北湖と南湖について 北湖と南湖は別の湖 琵琶湖の水環境問題 の現状と歴史(1) 琵琶湖は北湖と南湖に分かれる 琵琶湖大橋がある狭窄部で北湖と南湖に分かれる.両湖 は湖沼学的(物理的,生態学的,化学的)にまったく別の 湖盆.法律上も別の水域… … 琵琶湖の大きさのイメージ 全 長さ 南 幅 最 最 深さ 南 滋賀県立大学 井手慎司 体 湖 大 大 湖 実 際 仮 想 約 60 km 3m 約 15 km 0.75 m 約 20 km 1m 約 100 m 5 mm 約 4 m 0.2 mm 4 1 琵琶湖流域 琵琶湖の特徴 流入河川が団扇(うちわ) 型の流域をもつ 琵琶湖には約460本の河 川(1級河川118)が流れ込 む ⇔自然の流出河川は 瀬田川のみ 琵琶湖に流入する主要河川の ほとんどは天井川 【集水域または流域】 降った雨が集まり,一本の川, 一つの湖に流れ込む.そんな範 囲を集水域または流域と呼ぶ. 2 5 琵琶湖と集水域 北湖 1/6 南湖 琵琶湖の水質の変化(透明度) 北湖 かつての北湖中央は透明度が10㍍(今の南湖の4倍) 南湖 沿岸国 日本 湖沼成因 断層湖 気候区 太平洋側気候・日本海側 気候・瀬戸内海型気候 流域型 開放型 塩分区分 淡水 標高 85.6 m 表面積 616 km2 10 58 km2 3,174 km2 流域面積 1915年滋賀県水産試験場による「琵琶湖定期定点観測」はじまる 8 容積 27.3 km3 0.2 km3 最大水深 103.6 m 8m 44 m 3.5 m 5.5 年 0.04年 流域人口 130万人 378 人/km2 6 4 2 平均水深 滞留時間 人口密度 透明度 (m) 湖盆 北湖中央 北湖 南湖 1966年滋賀県による琵琶湖の水質調査はじまる 0 1920 1940 LakeWatch 2003 湖は滋賀県の県域面積の6分の1,湖を含む流域は県土の90%を占める.また湖の流域の97%は県内にある. 1960 1980 2000 年 悪化した時期のデータが欠如している問題 3 滋賀の環境(資料編) 6 1 琵琶湖の水質の変化(全リン) 水道水原水としての琵琶湖の水質 ②琵琶湖の水質はこの50年間でどのように変化してきたか? 減少傾向 北湖は環境基準達成 8 0.04 南湖 昭和50年以降 は改善傾向 それに匹敵す る戦前の悪化 全リン (mg/L) KMnO4 (mg/L) 一時的によかった 昭和30年ごろの水質 6 4 北湖 0.03 0.02 高度成長期以降の急激な悪化 2 環境基準 0.01 琵琶湖の水質は集水域における人々の産業 活動に左右されてきた 0 0 1975 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 年 7 三井寺沖の過マンガン酸カリウム(KMnO4)消費量データ(大阪市水道局) 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 滋賀の環境(資料編) 年 10 琵琶湖の水質の変化(クロロフィルa) 富栄養化の一つの指標 植物プランクトン量は減少傾向 14 Chlorophyll a (g/L) 南湖 北湖 12 10 8 だんだん小さくなる北湖と南湖の差 6 4 2 0 1975 8 吉良竜夫「世界の湖と琵琶湖」,新潮社 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 滋賀の環境(資料編) 年 11 琵琶湖の水質の変化(全窒素) 琵琶湖の水質の変化(赤潮とアオコ) 横ばい状態から減少傾向に ③琵琶湖で淡水赤潮が大量に発生した最初の年は? 0.6 100 南湖 赤潮 北湖 アオコ 0.4 Uroglena americana 環境基準 0.2 発生延べ水域 全窒素 (mg/L) 80 60 40 20 0 1975 年 1980 滋賀の環境(資料編) 1985 1990 1995 2000 2005 Microcystis 0 1975 2010 9 滋賀の環境 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 年 12 2 琵琶湖の水質の変化(BODとCOD) 減少する生物化学的酸素要求量(BOD) 増加する化学的酸素要求量(COD) 漁獲高の減少(トン/年) 12,000 •産卵場所の消失 •水位操作の影響 •外来魚による摂餌 •農薬の流入 4 南湖 北湖 10,000 8,000 mg/L 3 COD 6,000 総漁獲量 貝類 魚類 2 COD環境基準 1 4,000 2,000 BOD 0 0 年 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 滋賀の環境(資料編) 13 1954 1959 1964 1969 1974 1979 1984 1989 1994 1999 2004 2009 16 出典:琵琶湖漁業魚種別漁獲量 富栄養化 eutrophication 元来は湖沼等閉鎖水域が、長年にわたり流域から窒素化 合物及び燐酸塩等の栄養塩類を供給されて、生物生産の 高い富栄養湖に移り変わっていく自然現象をいう。 