[問 2.7] [問 2.8] [問 3.2]上記の一般座標 X, Y, Z, r, θ, φ26 を図示せよ。また (3.36) を示せ。 平成 年度 解析力学 講義ノート [7](担当:井元信之) 平成 27 年度 解析力学 講義ノート [8](担当:井元信之) 解答: 2015 年 6 月 4 日 前回の演習問題の答 前回の演習問題の答 解析力学) x y z [問 2.2]球座標において運動エネルギーが x y z m! T = " φ x˙ 2 + y˙ 2 + z˙ 2 = 2 で与えられることを示せ。 φ θ Z 解:球座標への変換 (2.46) 式より 2014 年 6 月 12 " m! 2 ˙ 2 + (rφ) ˙ 2 sin2 θ θ r˙ +ψ(rθ) 2 ψ x Ay z 氏名 r "! x˙ + y˙ + z˙ = 関して、(3.55) を導け。 2 2 2 + + ˙ cos θ cos φ − φr ˙ sin θ sin φ x˙ = r˙ sin θ cos φ + θr "! ˙ ˙ sin θ cos φ y˙ = r˙ sin θ sin φ + θr cos θ sin φ + φr ˙ sin θ $! θ − θr z˙ = r˙ cos ξφ η θ ζ ψ !"#$%& φ θ ψ 2 r˙ sin θ cos φ + θ˙2 r2 cosB θ cos2 φ + φ˙ 2 r2 sin2 θ sin2 φ 2 2 2 (4) ζ 軸を θ だけ倒す。 ˙ cos θ cos φ − 2r˙xsin θycos φz φr ˙ sin θ sin φ − 2θr ˙ cos θ cos φ φr ˙ sin θ sin φ 2r˙ sin θ cos φ θr !! r˙ 2 sin2 θ sin2 φ + θ˙2 r2 cos2 θ sin2 φ + φ˙ 2 r2 sin2 θ cos2 φ ˙ cos θ sin φ + 2r˙ sin θ sin φ φr ˙ sin θ cos φ + 2θr ˙ cos θ sin φ φr ˙ sin θ cos φ 2r˙ sin θ sin φ θr Y x y z x y z = r˙ sin θ + r θ˙ cos θ + r φ˙ sin θ + 2rr˙ θ˙ sin θ cos θ cos φ + 2rr˙ θ˙ sin θ cos θ sin φ 演習問題 2013.6.13 解析力学) X( 軸を倒す方角 + r˙ cos θ +解析力学) r θ˙ (3) sin θζ − 2rr˙ θ˙ sin θ cos θ φ を決める。 演習問題 ( 2013.6.13 x y z #! ˙ ˙ 学籍番号 x y z = r˙ + θ r + φ r sin θ 氏名 [問 2.3]球面振り子のラグランジアンを θ と φ の関数として書き、ラグランジュの運動方程式を書き下せ。 析力学) まずξ, η, ζ を x, y, z 方向に合わせる。 学籍番号 氏名 解: Figure 1: 2 原子分子の一般座標 + + ξ, 2η,θ −ζ を x, θy, ξ θr η方向に合わせる。 ζ ˙z sin r˙ 2 cos2 θ +まず θ˙2 r2 sin 2r˙ cos !!θ 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 2 問 3.3: 天井走行クレーンに関して、m (3.55) を導け。 m L = θ˙ # + 演習問題(2013.6.13 解析力学) 2 2 φ˙ 2 #2 sin2 θ − mg# cos θ 氏名 学籍番号 氏名 いま GA の長さを rA 、GB の長さを rB (すなわち2rA + rB =2r )とすると、球座標の定義から xA − X = rA sin θ cos φ , y − Y = r sin θ sin φ , z − X = r cos θ 問 3.3: 天井走行クレーンに関して、(3.55) を導け。 A A A A ∂L ∂L = m#2 θ˙ , = m#2 φ˙ 2 sin θ cos θ + mg# sin θ xB − X = −rB sin θ cos φ∂ θ ,˙ yB − Y = −r∂θ zB − X = −rB cos θ B sin θ sin φ , (6) (7) である。これと (3.34) 式(つまり G は A と B を mB:mA に内分する点であること)を連立させ、ただちに d # ∂L $ ∂L g ¨ ˙2 − xB = 0 より sin θ B Aθ = φ sin θ cos θ + 問 3.3: 天井走行クレーンに関して、 を導け。 xA = X +⇒m r sin θ cos −m r sin θ cos φ ˙ φ , (3.55) M dt M ∂θ = X # ∂ θ m m して、(3.55) を導け。 yA = Y + zA = Z + を得る。これを T = に代入して答を得る。 B r sin θ sin φ , M mB r cos θ M , yB = Y − A r sin θ sin φ M mA r cos θ M ∂L 2 ∂L zB =2Z˙ − = m# φ sin θ , ∂ φ˙& % ∂φ =0 & mA % 2 mB 2 2 2 2 x˙ A + y˙ A + z˙A + x˙ 2B + y˙ B + z˙B 2 % & 2 ⇒ [問 3.3]天井走行クレーンに関して、(3.55) を導け。 d dt ∂L ∂ φ˙ − ∂L d ˙ = 0 より (φ sin2 θ) = 0 ∂φ dt 2 問 3.2: 2 原子分子において、図を描いて X, Y, Z, r, θ, φ を図示せよ。 、図を描いて X, Y, Z, r, θ, φ を図示せよ。 (8) 方程式を書き下すと、 むか含まないかの違いはあるものの)これまでのラグランジュの運動方程式がそのまま使えることがわ g 1 θ¨ + かる。 " sin θ = − y¨0 cos θ " (3.55) •となる。ここまでは近似なく天井走行クレーンを表している。 天井走行クレーン ここで微小振動 θ " 1 かつ支点の動き y0 が正弦的すなわち y3.1 = A cos(ωt) とする。また振り子の固 振り子の支点が天井を走行するクレーンは実際によく用いられる。図 のように支点の位置 y0 が天井 0 (t) ! に据え付けられたレールに沿って y0 (t) という一次元運動をするとしよう。 