3-2-2 異文化理解ハンドブック『地球のうらからこんにちは』 (義永美央子

3-2-2 異 文 化理 解ハンドブック『地 球のうらからこんにちは』
(義 永美 央 子:旧愛 知 教育 大 学日 本 語講 座)
(現 大阪 大 学留 学 生センター)
( 1 ) はじ め に
愛 知教 育 大学 で は 、平成 17 年 度 から「 外国 人児 童生 徒 のた め の教 材開 発 と学
習支 援」 の プロ ジ ェク トが 文 部科 学 省の 現代 的教 育ニ ー ズ取 組 支援 プロ グ ラム
(現 代 GP)と して 採 択さ れ、様 々な 取り 組 み を行 って い る。製造 業 の盛 ん な愛
知県 は、 外 国人 の 就労 も多 く 、そ の 子弟 が小 中学 校に 多 数在 籍 して いる 。 平成
16 年 度 に 愛 知 県内 で 日 本 語 指 導 が必 要 と 認 め ら れ た児 童 生 徒 1 は 2700 人 を 超
え、 全国 で も一 位 であ る。 し かし 現 状で は外 国人 児童 生 徒向 け の教 材は ま だ少
なく 、そ の 指導 に 非常 に苦 慮 して い る。 また 現在 の教 員 養成 プ ログ ラム で は、
外国 人児 童 生徒 の 現状 理解 や その 指 導法 に対 する 系統 だ った 教 育は 行わ れ てお
らず 、今 後 の課 題 とな って い る。
児 童 2が 毎 日 の 生 活 の 大 半 を 過 ご す 学 校 に お い て 自 分 の 居 場 所 を 見 つ け る た
めに は、 ま ず、 仲 間を つく る こと が 重要 であ ろう 。し か し、 一 般的 に同 質 性の
高い 日本 の 小学 校 にお いて は 、こ と ばや 文化 が異 なる 外 国人 児 童に 対し 、 「興
味は ある が 、ど う 接し てい い のか わ から ない 」と いう 児 童が 多 い。 また 、 教員
も外 国の 生 活習 慣 や文 化に 関 する 知 識が なく 、文 化差 ゆ えの 行 動の 違い を 「ル
ール 違反 」 と捉 え てし まう こ とが あ る。 一方 で、 外国 人 児童 の 側も 日本 の 学校
文化 を理 解 し適 応 して いく こ とが か なわ ず、 結果 的に 不 登校 に 至っ てし ま う例
もみ られ る 。
そ こで 筆 者は 、平成 17 年 度後 期 に担 当し た3 年生 用 選択 科 目「異 文化 理 解教
育論 」の 授 業を 利 用し 、愛 知 県内 の 外国 人児 童生 徒の 中 で最 も 大き な割 合 を占
める ブラ ジ ル人 に 焦点 を当 て 、ブ ラ ジル 人児 童と 日本 人 児童 の 相互 理解 の 一助
とな るよ う なハ ン ドブ ック の 作成 を 試み た。 また ハン ド ブッ ク 作成 の過 程 を通
じて 、授 業 を受 講 した 大学 生 自身 が 自他 の文 化を 振り 返 り、 文 化に つい て の理
解を 深め る こと も 目標 の一 つ とし た 。本 稿で は、 「異 文 化理 解 教育 論」 の 授業
の方 法お よ びハ ン ドブ ック の 作成 過 程、 また 完成 した 教 材の 概 要に つい て 報告
1
こ れ は あ く ま で 現 場 の 教 員 に よ る 報 告 の 合 計 で あ り 、外 国 に ル ー ツ を 持 ち な が ら 、基 本 的 な
日 本 語 力 を 身 に つ け て い る ( す な わ ち 、「 日 本 語 指 導 が 必 要 」 と み な さ れ な い ) 児 童 生 徒 も 含
め る と 、そ の 数 は さ ら に 多 く な る 。ま た 、日 本 の 公 立 学 校 に 通 学 し て い な い 子 ど も た ち も こ の
数には含まれていない。
2 愛 教 大 の 現 代 GP の 取 り 組 み は 、 そ の タ イ ト ル に も あ る 通 り 「 外 国 人 『 児 童 生 徒 』
」を対象
と し て い る が 、 児 童( 小 学 生 )と 生 徒( 主 と し て 中 学 生 )で は 、子 ど も の 発 達 段 階 も 教 育 の 方
