一般講習用テキスト

一般講習用テキスト
※全国消防イメージキャラクター「消太」救急隊員バージョン
出典:厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/
「救急蘇生法の指針2015
市民用」(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000123021.pdf
を加工して作成
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Ⅰ.
救急蘇生法とは
市民が行う救急蘇生法は一次救命処置と簡単なファーストエイドです。
突然の心停止、もしくはこれに近い状態になった傷病者を社会復帰に導くための方法を一次
救命処置といいます。一次救命処置には胸骨圧迫や人工呼吸による心肺蘇生と AED(自動体
外式除細動器)を用いた電気ショックに加え、異物で窒息をきたした傷病者への気道異物除去
も含まれます。一次救命処置は特別な資格がなくても誰でも行うことができるだけでなく、救
急救命士や医師が医療資材を用いて行う二次救命処置よりも命を守るために大きな役割を果
たします。
一方、一次救命処置以外の急な病気やけがをした人を助けるために行う最初の行動をファー
ストエイドといいます。ファーストエイドにより命を守り、苦痛を和らげ、それ以上の悪化を
防ぐことが期待できます。ファーストエイドには熱中症への対応や出血に対する圧迫止血など
も含まれます。
救急蘇生法
一次救命処置
ファーストエイド
AED
気道異物除去
心肺蘇生
胸骨圧迫
人工呼吸
市民が行う救急蘇生法
○
救命の連鎖と市民の役割
傷病者の命を救い、社会復帰に導くために必要となる一連の行いを「救命の連鎖」といいま
すが(図1)、最初の三つの輪は現場に居合わせた市民により行われることが期待されます。
市民により心肺蘇生が行われた方が、行われなかった時より生存率が高く、市民がAEDを
使用し電気ショックを行った方が、救急隊の到着を待つことなく早く実施出来るため生存率や
社会復帰率が高いことがわかっています。
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① 心停止の予防
一つめの輪は「心停止の予防」です。子供の突然死の主な原因には、けが、溺水、窒息など
があり、その多くは日常生活の中で十分に注意する事で予防出来ます。心臓や呼吸が止まって
しまった場合の救命処置も大事ですが、何よりも突然死を未然に防ぐ事が一番効果的です。
成人の突然死の主な原因は、急性心筋梗塞や脳卒中です。初期症状に気付き、少しでも早く
救急車を要請する事が「心停止の予防」につながります。
高齢者の窒息、入浴中の事故、熱中症なども多く予防が望まれます。
心筋梗塞
脳 卒 中
・数分間持続する激しい胸部の痛み
・顔や手足のしびれ
(圧迫感、重苦しさ、焼けつく感じなど) ・顔の左右の表情に差がある
・あご、首、肩、腕、背中、胃の痛み
・呂律がまわらない、言葉が出ない
・息切れ、冷や汗、悪心、など
他人の言う事が理解出来ない
・頭痛
② 早期認識と通報
二つめの輪は「早期認識と通報」です。心停止を早く認識するには、突然倒れた人や、反応
のない人を見たら、直ちに心停止を疑う事が大切です。心停止の可能性があれば大声で応援を
呼び、119通報とAEDの手配を依頼し、AEDや救急隊が少しでも早く到着するように行
動します。
③ 一次救命処置
三つめの輪の「一次救命処置」とは、心肺蘇生とAEDの使用により、止まってしまった心
臓と呼吸の動きを助ける方法です。
・心肺蘇生とは
脳は、心臓が止まると15秒以内に意識がなくなり、3~4分以上そのままの状態が続くと
回復する事が困難となります。心臓が止まっている間、心肺蘇生によって脳や心臓に血液を送
り続ける事がAEDの効果を高めるとともに、心臓の動きが戻った後に後遺症を残さないため
にも重要です。救命の可能性は時間とともに減っていきますが、そばに居合わせた人が心肺蘇
生を行った場合にはその減り方がずいぶんゆっくりになります。(図2)
・AED(自動体外式除細動器)とは
心臓が突然止まるのは、心臓が細かく震える「心室細動」により起こる事が少なくありませ
ん。この場合には、出来るだけ早く心臓に電気ショックを与え、心臓の震えを取り除くこと(こ
れを除細動という)が重要です。
AEDとは、この電気ショックを行うための機器です。機械が自動的に心室細動かどうかを
調べ、電気ショックが必要かどうかを決定し、音声メッセージで電気ショックを指示してくれ
るので、一般の人でも簡単で確実に操作する事が出来ます。
心室細動になってから電気ショックを行うまでの時間が遅れる毎に、生存退院のチャンスが
低下する事が知られています。市民により目撃された心停止のうち、救急隊が到着するまで電
気ショックが実施されなかった場合の社会復帰率は18.9%でしたが、救急隊が到着するま
での間に市民が電気ショックを行った場合は、2倍以上の43.3%でした。この事からも、
早い除細動がいかに有効であるかわかります。
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④ 二次救命処置
四つめの輪は、救急救命士や医師が、薬や器具などを用いて心臓の動きを取り戻す事を目指
します。そして、心臓の動きをとり戻す事が出来たなら、専門家による集中治療により社会復
帰を目指します。
図2
市民による一次救命処置の年齢比較表
年齢
救命処置
成人(思春期以降)
小 児 (1 歳 ~ 思 春 期 以 前 )
乳児(1歳未満)
通報
反応なければ大声で助け呼ぶ(119 番通報・AED 手配)
心肺蘇生開始の判断
反応なく、呼吸がないか異常な呼吸(死戦期呼吸)
部位
胸
骨
圧
迫
胸の真ん中
方法
両手で
深さ
約5cm
両手 or 片手
2本指
胸の厚さの約1/3
テンポ
1分間に100~120回
解除
胸壁が完全に元の位置に戻るまで
人工呼吸
約1秒かけて2回、胸が軽く膨らむ程度吹き込む
胸圧と人工呼吸の対比
胸圧30回×人工呼吸2回
到着次第
装着タイミング
A
E
D
成人用パッド(小学生以上)
電極パッド
成人用パッド
小児用パッド(未就学児)
※小児には成人用パッド代用可
ショック後対応
直ちに胸骨圧迫から心肺蘇生法再開(2 分間)
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Ⅱ.
