公共経済学

20.個別消費税と利子所得課税
20.1 一括固定税と超過負担
20.2 一般消費税と超過負担
20.3 個別消費税と超過負担
20.4 労働所得税と超過負担
20.5 利子所得税と超過負担
20.1 一括固定税と超過負担
財1と財 2 に関する個人の消費選択のモデルを用いて、一括固定税の効果と超過負担につ
いて検討しよう。なお、一括固定税とは「個人が行動を変化させても税額が変化しない税」
であり、人頭税がその例である。
<税の存在しない場合の予算制約式>
財 i の量を xi 、税が存在しないもとでの財 i の価格を pi0 とする( i  1, 2 )
。なお、以下では
議論を単純化するために財 2 の価格は 1 であるとする( p20
 1)。また、所得を m とすれ
ば、予算制約式は
p10 x1  x2  m
である。そして、税が存在しないもとでの最適消費点を
x10 , x20 を通る無差別曲線を I 0 とする。
x10 , x20 とする。また、最適消費点
(問題 20-1) x1 x2 平面に税が存在しない場合の最適消費点
曲線 I 0 を図示しなさい。
(20-1)
x10 , x20 とその点を通る無差別
(問題 20-1) x1 x2 平面に税が存在しない場合の最適消費点
x10 , x20 とその点を通る無差別
曲線 I 0 を図示しなさい。
x2
m
p10 x1  x2  m
x20
I0
p10
x10
x1
<一括固定税が存在する場合の予算制約式と税額>
「生産者価格」は課税されても
pi0 のまま変化しないとする(水平な供給曲線)。また、一
括固定税(lump-sum tax)の税額を TL とする。そのとき、一括固定税のケースの予算制約式
は、
(20-2)
p10 x1  x2  m  TL
となる。そして、税額 TL の一括固定税のもとでの最適消費点を x1L , x2L  とするとともに、
x1L , x2L を通る無差別曲線を I L とする。
(問題 20-2) 問題 20-1 で描いた図に、税額 TL の一括固定税のもとでの最適消費点
x1L , x2L  と
その点を通る無差別曲線 I L を図示しなさい。また、 TL を図示しなさい。
(問題 20-2) 問題 20-1 で描いた図に、税額 TL の一括固定税のもとでの最適消費点
x1L , x2L  と
その点を通る無差別曲線 I L を図示しなさい。また、 TL を図示しなさい。
x2
m
TL
p10 x1  x2  m
p10 x1  x2  m TL
m  TL
x20
x2L
I0
IL
p10
x1L x10
x1
<超過負担(excess burden )>
課税の結果、個人の効用水準は低下することになるが、その効用低下の大きさを「金銭的
に評価」したものが「実質的租税負担額」である。なお、課税で得られた財源で公共財な
どを供給することで生じる効用の上昇についてはここでは考慮しないこととする。たとえ
ば、税収は全て他国への賠償金の支払いなどのために支出されていると考えることにする。
課税による実質的租税負担額と租税負担額は必ずしも一致するとは限らず、「実質的租税
負担額」から「租税負担額」を差し引いた値は「超過負担」と呼ばれる。そのような超過
負担が生じる基本的な理由は、課税されると個人が租税を回避(節税)するために行動を
歪める(変化させる)からである。以下では、そのような超過負担が一括固定税に関して
生じるかどうかを検討する。
価格
p1 のもとで無差別曲線 I に対応する効用水準を実現するために最低限必要な所得を
「補償所得(compensating income)」と呼び、 E( p1 , I ) と表すことにする。そのとき、課税
前の効用水準、すなわち課税前の最適消費点 x10 , x20 を通る無差別曲線 I 0 に対応する効用
水準を、価格 p10 のもとで実現するための補償所得 E( p10 , I 0 ) は、 x10 , x20  が(20-1)をみた
すことを考慮すれば、
(20-3)
E( p10 , I 0 )  p10 x10  x20  m
である。また、税額 TL の一括固定税を課税した後の効用水準、すなわち課税後の最適消費
点 x1L , x2L  を通る無差別曲線 I L に対応する効用水準を、価格 p10 のもとで実現するための補
償所得 E( p10 , I L ) は、 x1L , x2L  が(20-2)を満たすことを考慮すれば、
(20-4)
E( p10 , I L )  p10 x1L  x2L  m  TL
である。
(問題 20-3) 問題 20-2 で描いた図に、 E( p10 ,
I 0 ) と E( p10 , I L ) を図示しなさい。
(問題 20-3) 問題 20-2 で描いた図に、 E( p10 ,
I 0 ) と E( p10 , I L ) を図示しなさい。
x2
E( p , I )  m
0
1
0
p10 x1  x2  m
p10 x1  x2  m TL
E( p10 , I L )  m  TL
x20
x2L
I0
IL
p10
x1L x10
x1
課税による効用低下の大きさを「金銭的に評価」する方法としては、課税前の補償所得と
課税後の補償所得との差を用いることにしよう。なお、どちらの補償所得も課税前の価格
p10 に対応するものであるとする。そのとき、一括固定税による実質的租税負担額は、(20-3)
と(20-4)より、
E( p10 , I 0 )  E( p10 , I L )  m  (m  TL )  TL
(20-5)
と求められる。そして、一括固定税による超過負担 EBL は、実質的租税負担額から租税負
担額を引いた値である。したがって、 EBL は(20-5)より、
EBL  E( p10 , I 0 )  E( p10 , I L ) TL  TL TL  0