法 も 大 き く 異 な る 。本 論 で 言 及 す る 異 文 化 理 解 教 材 は 主 に 小 学 校 中 学 年 程 度 の 児 童 を 想 定 し て
いるので、今後本文では「児童」を用いる。
する 3 。
( 2 ) 授業 の 方法
受講者
「 異文 化 理解 教育 論」は 3年 生 用の 選択 科 目と して 開 講さ れ てお り、平成 17
年度 には 68 名 の学 生 が履 修し た 。そ の 内訳 は、 国際 文 化コ ース 48 名 (内 4 年
生6 名) 、 日本 語 教育 コー ス 10 名( 内 4年 生0 名) 、 情報 教 育課 程 10 名 ( 内
4年 生1 名 )で あ った 。男女 別 の構 成は 男 子 学生 8名 、女子 学生 60 名 で あっ た。
また 中国 か ら来 た 外国 人留 学 生が 2 名履 修し てい た。
授 業 計画
授 業開 始 時に 学 生に 提示 し た授 業 計画 は表 1の 通り で ある 。
【表 1: 授 業 計 画 】
回
日付
内容
第1回
10 月 25 日
オリエンテーション・文化とは
第2回
11 月 1 日
異文化との接触
第3回
11 月 8 日
外国人児童生徒の現状
第4回
11 月 15 日
グループ分け・教材の基本コンセプト
第5回
11 月 22 日
グループ作業(1)
第6回
11 月 29 日
グループ作業(2)
第7回
12 月 6 日
中間発表(1)
第8回
12 月 13 日
中間発表(2)
第9回
12 月 20 日
中間発表(3)
第 10 回
1 月 17 日
グループ作業(3)
第 11 回
1 月 24 日
グループ作業(4)
第 12 回
1 月 31 日
教材発表(1)
第 13 回
2月7日
教材発表(2)
第 14 回
2 月 14 日
教材発表(3)
第 15 回
2 月 21 日
最終原稿提出
実 際の 授 業は 、 第 12 回 が 教材 発 表か らグ ルー プ活 動 に変 更 され たこ と を除
き、 概ね 計 画通 り に実 施さ れ た。
大 学 院生 の 参加
今 回の 授 業の 登 録者 は 68 名 と 、愛 教 大の 授業 とし て は比 較 的多 人数 で あり 、
3
今 回 の 取 り 組 み に 対 す る 学 生 の 感 想 に つ い て は 、「 教 材 開 発 を 通 し た グ ロ ー バ ル リ テ ラ シ ー
の 育 成 ― 異 文 化 理 解 ハ ン ド ブ ッ ク の 作 成 活 動 か ら ― 」( 『 愛 知 教 育 大 学 プ ロ ジ ェ ク ト 報 告 書 』)
参照。
担当 教員 1 人だ け では 、ハ ン ドブ ッ ク作 成時 にき め細 か くア ド バイ スを 与 える
こと が困 難 であ る と予 想さ れ た。 ま た、 担当 教員 はブ ラ ジル 文 化の 専門 家 では
ない ため 、ブ ラジ ル の言 語や 文 化に 精 通し た スタ ッフ が 必要 で あっ た 。そ こ で、
大学 院国 際 理解 教 育課 程の 1 年生 3 名に 授業 への 協力 を 依頼 し た 4 。こ の3 名 は
いず れも 現代 GP の ス タッ フと し て活 躍 して おり 、異 文化 理 解教 育 に関 する 造 詣
が深 い。 ま た1 名 は学 部時 代 にポ ル トガ ル語 を専 攻し て おり 、 ブラ ジル へ の渡
航経 験も あ る。 こ の3 名に は 、授 業 時に 同席 して 履修 学 生へ の アド バイ ス を行
って もら っ た他 、 授業 終了 後 の編 集 作業 でも 多大 な協 力 を得 た 。
( 3 ) 授業 の 実際 と ハン ド ブッ ク の作 成
教 員 によ る 講義
開 始か ら 3回 の 授業 では 、 主と し て教 員に よる 講義 形 式で 異 文化 理解 や 外国
人児 童生 徒 の現 状 に関 する 情 報提 供 を行 った 。講 義で は 、異 な る文 化を 有 する
人々 の相 互 理解 の 意義 を理 解 させ る と同 時に 、ハ ンド ブ ック 作 成の 基礎 と なる