有振動を ω0 ≡ g/" とすると、 (3.55) は 2 ! Aω cos(ωt) θ¨ + ω02 θ #= " # "$#! ! (3.56) !!!!ℓ という強制振動の微分方程式となり、これは強制振動の振動数 ω で振れる解となるが、ω0 から離れてい " ればその振幅は小さい。しかし ω = ω0 の共振条件に近ければ、振幅は増幅される。すなわち天井走行ク xz レーンにおいて ω $ ω0 の支点往復運転は危険であり、避けなければならない7 。 図 3.1: 天井走行クレーン [問 3.3] (3.55) を導け。 図より 3.2.2 x = " cos θ , パラメトリック励振 y = y0 (t) + " sin θ (3.51) したがって 【ブランコ漕ぎから分周回路、波長可変レーザー、量子情報のエンタングルメント発生まで】 x˙ = −"θ˙ sin θ , y˙ = y˙ 0 (t) + "θ˙ cos θ (3.52) したがって運動エネルギーは T = m 2 !"#$%&!! m ! $ m (x˙ + y˙ 2 ) = "2 θ˙2 + m"θ˙y˙ 0 cos θ + y˙ 02 2 2 2 (3.53) !!!!ℓ となり、位置エネルギーは U = −mg" cos θ だからラグランジアンは L= m 2 ˙2 m " θ + m"θ˙y˙ 0 cos θ + y˙ 02 + mg" cos θ " 2 2 (3.54) # 3.2. 時間を含む扱い 図 3.2: 支点が上下に動く振り子。 43 となって、確かに T も L も y0 (t) を通じて t に陽に依存している。しかし構わず使ってよいので、運動 図 3.2 のように、支点が上下に動く単振り子を考える。たとえばブランコを漕ぐとき、ブランコが前に振れ 方程式を書き下すと、 g 1 るときも後ろに振れるときも同じように膝の屈伸運動を行う。つまり膝の屈伸の振動数を 2ω0 とするとき、ブ θ¨ + sin θ = − y¨0 cos θ (3.55) " " ランコの揺れの振動数は ω0 である。このように入力の振動数を半分(または整数分の1)にして出力するこ となる。ここまでは近似なく天井走行クレーンを表している。 とを「分周」という。8 ここで微小振動 θ " 1 かつ支点の動き y0 が正弦的すなわち y0 (t) = A cos(ωt) とする。また振り子の固 ブランコを特徴付けるのは長さ " と支点の位置である。これらのパラメーターを 2ω0 で変調するとブランコ ! 有振動を ω0 ≡ g/" とすると、(3.55) は の振幅は増幅される — 励振される。このような励振をパラメトリック励振といい、電気回路では分周回路と Aω 2 θ¨ + ω02 θ = cos(ωt) (3.56) して、レーザー物理ではパラメトリック発振器として、量子情報ではエンタングル光子対の発生方法として用 " いられる。図 3.2 はその基本となるモデルである。 という強制振動の微分方程式となり、これは強制振動の振動数 ω で振れる解となるが、ω0 から離れてい いま z 軸を下向きにとり、支点の位置を zp とすると、振れ角が θ のときの質点 m の y 座標と z 座標は、 ればその振幅は小さい。しかし ω = ω0 の共振条件に近ければ、振幅は増幅される。すなわち天井走行ク 7 レーンにおいて ω $ ω0 の支点往復運転は危険であり、避けなければならない 。 y = " sin θ , z = " cos θ − z p [問 3.3] (3.55) を導け。 ⇒ y˙ = "θ˙ cos θ , z˙ = −"θ˙ sin θ − z˙p 7 ビルの建設現場では支点位置可変なクレーンが使われる。その運転の難しさが想像できる。 8 正確には、ブランコの膝の屈伸は重心の位置の変調であり、! 3.2.2支点の位置の変調で話を進める。 パラメトリック励振 (3.57) (3.58) を変調している。しかし効果としては同様なので、ここでは簡単のため 【ブランコ漕ぎから分周回路、波長可変レーザー、量子情報のエンタングルメント発生まで】 $ !"#$%&!!! !!!!ℓ の振幅は増幅される — 励振される。このような励振をパラメトリック励振といい、電気回路では分周回路と して、レーザー物理ではパラメトリック発振器として、量子情報ではエンタングル光子対の発生方法として用 44 第 3 章 ラグランジュ形式の力学 — 一般編 — いられる。図 3.2 はその基本となるモデルである。 3.2.2 パラメトリック励振 いま z 軸を下向きにとり、支点の位置を zp とすると、振れ角が θ のときの質点 m の y 座標と z 座標は、 【ブランコ漕ぎから分周回路、波長可変レーザー、量子情報のエンタングルメント発生まで】 y = " sin θ , z = " cos θ − zp (3.57) 第 3 章 ラグランジュ形式の力学 — 一般編 — ⇒ !"#$%&!! y˙ = "θ˙ cos θ ,! z˙ = −"$θ˙ sin θ − z˙p (3.58) !" $ # " # " # 2 2 3.2.2 パラメトリック励振 m m 2 ˙2 !!!!ℓ ⇒ T = "θ˙ cos θ + −"θ˙ sin θ − z˙p = " θ + 2"θ˙z˙p sin θ + z˙p2 (運動エネルギー) (3.59) 2 2 【ブランコ漕ぎから分周回路、波長可変レーザー、量子情報のエンタングルメント発生まで】 U = −mgz = −mg (" cos θ − zp ) (位置エネルギー) (3.60) " # " m 2 ˙2 ⇒ ラグランジアン L = " θ +# 2"θ˙z˙p sin θ + z˙p2 + mg (" cos θ − zp ) (3.61) 2 !"#$%&!! ! $ ∂L d ∂L ⇒ = m"2 θ˙ + m"z˙p sin θ ⇒ = m"2 θ¨ + m"¨ zp sin θ + m"z˙p θ˙ cos θ (3.62) dt!!!!ℓ ∂ θ˙ ∂ θ˙ 図 3.2: 支点が上下に動く振り子。 44 ∂L = m"z˙p θ˙ cos θ − mg" sin θ (3.63) ∂θ 図 3.2 のように、支点が上下に動く単振り子を考える。たとえばブランコを漕ぐとき、ブランコが前に振れ % " & 1 g るときも後ろに振れるときも同じように膝の屈伸運動を行う。つまり膝の屈伸の振動数を 2ω0 とするとき、ブ ⇒ m"2 θ¨ + m"¨ zp sin θ + mg" sin θ = 0 ⇒ # θ¨ + z¨p + sin θ = 0 (運動方程式) (3.64) " " ランコの揺れの振動数は ω0 である。