(20-6)
となるので、一括固定税による超過負担はゼロである。
課税による実質的租税負担額は課税前の価格
p10 、課税前の効用水準に対応する無差別曲線、
課税後の効用水準対応する無差別曲線だけで求められる。また、一括固定税のもとでは実
質的租税負担額と租税負担税額が一致する。したがって、ある課税による超過負担は以下
の手順で求めることができることになる。
① ある課税のもとでの租税負担額とその課税のもとでの最適消費点を通る無差別曲線を
求める。
② 一括固定税のもとでの最適消費点が①で求めた無差別曲線上の点になるような一括固
定税の税額(すなわち租税負担額) TL を求める。
その課税の超過負担を、
「②で求めた税額 TL 」から「①で求めた租税負担額」を引くことで
求める。
20.2 一般消費税と超過負担
20.2 節と 20.3 節では 2 種類の消費課税(消費を課税ベースとする課税)について、財1と
財 2 に関する個人の消費選択のモデルを用いて検討する。20.2 節では、全ての財・サービ
スを課税対象とする税である「一般消費税」について検討する。それに対して、20.3 節で
は、特定の財・サービスを課税対象とする税である「個別消費税」について検討する。
財 i の消費に対して課される税は「従価税」であり、その税率を t i とする( i  1, 2 )。した
がって、たとえば財 1 を x1 単位消費した場合の税額は t1 p10 x1 である。そして、一般消費税
を課すケース( t1
 t2 [ tC ]  TL  0 )と一括固定税のケース( TL  0  t1  t2 )を比較す
ることで一般消費税のもとで生じる超過負担を求めよう。
一般消費税のケースの予算制約式は、
(20-7)
(1  tC ) p10 x1  x2   m
である。また、税率 tC の一般消費税のもとでの最適消費点を x1C , x2C  とする。そのとき、
「一般消費税(のもとでの租税負担)額 TC 」は TC = tC   p10 x1C  x2C  であり、 x1C , x2C  は
(20-7)を満たすので
TC = tC   p10 x1C  x2C  =
tC m
1  tC
(20-8)
と求めることができる。
一括固定税のもとでの予算制約式(20-2)と(20-7)を比較すると、
「一括固定税(のもとでの租
税負担)額 TL 」を
TL 
tC m
1  tC
(20-9)
と定めることにより、税率 tC の一般消費税のもとでの予算制約式と税額 TL の一括固定税の
もとでの予算制約式が一致する。したがって、両者の税制のもとでの達成される効用水準
に対応する無差別曲線は一致することになる。また、(20-9)のように一括固定税の税額 TL を
定めれば、(20-8)より一般消費税額 TC と一括固定税額 TL は一致する( TC
以上より、税率 tC の一般消費税のもとで生じる超過負担 EBC は
EBC  TL  TC  0
 TL )。
(20-10)
と求められることになる。つまり、一般消費税のもとでの超過負担はゼロである。
(問題 20-4) x1 x2 平面に一般消費税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き、縦
軸の切片の値を書き入れなさい。また、税率 tC の一般消費税のもとでの最適消費
点
x1C , x2C  を図示しなさい。さらに、(20-9)を満たすように税額 TL が定められた
一括固定税のもとでの予算制約式を図示しなさい。そして、一般消費税額 TC と一
括固定税額 TL を図示しなさい。
x2
TC =
m
TL  TC
p10 x1  x2  m
TL =
tC m
1  tC
x2C
p10
x1C
(20-8)
EBC  TL  TC  0
(1 tC ) p10 x1  x2   m
or p10 x1  x2  m TL
m
1 tC
tC m
1  tC
x1
(20-9)
20.3 個別消費税と超過負担
財1と財 2 に関する個人の消費選択のモデルを用いて、財 1 にのみ個別消費税を課すケー
ス( t1
 t2  TL  0 )と一括固定税を課すケース( TL  0  t1  t2 )を比較することで、
個別消費税により生ずる超過負担について検討しよう。まず、個別消費税のケースの予算
制約式は、次のように表すことができる。
(1  t1 ) p10 x1  x2  m
(20-11)
(問題 20-5) x1 x2 平面に個別消費税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き、
縦軸の切片の値を書き入れなさい。
(問題 20-5) x1 x2 平面に個別消費税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き、
縦軸の切片の値を書き入れなさい。
x2
m
p10 x1  x2  m
p10
x1
x11 , x12  とする。そのとき、「個別消費税(のも
とでの租税負担)額 T1 」は T1  t1 p10 x11 であり、 x11 , x12  は(20-11)を満たすので
税率 t1 の個別消費税のもとでの最適消費点を
T1  t1 p10 x11 = m  ( p10 x11  x12 )
(20-12)
と表すことができる。なお、個別消費税導入後の財1の「消費者価格」を p11 と表すことに
する。すなわち、 p11
 (1  t1 ) p10 である。また、最適消費点 x11 , x12  を通る無差別曲線を I 1
と表すことにする。
(問題 20-6)
問題 20-5 の図のなかに、
税率 t1 のもとでの最適消費点
を図示しなさい。また、租税負担額 T1 を図示しなさい。
x11 , x12  と無差別曲線 I 1


