平成27年4月1日 地方税法第422条の3 雑感 山 浦 邦 博 かつてこの条文は地方税法第436条に置かれていて、業界では「ヨンサン ロク」などと呼び親しみあるものでした。今も所有権移転登記を依頼されると、 まずこの通知書か証明書を取得することから始めるのではないかと思います。 ご承知のとおり、登録免許税法第10条によれば、登記における課税標準た る不動産価額は登記時における不動産価額によるとされていますが、同法附則 第7条の規定により、当分の間は固定資産課税台帳の不動産価格を基礎として 算定した価額によるとされ現在に至っています。 これら条文に関連する地方税法第422条の3は、市町村長から登記所に対 する通知の条文であり、市町村長が不動産価格を決定または修正した場合の通 知が義務づけられている。しかし、この通知事務は紙ベースの時代にあっては 市町村にとって膨大な事務量であり、また、受入側の登記所にあっても情報の 管理と公開に問題を抱え実情にそぐわないとされてきたようです。 そこで、実務においては登記申請の要ある物件についてのみ通知することと し、市町村は登記申請予定者の申出に応じて通知書を交付していた。そして、 登記申請代理人の司法書士に対しては、登記申請の事実を確認するためその委 任状の提示(または写し提出)を求めていた。司法書士は代理委任状を得て業 務に入るわけであるが、不動産取引においては書類の取得が前後することがあ る。この委任状もその一つで登記申請時までには当然揃うのであるが取得のタ イミングがずれた場合は苦慮したと聞き及んでいます。 ところで、そもそも地方税法第422条の3の通知書は、市町村と登記所の 間の書類であり、登記の要ある申請人が使者となって橋渡しをしているにすぎ ないが、登記申請人は不動産価格の情報を得なければ申請書を作ることができ ないため、市町村から預かり登記所に届ける間にその情報を得ていることにな る。このことから、評価を証する書面は登記申請における法定の添付書類では なく、また通知書は常に登記所に保管されるべき書類なので、いかなる理由が あっても原本還付請求をすることはできない。 このように、利用者を介して必要な分だけ通知する方法は、発行者側・受入 者側・利用者側にとり好都合であるが、先述のとおり、登記申請代理人の司法 書士にとっては委任状の提示がネックとなっていた。 そんな折、登記所から市町村長に対する通知書交付依頼により、市町村長は 登記所に固定資産評価証明の通知を行うとする通達が発せられた(昭和42年 6月26日民事三発第676号通知)。 この方法は、登記申請の要ある者が登記所にその旨を申し出ることにより、 登記所は市町村長宛ての通知書交付依頼書を手渡し、市町村長は依頼書を持っ た使者に通知書を発行するというものであり、登記申請者は先ほどの橋渡しを 更に進めて双方の使者となるものである。そして、登記申請代理人の司法書士 からの申出にあっては、司法書士は登記申請代理を業としているのであるから、 申出の前提として当然登記申請の委任があるはずとして、登記申請の委任状を 提示させることなく市町村長宛ての通知書交付依頼書を託すというものである。 この通達による取扱いは、登記所と市町村の協議が整ったところから順次導 入するとされ、主な利用者である司法書士の意見も尊重されるなかで拡大して きている。 現在における、登記申請代理人に対する地方税法第422条の3通知の取扱 状況は、①昭和42年通達によるもの、②資格者を証する書面提示によるもの、 ③登記申請委任状提示によるものなど様々と思います。このうち①と②の取扱 いは、永年培ってきた信用に基づいて認められたものと考えます。したがって、 万が一にも目的外使用が発覚した場合は、直ちにこの取扱いは中止されるので はないかと思います。 かつて、隘路となっていた地方税法第422条の3の一括通知は、情報化が 進んだ今ではなんなく条文どおりの通知ができる状況にあるといわれます。 一括通知がされた場合、主な利用者である司法書士は登記所に赴いて膨大な 税務情報のなかから必要な情報を取出してもらい申請書を作ることになるでし ょう。この場合、登記所は個人情報の管理と公開の両責任者となり、これまで のように登記委任状の提示がなくても不動産価格を示してくれるかは分かりま せん。 繰り返しになりますが、現状の合理的な方法が今後とも維持されるよう、モ ラルを重んじて運用していきたいと思います。 おわりに、登記事務の情報化完成と平成17年の不動産登記法全面改正に端 を発した、地方税法第422条の3の電子通知化及び同法第382条の市町村 に対する通知の電子媒体化は、平成18年に指針が示され登記所と調整ができ た市町村から順次導入するとされました。その後目立った動きは見受けられま せんが、主な利用者として注視していきたいと思います。
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