このように入力の振動数を半分(または整数分の1)にして出力するこ 8 とを「分周」という。 ここで、支点の位置 zp を正弦的に zp = a sin(ωt) で振る。微小振動 θ # 1 を仮定すると、(3.64) 式は 図 3.2: 支点が上下に動く振り子。 ' ( ブランコを特徴付けるのは長さ " と支点の位置である。これらのパラメーターを 2ω0 で変調するとブランコ % &2 a ω θ¨ + ω02 1 − sin(ωt) θ = 0 (3.65) — 励振される。このような励振をパラメトリック励振といい、電気回路では分周回路と 図の振幅は増幅される 3.2 のように、支点が上下に動く単振り子を考える。たとえばブランコを漕ぐとき、ブランコが前に振れ " ω0 して、レーザー物理ではパラメトリック発振器として、量子情報ではエンタングル光子対の発生方法として用 るときも後ろに振れるときも同じように膝の屈伸運動を行う。つまり膝の屈伸の振動数を 2ω0 とするとき、ブ いられる。図 3.2 はその基本となるモデルである。 ランコの揺れの振動数は ω0 である。このように入力の振動数を半分(または整数分の1)にして出力するこ いま z 軸を下向きにとり、支点の位置を zp とすると、振れ角が θ のときの質点 m の y 座標と z 座標は、 8 8 正確には、ブランコの膝の屈伸は重心の位置の変調であり、 ! を変調している。しかし効果としては同様なので、ここでは簡単のため とを「分周」という。 支点の位置の変調で話を進める。 ブランコを特徴付けるのは長さ " と支点の位置である。これらのパラメーターを 2ω0 で変調するとブランコ y = " sin θ , z = " cos θ − zp (3.57) の振幅は増幅される — 励振される。このような励振をパラメトリック励振といい、電気回路では分周回路と ⇒ y˙ = "θ˙ cos θ , z˙ = −"θ˙ sin θ − z˙p (3.58) して、レーザー物理ではパラメトリック発振器として、量子情報ではエンタングル光子対の発生方法として用 !" $ # " # " # 2 2 m m 2 ˙2 ⇒ T = "θ˙ cos θ + −"θ˙ sin θ − z˙p = " θ + 2"θ˙z˙p sin θ + z˙p2 (運動エネルギー) (3.59) いられる。図 3.22はその基本となるモデルである。 2 いま z 軸を下向きにとり、支点の位置を θ のときの質点 m の y 座標と z 座標は、 p とすると、振れ角が U = −mgz =z−mg (" cos θ − zp ) (位置エネルギー) (3.60) " # m 2 ˙2 ⇒ ラグランジアン y L==" sin θ", θ z+= 2""θ˙zcos ˙p sin θ +z z˙p2 + mg (" cos θ − zp ) (3.61) θ− (3.57) p 2 ∂L d ∂L = m"2 θ˙ + m"z˙p sin θ˙ ⇒ = m"2 θ¨ + m"¨ zp sin θ + m"z˙p θ˙ cos θ (3.62) ⇒ y˙ = "θ cos θ , dtz˙∂= (3.58) ∂ θ˙ θ˙ −"θ˙ sin θ − z˙p !" $ # " # " # 2 2 ∂L m m ˙ ˙2 mg" T = "θ˙ cos θ + −"θ˙ sin θ −∂θz˙p = m"=z˙p θ cos"θ2 θ− + 2"sin θ˙z˙pθsin θ + z˙p2 (運動エネルギー)(3.63) (3.59) 2 2 % & 1 g =θ−mgz (3.60) ⇒ m"2 θ¨ + m"¨ zpUsin + mg"= sin−mg θ = 0(" cos ⇒ θ −θ¨ z+p ) (位置エネルギー) z¨p + sin θ = 0 (運動方程式) (3.64) " " ⇒ ⇒ # m " 2 ˙2 " θ + 2"θ˙z˙p sin θ + z˙p2 + mg (" cos θ − zp ) (3.61) 2 sin(ωt) で振る。微小振動 θ # 1 を仮定すると、(3.64) 式は ここで、支点の位置 zp を正弦的に zp = a ∂L d ∂L ⇒ = m"2 θ˙ + m"z˙p sin θ ' ⇒ % &2 = m"2(θ¨ + m"¨ zp sin θ + m"z˙p θ˙ cos θ (3.62) a ω ∂ θ˙ ˙ dt 2 ∂θ ¨ θ + ω0 1 − sin(ωt) θ = 0 (3.65) " ω0 ∂L = m"z˙p θ˙ cos θ − mg" sin θ (3.63) ∂θ % & 1 g ⇒ m"2 θ¨ + m"¨ zp sin θ + mg" sin θ = 0 ⇒ θ¨ + z¨p + sin θ = 0 (運動方程式) (3.64) " " 8 正確には、ブランコの膝の屈伸は重心の位置の変調であり、! を変調している。しかし効果としては同様なので、ここでは簡単のため ⇒ ラグランジアン L = 支点の位置の変調で話を進める。 ここで、支点の位置 zp を正弦的に zp = a sin(ωt) で振る。微小振動 θ # 1 を仮定すると、(3.64) 式は ' ( % &2 a ω 2 ¨ θ + ω0 1 − sin(ωt) θ = 0 (3.65) 3.2. 時間を含む扱い 45 " ω0 ! ただし ω0 は支点を変調しないときの単振り子の角振動数で ω0 ≡ g! である。最終的には 2 周期ごとの分周 " #2 を想定し ω = 2ω0 の場合を扱うが、まず一般の ω で話を進める。 a! ωω0 = α とおくと、(3.65) 式は 8 正確には、ブランコの膝の屈伸は重心の位置の変調であり、! 支点の位置の変調で話を進める。 を変調している。しかし効果としては同様なので、ここでは簡単のため θ¨ + ω02 [1 − α sin(ωt)] θ = 0 (3.66) となる。これをマシュー(Mathiew)の微分方程式という。いま、これを θ とその時間変化 v ≡ θ˙ に対する !g である。最終的には 2 周期ごとの分周 "! #2 を想定し ω = 2ω0 の場合を扱うが、まず一般の ω で話を進める。 a! ωω0 = α とおくと、(3.65) 式は ただし ω0 は支点を変調しないときの単振り子の角振動数で ω0 ≡ 3.2. 時間を含む扱い 45 θ¨ + ω02 [1 − α sin(ωt)] θ = 0 (3.66) ! ただし ω0 は支点を変調しないときの単振り子の角振動数で ω0 ≡ g! である。