(問題 20-6)
問題 20-5 の図のなかに、
税率 t1 のもとでの最適消費点 x11 , x12 と無差別曲線 I 1
を図示しなさい。また、個別消費税額 T1 を図示しなさい。
x2
0 1
1 1
px
T1  t1 p10 x11 = m  ( p10 x11  x12 )
p10 x1  x2  m
m
T1
T1
x12
p11  (1 t1) p10
p11x1  x2  m
p11
x11
p10
I1
x1
税額 TL の一括固定税のもとでの最適消費点
そのとき、(20-2)より、
x1L , x2L  が無差別曲線 I 1 上の点であるとする。
TL  m  ( p10 x1L  x2L )
(20-13)
と表すことができる。
(問題 20-7)問題 20-6 で描いた図に、最適消費点
なさい。
x1L , x2L と一括固定税額 TL を描き加え
(問題 20-7)問題 20-6 で描いた図に、最適消費点
なさい。
x2
x1L , x2L と一括固定税額 TL を描き加え
T1  t1 p10 x11 = m  ( p10 x11  x12 )
p10 x1  x2  m
m
T1
TL
x12
TL
p10 x1  x2  m TL
x2L
p11x1  x2  m
p10
x11
x1L
I1
x1
個別消費税による超過負担 EB1 は、(20-12)と(20-13)で求めた T1 と TL を用いて、
EB1  TL  T1
(20-14)
と求めることができる。なお、この超過負担 EB1 は次のように理解することもできる。ま
ず、税額 TL の一括固定税が課されている状態を考える。そして、その一括固定税を廃止す
るとともに、税率 t1 の個別消費税を導入して個人の効用水準(満足度)が変わらないように
するならば、そのときに得られる個別消費税額は T1 である。したがって、この一括固定税
の廃止と個別消費税の導入という政策変更に伴って、個人の効用水準は変化しないものの
税収は EB1 だけ減少することになるのである。
(問題 20-8)問題 20-7 で描いた図に、超過負担 EB1 を図示しなさい。
(問題 20-8)問題 20-7 で描いた図に、超過負担 EB1 を図示しなさい。
x2
T1  t1 p10 x11 = m  ( p10 x11  x12 )
EB1  TL  T1
p10 x1  x2  m
m
T1
TL
x12
TL
p10 x1  x2  m TL
x2L
p11x1  x2  m
p10
x11
x1L
I1
x1
(問題 20-9)効用関数が u  x2
 (x1 ) 2  4x1 で与えられており、所得が m  3 、財 1 の価
p10  1であるとする。このとき、①税率 100%( t1  1)の個別消費税を導入
した場合の最適消費点 x11 , x12 と個別消費税額 T1 を求めなさい。また、 x11 , x12  を
通る無差別曲線 I 1 に対応する u の値 u1 を求めなさい。②税額 TL の一括固定税のも
とでの最適消費点 x1L , x2L  が①で求めた無差別曲線 I 1 上にあるときの x1L , x2L  と
TL を求めなさい。③超過負担 EB1 を求めなさい。
格が
20.4 労働所得税と超過負担
2 期間にわたる消費選択モデルを用いて、(比例)労働所得税と超過負担の問題を検討しよう。
なお、労働供給は非弾力的(すなわち、労働供給量は一定)であると想定し、労働供給が
弾力的なケースについては第 22 章で検討する。
<税の存在しない場合の予算制約式>
消費財の価格は 1 に標準化されているとする。第 t 期の消費量(=消費支出額)を ct 、第 t
期の労働所得を wt とする( t  1, 2 )
。また、
(第1期の)貯蓄を s 、利子率を r 0 とする。
利子所得が r 0 s であるから第 1 期と第 2 期の予算制約式は、それぞれ
c1  s  w1
c2  w2  (1  r 0 )s
(20-15)
(20-16)
である。そのとき、2 期間を通じた予算制約式は
c1 
c2
w2

