や分離に着眼した分類を示す。次に、属性と呼ばれる概念の下 位分類に踏み込み、例えば<程度>と<様態>は異なる概念であることを述べる。さらに属性を表す所 有文「彼はあごにほくろがある」などとの違いを示す。2 点目は、知覚内容を伝達する際の文法構造を考 察することである。まず、名詞の定性と情報構造という点から、 「象は鼻が長い」と「象は長い鼻をして いる」の違いを示す。さらに発展して、「主題に関連付けられた知識の範囲」や「描写の時間的一連性」 などの違いが、談話の階層構造の違いとして現れることを示す。 <参考文献> Chafe, Wallace L. 1994. Discourse, Consciousness, and Time: The Flow and Displacement of Conscious Experience in Speaking and Writing. Chicago: University of Chicago Press. Langacker, Ronald W. 1987. Foundations of Cognitive Grammar: Volume I, Theoretical Prerequisites. Stanford, CA: Stanford University Press. 影山太郎 2004.「軽動詞構文としての「青い目をしている」構文」 、日本語文法学会(編) 『日本語文法』、 東京:くろしお出版、22-37. 佐藤琢三 2005.『自動詞文と他動詞文の意味論』 、東京:笠間書院. 澤田浩子 2009.「味覚・嗅覚・聴覚に関する事象と属性」、影山太郎(編)『属性叙述の世界』、東京: くろしお出版、203-219. 角田太作 1991.『世界の言語と日本語』 、東京:くろしお出版.
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