知識 を学 生 間で 共 有し 、ハ ン ドブ ッ ク作 成へ の動 機付 け を高 め るこ とを 目 指し
た。
第 1回 目 の授 業 では 、ま ず文 化 につ い ての ブレ ーン ス トー ミ ング を行 い、「 学
習さ れる も の」 「 集団 によ っ て共 有 され てい るも の」 「 普段 意 識し ない も の」
「世 代か ら 世代 に 受け 継が れ るも の 」と い う 文化 の特 徴 を確 認 した 。また 、「見
える 文化 と 見え な い文 化」「大 文 字の 文 化(Culture)と 小 文字 の 文化(culture)」
「高 コン テ クス ト 文化 と低 コ ンテ ク スト 文化 」と いっ た 文化 の 分類 、ス テ レオ
タイ プや 自 文化 中 心主 義、 文 化相 対 主義 とい った 概念 も 紹介 し た。
第 2回 目 の授 業 では 、色 の 感覚 や 数の 数え 方な どの 身 近な 事 例を 通し て 「常
識」 を再 考 する 時 間を とっ た 。ま た カル チャ ーシ ョッ ク など 、 文化 適応 の 心理
的プ ロセ ス につ い ても 検討 し た。
第 3回 目 の授 業 では 、外 国 人児 童 生徒 の現 状を 取り 上 げ、 小 中学 校に 在 籍す
る児 童生 徒 の数 や 来日 の理 由、子 ども た ちの 文化 的衝 突 の事 例 など を紹 介 した 。
また これ ら の現 状 に対 して 、私 た ちが で きる こと は何 か を考 え る時 間を も った 。
異 文 化理 解 ハン ド ブッ ク の作 成
■ グ ル ープ 分 け
第 4回 目 の授 業 から は、 実 際に ハ ンド ブッ ク作 成作 業 をお こ なっ た。 作 成に
4
こ の 授 業 は 講 義 科 目 と し て 開 講 さ れ て い る た め 、大 学 の 制 度 と し て の テ ィ ー チ ン グ・ア シ ス
タ ン ト( TA)を 採 用 す る こ と は で き な い 。今 回 は 担 当 教 員 が 個 人 的 に 院 生 に 協 力 を 依 頼 し 、個
人研究費から謝金を支払うことで対応した。
先立 ち、 児 童向 け 異文 化理 解 ハン ド ブッ クに 必要 な事 項 とし て 「概 況( 日 本と
ブラ ジル の 地理 、歴史 、産業 等 )」、「 生活 」、「 学校 生 活 」、「 こと ばと 歌」
「遊 びと ス ポー ツ 」「 文化 ( 価値 観 、非 言語 行動 等) 」 の6 つ を設 定し た 。ま
た、 授業 時 に実 施 した アン ケ ート で 「日 本と ブラ ジル 以 外の 文 化も 紹介 し た方
がい い」 と 答え た 学生 が多 か った た め、 「他 の国 の文 化 」も 加 えた 。し た がっ
て計 7つ の グル ー プが 形成 さ れ、 学 生は この うち いず れ か1 つ のグ ルー プ に属
して 活動 す るこ と にな った 。
■ 資 料 の収 集 ・中 間 発表
グ ルー プ が編 成 され た後 は 、教 員 から 与え られ た大 き なテ ー マに 応じ 、 具体
的な 内容 を 学生 た ちが 決定 し 、資 料 収集 を行 った 。資 料 収集 時 には 、担 当 教員
や院 生が 持 ち寄 っ た書 籍や 図 書館 の 所蔵 図書 、イ ンタ ー ネッ ト 検索 を利 用 した
他、 日本 在 住の ブ ラジ ル人 に イン タ ビュ ーを 行っ たグ ル ープ も あっ た。
グ ルー プ によ る 資料 収集 の 後、 中 間発 表と して 、調 べ た事 柄 を教 員や 他 のグ
ルー プの 学 生に 報 告す る時 間 をも っ た。 この 段階 では 、 イン タ ーネ ット に 記載
され てい る 内容 を その まま コ ピー し て配 布し たり 、一 つ の資 料 だけ を根 拠 とし
て報 告し た りす る グル ープ も あっ た 。公 に発 表す る教 材 の作 成 では 著作 権 の問
題も あり 、 他人 の 意見 をそ の まま 利 用す るこ とは 決し て 許さ れ ない 。ま た 文化