最終的には 2 周期ごとの分周 " #2 θ とその時間変化 v ≡ θ˙ に対する となる。これをマシュー(Mathiew)の微分方程式という。いま、これを を想定し ω = 2ω0 の場合を扱うが、まず一般の ω で話を進める。 a! ωω0 = α とおくと、(3.65) 式は ˙θ = v (3.67) θ¨ + ω02 [1 − α sin(ωt)] θ = 0 (3.66) v˙ = −ω02 [1 − α sin(ωt)] θ となる。これをマシュー(Mathiew)の微分方程式という。いま、これを θ とその時間変化 v ≡ θ˙ に対する という連立微分方程式に分解する。これを定数変化法で解くため、まず α = 0 のときの解を求めると、振幅 A θ˙ = v と位相 φ の二つの定数を用いて (3.67) 2 = −ω A cos(ω t + φ) vθ˙ = 0 [1 −0 α sin(ωt)] θ (3.68) v = −ω0 A sin(ω0 t + φ) という連立微分方程式に分解する。これを定数変化法で解くため、まず α = 0 のときの解を求めると、振幅 A となる。次に α #= 0 の場合、振幅 A や位相 φ も時間的に変化する(ただし振動数 ω や ω0 の振動に比べてゆっ と位相 φ の二つの定数を用いて くり)と考える。その上で (3.68) 式を (3.67) (3.67) 上式 θ˙ = v から θ =式に入れると、まず A cos(ω0 t + φ) (3.68) v = −ω0 A sin(ω0 t + φ) ˙ sin(ω0 t + φ) = −ω0 A sin(ω0 t + φ) A˙ cos(ω0 t + φ) − A(ω0 + φ) (3.69) となる。次に α #= 0 の場合、振幅 A や位相 φ も時間的に変化する(ただし振動数 ω や ω0 の振動に比べてゆっ ˙ くり)と考える。その上で (3.68) ⇒式をA˙(3.67) cos(ω式に入れると、まず + φ) 上式 = 0 θ˙ = v から 0 t + φ) − Aφ sin(ω0 t(3.67) (3.67) 下式から ˙ sin(ω0 t + φ) = −ω0 A sin(ω0 t + φ) A˙ cos(ω0 t + φ) − A(ω0 + φ) 2 ˙ 0cos(ω −ω0 A˙ sin(ω0 t + φ) − ω + φ) = −ω [1φ) −= α sin(ωt)] A cos(ω0 t + φ) ⇒0 A(ω A˙0cos(ω t + φ)0 t−+Aφ) φ˙ sin(ω 0 0 t0+ (3.67) 下式から ⇒ A˙ sin(ω0 t + φ) + Aφ˙ cos(ω0 t + φ) = −ω0 Aα sin(ωt) cos(ω0 t + φ) 2 ˙ −ω0式を連立させ、 A˙ sin(ω0 t + φ) −A˙ωと 0 A(ω 0 + φ) cos(ω0 t + φ) = −ω0 [1 − α sin(ωt)] A cos(ω0 t + φ) (3.70) 式と (3.72) φ˙ を分離した式にすると cos(ω0 t + φ) ⇒ A˙ sin(ω0 tA˙+=φ)−+ω20AAα φ˙ cos(ω φ) 2(ω = −ω sin(ωt) φ)sin(ωt) 0 t +sin 0 Aα 0t + ω0 φ˙˙ と =− 2 α sin(ωt) [1 + cos 2(ω0 t + φ)] (3.70) 式と (3.72) 式を連立させ、A φ˙ を分離した式にすると となる。 A˙ = − ω20 Aα sin(ωt) sin 2(ω0 t + φ) φ˙ = − ω20 α sin(ωt) [1 + cos 2(ω0 t + φ)] ここでいよいよ ω ≡ 2ω0 とおくと、(3.73) 式は となる。 A˙ = ω0 α 4 A [cos(4ω0 t) − cos(2φ)] φ˙ = ω04α(3.73) [− sin(2ω 2ω0 とおくと、 式は 0 t) − sin(4ω0 t) (3.70) (3.69) (3.71) (3.70) (3.72) (3.71) (3.72) (3.73) (3.73) (3.74) + sin(2φ)] ω0 α A˙ 0=の正弦的変化は cos(2φ)] となる。ここで、振動数 2ω0 や 4ω φ の時間変化に比べてはるかに速いので、 A˙ や φ˙ を 4 A [cos(4ω0 t)A−や (3.74) φ˙ = ω0 α [− sin(2ω0 t) − sin(4ω0 t) + sin(2φ)] 時間積分したときの寄与は無視できるので、上式から省ける。 ここでいよいよ ω ≡ 4 これを 回転波近似(rotating-wave approximation)または平均値近似という。そうすると (3.74) 式は となる。ここで、振動数 2ω0 や 4ω0 の正弦的変化は A や φ の時間変化に比べてはるかに速いので、A˙ や φ˙ を ω0 α 時間積分したときの寄与は無視できるので、上式から省ける。 ˙ A = − 4 A cos(2φ) (3.75) α これを 回転波近似(rotating-wave approximation (3.74) 式は φ˙ = ω04)または平均値近似という。そうすると sin(2φ) ˙ = − ω0 α A cos(2φ) A となる。これを解くため 4 (3.75) φ˙ = ω04α sin(2φ) u ≡ A cos φ u˙ = A˙ cos φ − Aφ˙ sin φ したがって (3.76) となる。これを解くため w ≡ A sin φ w˙ = A˙ sin φ + Aφ˙ cos φ u ≡ A cos φ u˙ = A˙ cos φ − Aφ˙ sin φ 46 第 3 章 ラグランジュ形式の力学 — 一般編 — したがって (3.76) w ≡ A sin φ w˙ = A˙ sin φ + Aφ˙ cos φ とおくと、 ! ω α " !ω α " !ω α" !ω α" 0 0 0 0 u˙ = − A cos(2φ) cos φ − A sin(2φ) sin φ = −A cos φ = − u 4 4 4 4 ! ω α " !ω α " !ω α" !ω α" 0 0 0 0 w˙ = − A cos(2φ) sin φ + A sin(2φ) cos φ = A sin φ = w 4 4 4 4 したがって ! ω α " 0 u = u0 exp − t 4 および w = w0 exp !