w
1 
1 r 0
1 r 0
(20-17)
となる((19-3)参照)。なお、左辺は消費の割引現在価値、右辺は労働所得の割引現在価値
である。
<労働所得税が存在する場合の予算制約式と税額>
労働所得税率 t w のもとでの 2 期間を通じた予算制約式は
c2
w2 

(20-18)

(
1

t

w ) w1 
0
0
1 r
1 r 

である((19-6)参照)
。また、税率 t w のもとでの最適消費点を c1w , c2w  とすると、c1w , c2w  は
(20-18)を満たすので、第 1 期と第 2 期の労働所得税額の割引現在価値 Tw は、
w 
t w

Tw = t w w1  w 20 = t w   w1  2 0 
(20-19)
1 r 
1 r

である。また、1 期のみに税額 TL の一括固定税を課すケースの予算制約式は、
c
w
(20-20)
c1  2 0  w1  2 0  TL
1 r
1 r
であるから、 TL  Tw と定めれば、予算制約式(20-18)と(20-20)は一致する。したがって、
両者の税制のもとでの達成される効用水準は一致することになる。以上より、税率 t w の労
働所得税のもとで生じる超過負担 EBw は
EBw  TL  Tw  0
(20-21)
c1 
と求められることになる。つまり、労働所得税のもとでの超過負担はゼロである。
(問題 20-10) c1c2 平面に労働所得税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き、
縦軸の切片の値を書き入れなさい。また、税率 t w の労働所得税のもとでの最適消
費点
c1w , c2w を図示しなさい。さらに、TL  Tw と定められた一括固定税のケース
の予算制約式を図示しなさい。そして、労働所得税額 Tw と一括固定税額 TL を図示
しなさい。
c2
EBw  TL  Tw  0
c1 
c2
w2

w

1
1 r 0
1 r 0
TL  Tw
c1 
c2w
w2
c2
w2 


(
1

t
)
w



w
1
0
1 r 0
1

r


c
w
or c1  2 0  w1  2 0  TL
1 r
1 r
Tw = tww1 
c1w
1 r 0
w w1
w
w1  2 0  TL w1  2
1 r
1 r 0
tww2
w2 