の記 述に は 主観 が 含ま れる こ とも 多 く、 単一 の情 報か ら 文化 全 体を 推測 す るの
は非 常に 危 険で あ る。 その た め、 ( 1) 調べ た内 容を も とに 、 小学 生に も 分か
るよ うに 自 分の 言 葉で 説明 し 直す こ と、 (2 )単 一の 情 報源 に 頼ら ず、 必 ず複
数の 資料 に あた る こと 、を 再 度指 示 した 。
■ タ イ トル の 決定
グ ルー プ 活動 の 時点 では 、 この 授 業で 作成 する 教材 に は「 日 本人 児童 と ブラ
ジル 人児 童 のた め の異 文化 理 解ハ ン ドブ ック 」と いう 仮 題が つ けら れて い るだ
けで 、正 式 なタ イ トル は決 定 され て いな かっ た。 この 仮 題は 内 容を 不足 な く伝
える もの の 、あ ま りに 冗長 で 、児 童 向け 教材 のタ イト ル にふ さ わし いと は 言い
がた い。 そ こで 、 グル ープ ご とに タ イト ルの 案を 考え 、 各グ ル ープ があ げ た候
補の 中か ら 投票 で 最も 多く の 支持 を 得た 案を タイ トル と して 採 用す るこ と にし
た。 その 結 果、 教 材の タイ ト ルは 「 地球 のう らか らこ ん にち は 」に 決定 し 、仮
題を サブ タ イト ル とし てつ け るこ と にな った 。
■ 原 稿 執筆
中 間発 表 の後 、 再度 グル ー プ活 動 の時 間を とり 、原 稿 の執 筆 を行 った 。 今回
のハ ンド ブ ック は 児童 向け の ため 、 文字 情報 だけ では な く、 イ ラス トや 写 真等
の視 覚情 報 も用 い て 、読 んで 楽 しく 、分 かり やす い記 述 にな る よう 工夫 さ せた 。
また 、単 に 読ん で 理解 する だ けで は なく 、自 分た ちの 文 化や 習 慣を 振り 返 った
り、 文化 の 中の 多 様性 にも 目 を向 け させ たり でき るよ う な内 容 を考 えさ せ た。
執 筆は 全 てマ イ クロ ソフ ト ・ワ ー ドを 用い て行 った 。 冊子 全 体の 統一 感 を出
すた め、 余 白や 文 字の 大き さ 等を 決 めた 執筆 要項 を配 布 し、 そ れに 従っ て 執筆
する よう 指 示し た 。ま た、 書 籍や イ ンタ ーネ ット のホ ー ムペ ー ジに 掲載 さ れた
絵や 写真 を 転載 す るに は 、著 作 権者 の 承認 を 得る 必要 が ある 5 。そ のた め 、執 筆
要項 と同 時 に「 著 作権 者へ の 依頼 文 例」 を配 布し 、自 分 の担 当 箇所 に他 者 が作
成し た絵 や 写真 を 引用 する 場 合に は、必 ず著 作権 者の 承 認を 得 るこ とを 求 めた 。
■ 教 材 発表 ・ 原稿 提 出
グ ルー プ での 原 稿執 筆の 後 、最 終 発表 とし て、 出来 上 がっ た 原稿 を教 室 で発
表す る時 間 を持 っ た。 原稿 を より よ いも のに する には 、 でき る だけ 多く の 人の
コメ ント を もと に 修正 する こ とが 望 まし いが 、全 ての 学 生に 発 言を 求め る こと
は時 間的 な 制約 も あっ て難 し い。 ま た中 間発 表時 には 他 のグ ル ープ の発 表 を積
極的 に聞 か ない 学 生も 散見 さ れた の で、 発表 を聞 く側 も 自発 的 に参 加で き るよ
うな 工夫 が 必要 と 考え た。 そ こで 教 材発 表で は「 評価 シ ート 」 を配 布し 、 発表
者自 身に よ る自 己 評価 と学 生 間の 相 互評 価を 行っ た。 各 グル ー プが 提出 し た原
稿を 「よ く 準備 さ れて いる か 」「 形 式の 指示 を守 って い るか 」 「子 ども の 興味
や関 心を ひ く内 容 か」 「レ イ アウ ト に工 夫が ある か」 の 4点 に つい て5 段 階で