一 次 救
命
処
置
Ⅰ. 救命処置の流れ(心肺蘇生とAEDの使用)
① 安全確認
③反応なし
②大声で叫び応援を呼ぶ
119番通報・AED
気道確保
④ 呼吸をみる
応援・救急隊を待つ
普段通りの呼吸あり
呼 吸 な し
回復体位
※死戦期呼吸は心停止と判断
(呼吸の確認参照)
⑤胸骨圧迫(30回)
強く(約5cm 小児及び乳児は胸の厚さの約1/3)
速く(100~120回/分)
絶え間なく(中断は最小にする)
圧迫解除はしっかりと
⑥人工呼吸(2回)
技術を身につけていて、行う意志がある
※⑤、⑥を繰り返す
⑦AED 装着
⑧心電図解析
電気ショックは必要か
電気ショック
ただちに胸骨圧迫から
その後ただちに胸骨圧迫から
心肺蘇生を再開
心肺蘇生を再開
救急隊と交代するまでか、普段通りの呼吸に戻って呼びかけに反応したり、
目的のある仕草が認められるまで続ける
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Ⅲ.
救命処置の手順(心肺蘇生とAEDの使用手順)
心肺蘇生の手順
①安全を確認する
・周囲の状況が安全かどうか確認する
②反応を確認する
・傷病者の耳元で「大丈夫ですか?」
「もしもし!」と大声で呼びかけながら、
肩を軽くたたき、反応があるかな
いかをみます。
・呼びかけに対して目を開けるか、なんらかの返答または目的のある仕草がなけれ
ば「反応なし」と判断します。
・けいれんの様な全身がひきつる様な動きは「反応なし」と判断します。
反応があれば、傷病者の訴えを聞き、必要なファーストエイドを行います。
③助けを呼ぶ
・反応がなければ、大きな声で
「誰か来て!人が倒れています!」
と助けを求めます。
協力者が来たら、
「あなたは119通報してください」
「あなたはAEDを持って来てください」
と具体的に依頼します。
・救助者が一人の時や、協力者が誰もいない場合には、次の手順に移る前にまず自分で
119番通報してください。また、すぐ近くにAEDがあるのをわかっている場合に
はAEDを取りに行ってください。
・119通報する事で、受信した通信指令員が、救急蘇生法を指導してくれます。
④呼吸の確認
・傷病者が「普段どおりの呼吸」をして
いるかどうかを確認します。
(傷病者のそばに座り、10秒以内で傷
病者の胸や腹部の上がり下がりを見て
普段どおりの呼吸をしているか見ます)
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次のいずれかの場合には、「普段どおりの呼吸なし」と判断します。
・胸や腹部の動きがない場合。
・約10秒間確認しても普段どおり呼吸かどうかよくわからない場合。
・しゃくりあげるような、途切れ途切れに起きる呼吸がみられる場合。
心停止が起こった直後には、呼吸に伴う胸や腹部の動きが普段どおりでない場合や、しゃく
りあげたり途切れ途切れに起きる呼吸がみられる事がありこれを「死戦期呼吸」といい、「普
段どおりの呼吸」ではありません。
※死戦期呼吸=あえぎ呼吸、下顎呼吸、鼻翼呼吸など。
⑤胸骨圧迫
・傷病者に普段どおりの呼吸がないと判断したら、直ちに胸骨圧迫を開始し血液を送ります。
両手の組み方と力を加える部位
胸骨圧迫の姿勢
胸骨圧迫部位
正面から見た時
両手の置き方
真横から見た時
⑥人工呼吸(口対口人工呼吸)
・30回の胸骨圧迫終了後、口対口人工呼吸により息を吹き込みます。
気道確保(頭部後屈顎先挙上法)
・片手を額に当て、もう一方の手の人差し指と
中指の2本を顎先に当てて、頭を後ろにのけ
ぞらせて、顎先を上げます。
人工呼吸
・額に当てた手の親指と人差し指で傷病者の鼻
をつまみ、口を大きく開けて傷病者の口を覆
い、息を約1秒かけて吹き込みます。この時
傷病者の胸が持ち上がるのを確認します。
これを2回繰り返します。
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・頭部後屈顎先挙上法で、指2本を顎先に当てる際は、固い骨のある部分に当てるもの