= tw  w1 

1 r 0 
1 r 0

c1
なお、19.1 節では 2 期間モデルを用いて消費税と労働所得税に「同等性」が成立すること
を導いた。したがって、(20-21)より、2 期間モデルを用いて消費税を定式化した場合でも
消費税による超過負担はゼロになる。
20.5 利子所得税と超過負担
2 期間にわたる消費選択モデルを用いて、利子所得税の効果と超過負担について検討しよう。
利子所得税率を tr とすれば、利子所得が r 0 s であるから第 1 期と第 2 期の予算制約式は、
それぞれ
(20-22)
c1  s  w1
(20-23)
c2  w2  (1  r 0 )s  tr r 0 s  w2  1  (1  tr )r 0 s
である。ここで r1  (1  tr )r 0 とおけば(20-22)と(20-23)より 2 期間を通じた予算制約式は


c2
w2
(20-24)

w
1 
1
1
1 r
1 r
となる。税率 tr の利子所得税のもとでの第 t 期の最適消費量を ctr 、第 1 期の最適貯蓄水準
を s r とする。そのとき、
「利子所得税(のもとでの租税負担)額の割引現在価値 Tr 」は Tr =
tr r  s r /(1  r 0 ) であり、 (c1r , c2r , s r ) は(20-22)と(20-23)を満たすので、
w2   r
c2r 
tr r 0 s r 
=  w1 
(20-25)
Tr =
   c1 

1 r 0  
1 r 0 
1 r 0 
と求められる。また、最適消費点 (c1r , c2r ) を通る無差別曲線を I r と表すことにする。
c1 
(問題 20-11) c1c2 平面に利子所得税を導入する前の予算線と導入した後の予算線を描き、
横軸の切片の値を書き入れなさい。また、無差別曲線 I r を描き加えることで、税率 tr
のもとでの最適消費点
c1r , c2r を図示しなさい。
c2
c1 
c2
w2

w

1
1 r 0
1 r 0
c1 
c2r
Ir
w2
c2
w2

w
1
1 (1 tr )r 0
1 (1 tr )r 0
1 (1 tr )r 0
c1r
1 r 0
w1
c1
w
w2
w1  2 0 w1 
1 r
1 (1 tr )r 0
(問題 20-12)問題 20-11 の図のなかに利子所得税額の割引現在価値 Tr を図示しなさい。
w2   r
c2r 
tr r 0 s r 
=  w1 
Tr =
   c1 

1 r 0  
1 r 0 
1 r 0 
c2
c1 
c2
w2

w

1
1 r 0
1 r 0
Tr
c1 
c2r
Ir
w2
c2
w2

w
1
1 (1 tr )r 0
1 (1 tr )r 0
1 (1 tr )r 0
c1r
1 r 0
w1
c1
w
w2
w1  2 0 w1 
Tr
1 r
1 (1 tr )r 0
1 期のみに税額 TL の一括固定税を課すもとでの最適消費点が無差別曲線 I r にあるときの最
適消費点を
c1L , c2L とする。そのとき、 c1L , c2L は(20-20)を満たすので、次のように求めら
れる。
w2   L
c2L 

TL =  w1 
   c1 

0
1

r
1 r 0 

 
(20-26)
(問題 20-13)問題 20-11 で求めた税率 tr の利子所得税のもとでの最適消費点
額 TL の一括固定税のもとでの最適消費点
する。最適消費点
c1r , c2r と税
c1L , c2L が同じ無差別曲線上 I r にあると
c1L , c2L と一括固定税額 TL を問題 20-11 の図に描き加えなさい。
(問題 20-13)問題 20-11 で求めた税率 tr の利子所得税のもとでの最適消費点
額 TL の一括固定税のもとでの最適消費点
する。
最適消費点
c1r , c2r と税
c1L , c2L が同じ無差別曲線上 I r にあると
c1L , c2L と一括固定税額 TL を問題 20-11 の図に描き加えなさい。
w2   r
c2r 
tr r 0 s r 
=  w1 
Tr =
   c1 

