恋愛・結婚・夫婦の根底にある罪

恋愛と結婚愛の人間像:
Part03 罪ある夫婦
作家作品研究(イギリス文学)A
鈴木繁夫
[名古屋大学大学院国際言語文化研究科・教授]
恋愛・結婚・夫婦
タイプ
実態
恋愛
大人になる必要
結婚
経済・宗教がから 愛と汚れ
む
夫婦
相互了解の難しさ 愛と罪
?
禁断の実
•主なる神は人に命じて言われた。「園のすべての
木から取って食べなさい。(17)ただし、善悪の知識
の木からは、決して食べてはならない。食べると必
ず死んでしまう。」
• 「創世記」2章16-17節
•蛇は女に言った。「決して死ぬことはない。それを
食べると、目が開け、神のように善悪を知るものと
なることを神はご存じなのだ。」
• 「創世記」3章4-5節
悪魔の誘惑(1):美しさをほめる
◆自分の知っている事実とは違う事実を相手に付
きつけ、真価を教える
「うるわしき創造主の、こよなくうるわしい似姿よ、
あなたさまにたまわった生きとし生けるものは
あなたに見とれ、神々しいうるわしさを
悦惚としてあがめまつる。あなたの美貌は
値があまねくたたえるべきもの。この荒涼たる
囲い地で、あなたの美しさの半分もわからぬ」
(新井明訳 9巻538-543)
•◆自分の知っている事実とは違う事実
を相手に付きつけ、真価を教える
悪魔の誘惑(2):向上心を引き出す
違う事実を付きつけ、事態の好転をほのめかす
◆
「正しくなければ神ではなく、恐れ、従うにおよばない。
死の恐れがあるとすれば、神への恐れは不必要。
ならばなにゆえ、善悪の知識は禁ぜられるのか?
知れたことよ。かれを拝するあなたがたを脅し,低め,
無知たらしめるがため。あなたらがその実を
味わうその日に、いま澄んで見えるようで
じつは曇っている目が開いて澄みきわまり、
神々に伍し、神々のごとくに善と悪とを
知るにいたることを、神は承知している。」
(新井明訳 9巻701-709行)
向上心を引き出す
誘惑の恋愛詩:その日をつかめ
男性・夫の優位
• 誘惑に負けた女性
• 「蛇は女に言った。「決して死
ぬことはない。 それを食べる
と、目が開け、神のように善悪
を知るものとなることを神はご
存じなのだ。」 女が見ると、そ
の木はいかにもおいしそうで、
目を引き付け、賢くなるように
唆していた。女は実を取って
食べ、一緒にいた男にも渡し
たので、彼も食べた。
• 二人の目は開け、自分たち
が裸であることを知り、二人は
いちじくの葉をつづり合わせ、
腰を覆うものとした。」
(「創世記」3章4-7節)
愛への決断
そなたと
ともに死のう、それが私の決意だ。
そなたなしでは、生きられない。ともに
交わした楽しい交わりと愛をすてて、どうして
この寂しい森にひとりで住めようか?
(新井明訳 9巻906-910行)
許しと和解
罪を
認めて悲しみ、ゆるしがえられるまでは
動くまいとする、その低き態度をアダムは
あわれんだ。かれの心はたちまちにしてなごむ。
………………………………………………………
だが立て。もう争いはやめ、互に貴めあうまい。
責めは、神の審判のみ座でじゅうぶんだ。
愛の務めに励み、相手の悲しみを分かちつつ
重荷を負いあおうではないか。
(新井明訳 10巻937-940,958-961行)
行動パタン:古典からキリスト教へ
1. 誤った判断 hamartia
2. 誤った選択
破局 catastrophe
3. 罰
4. 悔い改め
5. 許し
6. 和解
浄化
Catharsis
愛の基本2型
エロース(ギリシア・ローマの愛)
アガペー(ルターのキリスト教的愛)
自己中心の愛
(崇高な自己主張の形態)
非利己的な愛(「おのれの利を求め
ず」、惜しみなく自己を消費する)
自己のため善を欲求
自己を与える
対象の価値によって喚起
対象から独立し、悪人・善人に注がれ
る
対象の性質、美、価値に依存
自発的で、対象に誘因されない
向上し、救い獲得のための人間的努
力
神から降り来る力に動かされる
人間の方から神へと向かう道
神が人間へと来る道
代価要求する人間の功
無代価で、神の行い
人間的愛
神的愛
カリタス:キリスト教的愛の基本型
クピディタス
カリタス
地上の時間的なものへ向かう
永遠である神に向かう
偽りにして虚しい
真の憩いと満足が得られる
好みのものに執着
隣人へと転換する
「あなたはご白身のためにわれわれを造
り給うたのであるから、われわれの心は
あなたにおいて憩いを兄いだすまでは憩
いを得ない」(アウブスティヌス『告白』)
これ以後のスライドは授業と無関
係です
聖書の結婚観(1)
•男女の均一な創造
•神は言われた。「我々にかたどり、我々に似せて、
人を造ろう。そして海の魚、空の鳥、家畜、地の
獣、地を這うものすべてを支配させよう。」 神は
御自分にかたどって人を創造された。神にかた
どって創造された。男と女に創造された。 神は
彼らを祝福して言われた。「産めよ、増えよ、地
に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の
上を這う生き物をすべて支配せよ。」
• (「創世記」1章26-28節)