評価 する と とも に 、感 想や コ メン ト を自 由に 記述 して も らっ た 。こ の評 価 シー
トは 発表 終 了後 に 各グ ルー プ に渡 し 、原 稿修 正の 参考 と した 。
最 終授 業 時に は 、以 上の 過 程を 経 て作 成し た原 稿を 全 ての グ ルー プが 提 出し
た。 提出 さ れた 原 稿は 、在 ブ ラジ ル の翻 訳家 (有 資格 者 )に 依 頼し てポ ル トガ
ル 語 訳 を つ け た 他 、 授 業 担 当 教 員 と 参 加 院 生 が 協 力 し て 編 集 作 業 を 行 い 、 800
部を 印刷 し た。
( 4 ) 文化 理 解ハ ン ドブ ッ クの 概 要
上 記の よ うな 過 程を 経て 、A 4 版・全 80 ペ ージ の『 地球 の うら から こ んに ち
は― ブラ ジ ル人 児 童と 日本 人 児童 の ため の異 文化 理解 ハ ンド ブ ック ―』 ( 写真
1)が完 成 した 。こ の ハン ド ブッ クは 、「日 本と ブラ ジ ルど ん な国 ?( 概 況)」
5
一 般 に 、学 校 の 授 業 に お け る 配 布 資 料 の 場 合 は 、著 作 権 法 の 特 例 と し て 、著 作 権 者 の 承 認 な
し に 利 用 す る 事 が 認 め ら れ て い る 。し か し 今 回 作 成 し た 異 文 化 理 解 ハ ン ド ブ ッ ク の 場 合 は 、授
業で作成したものをさらに複製・配布するため、著作権者の承認が必要となる。
「学 校生 活」「 毎日 の 生活」「 言葉 と 歌」「 スポ ーツ と 遊び 」「 他 の国 の文 化」
の6 章 6 で構 成さ れ てい る。 各 章の 内 容は 表2 の通 りで あ る。
【写 真 1: 異 文 化 理 解 ハンドブック の表 紙 】
6
準 備 時 に は こ の 6 つ の テ ー マ 以 外 に「 文 化 」と い う グ ル ー プ も あ っ た が 、他 の グ ル ー プ と の
重 複 が 多 か っ た た め 、「 文 化 」 作 成 グ ル ー プ の 原 稿 は 他 の グ ル ー プ の 章 に 適 宜 分 散 し て 掲 載 し
た。
【表 2: 異 文 化 理 解 ハンドブック の構 成 】
章番号とタイ
トル
各ページのサブタイトル
はじめまして
日本とブラジルの地理
第1章:
日本とブラジ
ル
どんな国?
ブラジルと日本と日系ブラジル
人の歴史
国旗と国歌を比べてみよう!
ブラジルと日本の産業
年中行事・記念日
ブラジルと日本のお祭り
学校制度と通学方法
第2章:
学校生活
第3章:
毎日の生活
第4章:
言葉と歌
第5章:
スポーツと遊
び
教室をのぞいてみよう
ブラジルの小学校の時間割を見
てみよう
日本の小学校の時間割を見てみ
よう
休み時間・放課後
学校の決まり
ブラジルのお金と日本のお金
日本とブラジルの郵便
ごはんを食べよう!
おかしをつくろう
ブラジルの家
日本の住まい
ブラジルのトイレ
あいさつをしよう
ジェスチャー
歌おう遊ぼう(1)
歌おう遊ぼう(2)
早口言葉
世界的に有名なスポーツ
サッカーとフチボウ
道具のいらない遊び
占い
大韓民国
第6章:
他の国の文化
タイ王国
中華人民共和国
ペルー共和国
内容
日本語・ポルトガル語の挨拶
地図・首都・面積・人口密度・気温・
降水量
両国の歴史の概要・日系移民の歴史
両国の国旗・国歌
農業・工業
休日や記念日など
カーニバル・祇園祭
義務教育・長期休暇・通学方法・持ち
物
教室の様子・教科書
小学校5年生の時間割例
小学校4年生の時間割例
休み時間や放課後の過ごし方
校則の例
硬貨・紙幣の紹介
ポスト・郵便局員・切手
食事の様子、アイスクリームの食べ方
ブリガデイロ・お団子の作り方
都市部の住まい・アマゾン川流域の家
合掌造・沖縄の家・新潟の家
トイレの使い方
日常的な挨拶・数の数え方
ジェスチャーの比較
ネ コ に ぼ う を な げ た( ブ ラ ジ ル の 童 謡 )
かごめかごめ(日本の童謡)
ポルトガル語・日本語での早口言葉
柔道・バレーボール
ルールと有名な選手の紹介
おしくらまんじゅう・じん取りケンパ
四葉のクローバー占い・まつげの占い