ω α " 0 t 4 (3.77) (3.78) (3.79) ω0 α ω0 α ω0 α ω0 α A cos(2φ) cos φ − A sin(2φ) sin φ = −A cos φ = − u 4 4 4 4 ! ω α " !ω α " !ω α" !ω α" 0 0 0 0 w˙ = − A cos(2φ) sin φ + A sin(2φ) cos φ = A sin φ = w 4 4 4 4 u˙ = − したがって ! ω α " 0 u = u0 exp − t 4 および w = w0 exp ところで (3.68) の上式、そして (3.76) の左の式より !ω α " 0 t 4 θ = A cos φ cos(ω0 t) − A sin φ sin(ω0 t) = u cos(ω0 t) − w sin(ω0 t) (3.77) (3.78) (3.79) (3.80) これに (3.79) を入れて、 ! ω α " !ω α" 0 0 θ = u0 exp − t cos(ω0 t) − w0 exp sin(ω0 t) 4 4 (3.81) となって、振れ角 θ は時間が経つにつれ cos(ω0 t) の振幅は減衰し、sin(ω0 t) の振幅は増幅(すなわち励振)さ れる。電気回路、電磁波、光においてこのような位相選択性増幅は「パラメトリック増幅」と呼ばれる。増幅 出力を入力にフィードバックして発振を起こすことを「パラメトリック発振」と呼ばれ、波長可変レーザーと して用いられる。量子力学では光子のエネルギーは ¯ hω なので、量子力学的パラメトリック励振においてはエ ネルギー保存を満たすため 2ω0 の光子一個が ω0 の光子 2 個に変換されることになる。これはパラメトリック 下方変換と呼ばれ、エンタングルした双子の光子の発生に利用される。 パラメトリック振り子を天井走行クレーンと対比すると、天井走行クレーンで支点を水平に ω で振ったとき 共振条件は ω " ω0 であったが、支点を垂直方向に振るパラメトリック振り子の場合は ω " 2ω0 が共振条件で あった。この違いは単に共振周波数が倍違うというだけでなく、振り子が調和振動子として扱われる量子力学 に進むと、量子化した波状の外力の 1 粒子が振り子の振動を量子化した 1 粒子に変換されるか、はたまた 2 粒 子に変換されるかという大きな違いがある。前者は単なる共振現象であるが、後者はエンタングルメント(量 子もつれ)発生という新局面が開かれる。 3.2.3 回転座標系 3.2. 時間を含む扱い 47 回転座標系は座標変換が陽に時間を含む典型例である。等速直線運動する座標系(ガリレイ変換による動く 3.2.3 回転座標系 座標)であれば慣性系であるが、回転座標系は慣性系ではないため、みかけの力がいろいろ発生する。デカル 回転座標系は座標変換が陽に時間を含む典型例である。等速直線運動する座標系(ガリレイ変換による動く ト座標 x, y を角度 θ だけ回転した座標を X, Y とすると 座標)であれば慣性系であるが、回転座標系は慣性系ではないため、みかけの力がいろいろ発生する。デカル cos φ + y sin φ ト座標 x, y を角度 θ だけ回転した座標を X X,= Yx とすると Y = −x sin φ + y cos φ X = x cos φ + y sin φ Z=z (3.82) (3.82) Z=z の関係にある。これも慣性系のデカルト座標である。しかし角度が φ = ωt のように時間に比例して増える場合、 Y = −x sin φ + y cos φ の関係にある。これも慣性系のデカルト座標である。しかし角度が ωt のように時間に比例して増える場合、 X(t) = x cos ωt + y sin ωt φ = (3.83) Y X(t) (t) ==−x sinωt ωt+ +yysin cosωtωt x cos (3.83) Z Y=(t)z = −x sin ωt + y cos ωt Z=z となる。この X, Y, Z を一般座標としたのが回転座標系である。これを逆に解いた x = X cos ωt − Y sin ωt y = X sin ωt + Y cos ωt z=Z (3.84) を使うと したがって運動エネルギーは T = x˙ = X˙ cos ωt − Y˙ sin ωt − ω(X sin ωt + Y cos ωt) y˙ = X˙ sin ωt + Y˙ cos ωt + ω(X cos ωt − Y sin ωt) z˙ = Z˙ m ˙2 ˙ + m ω 2 (X 2 + Y 2 ) (X + Y˙ 2 + Z˙ 2 ) + mω(X Y˙ − Y X) (3.85) (3.86) したがって運動エネルギーは T = x˙ = X cos ωt − Y sin ωt − ω(X sin ωt + Y cos ωt) ˙ ˙ y˙ = X sin ωt + Y cos ωt + ω(X cos ωt − Y sin ωt) z˙ = Z˙ m ˙2 ˙ + m ω 2 (X 2 + Y 2 ) (X + Y˙ 2 + Z˙ 2 ) + mω(X Y˙ − Y X) 2 2 (3.85) (3.86) となる。いま力は元の座標 x, y, z で保存力すなわちポテンシャル U (x, y, z) から導かれる力とすると、回転座 標系では (3.84) を使って X(t), Y (t), Z(t) の関数となる。そうしてできた U (X, Y, Z) は X, Y, Z を通じて t を ˙ Y˙ , Z˙ は含んでいない。そのことに注意してラグランジュの運動方程式を立てると 陽に含んでいるが、X, ¨ = − ∂U + 2mω Y˙ + mω 2 X mX ∂X ∂U 2 (3.87) mY¨ = − ∂Y − 2mω X˙ + mω Y mZ¨ = − ∂U ∂Z となる。右辺第二項は初等力学でなじみ深いコリオリの力、第三項は遠心力である。ここでコリオリの力は (3.86) 右辺第二項から生じており、遠心力は第三項から生じていることに注意されたい。このことは次節で電 磁場中の荷電粒子のラグランジアンを求めるときに立ち戻る。 ところで極座標(これは動く座標系ではない)の r の加速度に関する (2.34) 式にも遠心力が現れるが、これ との関係はどうなっているだろうか。いま x, y も X, Y も極座標で表してみよう。 