1 r 0  
1 r 0 
1  r1 
c2
w2   L
c2L 

TL =   w1 
   c1 

1 r 0  
1 r 0 

c1 
c2
w2

w

1
1 r 0
1 r 0
TL
Tr
c2L
c1 
c2r
Ir
w2
c2
w2

w
1
1 (1 tr )r 0
1 (1 tr )r 0
1 (1 tr )r 0
c1L
c1r
1 r 0
w1
c1
w
w2
w1  2 0 w1 
1 r
1 (1 tr )r 0
利子所得税のもとで生ずる超過負担 EBr を TL と Tr を用いて表せば、
EBr  TL  Tr
(20-27)
である。
なお、この超過負担 EBr は次のように理解することもできる。まず、税額 TL の一括固定税
が課されている状態を考える。そして、その一括固定税を廃止するとともに、税率 tr の利
子所得税を導入して個人の効用水準が変わらないようにするならば、そのときに得られる
利子所得税額の割引現在価値は Tr である。したがって、この一括固定税の廃止と利子所得
税の導入という政策変更に伴って、個人の効用水準は変化しないものの税収は EBr だけ減
少することになるのである。
(問題 20-14)問題 20-11 の図のなかに超過負担 EBr を図示しなさい。
c2
c1 
c2
w2

w

1
1 r 0
1 r 0
EBr  TL  Tr
TL
Tr
c2L
c1 
c2r
Ir
w2
c2
w2

w
1
1 (1 tr )r 0
1 (1 tr )r 0
1 (1 tr )r 0
c1L
c1r
1 r 0
w1
c1
w
w2
w1  2 0 w1 
1 r
1 (1 tr )r 0
(問題 20-9)効用関数が u  x2
 (x1 ) 2  4x1 で与えられており、所得が m  3 、財 1 の価
p10  1であるとする。このとき、①税率 100%( t1  1)の個別消費税を導入
した場合の最適消費点 x11 , x12 と個別消費税額 T1 を求めなさい。また、 x11 , x12  を
通る無差別曲線 I 1 に対応する u の値 u1 を求めなさい。②税額 TL の一括固定税のも
とでの最適消費点 x1L , x2L  が①で求めた無差別曲線 I 1 上にあるときの x1L , x2L  と
TL を求めなさい。③超過負担 EB1 を求めなさい。
格が


① 税率 100%( t1  1)の個別消費税を導入した場合の最適消費点 x11, x12 と個別消費税
の税収 T1 を求めなさい。また、 x11, x12 を通る無差別曲線 I 1 に対応する u の値 u1 を


求めなさい。
t1  1のもとでの予算制約式は 2x1  x2  3 である。また、無差別曲線の x11, x12  にお
ける接線の傾きは 2x11  4 である。したがって、 2x11  4  2 より x11  1 であり、
x12  3  2x11  1となる。そして、 T1  t1 p10 x11  1 である。
u1  x12  x11 2  4x11  112  4  4
② 税額 TL の一括固定税のもとでの最適消費点
にあるときの
x1L , x2L  と TL を求めなさい。

