茨城県における大豆難防除雑草の発生状況と防除への取り組み

[雑草と作物の制御]vol.10
2014 p10~12
茨城県における大豆難防除雑草の発生状況と防除への取り組み
茨城県農業総合センター 専門技術指導室
1 茨城県における大豆の作付状況
松浦和哉
2 大豆圃場で問題となっている雑草の発生状況
H25年産大豆は県内で4,100haに作付されてお
について
り、主力品種は、大粒大豆「タチナガハ」と小粒
本県大豆作において最も問題となっている難防
大豆「納豆小粒」である。主な産地は県西部、県
除雑草は帰化アサガオ類である。草種は、マルバ
南部、県央部で、約75%が転換畑である。主な作
ルコウ、ホシアサガオ、マメアサガオ、アメリカ
付体系は、水稲-麦-大豆のブロックローテーシ
アサガオの発生が確認されている。また、最近で
ョン及び麦-大豆などである。
は、アレチウリについても発生情報および相談が
表-1 平成25年 M市及びI町の大豆栽培における難防除帰化雑草等の発生状況
表1 平成25年 M市及びI町の大豆栽培における難防除帰化雑草等の発生状況
市町村 地区
面積
(ha)
M市
I町
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
U
帰化アサガオ
発生状況
地域内 圃場別
発生の
発生
広がり
程度
(0-5)
(0-5)
ア
レ
マルバ アメリカ マルバ マメアサ ホシアサ チ エノ オ
ルコウ アサガ アメリカ ガオ ガオ ウ キグ ナ
リ サ モ
オ
アサガ
オ
ミ
帰化アサガオ
4.5
1
2
○
畦畔
7.0
1
1
○
7.8
0
0
33.2
1
1~2
H25休耕
2
2~3
16.2
0(~1) 0(~1)
○
○
△
畦畔
○
3(~5)
○
3.8
-
3(~5)
○
○
9.8
3
2(~5)
○
○
11.7
5
2~4
○
20.5
0
0
2.7
1
0(~1)
9.0
1
0(~1)
20.0
3
2
21.0
1
12.1
3
2
13.0
9.3
6.5
○
○
0
○
クサネム、アメリカセンダ
ングサ
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
水路
○
メヒシバ、タデ、ツユク
サ、ヤブガラシ
○
ツユクサ
シロザ、スベリヒユ
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
クサネム、チョウセンアサ
ガオ
○
○
○
○
○
0(~1) 0(~1)
○
○
○
○
0
0(~1) 0(~1)
クサネム、アメリカセンダ
ングサ
○
0(~1) 0(~1)
3
○
チョウセンアサガオ
1~2
6.0
ゲイトウ)
その他
発生の
目立つ
草種
○
○
5
1
○
イ イヌ
チ ビユ
ビ (ホソアオ
○
16.2
15.1
○
○
その他
○
○
注)茨城県 県央農林事務所 経営・普及部門調べ 平成25年9月調べ
帰化アサガオ発生状況: 0(無)、1(微)、2(少)、3(中)、4(多)、5(甚・蔓延)の6段階評価
- 10 -
○
クサネム、アメリカセンダ
ングサ、ホソアオゲイト
ウ
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表-2 平成25年 M市における大豆の栽培概要
表2 平成25年 M市における大豆の栽培概要
市
町
村
名
M
市
地
区
名
面
積
大
豆
種
別
播
種
期
畦
苗立
ちの
良否
耕
起
の
有
無
中
耕
の
有
無
○
有
無
有
(一部
無)
小麦 麦大豆
65 ◎~○
有
有
無
小麦 麦大豆
30
有
無
無
小麦 麦大豆
間
(ha)
(大小) (月/日)
(cm)
A
4.5
7/9~
大
10
30
B
7.0
大
C
7.8
大 7/8~9
6/30~
7/1
△
ブロック
ローテーシ
ョンの
有無
前
輪
作
体
系
作
D
33.2
大
7/上~
下
30
○
有
無
無
麦大豆、
麦、
大豆連
他
作
E※
H25休耕
大
-
30
-
有
無
無
小麦 麦大豆
F
16.2
大 7/1
60
(45)
◎
有
有
有
小麦 稲-麦大
G
16.2
大 7/2~6
45
△
有
H
3.8
大
7/21~
23
45
○
有
I
9.8
大 7/4
6/23~
7/17
J
11.7
大
K
15.1
大 6/25
手取
除草
の
有無
畦畔
代表的な除草体系
管理
(除草)
ダイズ
ダイズ
の
播種後
生育期
良否
湿
害
の
有
無
無
○(~×)
茎葉処理剤
無
無
○(~×)
中耕培土(7/
下)
無
無