x = r cos θ , y = r sin θ 48 (3.88) 第 3 章 ラグランジュ形式の力学 — 一般編 — X = R cos Θ , Y = R sin Θ (3.89) したがって X = x cos ωt + y sin ωt = r cos θ cos ωt + r sin θ sin ωt = r cos(ωt − θ) (3.90) これが R cos Θ に等しいのだから、R = r、Θ = θ − ωt(または ωt − θ、しかし y と Y の同様の比較により 48 第 3 章 ラグランジュ形式の力学 — 一般編 — θ − ωt)となる。すなわち極座標で書けば静止座標系と回転座標系は したがって R=r X = x cos ωt + y sin ωt = r cos θ cos ωt + r sin θ sin ωt = r cos(ωt − θ) (3.90) (3.91) Θ = θ − ωt ωt − θ、しかし y と Y の同様の比較により これが R cos Θ に等しいのだから、R = r、Θ =Zθ=−zωt(または θ − ωt)となる。すなわち極座標で書けば静止座標系と回転座標系は という(当然の)関係になる。さて (3.84) と (3.89) を組み合わせて回転座標系の極座標でラグランジュの運動 方程式を立てると、ベクトルの形式で R=r (3.91) Θ = θ − ωt R cos Θ % & 2 ¨ = −∇R U (R) + 2mZR ˙ =×zω ˙ +ω mR # +m Θ (3.92) R sin Θ という(当然の)関係になる。さて (3.84) と (3.89) を組み合わせて回転座標系の極座標でラグランジュの運動 0 方程式を立てると、ベクトルの形式で となる。ただし ω # は角速度ベクトルすなわち大きさが ω で向きが右ねじの進行方向(今の場合 +z 方向)のベ クトルである。(3.92) を静止極座標における (2.34) 式のベクトル形式版: R cos Θ % &2 ¨ = −∇R U (R) + 2mR ˙ ×ω ˙ +ω mR # + m Θ (3.92) R sin Θ r cos θ 0 m¨r = −∇r U (r) + mθ˙2 r sin θ (3.93) となる。ただし ω # は角速度ベクトルすなわち大きさが ω で向きが右ねじの進行方向(今の場合 +z 方向)のベ 0 クトルである。(3.92) を静止極座標における (2.34) 式のベクトル形式版: と比較すれば、確かに (3.92) 右辺第三項と (3.93) 右辺第二項は角速度を ω だけずらした以外は対応しており、 遠心力に相当していることがわかる。なお、静止系(慣性系)の極座標表示に現れる遠心力は、静止系にある r cos θ 観測者が実際に感じる力ではない。しかし ω だけずれた効果によ m¨r = (3.92) −∇r U右辺第二項のコリオリの力や第三項の (r) + mθ˙2 r sin θ (3.93) る遠心力は、回転座標系とともにある観測者が実際に感じる力である。コリオリの力は速度に比例するが方向 0 は速度と垂直であり、仕事はしない。 と比較すれば、確かに (3.92) 右辺第三項と (3.93) 右辺第二項は角速度を ω だけずらした以外は対応しており、 回転座標系におけるラグランジアンは (3.86) から U を引いたものであるが、ここで新たに 遠心力に相当していることがわかる。なお、静止系(慣性系)の極座標表示に現れる遠心力は、静止系にある m ˙2 ! 観測者が実際に感じる力ではない。しかし T (3.92) ω だけずれた効果によ = 右辺第二項のコリオリの力や第三項の (X + Y˙ 2 + Z˙ 2 ) (3.94) 2 る遠心力は、回転座標系とともにある観測者が実際に感じる力である。コリオリの力は速度に比例するが方向 ˙ − m ω 2 (X 2 + Y 2 ) U ! = U − mω(X Y˙ − Y X) (3.95) は速度と垂直であり、仕事はしない。 2 3.2. 時間を含む扱い m¨r = −∇r U (r) + mθ˙2 r sin θ 0 (3.93) と比較すれば、確かに (3.92) 右辺第三項と (3.93) 右辺第二項は角速度を ω だけずらした以外は対応しており、 49 遠心力に相当していることがわかる。なお、静止系(慣性系)の極座標表示に現れる遠心力は、静止系にある 3.2.4 速度に依存する力 (1) — ローレンツ力 観測者が実際に感じる力ではない。しかし (3.92) 右辺第二項のコリオリの力や第三項の ω だけずれた効果によ ラーモアの定理 る遠心力は、回転座標系とともにある観測者が実際に感じる力である。コリオリの力は速度に比例するが方向 は速度と垂直であり、仕事はしない。 静止系(慣性系)でも現れる速度に依存する力の例としてローレンツ力がある。電荷 e を持つ9 質量 m の質 回転座標系におけるラグランジアンは (3.86) から U を引いたものであるが、ここで新たに 点が電場 E および磁束密度 B がある空間を速度 v= r˙ で進むとき、ローレンツ力 m ˙2 (X + Y˙ 2 + Z˙ 2 ) (3.94) 2F = e(E + v × B) (3.96) m ˙ − ω 2 (X 2 + Y 2 ) U ! = U − mω(X Y˙ − Y X) (3.95) が働く。いま電場は電位ポテンシャル φ(r) から E = −∇φ2 によって導かれるとすると、運動方程式は T! = と定義すると、T ! − U ! は同じラグランジアンになる。この U ! は一般ポテンシャル(generalized potential)あ m¨r = −e∇φ + e r˙ × B るいは一般化ポテンシャルと呼ばれる。回転座標系とともにある観測者にとっては、質点の運動エネルギーは (3.97) T と思う一方、速度にも依存する U という一種のポテンシャルの下で運動している、というように見える。 ! ! となって、形式上 (3.92) で遠心力を除いたものと同じになる。であるならば、回転座標系のラグランジュの運 コリオリの力をこのように「U ! にしまい込む」ことができるのは、コリオリの力が仕事をしないことによる。 動方程式から を導いた手順を逆にたどり、運動方程式 (3.97) を与えるラグランジアンを決めることがで ポテンシャル(3.92) U が軸対称でない場合は、元々の U (r) が時間に依存せず空間に固定されていたとしても、 U (R) きる。いま磁場は z 方向に一様な は時間 t に依存することになる。その中を動く質点の運動方程式は複雑化する。ポテンシャルが軸対称であれ 0 ば、U (R) も空間だけの関数となり、回転座標系は使いやすいものとなる。 