x1L , x2L  が①で求めた無差別曲線 I 1 上

無差別曲線の x1L , x2L における接線の傾きは 2x1L  4 であり、一括固定税のもとで
の予算制約式は x1  x2  3  TL だから、その傾きは-1である。したがって、
2x1L  4  1 より、 x1L  3 / 2 だから、
x2L  x1L 2  4x11  u1  (3 / 2)2  4(3 / 2)  4  1/ 4
となる。そして、
TL  m  (x1L  x2L )  3  (3 / 2 1/ 4)  5 / 4
である。
③
超過負担 EB1 を求めなさい。
EB1  TL  T1  5 / 4 1  1/ 4
20.1 一括固定税と超過負担
20.2 一般消費税の超過負担
20.3 個別消費税の超過負担
20.4 労働所得税と超過負担
20.5 利子所得税と超過負担
課税標準
所得
国税
地方税
所得税
道府県民税
法人税
市町村民税
事業税
資産
消費
相続税・贈与税
固定資産税
地価税
都市計画税
1998年以降当
分の間非課税
印紙税
特別土地所有税
登録免許税
不動産取得税
消費税
酒税
石油ガス譲与税(1/2)
たばこ税
たばこ特別税
地方道路譲与税(100%)
航空燃料税
石油石炭税
揮発油税
自動車重量譲与税(1/3)
石油ガス税
自動車取得税
地方道路税
自動車重量税
軽油取引税
自動車税
関税
特別とん税
とん税
電源開発促進税
軽自動車税
地方消費税
(注1) 「○譲与税」の後のカッコの中の値=「○税」の税収のうち地方に譲与される割合
(注2) ガソリン税=揮発油税+地方道路税
(注3)
=道路特定財源諸税
<道路特定財源>
(出所)国土交通省道路局HP
<道路特定財源>
(出所)国土交通省道路局HP
<消費税等>
消費税等=消費税(国税)と地方消費税の総称
付加価値=売上高-仕入高
消費税額=4%×付加価値
地方消費税額=25%×消費税額=25%×(4%×付加価値)=1%×付加価値
消費税額+地方消費税額=4%×付加価値+1%×付加価値
=(4%+1%)×付加価値=5% ×付加価値
消費税=付加価値税=Value-Added Taxes (VAT)
<個人所得課税の計算例>
個人所得課税=所得税(国税)+個人住民税(地方税)
給与収入=500(万円)、社会保険料支払額=50(万円)で、夫婦のうち 1 人のみに収入があり、
2 人の子供(うち 1 人は特定扶養親族)がいるケースについて計算する。
所得税=所得税の課税所得より計算
個人住民税=個人住民税の課税所得より計算
① 所得税の課税所得=給与所得-所得税の所得控除
② 個人住民税の課税所得=給与所得-個人住民税の所得控除
給与所得=給与収入-給与所得控除
① 所得税の所得控除=社会保険料控除+所得税の人的控除
② 個人住民税の所得控除=社会保険料控除+個人住民税の人的控除
(1) 給与所得控除と給与所得
給与所得控除≒給与所得者にとっての必要経費
給与等の収入金額
(万円)
給与所得控除額
(65万円以上の場合)
180以下
40%
180~360
30%
360~660
20%
660~1000
10%
1000超
5%
給与収入が 500 万円のときは、給与所得控除は次のように求められる。
給与所得控除=0.4×180+0.3×(360-180)+0.2×(500-360)=72+54+28=154
給与所得=給与収入-給与所得控除=500-154=346(万円)
(2) 社会保険料控除=社会保険料支払額(=50 万円)
(3) 人的控除
夫婦のうち 1 人のみに給与収入があり、2 人の子供うち 1 人は特定扶養親族なので、人的控除
は次のようになる。
所得税
個人住民税
人的控除額の差
基礎控除
38
33
5
配偶者控除
38
33
5
(一般)扶養控除
38
33
5
特定扶養控除(16 歳から 22 歳まで)
63
45
18
合計
177
144
33
(単位=万円)
(4) 課税所得
給与収入 Y=500 かつ社会保険料控除=50 なので、所得税と個人住民税の課税所得は
次のように定まる。
所得税の課税所得=給与所得-社会保険料控除-所得税の人的控除
=346-50-177=119
個人住民税の課税所得=給与所得-社会保険料控除-個人住民税の人的控除
=346-50-144=152
(5) 個人所得課税
○所得税
所得税=0.05×119=5.95
課税所得(万円)
税率(%)
195
330
695
900
1800
∞
5
10
20
23
33
40
(←課税所得が 195 万円までは(限界)税率が 5%)
○個人住民税
個人住民税=0.1×個人住民税の課税所得-(個人住民税の)調整控除
調整控除=国から地方への税源移譲にともなう調整措置
このケースの調整控除=1.65(注)
個人住民税=0.1×152-調整控除=15.2-1.65=13.55
○個人所得課税
年収に対する個人所得課税の割合
=19.5/500=3.9%
個人所得税=所得税+個人住民税=5.95+13.55=19.5
(注)「人的控除額の差の合計(33)≦個人住民税の課税所得(144)≦200」が成り立つときは、
調整控除=0.05×人的控除額の差の合計=0.05×33=1.65 と計算される。