医薬化学I 本日の講義内容 ステロイドアナログの医薬品を 列挙し、それらの化学構造を比較できる SBO50 ステロイドとは シクロペンタヒドロフェナントレンを基本骨格とし通常はC-10とC-13にメチル基を、 また多くの場合C-17にアルキル基を有する。共通して、ステロイド核と呼ばれる、 3つのイス型六員環と1つの五員環がつながった4縮合環炭素構造である。 ステロイドは、ほとんどの生物の生体内にて生合成され、細胞膜の重要な構成 成分となっているほか、胆汁酸やホルモン類(ホルモンとは、内分泌器官で合 成・分泌され、体液(血液)を通して体内を循環し、別の決まった器官でその効果 を発揮する生理活性物質)として利用されている。 コレステロールの生合成 ステロイド類の生合成 黄体ホルモン 鉱質コルチコイド 男性ホルモン 糖質コルチコイド 卵胞ホルモン(女性ホルモン) 男性にも女性ホルモンは存在し,逆もまた真なり。 エストロゲン(女性ホルモン) 2歳から思春期を迎えるまでの分泌量は女性で0.6pg/ml、男性で0.08pg/mlと 女性の方が高くこれが女性の思春期初来が男性より早い原因の一つ。 男性の場合はテストステロンを元にエストロゲンが作られて分泌される。その 量は更年期の女性と同程度とされる。 アンドロゲン(男性ホルモン) 女性におけるテストステロン値は,男性の1/10~1/20程度。 女性におけるテストステロンの産生源は卵巣,副腎,脂肪・筋肉。 20歳代で最も多く,以降年齢とともに減少し,閉経直前には20歳代 の約半分に減少。その後は変動は少ない。 ステロイドホルモン 名称 別称 糖質コルチコイド 主要産生臓器 主要ホルモン 副腎皮質 コルチゾン 副腎皮質 アルドステロン 副腎皮質 ホルモン 鉱質コルチコイド プロゲステロン 黄体ホルモン 黄体 胎盤 プロゲステロン エストロゲン 卵胞ホルモン 卵胞ろ胞 胎盤 エストラジオール エストロン 睾丸 テストステロン アンドロゲン 男性ホルモン ステロイドの化学構造上の特徴 ステロイドは連続する三シクロヘキサン環にシクロペンタン環が縮合した四環構造を 有する.各環はAからD環と呼ばれ炭素にはステロイド特有の位置番号が決まっている. ステロイドホルモンではA-B環、B-C 環、C-D環は全てtrans配置である (5α-ステロイド構造). 強心配糖体(心不全の治療薬)ではA-B 環はcis、B-C環はtrans、C-D環はcis配 置である(5β-ステロイド構造). エストロゲン(卵胞ホルモン)関連医薬品の構造 ステロイドの基本骨格のうち,エストラン系構造を有する. A環は 芳香環化しておりC10位にメチル基はない. 3位はフェノール性 水酸基であり、酸性度は強い. エストラジオール 婦人科系疾患、ホルモン補充療法、骨粗鬆症治療薬等 エストロン 黄体ホルモン関連医薬品の構造 ステロイドの基本骨格のうち,プレグナン系構造を有する. C17位 に置換基が二つ存在する.合成黄体ホルモンのジドロゲステロン やノルエチステロンはA環にα,β不飽和ケトン構造を有する. プロゲステロン ジドロゲステロン 排卵誘発剤、抗がん剤(ホルモン依存性がん) ノルエチステロン 男性ホルモン関連医薬品の構造 ステロイドの基本骨格のうち,アンドロスタン系構造を有する. C10位とC13位にメチル基が結合しC3位とC17位には酸素置換基 が結合している. テストステロン アンドロステロン 男性機能障害治療薬、筋肉増強剤、脱毛防止剤等 エナント酸テストステロン 副腎皮質ホルモン関連医薬品の構造 ステロイドの基本骨格のうち,プレグナン系構造を有する. C17位β方 向に延びる二炭素置換基がケトール構造である.C11位に水酸基が存 在する. ヒドロコルチゾンは糖質コルチコイドに分類される.糖質代謝や抗炎症 に関与する.アルドステロンは鉱質コルチコイドに分類される. 細胞内 Na+,K+のバランス調節に関与している. ヒドロコルチゾン プレドニゾロン デキサメタゾン 抗炎症薬、自己免疫疾患治療薬等 アルドステロン ステロイドホルモンの構造分類 ホルモン作用 糖質コルチコイド 鉱質コルチコイド プロゲステロン エストロゲン アンドロゲン A環 3位 11位 17位 20位 21位 強心配糖体に含まれるステロイド骨格 うっ血性心不全や不整脈に用いられるステロイド配糖体. 