第 2 回長野ブラックホール天文教育研究会(銀中祭り)概要

第 2 回長野ブラックホール天文教育研究会(銀中祭り)概要
春の長野で「巨大ブラックホール」と「天文教育(普及)」をセットに考える研究会を開催します。
ブラックホールの研究者も、ブラックホールに興味がある天文教育者も共に、 ブラックホール天文研
究・教育の明日を、熱く語り合いましょう。
案内の WEB
http://www.phyas.aichi-edu.ac.jp/~takahasi/GCF2015/
日時: 5 月 30 日(土) 13:15 より 31 日(日) 12:00
場所: 長野工業高等専門学校図書館棟2F、第 2 ゼミ室
宿泊: 信州高山温泉郷 山田温泉平野屋 http://www.hiranoyaryokan.com/
(長野高専からバスで送迎します)。
目的:
2014 年に、銀河系中心にある巨大ブラックホール Sgr A*のすぐ近傍を、地球の 3 倍の質量をもつガ
ス雲 G2 が通過する予想がたてられ、そのとき、 銀河系中心で何が起きるのか、理論・観測から色々
行なわれてきた。ちょうど、新学習指導要領では、中学校理科の第 2 分野で「銀河」と 「銀河系」が
導入された時期でもある。しかし、これまで天文教育の中心は太陽系(惑星系)までであり、銀河を素材
の教育プログラムは、まだまだ例が少ない。また銀河系中心は可視光で見通すことができないため、学
校現場では実感を得にくいという側面もある。
そこで、銀河中心に「巨大ブラックホールが実在する」直接的な証拠を得るための天文学的知見や 研
究手法を、学校現場での科学リテラシー教育に役立て、宇宙に対する感性向上に活用させるプログ ラム
としてコンテンツ化することを最終目標に、本研究会を開催する。同時に、研究者と教育者を連携させ
る枠組みをつくるこ と によって、これまでに無い新しいスタイルの科学教育の創造を目指す。
第 1 回目の研究会(2014 年 11 月)では、銀河系中心のレビュー、電波 VLBI の観測原理とブラック
ホール研究、X 線による観測法のレビュー、ブラックホール探査の理論的取り組みなどのレビューと共
に、ブラックホール物理に関する各自の研究紹介、及び、高校や大学の教育現場からの高校教育・大学
教育での天文学の状況などの報告があった。また、これらを踏まえて総合討論が行なわれた。
なお、第 1 回長野ブラックホール天文教育研究会の WEB 集録は下記にあります。
http://www.phyas.aichi-edu.ac.jp/~takahasi/GCF2014/index.html
今回の第 2 回目の研究会では、ブラックホール物理に限らず、銀河物理などの広い観点のレビューや
教育現場の報告を行ないつつ、高校や大学の教育現場で使える教材製作の可能性などを議論しつつ、 研
究者と教育関係者のつながりを構築することを目的とする。
プログラム概要:
・初日(午後): 銀河系、ブラックホール、SgrA*に関する研究報告、話題提供
・宿泊:山田温泉平野屋にて、ミーティング、天候により観望会を開催予定。
・2 日目(午前):「ブラックホール、SgrA*と天文教育」をテーマの全体ディスカッ ション
*本研究会は、科研費基盤研究 C「銀河系中心天体 Sgr A*事象を使った教育活動とその評価」
(代表:大西浩次)の助成を受けています。
第 2 回長野ブラックホール天文教育研究会(銀中祭り)プログラム
(数字は、講演時間(分)+質疑応答時間(分)です。時間厳守でお願いします。)
初日(13:15 - 17:15)
イントロ(40 分)
・大西浩次(長野高専)
:研究会の趣旨(10)
・嶺重 慎(京都大)
:前回の研究系のまとめ(10+5)
・篠原秀雄(草加東高)
:前回の教育系のまとめ(10+5)
第1部:ブラックホール研究最前線(185 分+15 分休憩)
・田村隆幸(JAXA/ISAS):衛星観測データを用いた宇宙科学(30+10)
・秦和弘・秋山和徳(NAOJ):VLBI で探る超巨大ブラックホール探査の最前線(30+10)
〔休憩 15 分〕
・亀谷 收(NAOJ 水沢) :①水沢での SgrA*モニター観測(10)
②ブラックホールと天の川銀河のアウトリーチ活動(10+5)
・三好 真(国立天文台) :銀河 NGC4258 におけるブラックホール近傍のケプラー運動(15+5)
・高橋真聡(愛教大)
:ブラックホール探査に向けての理論的取り組み(仮)
(20+5)
・高橋労太(苫小牧高専) :ブラックホールの時空での光の振る舞い(20+5)
・斉藤秀樹(長野市博物館):博物館での天文教育(ショートコメント 5+5)
2日目(9:00 - 12:00)
第 2 部:ブラックホールの学習教材と実践(120 分+15 分休憩)
・波田野聡美(Asterisk) :映像で見せるブラックホール(20+5)
・嶺重 慎(京都大)
:ブラックホールシミュレーション事情とプラネ番組(20+5)
・大羽 徹(名大附属中高):相対論・宇宙論の授業実践と生徒研究員制度の活動(15+5)
・竹浦史朗(交野市倉治小):小・中学校の天文教育(ショートコメント 5+5)
・高橋 淳(水海道一高) :さわるブラックホールが欲しい(15+5)
・孝森洋介(和歌山高専) :重力レンズの製作(15+5)
〔休憩 15 分〕
総合討論(45 分) モデレーター:嶺重 慎
具体的な討議内容は、
「銀河中心およびブラックホールを素材の教材開発」