○(~×)
茎葉処理剤
有
無
○(~×)
茎葉処理剤
無
無
○~△
茎葉処理剤
無
無
◎~○
中耕培土(7/
下)
茎葉処理剤
有
有
○~△
実施せず
無
有
○~△
中耕(8/上)
無
有
○(△)
茎葉処理、一
部中耕・畦間除
草
無
茎葉処理剤
有
実施せず
無
(一部有)
水稲-水
55~
○~△
60
無
豆
水稲-水
稲-麦大
豆-麦大
豆
有
小麦
無
小麦 麦大豆
無
有
小麦 稲-麦大
小麦 麦大豆
無
○~△
小麦 麦大豆
有
◎
有
水稲-水
有
豆
45 ○~△
有
無
有
(一部
無)
60、
○~△
30
有
有・
無
無
土
壌
処
理
剤
注)茨城県 県央農林事務所 経営・普及部門調べ E※については、H24年時の栽培概要
大豆種別:大;大粒大豆(タチナガハ)、小;小粒大豆(納豆小粒)
苗立ちの良否・畦畔管理: ◎(優)、○(良)、△(やや不良)、×(不良)
寄せられている。
すい環境を作ってしまっていることが確認された。
茨城県県央農林事務所 経営・普及部門による
大豆生産現場の詳細な調査では、2市町の生産現
3 アサガオ類の効果的防除のための取り組み
場(21地区・245ha)のうち19地区で帰化アサガ
大豆生育期の茎葉処理剤はアサガオ類防除の重
オ類が確認されており、草種ではマルバルコウ、
要な手段であり、狭畦栽培が広く普及している本
マメアサガオの発生が多い。アレチウリも8地区
県では特に重要度が高い。ただし、散布時期がア
で発生が確認されており、急激に広がってきてい
サガオ類の防除適期を逃してしまっている現場事
る(表-1)。栽培様式を見ると、狭畦・無中耕
例も見られるため、中央農業総合研究センター成
栽培が目立ち、麦・大豆の連作体系となっている
果「大豆畑における帰化アサガオ類の防除技術」
地区も散見される(表-2・M市のみのデータ)。
中の茎葉処理除草剤の散布時期に関する情報につ
狭畦・無中耕栽培では、土壌処理剤+茎葉処理剤
いて、現地検討会や普及指導員研修、JA営農指
による防除体系しか方法がなく、それでも抑えら
導員研修等で、情報提供を行ってきた。
れない場合は手取り除草となるため、最終的に多
また、農業改良普及センターでは、吊り下げノ
大な労力を投入している事例も見られる。本調査
ズル使用による畦間処理の現地実証に取り組むと
をとおして、栽培様式の変化が、雑草が蔓延しや
ころもあり、生産者への啓蒙活動に努めている。
- 11 -
[雑草と作物の制御]vol.10
2014 p10~12
ただし、実際の経営に畦間処理を取り入れている
られた。
生産者は少数であるため、今後も現地実証試験等
をとおして技術の普及を図っていきたい。
26 年産に向けて
5
26 年産では、圃場のローテーション、畦畔管理
4 除草剤塗布処理によるアレチウリ防除の検討
等の基本技術に加えて、大豆生育期茎葉処理剤の
アレチウリ侵入圃場における防除技術として、
効果的な使用方法の徹底、畦間処理技術の確立を
PakuPaku(除草剤塗布器)による雑草茎葉塗布
継続して実施する。また、今回の調査結果(栽培
処理(タッチダウン iQ)の効果検討を行った。
様式も含めた現地の状況)を、今後の雑草防除に
具体的には、アレチウリ、イヌビユ、エノキグサ
ついて考えるきっかけにしたい。
等の蔓延が危惧される状態にあったI町O地区
(表-1・20ha)において、9月中旬に塗布処
最後に、現地の詳細な調査結果を提供いただい
理による雑草防除作業を実施した。その結果、十
た県央農林事務所 経営・普及部門の小山田一郎氏
分な効果が得られ、収穫前の手取り除草作業を
に感謝の意を表します。
省略することが出来た。これまでの手取り除草
作業と労力を比較した結果、35%の省力化が図
コラム
地球温暖化
地球は温暖化が確実に進んでいると言われ
くなっていると思いますが、体で感じる気象変
ています。日々の仕事をしながら「本当にそう
化は必ずしも数字とは一致していないように
なのだろうか?」と、ふと感じたことがあり、
感じています。ここ 2~3 年は冬が寒く、雪も
気象庁のホームページを覗いてみました。その
多いように感じています。気象の変動が大きく
中には過去の気象データが公開されており、観
なったということでしょうか。気象条件に左右
測地点の観測史上 1~10 位の値というものが
されやすい仕事をやっているだけに、累年の試
あります。日最高気温は確かに近年が高く、日
験データのばらつきと気象との関係を考察す
最低気温はほとんどが戦前から戦後まもなく
るのが非常に難しいこの頃です。
が占めていました。数字からみれば確かに暖か
- 12 -
細野
哲(長野 県)