強心配糖体は糖,ステロイド,ラクトンから構成される. 糖鎖にはグルコース,ラムノース,ジギトキソースがある. ステロイドはB/C環がトランス、C/D環がβ-シスの立体配置. 3位で糖鎖が,17位でラクトンがそれぞれβ配向で結合 し,14位にはヒドロキシ基がβ配向で結合している。この特 徴的な構造は強心作用発現に必須とされる。 ラクトンはカルデノライド(5員環)あるいはブファジエノライ ド(6員環)の2種類がある。 ステロイドホルモンの作用メカニズム 核内受容体とはステロイドホルモンなどが結合することで核内でのDNA転写を 調節する受容体。 発生、恒常性、代謝など生命維持の根幹に係わる遺伝子転 写に関与している。ヒトでは48種類存在すると考えられている。 mRNA 17 ステロイドホルモンの作用メカニズム NR ligand ! mRNA 18 核内受容体の構造 A/B領域:N末端側、リガン ド非依存的転写活性化能 を有するAF-1領域を含む。 C領域:DNA結合ドメイン。 D領域:ヒンジ領域。DBDと LBDを柔軟に結合している。 E/F領域:リガンド結合ドメイ ン(LBD)。リガンド依存的に 転写活性可能を有するAF2領域を含む。 核内受容体の構造 PPAR RXR DNA 酢酸コルチゾンの工業的合成法 糖質コルチコイド(コルチゾンとヒドロコルチゾン)は優れた抗炎症作用 を有するため,経済的な工業的合成法の研究が盛んに行われた. 16-デヒドロプレグネノロンから酢酸コルチゾンの工業的合成法 16-デヒドロプレグネノロン (サポゲニン;山芋から) 酢酸コルチゾン 酢酸コルチゾンの工業的合成法 ① ② ① ; アルカリ条件下過酸化水素酸化して立体選択的にエポキシ環を 合成 (化学系薬学IISBO6, p26) ② ; エポキシドの酸(HBr)による開裂. ブロモエタノールへの変換. 立体の込み入っていない方をBr-が攻撃する. 合成 (化学系薬学I SBO69, p275) 酢酸コルチゾンの工業的合成法 ③ ④ ① ; 接触還元によるハロゲンの水素への還元 合成 (化学系薬学IISBO11, p51) ② ; 蟻酸による二級水酸基のホルミル化(保護)と臭素によるアルケン 二重結合,活性メチル基の臭素化 (化学系薬学II SBO19, p104) 酢酸コルチゾンの工業的合成法 ⑤ ⑥ ① ; ハロゲン交換後のアセトキシ化とヨウ化物アニオンによる脱臭素化 してアルケン合成 (化学系薬学IISBO1, p8) ② ; 三級水酸基のアセチル化(保護)とホルミル基の脱保護,さらに オッペンナウアー酸化によるα,β不飽和ケトンへの酸化 ステロイド類の構造はなんで似ているのだろう? ステロイドが結合して活性を発現する受容体の構造が似ているから! ERに結合したエストラジオール ARに結合したテストステロン ステロイド類の構造はなんで似ているのだろう? ステロイドが結合して活性を発現する受容体の構造が似ているから! ERに結合したエストラジオール ARに結合したテストステロン ステロイド類の構造はなんで似ているのだろう? ステロイドが結合して活性を発現する受容体の構造が似ているから! ER-エストラジオール AR-テストステロン ステロイド類の構造はなんで似ているのだろう? ステロイドが結合して活性を発現する受容体の構造が似ているから! SBO50 名称 ステロイドアナログの医薬品 別称 糖質コルチコイド 副腎皮質 ホルモン ヒドロコルチゾン プレドニゾロン デキサメタゾン 鉱質コルチコイド アルドステロン プロゲステロン 黄体ホルモン プロゲステロン ジドロゲステロン ノルエチステロン SBO50 名称 エストロゲン ステロイドアナログの医薬品 別称 卵胞ホルモン エストラジオール アンドロゲン エストロン 男性ホルモン テストステロン アンドロステロン エナント酸 テストステロン
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