近年人口および産業の集中等により、湖沼に加えて東京 湾、伊勢湾、瀬戸内海等の閉鎖性海域においても窒素、 リン等の栄養塩類の流入により急速に富栄養化している。 富栄養化になると藻類等が異常増殖繁茂し、水中の酸素 消費量が高くなり貧酸素化し、また藻類が生産する有害 物質により水生生物が死滅する。また、水質は累進的に 悪化し、透明度が低く水は悪臭を放つようになる。緑色、 褐色、赤褐色等に変色する。 出典:EICネット環境用語集 魚類 プラン クトン 化学物質 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 佐藤祐一 作成 14 J.F. von Liebig(リービヒ)の最小原理 琵琶湖の水質の変化(まとめ) ④湖沼が富栄養化する原因をリービヒの最小原理を用いて説明せよ. Liebig(1803~1873):有機化学者 リン酸肥料開発 最小原理:定常状態における,ある種の個体 群サイズは供給が最も少ない資源によって拘 束される(様々な長さの側板で作られた桶). 自然界における多くの生物集団は窒素と リンによって制限を受けている 改訂版「Redfield」比(海洋の植物プランクトン) C106 H 263O110 N16 PS0.7 Fe0.005 15 17 他の湖と比べれば,それほど悪くない琵琶湖の水 質 琵琶湖の化学的水質は全体的に改善傾向(次第に 小さくなる北湖と南湖の差) … …生物学的水質 は? 唯一の例外は北湖のCOD それでも毎年のように発生するアオコ 富栄養化にも質的な変化の兆しが 琵琶湖の水質が,昔と今では,質として変化してき ている 18 3 流入河川の水質の変化(COD) 流入河川の水質の変化(全リン) 南湖は減少 北湖は増加から横ばい 6 南湖瀬田川流入河川平均(10河川) 北湖東部流入河川平均(9河川) 北湖西部流入河川平均(5河川) 南湖瀬田川流入河川平均(10河川) 北湖東部流入河川平均(9河川) 0.4 T-P (mg/L) 5 COD (mg/L) 減少傾向あるいは横ばい状態 0.5 4 3 北湖西部流入河川平均(5河川) 0.3 0.2 2 0.1 1 0 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 滋賀県環境白書(資料編) 0 1975 年 19 BOD (mg/L) 南湖瀬田川流入河川平均(10河川) 北湖東部流入河川平均(9河川) 北湖西部流入河川平均(5河川) 3 1 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 滋賀県環境白書(資料編) 2000 2005 2010 年 つまり市街地からの汚濁物質はすべて都市河川へ しかし都市河川の水質は完全には把握できていない ファーストフラッシュによる流出負荷が把握できてい ない(河川の水質調査は晴天時に月1回… … ただ し,雨天時の流出負荷はどれだけ湖とって本当の負 荷となるのかは?) 23 流入河川の水質の変化(全窒素) 湖への負荷と水質の変化(概念図) 南湖は減少 北湖は? 悪化は急激に,改善はゆっくりと 悪い 南湖瀬田川流入河川平均(10河川) 北湖東部流入河川平均(9河川) 北湖西部流入河川平均(5河川) 湖の水質 2 改善 悪化 1 0 1975 年 22 20 3 T-N (mg/L) 1995 全体的に琵琶湖に流入する主要河川の水質は改 善傾向 気になる北湖西部の河川(CODと全窒素) ただし 琵琶湖に流入する主要河川のほとんどは天井川 2 0 1975 1990 流入河川の水質の変化(まとめ) 明らかな減少傾向(8割以上の川が環境基準を達成) 4 1985 滋賀県環境白書(資料編) 流入河川の水質の変化(BOD) 5 1980 1980 1985 滋賀県環境白書(資料編) 1990 1995 2000 2005 2010 年 21 良い 湖への負荷 24 4
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