人口・面積・首都・公用語・通貨・国
旗・挨拶
人口・面積・首都・公用語・通貨・国
旗・挨拶
人口・面積・首都・公用語・通貨・国
旗・挨拶
人口・面積・首都・公用語・通貨・国
旗・挨拶
各 項目 を それ ぞ れ見 開き 2 ペー ジ にま とめ 、見 開き の 左ペ ー ジに 日本 語 版、
右ペ ージ に ポル ト ガル 語版 が 掲載 さ れて いる 。そ のた め 、当 該 のペ ージ を あけ
ると 同一 内 容に 関 する 2言 語 の表 記 を見 比べ るこ とが で きる レ イア ウト に なっ
てい る( 写 真2 参 照) 。ま た 、全 て の漢 字に ルビ をつ け た他 、 イラ スト や 写真
など の視 覚 情報 も 多用 し、 子 ども た ちの 理解 を促 すよ う 工夫 し た。 また 、 いわ
ゆる 伝統 文 化よ り も生 活様 式 や人 々 の考 え方 とい った 毎 日の 暮 らし の中 の 文化
を重 視し 、 子ど も たち の生 活 実感 に 訴え る内 容に なる よ う努 力 した 。日 本 での
生活 が長 い ブラ ジ ル人 児童 の 中に は 、自 分の ルー ツで あ るブ ラ ジル 文化 や ポル
トガ ル語 を あま り よく 知ら な い子 ど もた ちも 少な くな い が、 『 異文 化理 解 ハン
ドブ ック 』 はそ の よう な子 ど もた ち の母 語・ 母文 化保 持 教育 に も役 立て る こと
がで きる と 考え ら れる 。
【写 真 2:ハンドブック の記 述 の一 例 ( 学 校 制 度 と通 学 方 法 )】
ま た『 異 文化 理 解ハ ンド ブ ック 』 では 「ブ ラジ ル文 化 」と 「 日本 文化 」 を比
較す る形 で 記述 し てい るが 、 実際 の 文化 には 地域 ・性 別 ・年 齢 等に よる さ まざ
まな バリ エ ーシ ョ ンが ある 。 ハン ド ブッ クの 記述 を唯 一 絶対 の 正解 と捉 え るの
では なく 、 「自 分 たち の文 化 」を 考 える 手が かり とし て もら う こと を期 待 し、
本文 各所 に 「あ な たの 地域 ( 家、 学 校) では どう です か ?」 と いっ た問 い かけ
を示 して い る。
( 5 ) おわ り に
今 回実 施 した 授 業で は、 「 ブラ ジ ル人 児童 と日 本人 児 童の た めの 異文 化 理解
ハン ドブ ッ ク」 の 作成 とい う 課題 を 通じ て、 子ど もた ち の相 互 理解 に寄 与 する
と同 時に 、 参加 学 生の 異文 化 理解 能 力の 涵養 を目 指し た 。ハ ン ドブ ック の 作成
とい う明 確 な目 標 の存 在は 、学 生 にと っ て有 効な 動機 付 けと な った よう で ある 。
教 員養 成 大学 と いっ ても 、本 授 業の 受 講生 は全 員学 芸 4課 程 に在 籍し て おり 、
今回 のハ ン ドブ ッ クの 主な 読 者と し て想 定し た小 学校 中 学年 程 度の 児童 と 実際
に触 れ合 っ た経 験 のあ る学 生 は少 な い。 いわ ば学 生は 、 教材 作 成を 通じ て 「子
ども 」と 「 ブラ ジ ル」 とい う 、二 つ の「 異文 化」 に触 れ たこ と にな る。 こ の授
業で の実 践 が学 生 たち の、 そ して 子 ども たち の異 文化 理 解の 一 助と なれ ば 幸い
であ る。
謝辞
こ の授 業 の企 画 ・運 営、 教 材出 版 にあ たっ ては 、日 本 語教 育 講座 の岡 田 安代
先生 に多 大 なご 援 助を いた だ いた 。授 業の 進 行に は 、本 文 中で も 言及 した 通 り、
国際 理解 教 育課 程 の院 生で あ る佐 方 貴文 さん 、木 村久 美 子さ ん 、内 田貴 子 さん
の協 力を 得 た。 ま たポ ルト ガ ル語 へ の翻 訳を お願 いし たMiliam Naomiさ ん 、提
出原 稿の 編 集作 業 を手 伝っ て くれ た 藤井 涼子 さん にも 非 常に 助 けら れた 。 ここ
に記 して 感 謝申 し 上げ ます 。