ブラックホールにまつわる動的現象(恒星やガスの運動、ジェット噴出、マイクロレンズなど)の
多波長観測データとその可視化(動画化)が中心テーマとなろう。
第 2 回長野ブラックホール天文教育研究会(銀中祭り)講演アブストラクト
イントロ(45 分)
・大西浩次(長野高専)
:研究会の趣旨
・嶺重 慎(京都大)
:前回の研究系のまとめ
第 1 回研究会の中から研究に関する報告をまとめる。内容は、SgrA*の赤外線観測、近傍の巨大
ブラックホールの VLBI(超長基線電波干渉計)観測、重力マイクロレンズ現象など
・篠原秀雄(草加東高)
:前回の教育系のまとめ
第 1 回研究会の中から教育に関する報告をまとめる。内容は、学習指導要領と教科書にみる銀河
系、ブラックホールを素材にした高校物理の実践例の紹介など
第1部:ブラックホール研究最前線
・田村隆幸(JAXA/ISAS):衛星観測データを用いた宇宙科学
科学衛星データを用いた宇宙科学のオンライン教材を紹介する。
http://www.isas.jaxa.jp/home/ttamura/classroom/
これは,2010 年度までに,研究者と大学と高校教員の協力で作られた。実際に研究者が用いてい
るデータを解析し、創造と発見の喜びを体験できる。主に X 線天文学のデータを用いる。「銀河
系中心部に潜む巨大ブラックホールを暴け」を含め,8つの課題を提供している。
・秦和弘・秋山和徳(NAOJ):VLBI で探る超巨大ブラックホール探査の最前線
超長基線電波干渉計(VLBI)は、既存の観測装置を圧倒する高い空間分解能(視力~数 100 万)を
有し、ブラックホール天体の詳細な構造を調べられる重要な観測装置として活躍してきた。さらに
近年の観測技術の発達に伴い、地球から最も近い超巨大ブラックホール天体などで VLBI によるブ
ラックホール自身の直接撮像の実現が今後数年以内に期待されている。本講演では VLBI による超
巨大ブラックホール探査に関する近年の成果や将来展望を中心に紹介し話題提供を行いたい。
・亀谷 收(NAOJ 水沢) :①水沢での SgrA*モニター観測
②ブラックホールと天の川銀河のアウトリーチ活動
国立天文台水沢 VLBI 観測所で 1 年半に渡って実施した 22GHz 帯 SgrA*モニター観測の様子とア
ウトリーチ活動の様子について述べる。特に国立天文台水沢地区に隣接する奥州宇宙遊学館を活
動拠点の一つとする日本宇宙少年団水沢 Z 分団の定例活動で、ブラックホールの模型作りと天の
川銀河の模型作りを行ったので、詳細を解説する。
・三好 真(国立天文台) :銀河 NGC4258 におけるブラックホール近傍のケプラー運動
干渉計の基本(復習)や PV 図など、研究で多様される概念や図の解説をします。
・高橋真聡(愛教大)
:ブラックホール探査に向けての理論的取り組み(仮)
・高橋労太(苫小牧高専) :ブラックホールの時空での光の振る舞い
ブラックホール周囲での光の振る舞いに関する基本的なことがらについて講演する。特に、光の
性質とブラックホールの定義、ブラックホール・シャドウなどの基本的な内容について話す。最
新の研究トッピクスも紹介する。
・斉藤秀樹(長野市博物館):博物館での天文教育(ショートコメント)
主にボランティアの人と行なう教育について
第 2 部:ブラックホールの学習教材と実践(125 分+15 分休憩)
・波田野聡美(Asterisk):映像で見せるブラックホール
見ることができない「ブラックホール」を正しく理解させるには、科学的知見に基づいた映像表
現が効果的である。いくつかの事例を紹介し、こうした映像教材の可能性を探る。
・嶺重 慎(京都大)
:ブラックホールシミュレーション事情とプラネ番組
①スパコンを使ってブラックホールに流れ込むガス(降着流)や、噴き出すガス(アウトフロー)、
その放射特性や周囲への影響が明らかにされつつある。その現状をレポートする。
②昨年冬、つくばエキスポセンター製作のプラネ番組(
「ブラックホール~銀河中心にひそむ謎」
)
に監修として携わった。その経験から、プラネ番組の可能性と今後をコメントする。
・大羽 徹(名大附属中高):相対論・宇宙論の授業実践と生徒研究員制度の活動
学校設定科目:サイエンス・リテラシープロジェクト II(SLPII)、学びの杜では、高大連携型に
よる授業を行っている。平成 25 年度から相対論、宇宙論に関する内容を扱っており、授業実践を
報告する。また、生徒研究員制度:相対論・宇宙論プロジェクトの活動について報告する。
・竹浦史朗(交野市倉治小):小・中学校の天文教育(ショートコメント)
授業と星を観る会について
・高橋 淳(水海道一高) :さわるブラックホールが欲しい
ものの理解には、視覚のみならず五感で感じることが有効である。またその手法は、障害の有無
を問わず多くの人の間で理解を共有することにつながる。障害者とともに楽しむ宇宙理解の教育
プログラムの実践例から、ブラックホールの「ハンズオン化」を提言したい。
・孝森洋介(和歌山高専) :重力レンズの製作
重力レンズと同様の効果を持つレンズを作成するという話を高専でもちょっとやってみたいと考
えている。和歌山高専には3D プリンタがあってそれでレンズの型を作ってみたいなと考えてい
ます。3D プリンタ用の設計図作成は高専の学生はできるらしいので設計図の作成からやっても
らってと考えています。参加者の皆様のアドバイスをいただけたらと思います。
総合討論 モデレーター:嶺重 慎