配布資料はこちらになります。

心肺蘇生法について
名戸ヶ谷病院 院長
高橋 一昭
日本救急医学会 救急科専門医
救命の連鎖 Chain of Survival
急変した傷病者を救命し,社会復帰させるために必要となる一連の行為.
予防
早期認識と通報
一次救命処置
BLS
二次救命処置
ALS
+
心拍再開後の集中治療
CPR+AED
2
心室細動VFによる心停止から電気ショックまでの時間経過と生存率
神経機能損傷は
ほとんどなし
100
90
CPRあり
毎分3〜4%生存率低下
80
70
生 60
存
率 50
(
%
) 40
CPRなし
毎分7〜10%生存率低下
30
20
10
0
0
1
2
3
4
5
経過時間(分)
6
7
8
9
3
気道確保の必要性
傷病者に意識がない場合,舌及び喉頭蓋が上気道を
塞ぐ可能性がある(舌根沈下など).
気道(気管)
食道
舌及び喉頭蓋による
気道閉塞
気道確保が必要
4
気道確保の方法
人差し指と中指で
下あごを引き挙げる
額を押し下げて傷病者の首を後ろに
反らせる
頭部後屈あご先挙上法
非医療従事者は
必要なし
頬骨と下顎角を挟んで近づける
頭頸部に外傷がある場合
下顎挙上法
5
呼吸の確認
頭部後屈あご先挙上
または下顎挙上で気道確保
非医療従事者は
必要なし
非医療従事者は
“見て”だけ
呼 ① 傷病者の胸を “見て”
吸
の ② 傷病者の息を “聞いて”
確
認 ③ 傷病者の息を “感じて”
正常な
呼吸がなければ・・・
10秒以内に確認
CPRを開始
あえぎ呼吸は
呼吸をしていないことと同じ!
6
胸骨圧迫法(心臓マッサージ)
圧迫の姿勢
圧迫の位置
両肘関節を伸
展し,確実に自
分の体重が圧
迫点にかかる
ようにする.
圧迫の強さ
胸骨の下半分
圧迫の速さ
100回/分以上
傷病者の胸部
が5 cm以上沈
む強さ.また確
実に圧迫の力を
抜く(リコイル)こ
と.
7
人工呼吸
感染防御用人工呼吸用具
感染防御用人工呼吸
用具がなくとも人工呼
吸をしてもよい.
傷病者の胸が吹
き込みと同時に
挙上することを
確認する
人工呼吸の吹き込みは
1回1秒で2回行う
胸部が挙上していれば
気道確保及び吹き込み
量は適正.
8
心肺蘇生法=胸骨圧迫法+人工呼吸
CPR:Cardiopulmonary Resuscitation
反応がない傷病者に対しては
早期,かつ絶え間ない心肺蘇生法が重要.
胸骨圧迫法 30回
人工呼吸 2回
この組み合わせを1サイクルとする
救助者が2人以上いる場合は5サイクル毎に役割を交代すること.
9
直接“死”へつながる不整脈:心室細動
正常心電図
R-R間隔は全くの不規則
QRSは幅広い
心室細動 VF
生体内
ペースメーカー
本来心臓を規則正しく鼓動させる生体内ペースメーカー以
外の複数の場所(心室)から心臓を拍動させるための刺激
が生じる結果,心臓が全く不規則に収縮し有効な血流を保
てなくなった状態.
10
AED: Automated External Defibrillator
自動体外式除細動器
① 迅速に
公共の場所に設置
② 誰にでも使える
心電図波形はコンピュータで自動
解析し,必要な場合のみに電気
ショックを行える.
羽田空港のAED
11
電極パッドを装着
して下さい
心電図解
析中です.
患者から
離れて下
さい.
AEDのスイッチを入れる
必要があればCPR
を開始して下さい
電極パッドの装着
CPAを5サイクル(約2分間)
電気ショックの適応で
す.ショックボタンを押
して下さい
CPR再開
心電図解析
12
AED使用に当たっての特殊な状況
 6歳未満の乳幼児
乳児用パッドを用いる
 濡れている場合
胸部の水分を充分に拭き取る
 ペースメーカーや埋め込み型除細動器(ICDまたはAICD)を装
着している場合
ペースメーカーやICDより最低8cm離してパッドを装着する
 AEDのパッドを貼る部位に経皮的貼付薬等を付けている場合
拭き取る等して皮膚付着物を除去する
 AEDのパッドを貼る部位の体毛が濃い場合
体毛を抜く,切る,刈り取る等して除去する
13
回復体位
反応はないが,正常な呼吸が確認された傷病者に用いられる体位
この体位は
気道の開通を維持しながら誤嚥のリスクを軽減させるために考案された.
14
異物による気道閉塞
万国共通の“窒息のサイン”
① 「息ができないのですか?」
② 「声が出せないのですか?」
③ 「咳はできますか?」
軽度の気道閉塞では,傷病者は強く咳き込
んでいるので,自発的な咳と呼吸努力を妨
げないようにする.
反応があれば・・・
① 救急医療システムへ連絡(119番通報など).
② 背部叩打法 5回+ハイムリック法 5回
(腹部突き上げ法)
15
腹部突き上げ法(Heimlich maneuver)
意識のある立位・座位の傷病者
の場合,傷病者の後ろにまわり,
脇の下を通した片方の手を握り
拳として,拳の親指をみぞおち
に当てる.もう一方の手でその
握り拳を握り,素早く内上方へ
向かって圧迫するように押し上
げる.これを5回試みる.
注意: 胃破裂や肝損傷などの内臓損
傷が生じる危険性が高い.
16
ハイムリック変法
腹臥位
背臥位
傷病者が立位・座位の場合はハイムリック法の要領で側胸部を前腕全体で圧
迫する.
倒れている場合は腹臥位または背臥位として傷病者に跨がり,傷病者の側胸
部または背部下方に両手を当てて胸郭を内下方へ向かって引き絞る.
17
腹部突き上げ法と背部叩打法を繰り返したが,
異物は除去できず・・・反応もなくなってしまった・・・
即,CPR(胸骨圧迫+人工呼吸)開始
頭部後屈あご先挙上で異物を目視
目視可能であれば・・・
舌・下顎引き上げ法(tongue-jaw lift)
&
指掻き出し法(finger sweep)
18