B= 0 B 3.2.4 速度に依存する力 (1) — ローレンツ力 とすると、(3.97) は ラーモアの定理 m¨ x= m¨ y= m¨ z= 3.2. 時間を含む扱い −e ∂φ ∂x −e ∂φ ∂y ∂φ −e ∂z + eB y˙ − eB x˙ (3.98) (3.99) 49 となる。これと (3.87) を比べると、(3.87) 右辺の第三項に相当するもの(遠心力)が (3.99) にない以外は全く 同じ形をしている。 (3.87) 右辺の第一、第二、第三項のもとになったのがそれぞれ (3.86) 右辺の第一、第二、 3.2.4 速度に依存する力 (1) — ローレンツ力 第三項であったことを考えると、運動方程式 (3.99) を導くラグランジアンは ラーモアの定理 m 2 eB 2 静止系(慣性系)でも現れる速度に依存する力の例としてローレンツ力がある。電荷 L = (x˙ 2 + y˙ 2 + z˙ 2 ) + (xy˙ − y x) ˙ − eφ e を持つ9 質量 m の質 (3.100) 点が電場 E および磁束密度 B がある空間を速度 v= r˙ で進むとき、ローレンツ力 とすればよいことがわかる。つまり (3.100) の eB/2 を mω と置き換えれば、(3.86) 第二項のコリオリの力と F = e(E + v × B) (3.96) なる。このことから「z 方向の静磁場 B が(静止座標系における運動方程式に)与える効果は、磁場がない場 合に −eB/2m の角速度で回る回転座標系に乗って見たときの質点の運動と(遠心力を除けば)同じ」となる。 が働く。いま電場は電位ポテンシャル φ(r) から E = −∇φ によって導かれるとすると、運動方程式は この ω = eB/2m をラーモア周波数という。 m¨r = −e∇φ + e r˙ × B (3.97) 一方で、電磁気学でなじみ深い荷電粒子のサイクロトロン運動の角振動数(サイクロトロン振動数)は ω = となって、形式上 (3.92) で遠心力を除いたものと同じになる。であるならば、回転座標系のラグランジュの運 eB/m である。すると、サイクロトロン運動の円の中心を回転軸として −eB/m 動方程式から (3.92) を導いた手順を逆にたどり、運動方程式 (3.97) を与えるラグランジアンを決めることがで (3.100) の第一項は運動エネルギー、第三項は静電ポテンシャルである。磁場に関する第二項はどちらでもな きる。いま磁場は z 方向に一様な いが、これを「ポテンシャルにしまい込む」ことを考えよう。それは (3.95) を踏襲して新たなポテンシャルを 0 B= 0 eB U (x, y, z, x, ˙ y) ˙ = − (xy˙ − y x) ˙ + eφ B 2 (3.98) とすると、(3.97) は とすればよい。次にこれを ω で回転する回転座標系で表現してみる。 (3.84) と (3.85) を使うと、 m¨ x = −e ∂φ ∂x + eB y˙ ˙ − ˙ xy˙ −m¨ yyx˙ ==−e X∂φ Y Y X + ω(X 2 + Y 2 ) − eB x ˙ ∂y m¨ z = −e ∂φ (3.99) ∂z となる。これと (3.87) を比べると、(3.87) 右辺の第三項に相当するもの(遠心力)が (3.99) にない以外は全く 9 ここで e は電荷一般を指す。陽子であれば e は電気素量であり、電子の場合は電気素量にマイナスを付けたものである。 同じ形をしている。(3.87) 右辺の第一、第二、第三項のもとになったのがそれぞれ (3.86) 右辺の第一、第二、 第三項であったことを考えると、運動方程式 (3.99) を導くラグランジアンは (3.101) (3.102) m¨ x = −e ∂x + eB y˙ m¨ y = −e ∂φ − eB x ˙ ∂y ∂φ m¨ z = −e (3.99) ∂z となる。これと (3.87) を比べると、(3.87) 右辺の第三項に相当するもの(遠心力)が (3.99) にない以外は全く 同じ形をしている。(3.87) 右辺の第一、第二、第三項のもとになったのがそれぞれ (3.86) 右辺の第一、第二、 第三項であったことを考えると、運動方程式 (3.99) を導くラグランジアンは L= m 2 eB (x˙ + y˙ 2 + z˙ 2 ) + (xy˙ − y x) ˙ − eφ 2 2 (3.100) とすればよいことがわかる。つまり (3.100) の eB/2 を mω と置き換えれば、(3.86) 第二項のコリオリの力と なる。このことから「z 方向の静磁場 B が(静止座標系における運動方程式に)与える効果は、磁場がない場 合に −eB/2m の角速度で回る回転座標系に乗って見たときの質点の運動と(遠心力を除けば)同じ」となる。 この ω = eB/2m をラーモア周波数という。 一方で、電磁気学でなじみ深い荷電粒子のサイクロトロン運動の角振動数(サイクロトロン振動数)は ω = eB/m である。すると、サイクロトロン運動の円の中心を回転軸として −eB/m (3.100) の第一項は運動エネルギー、第三項は静電ポテンシャルである。磁場に関する第二項はどちらでもな いが、これを「ポテンシャルにしまい込む」ことを考えよう。それは (3.95) を踏襲して新たなポテンシャルを U (x, y, z, x, ˙ y) ˙ =− eB (xy˙ − y x) ˙ + eφ 2 (3.101) とすればよい。次にこれを ω で回転する回転座標系で表現してみる。(3.84) と (3.85) を使うと、 50 一般編 — 2 3章 xy˙ − y x˙ = X Y˙ − Y X˙ + ω(X第 + Y 2 ) ラグランジュ形式の力学 — (3.102) となるので、これと 12 (x˙ 2 + y˙ 2 + z˙ 2 ) に対応する (3.86) を組み合わせると、(3.100) は 9 ここで e は電荷一般を指す。陽子であれば !e は電気素量であり、電子の場合は電気素量にマイナスを付けたものである。 " ! " m ˙2 eB mω eB 2 2 ˙ ˙ ˙ ˙ L = (X + Y + Z ) + m ω + (X Y − Y X) + ω+ (X 2 + Y 2 ) − eφ! (3.103) 2 2m 2 m 50 第 3 章 ラグランジュ形式の力学 — 一般編 — あるいは回転座標系の一般ポテンシャル U ! に磁場と電場を組み込んで となるので、これと 12 (x˙ 2 + y˙ 2 + z˙ 2 ) に対応する (3.86) を組み合わせると、(3.100) は ! " ! " ! eB "˙ mω ! eB " 2 ! ˙ m eB(X Y −˙ Y X) − eB (X + U = −m ω + Y 2 ) − eφ! ˙ +2 mωω + L = (X˙ 2 + Y˙ 2 + Z˙ 2 ) + m ω2m + (X Y − Y X) ω +m (X 2 + Y 2 ) − eφ! 2 2m 2 m (3.104) (3.103) を得る。φ! は回転座標で見た静電場で、一般に時間を含む。しかしもし z 軸対称性があるならば、これはもち あるいは回転座標系の一般ポテンシャル U ! に磁場と電場を組み込んで ろん φ そのものである。 ! " ! " eB ! ˙ − Y X) ˙ − mω ω + eB (X 2 + Y 2 ) − eφ! U = −m ω + (X Y 仮に ω として ω = −eB/m を選んだとしよう。すると遠心力は打ち消されて 2m 2 m (3.104) eB を得る。φ! は回転座標で見た静電場で、一般に時間を含む。しかしもし ! !z 軸対称性があるならば、これはもち ˙ ˙ ろん φ そのものである。 U = 2m (X Y − Y X) − eφ (3.105) となる。すなわちサイクロトロン周波数で回転する座標で見れば、コリオリの力だけが残る。ここで注意すべ 仮に ω として ω = −eB/m を選んだとしよう。すると遠心力は打ち消されて きは、遠心力が打ち消されるといっても、勝手に選んだ z 軸回りにサイクロトロン運動する粒子の遠心力を打 eB ˙ − eφ! U! = (X Y˙ − Y X) (3.105) 2m ち消したに過ぎない。サイクロトロン運動はあちこちで様々な半径の円運動として起こっているので、そうい となる。すなわちサイクロトロン周波数で回転する座標で見れば、コリオリの力だけが残る。ここで注意すべ う大多数の粒子に対しては遠心力を打ち消してはいないし、コリオリの力はもちろん残るので、ω = −eB/m きは、遠心力が打ち消されるといっても、勝手に選んだ z 軸回りにサイクロトロン運動する粒子の遠心力を打 の選択はあまり意味がない。 ち消したに過ぎない。サイクロトロン運動はあちこちで様々な半径の円運動として起こっているので、そうい 一方、ω として ω = −eB/2m を選んだとしよう。今度はコリオリの力が打ち消されて う大多数の粒子に対しては遠心力を打ち消してはいないし、コリオリの力はもちろん残るので、 ω = −eB/m ! "2 の選択はあまり意味がない。 U! = m 2 eB 2m # $ X 2 + Y 2 − eφ! (3.106) 一方、ω として ω = −eB/2m を選んだとしよう。今度はコリオリの力が打ち消されて となる。コリオリの力は速度に比例するので、粒子がどこで運動していようと等しく打ち消される。すなわち ! "2 # 2 $ m eB ラーモア周波数で回転する座標で見れば、どの荷電粒子に対しても遠心力( z 軸回りの)だけが残る。打ち消 U! = X + Y 2 − eφ! (3.106) 2 2m 2 した結果残った (3.106) 右辺第一項は B に比例しているので、|B| が小さい場合は遠心力は初めから無視でき となる。コリオリの力は速度に比例するので、粒子がどこで運動していようと等しく打ち消される。すなわち るし、残ったコリオリの力はどの粒子に対しても打ち消すことができる。 ラーモア周波数で回転する座標で見れば、どの荷電粒子に対しても遠心力(z 軸回りの)だけが残る。打ち消 そこで我々は ω = −eB/2m を選んで、(3.106) において遠心力も無視できる弱い磁場の場合を考えよう。こ した結果残った (3.106) 右辺第一項は B 2 に比例しているので、|B| が小さい場合は遠心力は初めから無視でき のとき U ! = −eφ! となる。さらに φ に z 軸対称性があれば φ! = φ だから、以上の結果は、Bz の下での運動は るし、残ったコリオリの力はどの粒子に対しても打ち消すことができる。 一方、ω として ω = −eB/2m を選んだとしよう。今度はコリオリの力が打ち消されて U! = m 2 ! eB 2m "2 # $ X 2 + Y 2 − eφ! (3.106) となる。コリオリの力は速度に比例するので、粒子がどこで運動していようと等しく打ち消される。すなわち ラーモア周波数で回転する座標で見れば、どの荷電粒子に対しても遠心力(z 軸回りの)だけが残る。打ち消 した結果残った (3.106) 右辺第一項は B 2 に比例しているので、|B| が小さい場合は遠心力は初めから無視でき るし、残ったコリオリの力はどの粒子に対しても打ち消すことができる。 そこで我々は ω = −eB/2m を選んで、(3.106) において遠心力も無視できる弱い磁場の場合を考えよう。こ のとき U ! = −eφ! となる。さらに φ に z 軸対称性があれば φ! = φ だから、以上の結果は、Bz の下での運動は Bz = 0 としたときの運動を ω = −eB/2m で回転する座標系で見た運動と同一である ということを意味してい る。これを ラーモアの定理(Larmor theorem)といい、このときの周波数を ω = eB/2m を ラーモア周波数 (Larmor frequezncy)またはラーモア振動数という。特に円環状に動く荷電粒子があった場合、その円環軌 道自体がラーモア周波数で回転することになる。円環状に動く荷電粒子は磁束密度を発生することを考える と、その磁束密度自体がラーモア周波数で回転することを意味する。さらに、電子その他の素粒子や原子核 にスピンがある場合、スピンは荷電粒子の円環運動により発生しているわけではないが同じく磁石であるの で、そのスピンの向きがラーモア周波数で回転することになる。これをスピンの 歳差運動(precession)とい う。コマの歳差運動と同じである。その周波数に合わせた電磁波(通常 RF 波すなわちラジオ周波数の電磁波) をスピンに照射すると共鳴吸収が起こる。これは 核磁気共鳴(NMR:nuclear magnetic resonance)あるいは 電子スピン共鳴(ESR*electron spin resonance)の原理になっている。核磁気共鳴の医療応用が磁気共鳴映像 法(MRI:magnetic resonance imaging)である。
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