とし、柔らかい部分を強く圧迫しない様にする。
・2回の吹き込みで胸が上がらなくても、吹き込みは2回までとし、すぐに胸骨圧迫に
進むこと。
・人工呼吸をしている間は胸骨圧迫が中断しますが、中断時間は10秒以上にならない。
・傷病者の顔面や口から出血していたり、吐物などが付着しているなど、人工呼吸をす
る事がためらわれる時や自信がない場合は、胸骨圧迫のみを続けること。
※心肺蘇生(胸骨圧迫&人工呼吸)の継続
・胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせを救急隊に引き継ぐまで続ける。
・救助者が二人いれば1~2分程度毎に胸骨圧迫を交代すると良い。
・心肺蘇生を中止する場合。
○救急隊が到着し、救急隊から「交代します!」と指示があった時。
○傷病者が開眼したり普段どおりの呼吸をし始めた場合。
胸骨圧迫30回
人工呼吸2回
○胸の真ん中(胸骨下半分)を圧迫
○鼻をつまむ
○強く・速く・絶え間なく
○約1秒吹き込む
(約5cm、100~120回/分
○吹き込む量は胸が上がる程度
○圧迫の後は圧迫を緩める
○10秒以上かけない
A E D の 使 用手 順
心肺蘇生を行っている途中で、AEDが届いたらすぐに準備を始めます。AEDには色んな
機種がありますが、「まず電源!」を入れれば、音声メッセージとランプで、あなたが実施す
べき事を指示してくれます。
⑦AEDの到着と準備
◎傷病者の頭の近くに置く。
↓
◎蓋を開け電源ボタンを押す。
↓
※電源を入れたら以降は音声メッセージ
とランプに従い操作する。
↓
◎電極パッドを貼る。
・電極パッドを貼る時、一つは胸の右上(鎖骨の下)、もう一
つは胸の左下側に貼る。貼る間も、胸骨圧迫は継続させる。
・胸が濡れていたら、タオル等で拭いてからパッドを貼る。
・貼り薬がある場合は剥がして、肌に残った薬剤を拭き取っ
てからパッドを貼る。
・心臓ペースメーカーなどが胸に植め込まれている時は、そ
の部分を避けてパッドを貼る。
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⑧心電図の解析
・電極パッドを貼ると、「体に触れないで下さい。」な
どと音声メッセージが流れて自動的に心電図の解析が
始まります。この時、「みんな離れて!」と注意を促
して誰も傷病者に触れてない事を確認します。
・「ショックは不要です。」などと音声メッセージが
流れたら直ちに胸骨圧迫を再開します。
⑨電気ショック
・「ショックが必要です。」と音声メッセージが流れた
ら自動的に充電が始まります(数秒かかる)。充電が
完了したら、「ショックボタンを押して下さい。」
などと音声メッセージが流れるので、再度誰も傷病者
に触れてない事を確認して、ショックボボタンを押し
ます。ショックが完了したら直ちに胸骨圧迫から開始
します。
Ⅳ. 気道異物の除去
傷病者に反応(意識)がある場合
・傷病者に「喉が詰まったの?」と尋ね、声が出せず、うなずく様なら窒息と判断し、直ちに
行動なければなりません。119通報を誰かに頼むと共に直ちに以下の2つの方法を数回ず
つ繰り返し、異物が取れるか、傷病者の反応がなくなるまで異物の除去を試みます。
・傷病者が咳をする事が可能であれば、出来るだけ咳を続けさせます。咳が出来れば、それが
異物除去に最も効果的です。
腹部突き上げ法
・傷病者を後ろから抱える様に腕を回します。
・片手で握り拳を作り、その親指側を傷病者のへそより上で、みぞおちの十分下方に当てて、
もう一方の手で先に当てた拳を包み込む様握り、すばやく手前上方に向かって圧迫する様
に突き上げます。
※行った場合は医師の診察を受けて下さい。
※明らかに妊娠している女性や高度な肥満者には行いません。
背部叩打法
・背中を叩きやすい様に傷病者の横に回ります。
・手の付け根で肩甲骨の間を強く何度も連続して叩きます。
腹部突き上げ法
背部叩打法(座位の時)
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背部叩打法(側臥位の時)